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記憶迴
喪失した記憶、手放した恋
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10月にさしかかり、少しずつ冬に変わっていく季節になった。改めて僕は、九十九神と言う存在に出会って、少し楽しい人生になったと感じた。刀華さんに火射羅さん、それに丸召雅音さんも加わって、一層明るくなった。それに、ともちゃんと僕は特別どうしになって、それが何よりも嬉しかった。
「と~も~ちゃん!」
と後ろから飛びつく。
「うおっ!」
と不意を突かれたと言う声で小さく悲鳴をあげた。
「一緒にか~えろ!」
随分僕らのカップルが認められるようになった。もちろんみんなは僕らが友達関係だと思ってるけど。
「そうだ、今度の休みなんだけどよ~」
と、ともちゃんが話題を振ってきた。
「ん?な~に?」
「暇だったら一緒に紅葉狩りにでも行かね~か?秋っぽい事、礼人としてーしよ」
それで紅葉狩り…なんか渋い感じもあるけど。それ以上にともちゃんと二人でどこかに行けるのがうれしかった。
「いいよ!じゃあどこにする?」
「そーだな~、一泊二日で京都にでも行くか?」
そんなこんなで、休日に一泊二日の京都旅行が決まり、ドキドキしながら週末を待っていた。
そう、あんなことが起きるなんて思わずに。
土曜日
「ちょっと早く来すぎたかな…」
まだ7時30分なのにも関わらず、駅は多くの人で賑わっていた。
「あ、いたいた。お~い、ともちゃ~ん」
薄めの長袖シャツを着て、こっちに歩いてきた。
「わりーわりー、待たせちまった」
そう言われ、これはあのセリフを言わずしてどうすると思い、
「んーん、全然待ってないよ」と、お決まりのセリフを言った。
「そっか、んじゃあ、行こっか」
すると、ともちゃんはまるで迷子にならないようにする親子のように、ごく自然に僕の手を引き寄せた。
「ひゃ…!」
と、いきなりのことになんとも情けない声を出してしまった。
「え?ど、どうした?」
「い、いや、その…手、繋いでるなって…思って…」
そんな消えそうな声は届かず、顔が赤いままで、電車に乗り込んだ。
「うっわ~!」
と、無邪気に言った。真っ赤に染まった山をみて、凄く綺麗だと素直に思った。
「あ、あんまり離れんなよ。迷子になられても困る…」
と、保護者みたいなともちゃんを見て、少し笑ってしまった。
「え?お、俺なんか変なこといったか?」
「んーん、ただ、可愛いな~って」
そんなのほほんと会話を楽しんでたその時だった。
「ヴァオァアアアアアア!!!!」
と、裏神の叫び声が聞こえた。
「い、今の…」
口より先に体が動いてた。一応言っておく。僕は常日頃から、刀華さんを持ち歩いてる。今日だって忘れずに持ってきてた。
それをひと思いにさし、戦闘に移った。
結界を張り、相手を分析…
「で…デカ過ぎ…」
まさに圧倒的だった。で、でも。
「おや?可愛らしい害虫がいるみたいだねぇ」
そんな声が聞こえた。
「だ、誰?」
「まあ、ちょうど良いわ。せっかくだから使えるかどうかの実験台になってもらうよ」
そう言うと、ジッと動かなかった裏神が急に暴れ出した。
「う、うわ!」
なんとか間一髪で避けながら、刀で斬りつけていく。
「う、ちぇ、これ使うしかないな~…」
そう言い、一枚の札を出した。
「神附・火之陣」
式神の五星陣が組み上がり、火の術力が溜まっていく。それを裏神の背後に貼る。
「起爆・蜘蛛之矢」
そして、火で出来た矢が蜘蛛の足のように曲線を描き裏神の核を突いた。
「これで終わりだよ」
五星陣をかき、そう呟いた。
「式神術・覇眼之舞」
