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精霊暴走編
第3話 精霊言語は精霊歌?
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まだ夜が明けきらない朝方。
疲れきっていた私はグッスリ眠っていた。
そんな親子の寝室に誰かが近寄ってくる。
「………い」
「…い!……きろ!」
「おい!!起きろ!!」
「ふぇ?」
目を擦り寝ぼけながらうっすらと目を開けると、 目の前に誰かが少し焦ったような顔をしてこちらを見ていた。
(誰だっけ?この人?)
もう一度深い眠りに付こうと目を閉じると。
「いい加減起きろ!!」
怒られた。
今度こそ大きく伸びをし、体を起こすと寝ぼけながらその人の顔を見る。
「……ルゥ、くん?」
まだ寝ぼけながらジィ~と見ると、フサフサの耳がピクピク動いていた。
思わず手を伸ばし首に抱きついて、頬でフサフサの耳をスリスリする。
(はぅあ~ふわふわぁ気持ちぃ~幸せぇ)
「なっなな何してるんだお前は!!」
「すりすりぃふわふわぁ」
「寝ぼけてるのか!?起きろ!」
無理矢理ベリッ!と剥がされ軽く頭を叩かれた。
「いった~い!あれ?ルゥくん?何してるの?ってか夜中に女性の寝室に入るのどうかと思うわよ?」
「なっ!お前は、あ~もういい!」
ルゥくんは溜め息をつきガリガリと頭をかいている。
暗くて良く見えないが顔が赤い気がする。
(あれ?私何かした?)
「――何ともないのか?」
「へっ?」
良く分からず首を傾げた。
よく見るとルゥくんの姿は、出会った時のようにローブを羽織っている。
家の中でそれは良くないんじゃと思ったが、彼は小刻みに震えている。
「どうしたの?そんなに震えて?」
「お前は大丈夫なのか?今寝たら死ぬ寒さだぞ?」
「そうなの?それで起こしてくれたんだ、ありがとう!でも大丈夫!私達の回りは精霊があったかくしてくれてるから」
「そうなのか?」
「ほら!」
そう言って私はルゥくんの頬に触れた。
スッゴク冷たかった!
「冷たッ!!うわ!大丈夫なの?」
今度は両手で挟むように頬に触れた。
ちょっとイタズラ心が芽生えてくる。
そのままグリグリ、ぶにゅっと顔を潰す。
「にゃにをひているんだ…」
「アハハ!!ちょっと遊んだだけ!」
ルゥくんはムッとした顔で、私の首筋に手をいれた。
「ひゃあ!冷たっ!冷たい!!ごめんなさい!!もうしません!」
(たぶん)
小さな声で言っといた。
「まったく話ができないだろ!!」
「ごめん!そっそれでどうしたの?」
「もっと早くその言葉が聞きたかった…」
取り合えず笑って誤魔化した。
「外が吹雪だ。すごい勢いで雪が積もっている。このままだとまた雪に埋もれるな」
ルゥくんの表情は険しく、スッゴク寒そうにガタガタ震えている。
「寒い?暖めてあげようか?」
そう言って両手を広げる。
「こんな時にふざけるな!」
「ごっごめん!だってルゥくんの反応がおもしろ……うん。ごめん…」
スッゴい睨まれた。
だって面白いし楽しい!あと獣人だからか可愛いく見えてしまう。
「でも半分は本気だよ!」
「まだ言うか!!」
「だから暖めてあげるって!」
「ほぅ~じゃあ暖めて貰おうか…」
そう言ってジリジリと近寄ると押し倒された。
「え…」
(ちっ違う!!そっちは冗談なの!!子供達寝てるから~!!!!)
「ちょっ!!冗談だって!!!!」
「…暖めてくれるんだろう?」
ギラリと光る赤い目が私を捕らえて離さない。
至近距離で見つめられ、彼の唇が近づいてくる。
(わぁーごめんなさーい!!)
「暖めるのは部屋!もしくは家の中全部!!」
必死にルゥくんの胸板を押し返しながら言った。
「えっ!?そうなのか?」
(そう!!だから離れろ~!)
「なんだ、悪かったな」
ルゥくんは私から離れると少し残念そうな顔をしていた。
(なんでガッカリしてんの?こんなおばさん押し倒してどうするのよ!)
子供二人産んでると色々たるんでくるので、ちょっとだけ悲しくなった。
誘惑するつもりなどないが、女としてどうなのだろう。
《あの…楽しそうな所申し訳ないのですが、私が居ること忘れないで下さいね》
(ギャァァー!!コイツいるの忘れてたー!!)
「はい…色々ごめんなさい…」
「精霊か?」
私が明後日の方向に頭を下げるので、おかしく思ったのだろう。
「あっうん、精霊のシツジよ」
「悪い、俺には精霊が見えない」
「へっ?そうなの?」
「ああ」
私はシツジを見上げた。
はっきりとその場にフワフワ飛んでいる。
《仕方ないですね~見えるのは花梨さまだけでいいんですが》
シツジは光り輝き、その姿を現した。
私にはその違いが分からない。
(ただ光っただけでしょ!)
