異能使いの五人格

時雨悟はち

文字の大きさ
上 下
1 / 3
始まり

五人の親友

しおりを挟む
超能力、異能、超常現象…。
様々な呼ばれ方をされる非化学現象。それを引き起こす人たち「異能使い」
そんな異能使い達と凡人の間には風習とも言える絶対的な「壁」があった。一人、そんな壁を越えて人気者になった芸人がいた。しかし、それでも壁が取り払われることはなかった。
だからこそ、今の現代では異能使い達は素性を明かさずひっそりと社会に溶け込んで生きているやつらが多い。

そんな時代に一人、五人格の異能使いがいた。


「なあ、一人で寂しくねえの?www」

…。

「あっれ~?なんにも言い返さないのかい?弱虫ク~ン?」

これは俺宛じゃないこれは俺宛じゃないこれは俺宛じゃない。
心の中、というより五人の親友に暗示をかける。

「…なんとかいえよ!!!!」

と言いながらさっきから突っかかるやつに強めに吹っ飛ばされる。
勉強していたためノートや参考書が散乱する。
…めんどいなぁ。
と思っていたら数少ない友達の一人が走って

「おい!なにしてんだ!」

と怒号を叫びながら走ってくる。

「…ありがとう。助けてくれて」
「いいってことよ!俺ら親友だろ!」

と言ってくれるのは白鯨涼はくげいりょう。数少ない親友の一人だ。

「まったく、なぜあのものはこんなにも馬鹿なのでしょうか…」
「ほんとほんと~。馬鹿なのかっ!!!!」
「…よしなよ、真仁まひと。子供っぽい」
「あ~!言っちゃった!刹那せつなに言われたくないね!!!!」
「…傷つくなぁ…」

と勝手に会話を勝手に弾ませる三人。加木塚使徒かぎづか しと椎名しいな真仁、結城ゆうき刹那。

「まあまあ…そんなに怒ってやんなよ…」
「鴉さんはもっと怒るべきだと思うのですが…」

という先生のようにガタイのがっちりした男は伊高弁慶いたか べんけい
この五人はいわゆる「いつメン」という仲だ。いつもいつもいろんなところに行ってはバカ騒ぎしたりなど毎日楽しく遊んでいた。

「ごめんね、僕はもう大丈夫だから」
「んなこと言ったって…」
「…大丈夫、だから」
「…」

しかし、5人とは最近は壁を感じるようになってしまった。
理由なんて簡単。こいつらは「美男子」と校内で言われ始め、次第に関わりづらくなっていってしまったのだ。

(はあ…居づらいな…)

その日はやけに学校にいられない気持ちになってしまい、早めに帰った。

「おい」
「…どうしたの?涼くん」
「体、大丈夫か?」
「…大丈夫だよ。それより、授業ちゃんと受けてきな」
「…早く元気になれよ…」

なにか心配そうな言葉に背を向けて僕は歩き出した。



「早く元気になれよ」

その言葉が嫌に背筋を凍らす。
…まさか、な。
背筋の寒気がいつの間にか俺の体を弱く、確かに動かしていた。

「早く元気になれよ」

その言葉が最期。いつの間にかそんな思想が駆け巡っていた。
他の奴らにも会えない…のか?
腕がぷるぷると震えていた。

ないないないないないないないないないないないないないない

暗示をかけてもそれはぬぐえなかった。

「みん…」

その惨状をみて、一瞬思考が止まり、徐々に絶望と後悔、怒りとマイナスの感情がからだを支配して

「あ…ああ…あああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

発狂していた。狂っていた。

頭が潰れて、ぐしゃぐしゃになった、涼くん。

首から二つに分けられた、使徒くん。

四肢を捥ぎ取られ吊るされた、真仁くん。

鍋に入れられ最早原型をとどめない、結城くん。

そして

「ご………めん…………………なさ…い」

体に無数の穴を空け、立ちながら俺の目の前で死んでいった、弁慶。

この惨状を見て、確信したことがあった。信じたくなかった。信じられなかったが、こんな可能性しか考えられなかった。

「…異能使い、だ」

そう呟いた俺は、遠のく意識の中で、八枚に下ろされた「自分」を見ていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