辺りに満ちる、術力の渦。その渦の力を使い、刀を舞のように、はらりはらりと振る。刀に当たり、バラバラと崩れゆく裏神。
「精霊の舞」
核を突き、裏神は、本体だけになっていく。今回は、本体が問題だった。
「ひ…と…?」
そこには、がっちりとした体つきの男が倒れていた。
「なんで…」
「隙、みっけ」
うっすらとそう聞こえた。
「礼人…危ない!」
その声は数瞬遅かった。背中に何かが刺さる感触。それに相反して痛みはない。でも、体の力はすぐに抜けていった。
「うっ…」
「礼人…おい!しっかりしろ!おい!」
刀華さんの声を聞いたともちゃんがやってきた。でも、上手く呂律が回らない。そして、過去の「嫌な思い出」が、次々と襲いかかってきた。
「礼人!おいしっかりしろ!」
いやだ…もう…いやだ…。神様…やめて…もうこれ以上、何を失えば…。
「うぷぷ、どうやらちゃんと効いたみたいね」
と、ねめつけるような声が聞こえた。
「ああ、安心して。あなたたちに危害は与えないから」
「なんで、こんなことを!」
「なんで?なんでってそりゃ、邪魔だから、記憶が」
「記憶が?」
「そう。思い出されると困るのよ~。だから、軽いショックを起こさせて、記憶を飛ばすの。ほら、あの果実ってやつで」
「ま…まさか…」
と、刀華さんが何かに絶句していた。
「あれの正式名称は『ディアブロ』悪魔って意味。ぴったりでしょ」
「ぴったりでしょじゃねぇ!早く元に戻しやがれ!」
「もう彼女は戻らないよ。すでにショックを起こしたから、もう記憶はほとんど消えてる」
そん…な…。
「じゃあ私はここら辺で。うぷぷ…たぁっぷり楽しんで…ね」
そう言い残し、彼女は消えた。
予約していた部屋で、礼人をずっと見ていた。
うそだ。現実じゃあなかった。そう思えば思うほど、礼人の今が信じられなくなる。
「う、う~ん」
礼人が起きた。
「れ、礼人!大丈夫…」
「君…誰?」
安心してた心は、砕けた。
「れい…と。」
目から涙が出かけて、それをグッとこらえた。
礼人のため。
「俺は、木霊朝洋。覚えてねぇーかもしれねぇけど。お前の友達だ」
俺は、うそをついた。
「と~も~ちゃん!」
と後ろから飛びつく。
「うおっ!」
と不意を突かれたと言う声で小さく悲鳴をあげた。
「一緒にか~えろ!」
随分僕らのカップルが認められるようになった。もちろんみんなは僕らが友達関係だと思ってるけど。
「そうだ、今度の休みなんだけどよ~」
と、ともちゃんが話題を振ってきた。
「ん?な~に?」
「暇だったら一緒に紅葉狩りにでも行かね~か?秋っぽい事、礼人としてーしよ」
それで紅葉狩り…なんか渋い感じもあるけど。それ以上にともちゃんと二人でどこかに行けるのがうれしかった。
「いいよ!じゃあどこにする?」
「そーだな~、一泊二日で京都にでも行くか?」
そんなこんなで、休日に一泊二日の京都旅行が決まり、ドキドキしながら週末を待っていた。
そう、あんなことが起きるなんて思わずに。
土曜日
「ちょっと早く来すぎたかな…」
まだ7時30分なのにも関わらず、駅は多くの人で賑わっていた。
「あ、いたいた。お~い、ともちゃ~ん」
薄めの長袖シャツを着て、こっちに歩いてきた。
「わりーわりー、待たせちまった」
そう言われ、これはあのセリフを言わずしてどうすると思い、
「んーん、全然待ってないよ」と、お決まりのセリフを言った。
「そっか、んじゃあ、行こっか」
すると、ともちゃんはまるで迷子にならないようにする親子のように、ごく自然に僕の手を引き寄せた。
「ひゃ…!」
と、いきなりのことになんとも情けない声を出してしまった。
「え?ど、どうした?」
「い、いや、その…手、繋いでるなって…思って…」
そんな消えそうな声は届かず、顔が赤いままで、電車に乗り込んだ。