「…驚いた!これが精霊か!!」
ルゥくんは震えながらシツジを見て感動している。
そう震えながら。
(あ、忘れてた)
「ごめん!寒いよね?すぐ暖かくするから!!」
《体でデスカ?》
「違うわ!!」
すかさず突っ込む優秀な執事。
(取り合えず部屋を暖かくしよう)
私は深呼吸すると精霊にお願いした。
すると何処からか温かな風が舞込み、部屋の空気を包んでいった。
「はあ、助かった。ありがとう」
「ううん。ごめんね気付かなくて」
ルゥくんは何故か困ったような顔で私の頭をぽんぽんっと撫でたのだった。
それから村長夫婦の事を思いだし、慌ててもう一度精霊達にお願いした。
老体にはこの寒さは辛いだろう。
ルゥくんでさえあんな状態だったのだから。
外はもう朝日が差している。
窓から見る外の風景は、明るくいい天気な青空なのに、雪が降り続いている。
(なんで?)
子供達を起こし、着替えを済ませて部屋を出ると、囲炉裏のある部屋に皆集まっていた。
「レーダ村長、アダンさん、おはようございます!」
「おはよう、カリンさん。杏ちゃん、苺ちゃんも」
「おはようお婆ちゃん!!」
「おあよ~!!」
「巫女様おはようございます!家を暖かくして下さり助かりました。朝から申し訳ないのですが…村の住人の家々も暖かくできるでしょうか?」
(あ、しまった!)
うっかりしていたで済まされない。
昨夜、ルゥくんが起こしに来てくれた時に気づくべきだった。
「ごめんなさい!精霊さん村の家々を暖かくしてあげて!」
無数の赤く小さな光が、私の回りをクルクルと飛んだ後家の外へと消えていった。
「謝ることなどないだろ?」
「そんなことない!あの時気づかなきゃいけなかったのよ」
「巫女様…そのお言葉だけで充分です」
(どうしよう、なんかしんみりさせちゃった)
「本当にカリンさんは精霊歌を歌えるのねぇ~!」
しんみりしてしまった雰囲気の中、アダンお婆ちゃんが明るい声をあげた。
「あぁ!いつ聞いても美しい歌だな」
ルゥくんも気を使ったのか、話題を変えようとしてくれたのか少し明るい声で言った。
レーダ村長は村に対する温情に感動して泣いている。
(困ったなぁ。…あれ?精霊歌って何?歌?私は普通に話してるだけなんだけど…)
「あっあの!!皆さんには歌に聞こえるのですか?」
「当たり前だろう、精霊歌なのだから」
そう言われても、私自身歌ってるつもりはこれっぽっちもない。
「カリンさん良く分かってないみたいねぇ」
「精霊言語じゃないんですか?」
「精霊言語よ。それの最終形態かしら?」
(なんですかそれ?変身でもするんですかね?)
アダンお婆ちゃんは、精霊言語についての説明をしてくれた。
それによると精霊言語は始め、文字通り言葉であり会話。
へんちくりんスマホのレベルで言えばLV1~5だろう。
この程度なら王国内にもそれなりにいる。
そもそも、生活に精霊が深く関わっているので、最低限の精霊言語は心得ているらしい。
ただし精霊の姿を見ることができるくらいの、レベルになる者が殆ど存在しない。
レベルが上がるほど、精霊言語は精霊が歌う精霊歌となり歌えるようになれば、精霊達に愛され、自分達と同じ存在としてどんな願いも叶えてくれるらしい。
(うん!最初にレベルMAXとかしたからだね!
それにしても、やっぱりへんちくりんスマホだね!あの説明で分かるか!!もっと詳しく説明しろー!!)
空中に浮かぶシツジを睨み付けると、シツジは目を泳がし、ふわりとルゥの後ろに隠れた。
「これからの事だが、王都に向かう」
「それはいいんだけど、この村はどうなるの?多分私が居なくなったら、みんな雪に埋もれて遠からず死ぬわよ」
「――だが仕方ないだろう。ここにずっと居るわけにはいかない。なるべく早く王都に着き、精霊の暴走を対策して――」
「それじゃ遅い!!!!」
私はルゥくんの言葉に叫んだ。
(なんでよ!それじゃあ見殺しにしろって言うの!?)