愚かな父にサヨナラと《完結》

アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」 父の言葉は最後の一線を越えてしまった。 その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・ 悲劇の本当の始まりはもっと昔から。 言えることはただひとつ 私の幸せに貴方はいりません ✈他社にも同時公開

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

最近様子のおかしい夫と女の密会現場をおさえてやった

家紋武範
恋愛
 最近夫の行動が怪しく見える。ひょっとしたら浮気ではないかと、出掛ける後をつけてみると、そこには女がいた──。

【完結】「心に決めた人がいる」と旦那様は言った

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
「俺にはずっと心に決めた人がいる。俺が貴方を愛することはない。貴女はその人を迎え入れることさえ許してくれればそれで良いのです。」 そう言われて愛のない結婚をしたスーザン。 彼女にはかつて愛した人との思い出があった・・・ 産業革命後のイギリスをモデルにした架空の国が舞台です。貴族制度など独自の設定があります。 ---- 初めて書いた小説で初めての投稿で沢山の方に読んでいただき驚いています。 終わり方が納得できない!という方が多かったのでエピローグを追加します。 お読みいただきありがとうございます。

RUBBER LADY 屈辱の性奴隷調教

RUBBER LADY
ファンタジー
RUBBER LADYが活躍するストーリーの続編です

(完結)私より妹を優先する夫

青空一夏
恋愛
私はキャロル・トゥー。トゥー伯爵との間に3歳の娘がいる。私達は愛し合っていたし、子煩悩の夫とはずっと幸せが続く、そう思っていた。 ところが、夫の妹が離婚して同じく3歳の息子を連れて出戻ってきてから夫は変わってしまった。 ショートショートですが、途中タグの追加や変更がある場合があります。

(完)なにも死ぬことないでしょう?

青空一夏
恋愛
ジュリエットはイリスィオス・ケビン公爵に一目惚れされて子爵家から嫁いできた美しい娘。イリスィオスは初めこそ優しかったものの、二人の愛人を離れに住まわせるようになった。 悩むジュリエットは悲しみのあまり湖に身を投げて死のうとしたが死にきれず昏睡状態になる。前世を昏睡状態で思い出したジュリエットは自分が日本という国で生きていたことを思い出す。還暦手前まで生きた記憶が不意に蘇ったのだ。 若い頃はいろいろな趣味を持ち、男性からもモテた彼女の名は真理。結婚もし子供も産み、いろいろな経験もしてきた真理は知っている。 『亭主、元気で留守がいい』ということを。 だったらこの状況って超ラッキーだわ♪ イケてるおばさん真理(外見は20代前半のジュリエット)がくりひろげるはちゃめちゃコメディー。 ゆるふわ設定ご都合主義。気分転換にどうぞ。初めはシリアス?ですが、途中からコメディーになります。中世ヨーロッパ風ですが和のテイストも混じり合う異世界。 昭和の懐かしい世界が広がります。懐かしい言葉あり。解説付き。

夫の裏切りの果てに

恋愛
 セイディは、ルーベス王国の第1王女として生まれ、政略結婚で隣国エレット王国に嫁いで来た。  夫となった王太子レオポルドは背が高く涼やかな碧眼をもつ美丈夫。文武両道で人当たりの良い性格から、彼は国民にとても人気が高かった。  王宮の奥で大切に育てられ男性に免疫の無かったセイディは、レオポルドに一目惚れ。二人は仲睦まじい夫婦となった。  結婚してすぐにセイディは女の子を授かり、今は二人目を妊娠中。  お腹の中の赤ちゃんと会えるのを楽しみに待つ日々。  美しい夫は、惜しみない甘い言葉で毎日愛情を伝えてくれる。臣下や国民からも慕われるレオポルドは理想的な夫。    けれど、レオポルドには秘密の愛妾がいるらしくて……? ※ハッピーエンドではありません。どちらかというとバッドエンド?? ※浮気男にざまぁ!ってタイプのお話ではありません。

処理中です...