上 下
54 / 104

54.おっぱいは柔っこい!(確信)

しおりを挟む
 ウータとステラはその日は宿屋に泊まって、翌日から祭りまでの六日間を観光に費やすことにした。

「観光もそうですけど、路銀稼ぎをしなくちゃいけませんね」

「うんうん、美味しい物を食べるにはお金が必要だものね」

「情報収集もです。女神マリンについて調べましょう」

「うんうん、彼女を食べちゃうために必要だよね」

「そうです」

「そっか」

「…………」

「…………」

 会話が途切れて、どちらともなく黙り込んだ。
 話すことがなくなると途端に空気が重くなり、気まずい沈黙が下りる。

 二人がいる場所は宿泊先の宿屋。その浴室である。
 二人は並んで湯船に入っており、当然ながら一糸まとわぬ裸だった。
 どうして一緒に風呂に入っているのか……特に理由があってのことではない。
 以前、ウータの関心を得るために、ステラがウータの入浴中に飛び込んだことがあった。
 その流れでウータが「今日も一緒に入るー?」と何気なく尋ねたところ、ステラが「入りますっ!」と強めに了承したのである。

(う、ウータさんから誘ってもらったのに断ったりしたら、女が廃ります!)

 ウータに対してハニートラップを仕掛けることは諦めているが、それでも、ここで首を振ったら負けな気がする。
 そんな女としての対抗心から一緒に入浴することになったわけだが……ステラは終始、湯の熱とは関係なく顔を真っ赤にしていた。

(や、やっぱり恥ずかしいです……男の人とお風呂。しかもウータさんとだなんて……!)

 グラスから紹介された宿屋はこの町でもっとも上等な宿泊施設であり、通された部屋も高級なところだった。
 浴槽も広く、二人の人間が一緒に入っても手狭には感じない。

「ひうっ!」

「わっ」

 とはいえ……身体がまったく触れ合わないわけでもない。
 ふとした拍子に指先が触れ合うと、ステラは過剰なほどに反応してしまった。

「どうかしたのかな、熱かった?」

「い、いえ……すいません。叫んじゃって……」

「別に良いけど……逆上せそうだったら、さっさと出た方が良いんじゃないかな?」

「大丈夫ですっ! むしろお湯の温度は低くて寒いくらいですっ!」

「あ、そうなんだ。マジックアイテムで追い焚きできるっぽいから、もうちょっとあったかくするねー」

 ステラが半ば意地になって言うと、ウータは気にした様子もなく手を伸ばして浴槽に取り付けられた追い焚き装置を起動させた。

「うー……」

(ズルいです……私ばっかり緊張して……ウータさんは少しも私のこと、女として意識してないんでしょうか……?)

 ステラは腹が立つような、悲しいような気持ちになる。
 女性と思われていないとはわかっていたが、改めて自分がただの食事係でしかないと突きつけられた気分だった。

(どうせ意識されていないのですから、いっそのこともっと攻めても良いのでしょうか……?)

 ふとそんなことを思って、ステラは普段ならば絶対に口に出さないことを言ってみる。

「あの……ウータさん」

「何かな?」

「私のおっぱい、揉んでみますか」

「うん、揉む揉む」

「はい、やっぱりそうですよね…………ブフウッ!」

 予想外の返答を受けて、一旦お湯を飲んでから噴き出した。

「い、いいいいいいっ、今なんて言いましたかっ!?」

「え、いやモムモム?」

「モムモムって何です!? いや、私のおっぱいを揉むって……!」

「うん。揉んで良いのなら揉むよー。前に身体に当たったときに気持ち良かったからねー」

「…………!?」

 ステラが身体をのけぞらせる。
 この旅の中での経験から、ウータは女性に対してまったく興味を持っていないものだとばかり思っていた。
 だからこそ、悪戯半分で胸を揉むか訊いてみたのだが……返ってきた答はまさかの肯定だった。

(ま、まさかウータさんに女性の胸に触りたいなんて、普通の男の子みたいな感覚があったなんて……!)