「なんで、私と一緒に村の人達を他の街まで避難するとか考えないのー!!」
「それには無理がある。全員を連れては守りきれない」
「え?」
「巫女様、外には魔物が出るのですよ。フェンネル様でも村の者全てを守りながら旅することは無理でしょう」
「そんな…」
それなら…精霊が惹き起こしているなら、私がお願いすればやめてくれるかもしれない。
「だったら私に言えばいいじゃない。私に頼めば何とかなるかもしれないじゃない!精霊が雪を降らせてるんでしょう?私が何とかするから!出発はそれからにして。お願いルゥくん!」
「はあ、お前は…。確かに、試してみる価値はあるか…。だが!お前の安全が最優先だからな!」
(人の事ばかり心配するんだな)
「ありがとう!!善は急げね!!」
私は外に飛び出した。
外は銀世界、昨夜消した雪はもう1メートルも積もっている。
村長の家の回りはちょっとした広場になっていて、目の前には噴水らしき物がある。今は雪と氷でその役割を果たしてはいない。
その噴水の上に立つと私は深呼吸した。
「よし!歌えばいいのね!!」
精霊歌の話を聞いてから、いっそのこと歌ってみようと思っていた。
精霊さ~ん雪を止めてくださ~いと願っていると頭の中に音楽が聴こえてくる。
私はその音楽に身を任せ自然と歌っていた。
いつの間にか沢山の人達が集まって来て、皆静かに歌に聞き入っている。
「…綺麗だな」
ポツリとルゥくんがこぼしたが私の耳には入ってはいなかった。
村長もアダンお婆ちゃんもルゥくんも村の住人皆、美しい歌声に聞き惚れているが、精霊と私との会話はヒドイものだったりする。
「精霊さ~ん!!雪を止めてくださいな~!!」
《だ~れ~私達を呼ぶの~》
フワリと冷たい空気に包まれて2人の精霊が現れた。
《私は水の眷族、雪の精霊!》
《私も水の眷族。氷の精霊》
「あっどうも、私はカリンです。所で、雪を降らすの止めて?凄く迷惑してるの」
《えぇ!!!!なんで!!楽しいじゃない!!なのに止めるなんてヤダ!!!!》
《うん、イヤ…》
「お願い!このままじゃ皆困ってるの」
《えぇ~だってぇ~思いっきり雪降らしたりしたいじゃない!!》
《うん、一杯降らすの…》
(なんだこの子供思考な精霊達は…)
「水の眷族って言ったよね?好き勝手やって、水の精霊の一番偉い人に怒られないの?」
《うッ!!だっ大丈夫だもん!!長はずっと居ないもん!!!!》
《うん、ずっと居ない…》
親の目を盗んで悪さする子供にしかみえなくなってきた。
相手が子供なら考えがある、仮にも私は二児の母。
(子供の対処なら何とかなるわ)
「でも、帰ってきたら怒られるよ。スッゴク!!」
一瞬怯む精霊達。
「だっ大丈夫だもん…」
小さな声でブツブツ言っている。
「お尻ペンペンされるかもね~お尻が真っ赤になって大変だよ~」
《……お尻ペンペンヤダ!!》
《私もぉ~》
「だからね!雪を止めよう!!」
《う~ん。怒られるのはイヤ…だから止めてもいいけど~》
《楽しくない…》
《だね~!》
(…子供か!!!!)
ちょっと頭が痛くなってきた…。
この子達にとって遊びみたいなものなのだろう。
(水の長お母さ~ん悪い子がいますよ~!てか、水の長ドコいったー!!!!)
居ないものは仕方がない。
「なら!!年に1回氷と雪のお祭りをするのはどぉ?」
《お祭り!?》
《お祭り!!どんなの?》
「氷で作った彫刻が沢山あって!!雪で作ったお家で美味しいお鍋食べて!!精霊に感謝し実りを祈るお祭りよ?さらに!!それを知った水の長はあなた達をスッゴク誉めてくれるわよ」
《ステキ…》
《誉められる!!》
「雪を止めてくれる?それで村の人達に姿を見せて、ちゃんと謝りなさい!」
《はーい!!》
《分かった!!》
氷と雪の精霊達は光り輝くと、集まっていた人達に姿を現して頭を下げた。
《迷惑かけてごめんなさい!!》
集まっていた村の人達は、驚いて唖然と精霊を見ている。
レーダ村長が前に出てきて頭を下げる精霊達を、しっかり見つめていた。
「暖かくしていただけますか?このままでは村人は飢えてしまいます」
《ごめんなさい!!私達は還ります!!でも、お祭りは約束してね!!》
《うん、お祭り絶対!!》
「お祭り?ですか?」
《その辺はカリンに聞いて!》
《うん、ヨロシク…じゃあ行く》
そう言うと精霊達は光りの粒子となって消えていった。
すると降り積もっていた雪も光りの粒子となりキラキラと消えていき、地面からは待っていましたと言わんばかりに植物が芽吹いていく。
辺りはあっという間に緑の絨毯に覆われ、氷っていた木々は新芽の淡い緑の葉を繁らせていく。
「うわ~綺麗!!」
誰かがそう言った。
溶けた噴水がその水を讃え吹き上げている。
キラキラと光る水しぶきを浴びながら私はその場から降りた。
「巫女様!!ありがとうございます!!」
(うん!良かったよね!!でもねいい加減、巫女様止めようか!巫女じゃないから!!)
