九十九神の世界線

時雨悟はち

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世界線の始まり

怪しい夢

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ふと、こんな夢を見た。


辺りは真っ赤にそまり、泣きわめく少女もいれば、まだ希望を捨てない人、あるいはもう諦めた人…。
少なくとも、この世界が安全なことは0%だろう。そこで、僕が、その黒幕と対峙していた。僕は刀華さんと火射羅さんだけじゃなく、他にも何人かの九十九神がいる。そして、その黒幕と戦う…。そこで夢は終わった。

「う、う~ん…」

目を覚ました。見慣れた、火射羅さんと刀華さんとの添い寝。…いくら他人に分からないからといってヒヤヒヤしないわけではなかった。

「ん…ふぁ~、礼人おはよ~」
「んご!お、礼人よ、おはようですな」
「うん、おはよ。多分朝ご飯あるから、食べに行くね」

そういい、居間に行った。

「おはよ~、お父さん」

そう言って、ドアを開ける。

「…ん?」

そこにいたのは、お父さん…ではなかった。

「う、うわぁ!」

ガッシャーン!と音を立て、後ろの食器棚に背中をぶつける。い、今のって…裏神…だよね?
確認すると、そこにあったのはお母さんの遺品と、空なのに蓋が閉まった瓶があった。

「お、おい礼人!大丈夫か?」

と騒ぎを聞きつけたお父さんが来た。

「う、うん。それより…これ…」

と、裏神が持ってた遺品を見せた。

「なあに?これ?」

と、刀華さんが無頓着に聞いてくる。
これは…。

「これは、死んだお母さんの思い出なんだ」

「…え?」

そして僕は自分語りをし始めた。

お母さんは、とても優しい人だった。叱ることは滅多になくて、叱るときも優しくて、いい人だった。
お母さんも、実は九十九神と一緒に修行する、式神使いってやつだったらしい。そんなお母さんも、裏神と戦うことはあったんだって。そして、僕をお腹に宿して、もうすぐ生まれるって時に…。

僕のお母さんは、裏神になった。

僕は無事に生まれ、お父さんがなんとか連れてきてくれたらしい。でも、あの日を境に、お母さんは見つからないまま…。

「それって…」
「うん。もしかしたら…僕と刀華さんの手で、生んでくれたお母さんを、倒さなくちゃいけないときが来るかもね」
「…!」

刀華さんが心を痛めたような顔をした。

「でも、大丈夫だよ!たとえお母さんでも倒さなくちゃいけないときがあるんだから。その時は…その時ってやつ!」

と、明るく振る舞った。僕はちゃんと笑えてたか、それは確認できない。したくも、なかった。

「あ!礼人殿、こんなとこに…」
「どうしたの?火射羅さん?」

少し慌て気味の火射羅さんが口を開いたとき、嫌な気がした。


はあっ、はあっ、はあっ、はあっ、はあっ…
僕は学校に来てた。ここに、裏神を従えた人がきたって、火射羅さんが教えてくれた。
階段を駆け上がっていく。屋上で見たのは。

「礼人…?」

そ…んな…。うそ…でしょ?

「お母…さん?」
「待って」
「え?」
「確かにこの人はお母さんよ」
「!。じゃあなんで!」
「裏神だからよ」

と、刀華さんは告げた。

「え…?」
「今は自我を保ててるけど、もうじき暴走する。全く凄いわね…この人は」

え?てことは…。

「まっ、待って!」

と、裏神を庇うように立ちはだかる。

「す、少し!少しだけなら、いいでしょ?」
「ま、まあ、少しだけなら…ね」

よし…。そしてお母さんの方を向いた。

「ナニヤッテルノ?ハヤクココカラハナレナサイ!ジャナイトワタシ…アナタヲ…」
「お母さん。一つ聞きたいんだ。」と、真面目な顔で言った。


「お母さん…本物じゃないでしょ」


「…え?」

そこにいた人全員がそう言った。

「君は…一体誰なの?」
「……」

少なくとも、お母さんではない。それは確信してた。
「…フッ…フフッ…」

…やっぱり…。

「そうだよ。僕は母さんなんかじゃない」

そう言いながら周りの黒いオーラは消えていく。

「僕は怪夢。君の敵だよ」

と言ってきた。

「僕の学校になにするつもり?」
「いや、特に何も?」

うそ…。

「じゃあ、僕は忙しいから」

そして、飛び立とうとする怪夢さんにこう聞いた。

「あなたはなにをするつもりなの?」

そして怪夢さんは、小さく、だけどそれは不協和音のように妙に聞こえる声で、

「世界…滅亡…かな?」

と言い、飛び立って行った。

「僕は…もしかしたらとんでもない事に首を突っ込んだのかもしれない…」

雲一つない澄んだ空に、弱音のように吐き捨てた。
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