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32.さすがに食欲を無くすよ
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サッカーボールほどの大きさの岩が突如として転がってきて、ステラの頭部に命中する。
頭蓋骨が砕け、脳漿と血が飛び散って岩肌を汚す。
頭を無くしたステラの身体がコロリと倒れて、そのまま岩山を転がり落ちていく。
「ええ? 何だよ、ごはん中にっ」
食事の最中にとんでもないスプラッターを見せられてしまった。
さすがのウータも、知り合いの頭が砕けるのを目にすると食欲が失せる。
「うー、もうちょっと味わって食べたかったんだけど、仕方がないなあ」
ウータは慌てて手に持っていたサンドイッチを口に詰め込んだ。
嫌なものを見たせいで味はしないが、食べ物を粗末にしないようにおばあちゃんに言われているのだ。
食事を終えてから転移を発動させる。岩山の下の方に移動した。
「よいしょっと」
転がり落ちてきたステラの身体をキャッチする。
砕け散った頭に手を添えて力を使うと、まるで逆再生したかのように脳漿と血が戻っていき、破壊された頭部が修復される。
「あれ? 私、何を……」
「おかえりー。危なかったね」
「へ……?」
ステラがウータに抱きしめられながら、首を傾げる。
自分が一度死んで、生き返ったことに気がついていないようだ。
「う、ウータさん!? どうして私を抱きしめて……!?」
「危ないなあ。岩山ってこういうことがあるんだね……って、アレは何かな?」
「へ……?」
ウータが上方を見つめている。
釣られてステラが見上げると、数十メートル上に黒い人型の生き物がいた。
「キキキッ!」
「ギャンッ! ギャンッ!」
そこには二匹の奇怪な生き物がいた。
黒い体毛を伸ばしてこちらを指差しているのは、チンパンジーほどの大きさの猿だった。
普通の猿と違うのは頭部に山羊のような角が生えており、背中に翼が生えていること。
「あ、あれがデーモンエイプです……!」
「ああ、アレか……もしかして、あの猿が岩を落としてきたのかな?」
「キャキャキャッ!」
ウータの疑問に答えるかのように、黒い猿……デーモンエイプがその場でピョンピョンと飛び跳ねる。
すると、デーモンエイプの足元の岩場が崩れて、岩石が二人めがけて転がってきた。
「キャアッ!」
「……迷惑な猿だなあ。当たったら痛いじゃ済まないよー」
ウータがステラを抱きしめたまま転移する。
デーモンエイプの真後ろに現れて、一匹に触れた。
「おしおきどんっ」
「キ……」
デーモンエイプの一匹が塵になって、岩山に散乱した。
「キャキャッ!?」
驚いたもう一匹が慌てた様子で翼をパタパタと動かし、岩山を跳ねて逃げていく。
「あ、しまった。いつもの癖で塵にしちゃった」
素材採集のためにナイフで倒す予定だったのだが、ついついやってしまった。
ウータはコツンと自分の頭を指で叩く。
「ダメだなあ、僕ってばうっかりさんだよ。こういうところが幼馴染のみんなに怒られるんだよねー。えーと、ナイフってどこにしまったっけ?」
「こ、こっちです、ウータさん」
ステラがウータの腕の中から出て、荷物の中のナイフを取り出す。
しかし、すでに残っていたデーモンエイプは見えない場所まで逃げてしまっていた。
「あーあ、また探さなくっちゃね」
「まあ、どうせ一匹分の素材では足りませんから。あの猿が逃げていった方向に巣があると思いますから、追いかけましょう」
「グッドアイデアだね。それにしても……いくら猿だからって、どうしてこの岩山をあんなに素早く動けるのかな?」
「デーモンエイプの背中に羽がありましたよね? 彼らは空を飛ぶことはできないんですけど、あの羽によって体重を軽減させて身軽に跳ね回ることができるんです」
「へえ、そうなんだ。道理で素早いわけだよ」
ウータが感心したように頷いて、ステラに手を差し出した。
「それじゃあ、追いかけるよ。ちょっと急いでいくから掴まっていてね」
「…………はい」
ステラは少しだけ迷ってから、ウータが差し出した手を掴んだ。
ウータとは一緒に入浴して同衾までしたが、手を握るのは初めてかもしれない。
「それじゃ……レッツゴー!」
「キャアッ!」
しかし、恥じ入っている暇はなかった。
ステラの手を掴んだまま、ウータがバッタのように飛び跳ねて逃亡した猿を追いかける。
その速度、身軽さは先ほどのデーモンエイプにも劣ってはいなかった。
「ひゃあああああああああああっ!」