「良かったですね村長、でも巫女じゃないで名前で呼んでいただけますか?」
「そっそれは…」
「聖母さま!!」
小さな男の子が寄ってきてそう言った。
この子は確か昨日の夜にふかし芋を食べすぎて喉を詰まらせていた子だ。
レーダ村長はその男の子の頭を撫でると、私に向き直り笑った。
「此れからは聖母様とお呼び致します」
(名前で呼んで?聖母様って何よー!)
村人全員、聖母様ー!!聖母様ー!!ありがとうございます!!!!っと讃え始め、歓声がわき起こった。
(やめてくれー!!これじゃあ変な宗教団体みたいじゃないかー!!)
私は顔を引きつらせていたが、村人の明るい笑顔に心の底から良かったと思った。
暖かく緑の増えた大地なら、畑でもそのうち実りがあるだろう。
(それまでは、サツマイモ無双で頑張って!一杯置いて行くから!)
私達は一旦村長宅に戻り、精霊と話した事をレーダ村長に詳しく説明した。
「ですから、冬の雪が積もる頃に冬の精霊祭をお願いします」
「どのような祭りにすれば?」
「う~ん。例えば…」
私は北海道の雪まつりを思い出していた。
氷の造形物、かまくらにそこで振る舞われるお鍋やおもちそれに冷た~いかき氷。
それらを楽しげに村長に話していると、胸にすきま風が吹いたように寂しくなった。
(ホームシック?早すぎでしょ!)
思っている以上に、この状況が不安なのかもしれない。
少しだけ苦笑してしまった。
「後は、村長が考えてくださいよ。この村の特産の物を出したりとか、音楽鳴らしたり、踊ったり?とか考えれば一杯出てくると思いますよ?」
「そうですな、村の者達と相談してみしょう」
そう言うレーダ村長はとても楽しそうだった。
村長との話も終わり、アダンお婆ちゃんの入れてくれた温かな紅茶を飲んで一息ついた。
(疲れた…できればそう頻繁に歌うべきじゃないかもしれない)
精霊歌と呼ばれる歌を歌った後、疲労感が半端なかった。
(体がだるい…だけどそれ以上に)
精神的に色々辛い。
私の傍で無邪気に笑う子供達の事を考えると、早く家に帰りたいと気が焦ってしまう。
「なぁ」
「へっ?なっ何?」
ぼお~とカップに揺れるお茶を眺めていると、ルゥくんが何とも言えない顔で横に座った。
「いや、悪い。突然話しかけて」
「別に良いけど?」
「その、ああいうのが好みなのか?」
「はい?」
何を聞かれたのか分からなかった。
「だから精霊のシツジだ!ああいうのが好みなのか?」
(質問の意味が分かりません)
ルゥくんは頭を掻きながら困った顔をしている。
(好み?好きってこと?)
ふざけたシツジの顔が浮かんだ。
何故か無性にイラッとした。
「全然まったく好みじゃない!」
「そうなのか?精霊は気に入った相手の好む姿をするんじゃないのか?」
(へぇそうなんだ)
しかしながらシツジの場合、元々こちらの精霊ではなく、それには当てはまらないと思う。
それにあれはシツジ自身が思い描いた姿だ。
「私はどっちらかと言うと可愛い男の子が好きかなぁ。まだ中性的な、顔立ちに幼さを残す12~4才くらいの男の子!」
「まだ子供だろ」
「可愛いよね~」
ショタっ毛のある私はガッチリした男!になってしまった人より、可愛い男の子にキュンキュンする。
もちろん観賞用です。
「まぁシツジは攻略対象なら1回は攻略するわね」
乙女ゲームならそれもありだろう。
ちょっとだけシツジが登場する乙女ゲームを想像してしまった。
「なんだ攻略って」
「気にしないで?私の世界のゲーム。遊びの話よ」
「なっ!お前は遊びで男を口説くのか!?」
「違うわよ!」
(私にそんな度胸があるわけない!)
「本当にか?あの精霊もか?」
「シツジなんかあり得ないから!」
《あの、私も花梨さまはゴメンです。私にも選ぶ権利ありますよ》
自分の事を言われて見ていられなかったのか、シツジはわざわざ他の人に見えるように姿を表した。
「失礼ね!シツジの何が良いのルゥくんは!」
「いや、シツジでは」
《カリン様、勘弁してください!私は男に興味はありません!》
「俺だってごめんだ!」
だんだん変な方向に脱線していっている。
面白いので、油を注いでみた。
「ん~シツジなら受けで行けるよ!」
想像してしまった、乙女なシツジを押し倒すルゥくん。
「ぷっ」
《カリン様!嫌です!なんで私が受けなんですか!》
「じゃあ、攻めてみたら?最後は受けになりそうだけど」
《そういう話ではありません!ルゥ!どんなに私が美しくともそういう目で見ないでください!》
「ふざけるな!誰がお前なんか!俺は…」
「俺は?」
ルゥくんが私をじっと見つめたと思ったらすぐにふいっと顔を逸らされた。
「なんでもない!」
(なんだったのだろう)
《ちょっ!その中途半端な物言いは私が好きだと言っているようなものじゃないですか!》
「違うと言っているだろ!」
(…あ、油そそぎすぎた?)
