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たった一つの冴えた解答

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Time Leap???

 それから、俺は何度となくタイムリープを繰り返した。

 五回目は失敗だった。
 誰も選ばず、必死になって春香に自殺しないように説いたのだが……結局、十年後に自殺してしまった。
 六回目、七回目、八回目……
 命の尊さや世界平和について説き、彼女達を説得したのだが……誰かと結ばれたら、別の誰かが世界を滅ぼす。

「いったい、どうすれば世界を救うことができるんだ……?」

 いや、厳密に言うのであれば……世界を救う方法はわかっている。
 春香を見捨てればいいのだ。
 四人のうち誰も選ぶことをせず、春香だけに自殺してもらえば世界は救われる。

「……わかってる。それが正解だ」

 たった一つの冴えた方法。
 もしもそれがあるとしたら……それこそがその方法だ。
 たった一人が犠牲になるだけで世界が救われる。

「……やろう」

 俺は犠牲を出すことを決めた。
 無傷で先には進めない。
 どれだけ傷つこうとも、世界を存続させなくてはいけない。

「いくか……」

 俺は缶ビールを開けて、最後のタイムリープを行った。


     〇     〇     〇


Time Leap1026

「俺と付き合ってくれ! 四人、全員!」

 俺は服を脱ぎ捨てて、パンツ一丁になって土下座した。

 犠牲を出すとは言ったが……春香を犠牲にするつもりはない。
 血を流すのは俺。犠牲になるのは俺一人だ。

「信也……」

「信也さん?」

「信也君……」

「シンヤ……」

 パンツ一丁の男に土下座をされて、四人が唖然とする。

 これこそが、俺が思いついた冴えたやり方。
 全身全霊、全力で四人に嫌われる。
 コイツを好きになる価値はない。
 こんな馬鹿のために死ぬのも、世界を滅ぼすのもくだらない。
 そんなふうに四人に思わせることによって、春香の自殺と世界滅亡を阻止するのだ。

「誰か一人を選ぶなんて俺には無理! 全員まとめてセックスさせてくれ!」

「「「「…………」」」」

 極めつけに、このセリフ。
 こんな変態に付き合うのは御免だろう。
 四人はすぐに失望して、呆れて去っていくはず。

「まあ……しょうがないわよね」

「へ……?」

 しかし、彼女達はいなくならなかった。
 呆れた様子で見下ろしてくるが……不思議なことに、思っていたほどの軽蔑は感じない。

「付き合ってあげるわ」

「私も大丈夫です……」

「……信也君ですからね。皆さんと一緒ということなら」

「みんなで東京に行って同居するとかどう?」

 まさかの展開。
 四人がハーレムという不実な関係を了承してくれた。

「えっと……マジで?」

「信也が言ったんでしょうが……」

「とりあえず……ホテルに行くわよ。ここにいる全員で」

「はい、行きましょう」

 四人に引っ張られて、俺はホテルに連れ込まれた。

 待てど暮らせど、未来に時間は飛ばされない。
 どうやら……タイムリープは終了したようである。
 その後、四人と同時に交際したことで色々と面倒事に巻き込まれることになる。
 しかし……春香はもちろん、他のメンバーも自殺をすることはなく、世界を滅亡させることもなかった。

「どうして、こんなことに……?」

 四人の妻と子供達に囲まれて、俺はしきりに首をひねるのであった。

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