岩山を飛び回る恐怖から涙目になって、ステラはされるがままウータに引っ張られていくのであった。
頭蓋骨が砕け、脳漿と血が飛び散って岩肌を汚す。
頭を無くしたステラの身体がコロリと倒れて、そのまま岩山を転がり落ちていく。
「ええ? 何だよ、ごはん中にっ」
食事の最中にとんでもないスプラッターを見せられてしまった。
さすがのウータも、知り合いの頭が砕けるのを目にすると食欲が失せる。
「うー、もうちょっと味わって食べたかったんだけど、仕方がないなあ」
ウータは慌てて手に持っていたサンドイッチを口に詰め込んだ。
嫌なものを見たせいで味はしないが、食べ物を粗末にしないようにおばあちゃんに言われているのだ。
食事を終えてから転移を発動させる。岩山の下の方に移動した。
「よいしょっと」
転がり落ちてきたステラの身体をキャッチする。
砕け散った頭に手を添えて力を使うと、まるで逆再生したかのように脳漿と血が戻っていき、破壊された頭部が修復される。
「あれ? 私、何を……」
「おかえりー。危なかったね」
「へ……?」
ステラがウータに抱きしめられながら、首を傾げる。
自分が一度死んで、生き返ったことに気がついていないようだ。
「う、ウータさん!? どうして私を抱きしめて……!?」
「危ないなあ。岩山ってこういうことがあるんだね……って、アレは何かな?」
「へ……?」
ウータが上方を見つめている。
釣られてステラが見上げると、数十メートル上に黒い人型の生き物がいた。
「キキキッ!」
「ギャンッ! ギャンッ!」
そこには二匹の奇怪な生き物がいた。
黒い体毛を伸ばしてこちらを指差しているのは、チンパンジーほどの大きさの猿だった。
普通の猿と違うのは頭部に山羊のような角が生えており、背中に翼が生えていること。
「あ、あれがデーモンエイプです……!」
「ああ、アレか……もしかして、あの猿が岩を落としてきたのかな?」
「キャキャキャッ!」
ウータの疑問に答えるかのように、黒い猿……デーモンエイプがその場でピョンピョンと飛び跳ねる。
すると、デーモンエイプの足元の岩場が崩れて、岩石が二人めがけて転がってきた。
「キャアッ!」
「……迷惑な猿だなあ。当たったら痛いじゃ済まないよー」
ウータがステラを抱きしめたまま転移する。
デーモンエイプの真後ろに現れて、一匹に触れた。
「おしおきどんっ」
「キ……」
デーモンエイプの一匹が塵になって、岩山に散乱した。
「キャキャッ!?」
驚いたもう一匹が慌てた様子で翼をパタパタと動かし、岩山を跳ねて逃げていく。
「あ、しまった。いつもの癖で塵にしちゃった」
素材採集のためにナイフで倒す予定だったのだが、ついついやってしまった。
ウータはコツンと自分の頭を指で叩く。
「ダメだなあ、僕ってばうっかりさんだよ。こういうところが幼馴染のみんなに怒られるんだよねー。えーと、ナイフってどこにしまったっけ?」
「こ、こっちです、ウータさん」
ステラがウータの腕の中から出て、荷物の中のナイフを取り出す。
しかし、すでに残っていたデーモンエイプは見えない場所まで逃げてしまっていた。
「あーあ、また探さなくっちゃね」
「まあ、どうせ一匹分の素材では足りませんから。あの猿が逃げていった方向に巣があると思いますから、追いかけましょう」
「グッドアイデアだね。それにしても……いくら猿だからって、どうしてこの岩山をあんなに素早く動けるのかな?」
「デーモンエイプの背中に羽がありましたよね? 彼らは空を飛ぶことはできないんですけど、あの羽によって体重を軽減させて身軽に跳ね回ることができるんです」
「へえ、そうなんだ。道理で素早いわけだよ」
ウータが感心したように頷いて、ステラに手を差し出した。
「それじゃあ、追いかけるよ。ちょっと急いでいくから掴まっていてね」
「…………はい」
ステラは少しだけ迷ってから、ウータが差し出した手を掴んだ。
ウータとは一緒に入浴して同衾までしたが、手を握るのは初めてかもしれない。
「それじゃ……レッツゴー!」
「キャアッ!」
しかし、恥じ入っている暇はなかった。
ステラの手を掴んだまま、ウータがバッタのように飛び跳ねて逃亡した猿を追いかける。
その速度、身軽さは先ほどのデーモンエイプにも劣ってはいなかった。
「ひゃあああああああああああっ!」
岩山を飛び回る恐怖から涙目になって、ステラはされるがままウータに引っ張られていくのであった。
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