疲れきっていた私はグッスリ眠っていた。
そんな親子の寝室に誰かが近寄ってくる。
「………い」
「…い!……きろ!」
「おい!!起きろ!!」
「ふぇ?」
目を擦り寝ぼけながらうっすらと目を開けると、 目の前に誰かが少し焦ったような顔をしてこちらを見ていた。
(誰だっけ?この人?)
もう一度深い眠りに付こうと目を閉じると。
「いい加減起きろ!!」
怒られた。
今度こそ大きく伸びをし、体を起こすと寝ぼけながらその人の顔を見る。
「……ルゥ、くん?」
まだ寝ぼけながらジィ~と見ると、フサフサの耳がピクピク動いていた。
思わず手を伸ばし首に抱きついて、頬でフサフサの耳をスリスリする。
(はぅあ~ふわふわぁ気持ちぃ~幸せぇ)
「なっなな何してるんだお前は!!」
「すりすりぃふわふわぁ」
「寝ぼけてるのか!?起きろ!」
無理矢理ベリッ!と剥がされ軽く頭を叩かれた。
「いった~い!あれ?ルゥくん?何してるの?ってか夜中に女性の寝室に入るのどうかと思うわよ?」
「なっ!お前は、あ~もういい!」
ルゥくんは溜め息をつきガリガリと頭をかいている。
暗くて良く見えないが顔が赤い気がする。
(あれ?私何かした?)
「――何ともないのか?」
「へっ?」
良く分からず首を傾げた。
よく見るとルゥくんの姿は、出会った時のようにローブを羽織っている。
家の中でそれは良くないんじゃと思ったが、彼は小刻みに震えている。
「どうしたの?そんなに震えて?」
「お前は大丈夫なのか?今寝たら死ぬ寒さだぞ?」
「そうなの?それで起こしてくれたんだ、ありがとう!でも大丈夫!私達の回りは精霊があったかくしてくれてるから」
「そうなのか?」
「ほら!」
そう言って私はルゥくんの頬に触れた。
スッゴク冷たかった!
「冷たッ!!うわ!大丈夫なの?」
今度は両手で挟むように頬に触れた。
ちょっとイタズラ心が芽生えてくる。
そのままグリグリ、ぶにゅっと顔を潰す。
「にゃにをひているんだ…」
「アハハ!!ちょっと遊んだだけ!」
ルゥくんはムッとした顔で、私の首筋に手をいれた。
「ひゃあ!冷たっ!冷たい!!ごめんなさい!!もうしません!」
(たぶん)
小さな声で言っといた。
「まったく話ができないだろ!!」
「ごめん!そっそれでどうしたの?」
「もっと早くその言葉が聞きたかった…」
取り合えず笑って誤魔化した。
「外が吹雪だ。すごい勢いで雪が積もっている。このままだとまた雪に埋もれるな」
ルゥくんの表情は険しく、スッゴク寒そうにガタガタ震えている。
「寒い?暖めてあげようか?」
そう言って両手を広げる。
「こんな時にふざけるな!」
「ごっごめん!だってルゥくんの反応がおもしろ……うん。ごめん…」
スッゴい睨まれた。
だって面白いし楽しい!あと獣人だからか可愛いく見えてしまう。
「でも半分は本気だよ!」
「まだ言うか!!」
「だから暖めてあげるって!」
「ほぅ~じゃあ暖めて貰おうか…」
そう言ってジリジリと近寄ると押し倒された。
「え…」
(ちっ違う!!そっちは冗談なの!!子供達寝てるから~!!!!)
「ちょっ!!冗談だって!!!!」
「…暖めてくれるんだろう?」
ギラリと光る赤い目が私を捕らえて離さない。
至近距離で見つめられ、彼の唇が近づいてくる。
(わぁーごめんなさーい!!)
「暖めるのは部屋!もしくは家の中全部!!」
必死にルゥくんの胸板を押し返しながら言った。
「えっ!?そうなのか?」
(そう!!だから離れろ~!)
「なんだ、悪かったな」
ルゥくんは私から離れると少し残念そうな顔をしていた。
(なんでガッカリしてんの?こんなおばさん押し倒してどうするのよ!)
子供二人産んでると色々たるんでくるので、ちょっとだけ悲しくなった。
誘惑するつもりなどないが、女としてどうなのだろう。
《あの…楽しそうな所申し訳ないのですが、私が居ること忘れないで下さいね》
(ギャァァー!!コイツいるの忘れてたー!!)
「はい…色々ごめんなさい…」
「精霊か?」
私が明後日の方向に頭を下げるので、おかしく思ったのだろう。
「あっうん、精霊のシツジよ」
「悪い、俺には精霊が見えない」
「へっ?そうなの?」
「ああ」
私はシツジを見上げた。
はっきりとその場にフワフワ飛んでいる。
《仕方ないですね~見えるのは花梨さまだけでいいんですが》
シツジは光り輝き、その姿を現した。
私にはその違いが分からない。
(ただ光っただけでしょ!)