 微妙に失礼なことを考えながら、ステラはわずかに震撼した様子で自分の胸を見下ろした。
 身体が小さく、子供と間違えられることもあるステラであったが……不思議と胸だけは肉がついている。
 ダボダボのローブを着ていなければ、人目が気になって表を歩けないほどに。

「アレ? やっぱりダメだったかな?」

「え、えっと……」

 冗談です、と口にしようとして止める。
 これはひょっとすると、千載一遇のチャンスなのかもしれない。

(う、ウータさんにはお世話になってますし、これくらいは当然なのでは……?)

 ステラは緊張してガチガチになりつつも、覚悟を決めて浴槽に浸かったままウータに向き直った。

「ど、どうぞ! さ、さささささ触っても良いですよっ!」

「うん、わかったー」

「ひあうっ!」

 一秒の躊躇いすらなく、ウータの両手がステラの胸を掴む。

「うう……」

「おお、柔らかい柔らかい」

「あうう……」

「ゼリーとは言わないけど、グミみたいだね。舐めてみたら甘かったりして」

「はううう……あふううう……」

「ぷよぷよ、ぽよぽよ」

「はふう~~~~~~~~~~~~!」

「わっ」

 許可されたようにステラの胸を揉みまくっていると、急にステラが脱力してウータに向かって倒れこんでくる。
 裸のステラを抱きとめたウータであったが……ふと気がついて、横を見る。

「あ、追い焚きやりっぱなしだった」

 いつの間にか、お湯がチンチンに熱くなっていた。

「はう~……もうらめえ……」

「わあ、大変だあ。外に出ないとー」

 ウータは慌てて全裸の少女を抱きかかえて浴室から出ていくのであった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

嫌われ婚約者は恋心を捨て去りたい

マチバリ
恋愛
 アルリナは婚約者であるシュルトへの恋心を諦める決意をした。元より子爵家と伯爵家というつり合いの取れぬ婚約だった。いつまでも自分を嫌い冷たい態度しかとらぬシュルトにアルリナはもう限界だと感じ「もうやめる」と婚約破棄を告げると、何故か強引に彼女の純潔が散らされることに‥

【完結】『それ』って愛なのかしら?

月白ヤトヒコ
恋愛
「質問なのですが、お二人の言う『それ』って愛なのかしら?」  わたくしは、目の前で肩を寄せ合って寄り添う二人へと質問をする。 「な、なにを……そ、そんなことあなたに言われる筋合いは無い!」 「きっと彼女は、あなたに愛されなかった理由を聞きたいんですよ。最後ですから、答えてあげましょうよ」 「そ、そうなのか?」 「もちろんです! わたし達は愛し合っているから、こうなったんです!」  と、わたくしの目の前で宣うお花畑バカップル。  わたくしと彼との『婚約の約束』は、一応は政略でした。  わたくしより一つ年下の彼とは政略ではあれども……互いに恋情は持てなくても、穏やかな家庭を築いて行ければいい。そんな風に思っていたことも……あったがなっ!? 「申し訳ないが、あなたとの婚約を破棄したい」 「頼むっ、俺は彼女のことを愛してしまったんだ!」 「これが政略だというのは判っている! けど、俺は彼女という存在を知って、彼女に愛され、あなたとの愛情の無い結婚生活を送ることなんてもう考えられないんだ!」 「それに、彼女のお腹には俺の子がいる。だから、婚約を破棄してほしいんだ。頼む!」 「ご、ごめんなさい! わたしが彼を愛してしまったから!」  なんて茶番を繰り広げる憐れなバカップルに、わたくしは少しばかり現実を見せてあげることにした。 ※バカップル共に、冷や水どころかブリザードな現実を突き付けて、正論でぶん殴るスタイル。 ※一部、若年女性の妊娠出産についてのセンシティブな内容が含まれます。

