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52.ベチョベチョだよ
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「ブモホオオオオオオオオオオオッ!」
ウータを丸吞みにした巨大山椒魚が大きく鳴いて、ペロリと舌を出した。
怪物は一匹ではない。
大通りのあちこちにいる。ステラの見える範囲内には五体。町を破壊してマーマン達を喰っている。
「う、ウータさんが食べられちゃった……」
ステラが顔を引きつらせる。
ウータのことだから大丈夫だと信じたいが……それでも、知り合いが怪物に呑まれる場面を目撃することになろうとは。
「ブモホオオオオオオオオオオオッ!」
「う……」
人々が逃げまどう中、立ちつくしているステラに巨大山椒魚が気がついた。
のっしのっしと、短くて太い脚で歩いてくる。
「あ……」
逃げなくては……そう思うが、咄嗟のことで身体が動かなかった。
「ブモホオオオオオオオオオオオッ!」
(いけない……食べられちゃう……!)
死を覚悟するステラであったが、直後、巨大山椒魚の身体に無数の槍が突き刺さった。
「ブギャアアアアアアアアアアアッ!?」
「そこの貴女! 逃げなさい!」
「へ……?」
レンガ造りの建物の上から見知らぬ女性が叫んでくる。
水色の肌をしたマーマンの女性。ビキニのような大胆な服を着ており、碧海のような色合いの髪を布で乱暴にまとめていた。
「撃ちなさい! これ以上、奴らに町を好き勝手させるな!」
「「「「「オオッ!」」」」」
建物の上に次々とマーマンの戦士が現れる。
武骨な筋肉をさらした海の男達が銛や槍を投げて、巨大山椒魚を攻撃した。
「ブギャアアアアアアアアアアアッ!」
巨大山椒魚が苦悶の声を上げながら、苦しそうに身体をよじる。
ステラはその隙をついて窮地から逃れた。
「よし、効いている! みんな、そのままやっつけて……!」
「ギイイイイギャアアアアアアアアアアアアアアアアッ!?」
「えっ……!?」
マーマンの女性が追撃を仕掛けようとするが、巨大山椒魚の一体が顔を上に向けて炎を吐いた。
空に向かって巨大な火柱が上がる。
「ま、まさか……シーリザードが炎を吐くなんて……もしかして、変異種!?」
愕然とする女性であったが……直後、炎を吐いた巨大山椒魚がプスプスと煙を口から噴きながら倒れた。
大通りに横たわり、そのまま動かなくなる。
「え、えっと……いったい何が……?」
「あー……ベトベトだよお。勘弁して欲しいなあ」
「は……?」
倒れた巨大山椒魚の口がもごもごと動いて、一人の少年が這い出してきた。
言うまでもないが……先ほど、呑み込まれたはずのウータである。
ウータは全身を唾液でベトベトにしつつ、自力で外まで脱出してきた。
「うーん……やっぱり、他の神様の権能は使いこなせないなあ。全然、火力調整が上手くいかないや。まともなパワーアップといえば、身体の強度が上がったことくらいかな?」
「ブモホオオオオオオオオオオオッ!」
「ちょっと貴方! 後ろ後ろ!」
立ち上がったウータに別に巨大山椒魚が襲いかかる。
無防備なウータの身体がまたしても呑み込まれそうになるが……ウータが掌をかざすと、巨体が一瞬で塵になった。
「やっぱり、僕はこれが一番楽だね。うん」
「ウータさん!」
「あ、ステラ。無事だったんだね」
ステラがウータに駆け寄った。
胃液やら唾液やらで全身グショグショになり、服が溶けて半裸になったウータに心配そうに声をかける。
「怪我は……なさそうですね。今さらですけど、どうして無事なんですか?」
「いやー、無事じゃないよー。ベトベトで気持ちが悪いし、すごく臭いよ?」
「そんなお風呂に入って済ませられるような状況ではなかったと思いますけど……」
「ブギャアアアアアアアアアアアッ!」
二人がそんなふうに話しているうちに巨大山椒魚が倒されていき、全てが地面に倒れ伏した。
五匹いた怪物のうち二匹を倒したのはウータだが、残りは屋根の上から攻撃していたマーマンの戦士の仕事である。
「君達、大丈夫かい!?」
屋根から飛び降りて、戦士達の指揮を執っていた女性が声をかけてくる。
「シーリザードに食べられていたようだが……魔法を使って内側から攻撃したんだね。無茶なことをして……」
「あ、ウータさん……こっちの人だったら大丈夫だと思います。丈夫な人ですから」
「そういうお姉さんは誰かな?」
声をかけてきた女性に訊ねると、彼女は安堵したように微笑んで名乗ってくる。
「私の名前はグラス・アクエリア。自警団のリーダーで、この町の領主の娘だよ」
マーマンの女性……グラスは穏やかに頬を緩めて、「よろしく」と笑いかけてきたのであった。
ウータを丸吞みにした巨大山椒魚が大きく鳴いて、ペロリと舌を出した。
怪物は一匹ではない。
大通りのあちこちにいる。ステラの見える範囲内には五体。町を破壊してマーマン達を喰っている。
「う、ウータさんが食べられちゃった……」
ステラが顔を引きつらせる。
ウータのことだから大丈夫だと信じたいが……それでも、知り合いが怪物に呑まれる場面を目撃することになろうとは。
「ブモホオオオオオオオオオオオッ!」
「う……」
人々が逃げまどう中、立ちつくしているステラに巨大山椒魚が気がついた。
のっしのっしと、短くて太い脚で歩いてくる。
「あ……」
逃げなくては……そう思うが、咄嗟のことで身体が動かなかった。
「ブモホオオオオオオオオオオオッ!」
(いけない……食べられちゃう……!)