「…驚いた!これが精霊か!!」
ルゥくんは震えながらシツジを見て感動している。
そう震えながら。
(あ、忘れてた)
「ごめん!寒いよね?すぐ暖かくするから!!」
《体でデスカ?》
「違うわ!!」
すかさず突っ込む優秀な執事。
(取り合えず部屋を暖かくしよう)
私は深呼吸すると精霊にお願いした。
すると何処からか温かな風が舞込み、部屋の空気を包んでいった。
「はあ、助かった。ありがとう」
「ううん。ごめんね気付かなくて」
ルゥくんは何故か困ったような顔で私の頭をぽんぽんっと撫でたのだった。
それから村長夫婦の事を思いだし、慌ててもう一度精霊達にお願いした。
老体にはこの寒さは辛いだろう。
ルゥくんでさえあんな状態だったのだから。
外はもう朝日が差している。
窓から見る外の風景は、明るくいい天気な青空なのに、雪が降り続いている。
(なんで?)
子供達を起こし、着替えを済ませて部屋を出ると、囲炉裏のある部屋に皆集まっていた。
「レーダ村長、アダンさん、おはようございます!」
「おはよう、カリンさん。杏ちゃん、苺ちゃんも」
「おはようお婆ちゃん!!」
「おあよ~!!」
「巫女様おはようございます!家を暖かくして下さり助かりました。朝から申し訳ないのですが…村の住人の家々も暖かくできるでしょうか?」
(あ、しまった!)
うっかりしていたで済まされない。
昨夜、ルゥくんが起こしに来てくれた時に気づくべきだった。
「ごめんなさい!精霊さん村の家々を暖かくしてあげて!」
無数の赤く小さな光が、私の回りをクルクルと飛んだ後家の外へと消えていった。
「謝ることなどないだろ?」
「そんなことない!あの時気づかなきゃいけなかったのよ」
「巫女様…そのお言葉だけで充分です」
(どうしよう、なんかしんみりさせちゃった)
「本当にカリンさんは精霊歌を歌えるのねぇ~!」
しんみりしてしまった雰囲気の中、アダンお婆ちゃんが明るい声をあげた。
「あぁ!いつ聞いても美しい歌だな」
ルゥくんも気を使ったのか、話題を変えようとしてくれたのか少し明るい声で言った。
レーダ村長は村に対する温情に感動して泣いている。
(困ったなぁ。…あれ?精霊歌って何?歌?私は普通に話してるだけなんだけど…)
「あっあの!!皆さんには歌に聞こえるのですか?」
「当たり前だろう、精霊歌なのだから」
そう言われても、私自身歌ってるつもりはこれっぽっちもない。
「カリンさん良く分かってないみたいねぇ」
「精霊言語じゃないんですか?」
「精霊言語よ。それの最終形態かしら?」
(なんですかそれ?変身でもするんですかね?)
アダンお婆ちゃんは、精霊言語についての説明をしてくれた。
それによると精霊言語は始め、文字通り言葉であり会話。
へんちくりんスマホのレベルで言えばLV1~5だろう。
この程度なら王国内にもそれなりにいる。
そもそも、生活に精霊が深く関わっているので、最低限の精霊言語は心得ているらしい。
ただし精霊の姿を見ることができるくらいの、レベルになる者が殆ど存在しない。
レベルが上がるほど、精霊言語は精霊が歌う精霊歌となり歌えるようになれば、精霊達に愛され、自分達と同じ存在としてどんな願いも叶えてくれるらしい。
(うん!最初にレベルMAXとかしたからだね!
それにしても、やっぱりへんちくりんスマホだね!あの説明で分かるか!!もっと詳しく説明しろー!!)
空中に浮かぶシツジを睨み付けると、シツジは目を泳がし、ふわりとルゥの後ろに隠れた。
「これからの事だが、王都に向かう」
「それはいいんだけど、この村はどうなるの?多分私が居なくなったら、みんな雪に埋もれて遠からず死ぬわよ」
「――だが仕方ないだろう。ここにずっと居るわけにはいかない。なるべく早く王都に着き、精霊の暴走を対策して――」
「それじゃ遅い!!!!」
私はルゥくんの言葉に叫んだ。
(なんでよ!それじゃあ見殺しにしろって言うの!?)