【本編完結】異世界再建に召喚されたはずなのにいつのまにか溺愛ルートに入りそうです⁉︎

sutera
恋愛
仕事に疲れたボロボロアラサーOLの悠里。 遠くへ行きたい…ふと、現実逃避を口にしてみたら 自分の世界を建て直す人間を探していたという女神に スカウトされて異世界召喚に応じる。 その結果、なぜか10歳の少女姿にされた上に 第二王子や護衛騎士、魔導士団長など周囲の人達に かまい倒されながら癒し子任務をする話。 時々ほんのり色っぽい要素が入るのを目指してます。 初投稿、ゆるふわファンタジー設定で気のむくまま更新。 2023年8月、本編完結しました!以降はゆるゆると番外編を更新していきますのでよろしくお願いします。

婚約破棄されまして・裏

竹本 芳生
恋愛
婚約破棄されまして(笑)の主人公以外の視点での話。 主人公の見えない所での話になりますよ。多分。 基本的には本編に絡む、過去の話や裏側等を書いていこうと思ってます。 後は……後はノリで、ポロッと何か裏話とか何か書いちゃうかも( ´艸`)

虐げられた黒髪令嬢は国を滅ぼすことに決めましたとさ

くわっと
恋愛
黒く長い髪が特徴のフォルテシア=マーテルロ。 彼女は今日も兄妹・父母に虐げられています。 それは時に暴力で、 時に言葉で、 時にーー その世界には一般的ではない『黒い髪』を理由に彼女は迫害され続ける。 黒髪を除けば、可愛らしい外見、勤勉な性格、良家の血筋と、本来は逆の立場にいたはずの令嬢。 だけれど、彼女の髪は黒かった。 常闇のように、 悪魔のように、 魔女のように。 これは、ひとりの少女の物語。 革命と反逆と恋心のお話。 ーー R2 0517完結 今までありがとうございました。

寵妃にすべてを奪われ下賜された先は毒薔薇の貴公子でしたが、何故か愛されてしまいました!

ユウ
恋愛
エリーゼは、王妃になる予定だった。 故郷を失い後ろ盾を失くし代わりに王妃として選ばれたのは後から妃候補となった侯爵令嬢だった。 聖女の資格を持ち国に貢献した暁に正妃となりエリーゼは側妃となったが夜の渡りもなく周りから冷遇される日々を送っていた。 日陰の日々を送る中、婚約者であり唯一の理解者にも忘れされる中。 長らく魔物の侵略を受けていた東の大陸を取り戻したことでとある騎士に妃を下賜することとなったのだが、選ばれたのはエリーゼだった。 下賜される相手は冷たく人をよせつけず、猛毒を持つ薔薇の貴公子と呼ばれる男だった。 用済みになったエリーゼは殺されるのかと思ったが… 「私は貴女以外に妻を持つ気はない」 愛されることはないと思っていたのに何故か甘い言葉に甘い笑顔を向けられてしまう。 その頃、すべてを手に入れた側妃から正妃となった聖女に不幸が訪れるのだった。

あなたが幸せになれるなら婚約破棄を受け入れます

神村結美
恋愛
貴族の子息令嬢が通うエスポワール学園の入学式。 アイリス・コルベール公爵令嬢は、前世の記憶を思い出した。 そして、前世で大好きだった乙女ゲーム『マ・シェリ〜運命の出逢い〜』に登場する悪役令嬢に転生している事に気付く。 エスポワール学園の生徒会長であり、ヴィクトール国第一王子であるジェラルド・アルベール・ヴィクトールはアイリスの婚約者であり、『マ・シェリ』でのメイン攻略対象。 ゲームのシナリオでは、一年後、ジェラルドが卒業する日の夜会にて、婚約破棄を言い渡され、ジェラルドが心惹かれたヒロインであるアンナ・バジュー男爵令嬢を虐めた罪で国外追放されるーーそんな未来は嫌だっ! でも、愛するジェラルド様の幸せのためなら……

[完結]病弱を言い訳に使う妹

みちこ
恋愛
病弱を言い訳にしてワガママ放題な妹にもう我慢出来ません 今日こそはざまぁしてみせます

処理中です...