楽園異能力者

那月いくら

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3章 実技授業

11話

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「今日の授業は、ステラの実技授業をする!」先生の声は、体育館に響いていた。この体育館は、国がステラ訓練のために作った建物だと聞いている。なので、ここは、広いし、ステラで建物を傷つけても、すぐに、自己修復機能が働くようになっている。
 「今日は、1年生初めての実技授業だ。だからといって、私に許可なくステラを使うことは、禁止する!何が起こるかわからんからな。」先生は、いつもより、厳しく見ていた。
 「そして、今日から、訓練時用Patを配る。これは、連絡用、位置情報、訓練成績、ステラの使用履歴を表記するものだ。Patと言っても、空中ディスプレイだ。」Patは、先生のステラ念力サイコキネシスによって全員に配布された。
 (へー。ステラって原理が分からないものばっかり作れるんだ。)私は、Patに興味津々になっていたためか、色んなボタンを押しまくったのだ。だが、特に危険というボタンはなかった。
 「今から、3人1組のチームを作って、実技対戦を行う。チーム編成は、自由だ。」私は、樺音と狐絈の方を見た。彼は、まだしも、狐絈は、組む人がいなく戸惑っていた。私が声をかけようと動こうとしたけど、その前に樺音が声をかけていた。
 「琉乃愛!僕達と組もうよ!」
 「うん!!」樺音には、先をこされてばかりだ。でも、それが彼なのだ。私は、そのことを含め、嬉しくて顔に笑顔をうかべた。


  「今から、対戦式ステラ訓練をとりおこなう!対戦相手は、私が決めた。Patを見るように。そして、身を守るための防護バリアをはりなさい。」私は、言われた通りに、ステラ訓練服の腕部分についているボタンを押した。すると、黄色い膜が私を覆ってバリアのようなものになった。
 
 私は、Patを見た。私達の対戦相手は、神田恋かんだれん川野誠かわのまこと瑚紫環乃ごしかんの、3人とも、男の子で、潜在サークルにいた人達だった。琉乃愛は、ステラまでは、覚えていなかったが、顔だけは覚えていた。

  「第一試合、神田チーム対鹿島チーム!ーー試合開始!!ーー」先生は、開始のゴングを叩いた。私以外は、素早く動き出した。私は、どうしていいかわからず、たっていることしか出来なかった。
 その時だった。ガラスのような何かが割れるような音がしたのだ。皆の視線が音がした方に向いていた。私は、目を疑った。そこには、防護バリアが割れて気を失った狐絈が倒れ込んでいたのだ。
 琉乃愛は、狐絈の方に駆け寄った。
 「ね…狐絈…?起きてよ!ね!ってば!」私は、必死に叫んだのだが、彼女は、起きなかったのだ。
 「ーー!!」私は、あまりの悲しさに、その場に立ちすくんでしまっていた。
 
 次の瞬間、防護バリアが割れる音が連発したのだ。バリアが割れたのは、相手側だった。相手チームは、その場に倒れ込んでいて、苦しみ、もだえていた。私は、真っ先に樺音を見た。でも、彼がステラを使った様子はなかった。
 「おい!鹿島!ステラを抑えろ!」私は、先生のいきなりの罵声にびびった。
 「で、できない!ステラのコントロールが、き、きかないんです!!」
 「できないじゃない!やるんだ!まず、興奮状態を抑えるんだ!」先生は、必死に私を止めていたが、私は、ステラを抑えることが出来なかった。
 「君たち、そこをどきなさい。」私の知らない声が体育館をずかずか入ってきて、私に近づいてきた。その人は、私の肩を優しく叩いた。私は、触られた瞬間、意識が遠のいて、その場に倒れ込んだ。


  ♢  ♢  ♢  ♢  ♢  ♢  ♢  ♢

 「いっ! ここは………どこだっけ……」どこかのベッドで起きた私は、まわりを見渡した。部屋の中は、清潔感ある白でいっぱいだった。
 「やっと起きか。ここは、楽園の病院だ。」そこに居たのは、先生と、見知らぬ女の人だった。
 「すまないが、君は、1週間、寮で謹慎処分とする。」先生の目は、いつにも増して冷徹な目をしていた。
 「えっ!?でも…」
 「例外は認ない!今回の騒動を起こしておいて、処罰がないわけない!」私の話を遮ったのは、見知らぬ女の人だった。
 「これは、失礼しました。私は、生徒会の彩隆寺音夢さいりゅうじねむです。以後お見知り置きを。」彼女は、さっきのこわばった顔とは、また別の顔で自己紹介をしていた。
 「彼女は、君のステラ暴走を救ったんだ。君も感じただろ?彼女は、触れただけで、眠らせたり、失神させることが出来る"催眠トランス"のステラを持っている。」私には、そのステラに心当たりがあった。体育館に入ってきて、私の肩を優しく叩いたのは、彼女だったていうこと。

 「暴走を止めていただき…あ、ありがとうございます!!」私は、彼女に感謝の気持ちしか無かった。対して、彼女は、当然のことをしたまでです、とだけ言って部屋を出ていってしまったのだ。

 
 どうやら先生達は、私の謹慎処分を言いに来たようだった。
  
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