「なんで、私と一緒に村の人達を他の街まで避難するとか考えないのー!!」
「それには無理がある。全員を連れては守りきれない」
「え?」
「巫女様、外には魔物が出るのですよ。フェンネル様でも村の者全てを守りながら旅することは無理でしょう」
「そんな…」
それなら…精霊が惹き起こしているなら、私がお願いすればやめてくれるかもしれない。
「だったら私に言えばいいじゃない。私に頼めば何とかなるかもしれないじゃない!精霊が雪を降らせてるんでしょう?私が何とかするから!出発はそれからにして。お願いルゥくん!」
「はあ、お前は…。確かに、試してみる価値はあるか…。だが!お前の安全が最優先だからな!」
(人の事ばかり心配するんだな)
「ありがとう!!善は急げね!!」
私は外に飛び出した。
外は銀世界、昨夜消した雪はもう1メートルも積もっている。
村長の家の回りはちょっとした広場になっていて、目の前には噴水らしき物がある。今は雪と氷でその役割を果たしてはいない。
その噴水の上に立つと私は深呼吸した。
「よし!歌えばいいのね!!」
精霊歌の話を聞いてから、いっそのこと歌ってみようと思っていた。
精霊さ~ん雪を止めてくださ~いと願っていると頭の中に音楽が聴こえてくる。
私はその音楽に身を任せ自然と歌っていた。
いつの間にか沢山の人達が集まって来て、皆静かに歌に聞き入っている。
「…綺麗だな」
ポツリとルゥくんがこぼしたが私の耳には入ってはいなかった。
村長もアダンお婆ちゃんもルゥくんも村の住人皆、美しい歌声に聞き惚れているが、精霊と私との会話はヒドイものだったりする。
「精霊さ~ん!!雪を止めてくださいな~!!」
《だ~れ~私達を呼ぶの~》
フワリと冷たい空気に包まれて2人の精霊が現れた。
《私は水の眷族、雪の精霊!》
《私も水の眷族。氷の精霊》
「あっどうも、私はカリンです。所で、雪を降らすの止めて?凄く迷惑してるの」
《えぇ!!!!なんで!!楽しいじゃない!!なのに止めるなんてヤダ!!!!》
《うん、イヤ…》
「お願い!このままじゃ皆困ってるの」
《えぇ~だってぇ~思いっきり雪降らしたりしたいじゃない!!》
《うん、一杯降らすの…》
(なんだこの子供思考な精霊達は…)
「水の眷族って言ったよね?好き勝手やって、水の精霊の一番偉い人に怒られないの?」
《うッ!!だっ大丈夫だもん!!長はずっと居ないもん!!!!》
《うん、ずっと居ない…》
親の目を盗んで悪さする子供にしかみえなくなってきた。
相手が子供なら考えがある、仮にも私は二児の母。
(子供の対処なら何とかなるわ)
「でも、帰ってきたら怒られるよ。スッゴク!!」
一瞬怯む精霊達。
「だっ大丈夫だもん…」
小さな声でブツブツ言っている。
「お尻ペンペンされるかもね~お尻が真っ赤になって大変だよ~」
《……お尻ペンペンヤダ!!》
《私もぉ~》
「だからね!雪を止めよう!!」
《う~ん。怒られるのはイヤ…だから止めてもいいけど~》
《楽しくない…》
《だね~!》
(…子供か!!!!)
ちょっと頭が痛くなってきた…。
この子達にとって遊びみたいなものなのだろう。
(水の長お母さ~ん悪い子がいますよ~!てか、水の長ドコいったー!!!!)
居ないものは仕方がない。
「なら!!年に1回氷と雪のお祭りをするのはどぉ?」
《お祭り!?》
《お祭り!!どんなの?》
「氷で作った彫刻が沢山あって!!雪で作ったお家で美味しいお鍋食べて!!精霊に感謝し実りを祈るお祭りよ?さらに!!それを知った水の長はあなた達をスッゴク誉めてくれるわよ」
《ステキ…》
《誉められる!!》
「雪を止めてくれる?それで村の人達に姿を見せて、ちゃんと謝りなさい!」
《はーい!!》
《分かった!!》
氷と雪の精霊達は光り輝くと、集まっていた人達に姿を現して頭を下げた。
《迷惑かけてごめんなさい!!》
集まっていた村の人達は、驚いて唖然と精霊を見ている。
レーダ村長が前に出てきて頭を下げる精霊達を、しっかり見つめていた。
「暖かくしていただけますか?このままでは村人は飢えてしまいます」
《ごめんなさい!!私達は還ります!!でも、お祭りは約束してね!!》
《うん、お祭り絶対!!》
「お祭り?ですか?」
《その辺はカリンに聞いて!》
《うん、ヨロシク…じゃあ行く》
そう言うと精霊達は光りの粒子となって消えていった。
すると降り積もっていた雪も光りの粒子となりキラキラと消えていき、地面からは待っていましたと言わんばかりに植物が芽吹いていく。
辺りはあっという間に緑の絨毯に覆われ、氷っていた木々は新芽の淡い緑の葉を繁らせていく。
「うわ~綺麗!!」
誰かがそう言った。
溶けた噴水がその水を讃え吹き上げている。
キラキラと光る水しぶきを浴びながら私はその場から降りた。
「巫女様!!ありがとうございます!!」
(うん!良かったよね!!でもねいい加減、巫女様止めようか!巫女じゃないから!!)
「良かったですね村長、でも巫女じゃないで名前で呼んでいただけますか?」
「そっそれは…」
「聖母さま!!」
小さな男の子が寄ってきてそう言った。
この子は確か昨日の夜にふかし芋を食べすぎて喉を詰まらせていた子だ。
レーダ村長はその男の子の頭を撫でると、私に向き直り笑った。
「此れからは聖母様とお呼び致します」
(名前で呼んで?聖母様って何よー!)