「うっわ~!」
と、無邪気に言った。真っ赤に染まった山をみて、凄く綺麗だと素直に思った。
「あ、あんまり離れんなよ。迷子になられても困る…」
と、保護者みたいなともちゃんを見て、少し笑ってしまった。
「え?お、俺なんか変なこといったか?」
「んーん、ただ、可愛いな~って」
そんなのほほんと会話を楽しんでたその時だった。
「ヴァオァアアアアアア!!!!」
と、裏神の叫び声が聞こえた。
「い、今の…」
口より先に体が動いてた。一応言っておく。僕は常日頃から、刀華さんを持ち歩いてる。今日だって忘れずに持ってきてた。
それをひと思いにさし、戦闘に移った。
結界を張り、相手を分析…
「で…デカ過ぎ…」
まさに圧倒的だった。で、でも。
「おや?可愛らしい害虫がいるみたいだねぇ」
そんな声が聞こえた。
「だ、誰?」
「まあ、ちょうど良いわ。せっかくだから使えるかどうかの実験台になってもらうよ」
そう言うと、ジッと動かなかった裏神が急に暴れ出した。
「う、うわ!」
なんとか間一髪で避けながら、刀で斬りつけていく。
「う、ちぇ、これ使うしかないな~…」
そう言い、一枚の札を出した。
「神附・火之陣」
式神の五星陣が組み上がり、火の術力が溜まっていく。それを裏神の背後に貼る。
「起爆・蜘蛛之矢」
そして、火で出来た矢が蜘蛛の足のように曲線を描き裏神の核を突いた。
「これで終わりだよ」
五星陣をかき、そう呟いた。
「式神術・覇眼之舞」
辺りに満ちる、術力の渦。その渦の力を使い、刀を舞のように、はらりはらりと振る。刀に当たり、バラバラと崩れゆく裏神。
「精霊の舞」
核を突き、裏神は、本体だけになっていく。今回は、本体が問題だった。
「ひ…と…?」
そこには、がっちりとした体つきの男が倒れていた。
「なんで…」
「隙、みっけ」
うっすらとそう聞こえた。
「礼人…危ない!」
その声は数瞬遅かった。背中に何かが刺さる感触。それに相反して痛みはない。でも、体の力はすぐに抜けていった。
「うっ…」
「礼人…おい!しっかりしろ!おい!」
刀華さんの声を聞いたともちゃんがやってきた。でも、上手く呂律が回らない。そして、過去の「嫌な思い出」が、次々と襲いかかってきた。
「礼人!おいしっかりしろ!」
いやだ…もう…いやだ…。神様…やめて…もうこれ以上、何を失えば…。
「うぷぷ、どうやらちゃんと効いたみたいね」
と、ねめつけるような声が聞こえた。
「ああ、安心して。あなたたちに危害は与えないから」
「なんで、こんなことを!」
「なんで?なんでってそりゃ、邪魔だから、記憶が」
「記憶が?」
「そう。思い出されると困るのよ~。だから、軽いショックを起こさせて、記憶を飛ばすの。ほら、あの果実ってやつで」
「ま…まさか…」
と、刀華さんが何かに絶句していた。
「あれの正式名称は『ディアブロ』悪魔って意味。ぴったりでしょ」
「ぴったりでしょじゃねぇ!早く元に戻しやがれ!」
「もう彼女は戻らないよ。すでにショックを起こしたから、もう記憶はほとんど消えてる」
そん…な…。
「じゃあ私はここら辺で。うぷぷ…たぁっぷり楽しんで…ね」
そう言い残し、彼女は消えた。
予約していた部屋で、礼人をずっと見ていた。
うそだ。現実じゃあなかった。そう思えば思うほど、礼人の今が信じられなくなる。
「う、う~ん」
礼人が起きた。
「れ、礼人!大丈夫…」
「君…誰?」
安心してた心は、砕けた。
「れい…と。」
目から涙が出かけて、それをグッとこらえた。
礼人のため。
「俺は、木霊朝洋。覚えてねぇーかもしれねぇけど。お前の友達だ」
俺は、うそをついた。
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