死を覚悟するステラであったが、直後、巨大山椒魚の身体に無数の槍が突き刺さった。
「ブギャアアアアアアアアアアアッ!?」
「そこの貴女! 逃げなさい!」
「へ……?」
レンガ造りの建物の上から見知らぬ女性が叫んでくる。
水色の肌をしたマーマンの女性。ビキニのような大胆な服を着ており、碧海のような色合いの髪を布で乱暴にまとめていた。
「撃ちなさい! これ以上、奴らに町を好き勝手させるな!」
「「「「「オオッ!」」」」」
建物の上に次々とマーマンの戦士が現れる。
武骨な筋肉をさらした海の男達が銛や槍を投げて、巨大山椒魚を攻撃した。
「ブギャアアアアアアアアアアアッ!」
巨大山椒魚が苦悶の声を上げながら、苦しそうに身体をよじる。
ステラはその隙をついて窮地から逃れた。
「よし、効いている! みんな、そのままやっつけて……!」
「ギイイイイギャアアアアアアアアアアアアアアアアッ!?」
「えっ……!?」
マーマンの女性が追撃を仕掛けようとするが、巨大山椒魚の一体が顔を上に向けて炎を吐いた。
空に向かって巨大な火柱が上がる。
「ま、まさか……シーリザードが炎を吐くなんて……もしかして、変異種!?」
愕然とする女性であったが……直後、炎を吐いた巨大山椒魚がプスプスと煙を口から噴きながら倒れた。
大通りに横たわり、そのまま動かなくなる。
「え、えっと……いったい何が……?」
「あー……ベトベトだよお。勘弁して欲しいなあ」
「は……?」
倒れた巨大山椒魚の口がもごもごと動いて、一人の少年が這い出してきた。
言うまでもないが……先ほど、呑み込まれたはずのウータである。
ウータは全身を唾液でベトベトにしつつ、自力で外まで脱出してきた。
「うーん……やっぱり、他の神様の権能は使いこなせないなあ。全然、火力調整が上手くいかないや。まともなパワーアップといえば、身体の強度が上がったことくらいかな?」
「ブモホオオオオオオオオオオオッ!」
「ちょっと貴方! 後ろ後ろ!」
立ち上がったウータに別に巨大山椒魚が襲いかかる。
無防備なウータの身体がまたしても呑み込まれそうになるが……ウータが掌をかざすと、巨体が一瞬で塵になった。
「やっぱり、僕はこれが一番楽だね。うん」
「ウータさん!」
「あ、ステラ。無事だったんだね」
ステラがウータに駆け寄った。
胃液やら唾液やらで全身グショグショになり、服が溶けて半裸になったウータに心配そうに声をかける。
「怪我は……なさそうですね。今さらですけど、どうして無事なんですか?」
「いやー、無事じゃないよー。ベトベトで気持ちが悪いし、すごく臭いよ?」
「そんなお風呂に入って済ませられるような状況ではなかったと思いますけど……」
「ブギャアアアアアアアアアアアッ!」
二人がそんなふうに話しているうちに巨大山椒魚が倒されていき、全てが地面に倒れ伏した。
五匹いた怪物のうち二匹を倒したのはウータだが、残りは屋根の上から攻撃していたマーマンの戦士の仕事である。
「君達、大丈夫かい!?」
屋根から飛び降りて、戦士達の指揮を執っていた女性が声をかけてくる。
「シーリザードに食べられていたようだが……魔法を使って内側から攻撃したんだね。無茶なことをして……」
「あ、ウータさん……こっちの人だったら大丈夫だと思います。丈夫な人ですから」
「そういうお姉さんは誰かな?」
声をかけてきた女性に訊ねると、彼女は安堵したように微笑んで名乗ってくる。
「私の名前はグラス・アクエリア。自警団のリーダーで、この町の領主の娘だよ」
マーマンの女性……グラスは穏やかに頬を緩めて、「よろしく」と笑いかけてきたのであった。
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