村人全員、聖母様ー!!聖母様ー!!ありがとうございます!!!!っと讃え始め、歓声がわき起こった。
(やめてくれー!!これじゃあ変な宗教団体みたいじゃないかー!!)
私は顔を引きつらせていたが、村人の明るい笑顔に心の底から良かったと思った。
暖かく緑の増えた大地なら、畑でもそのうち実りがあるだろう。
(それまでは、サツマイモ無双で頑張って!一杯置いて行くから!)
私達は一旦村長宅に戻り、精霊と話した事をレーダ村長に詳しく説明した。
「ですから、冬の雪が積もる頃に冬の精霊祭をお願いします」
「どのような祭りにすれば?」
「う~ん。例えば…」
私は北海道の雪まつりを思い出していた。
氷の造形物、かまくらにそこで振る舞われるお鍋やおもちそれに冷た~いかき氷。
それらを楽しげに村長に話していると、胸にすきま風が吹いたように寂しくなった。
(ホームシック?早すぎでしょ!)
思っている以上に、この状況が不安なのかもしれない。
少しだけ苦笑してしまった。
「後は、村長が考えてくださいよ。この村の特産の物を出したりとか、音楽鳴らしたり、踊ったり?とか考えれば一杯出てくると思いますよ?」
「そうですな、村の者達と相談してみしょう」
そう言うレーダ村長はとても楽しそうだった。
村長との話も終わり、アダンお婆ちゃんの入れてくれた温かな紅茶を飲んで一息ついた。
(疲れた…できればそう頻繁に歌うべきじゃないかもしれない)
精霊歌と呼ばれる歌を歌った後、疲労感が半端なかった。
(体がだるい…だけどそれ以上に)
精神的に色々辛い。
私の傍で無邪気に笑う子供達の事を考えると、早く家に帰りたいと気が焦ってしまう。
「なぁ」
「へっ?なっ何?」
ぼお~とカップに揺れるお茶を眺めていると、ルゥくんが何とも言えない顔で横に座った。
「いや、悪い。突然話しかけて」
「別に良いけど?」
「その、ああいうのが好みなのか?」
「はい?」
何を聞かれたのか分からなかった。
「だから精霊のシツジだ!ああいうのが好みなのか?」
(質問の意味が分かりません)
ルゥくんは頭を掻きながら困った顔をしている。
(好み?好きってこと?)
ふざけたシツジの顔が浮かんだ。
何故か無性にイラッとした。
「全然まったく好みじゃない!」
「そうなのか?精霊は気に入った相手の好む姿をするんじゃないのか?」
(へぇそうなんだ)
しかしながらシツジの場合、元々こちらの精霊ではなく、それには当てはまらないと思う。
それにあれはシツジ自身が思い描いた姿だ。
「私はどっちらかと言うと可愛い男の子が好きかなぁ。まだ中性的な、顔立ちに幼さを残す12~4才くらいの男の子!」
「まだ子供だろ」
「可愛いよね~」
ショタっ毛のある私はガッチリした男!になってしまった人より、可愛い男の子にキュンキュンする。
もちろん観賞用です。
「まぁシツジは攻略対象なら1回は攻略するわね」
乙女ゲームならそれもありだろう。
ちょっとだけシツジが登場する乙女ゲームを想像してしまった。
「なんだ攻略って」
「気にしないで?私の世界のゲーム。遊びの話よ」
「なっ!お前は遊びで男を口説くのか!?」
「違うわよ!」
(私にそんな度胸があるわけない!)
「本当にか?あの精霊もか?」
「シツジなんかあり得ないから!」
《あの、私も花梨さまはゴメンです。私にも選ぶ権利ありますよ》
自分の事を言われて見ていられなかったのか、シツジはわざわざ他の人に見えるように姿を表した。
「失礼ね!シツジの何が良いのルゥくんは!」
「いや、シツジでは」
《カリン様、勘弁してください!私は男に興味はありません!》
「俺だってごめんだ!」
だんだん変な方向に脱線していっている。
面白いので、油を注いでみた。
「ん~シツジなら受けで行けるよ!」
想像してしまった、乙女なシツジを押し倒すルゥくん。
「ぷっ」
《カリン様!嫌です!なんで私が受けなんですか!》
「じゃあ、攻めてみたら?最後は受けになりそうだけど」
《そういう話ではありません!ルゥ!どんなに私が美しくともそういう目で見ないでください!》
「ふざけるな!誰がお前なんか!俺は…」
「俺は?」
ルゥくんが私をじっと見つめたと思ったらすぐにふいっと顔を逸らされた。
「なんでもない!」
(なんだったのだろう)
《ちょっ!その中途半端な物言いは私が好きだと言っているようなものじゃないですか!》
「違うと言っているだろ!」
(…あ、油そそぎすぎた?)
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