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真紅の車で事件現場までエスコトートを
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現場であるリンドール川は都市の中心部を流れています。その河口で遺体は発見されました。
「特殊犯罪捜査課ウィルソン警部です。遺体はどちらに?」
「あちらにありますッ」
一般の警官だとローズの実態を知らず、その美貌に見惚れる者も未だにいます。
スーツ姿のデイヴィッドに対して、ローズの姿は赤いワンピースにハイヒール姿です。
この時代の女性にしては長い紅色の髪は帽子の中にしまってあります。
それでも、職業女性が増えたとはいえ女性警官が珍しい上に、刑事それも警部というのは異例ではありました。
「デイヴィッド、何をしているの? 早く行くわよ」
「失礼しました、ウィルソン警部」
不安定な河原でデイヴィッドはローズにそっと手を差し伸べてエスコートをしました。
ローズは当然のようにその手を取って水辺までやってきました。
「被害者の名前は?死因は?所持品はどこ?」
「そんな矢継ぎ早に聞くんじゃねぇよ。お嬢」
「あら、ロイ検視官、お早いおいでで」
「被害者は女性。この顔じゃあ、すぐに身元が割れるのは難しいだろうな。所持品どころか下着姿だ。詳しく見てみないとわからないが、わしの勘だと水死じゃねぇな」
「どうして?」
「この辺りはよく水死体が上がるんだが、それとなんか膨らみ方が違うんだよな」
その時、遺体を運んでいた警官が石につまずきました。
遺体がぐちゃりという、熟し過ぎた果実が潰れたような音を立てて河原に転がり落ちました。
「おい! 気をつけろ! あぁあ、水死体は脆いのにこんなになっちまったじゃねぇか」
ロイは遺体をそっと持ち上げましたが、遺体は破損して肉片が散らばりました。
その痕跡にグロテスクさよりもローズは何か疑問を持ったように首を傾げました。
「ウィルソン警部、何か?」
「うーん、何か気になったんだけど、分からなくなってしまったわ……こういう遺体に似たものを他に見たことは?」
「えー、あったような、なかったようなだな。持ち帰って検視に回してみるから」
「そう、ありがとう、ロイ検視官」
「それにしてもお嬢様のくせに、大の男でも吐き気を催すような現場に来てもよく平気だな。並の神経じゃできねぇぞ」
「こう見えても大学時代に、解剖学の授業を見せてもらったこともありますからご心配なく。ちゃんとランチも頂いてきましたので」
「だから、普通この現場で飯の話はしねぇよ」
「それでは、捜索は警官の方たちにお任せして、私たちはリンドール川をさかのぼってみましょうか。何か見つかるかもしれないわ」
二人は再び車へと向かいました。
ローズが乗るのはもちろん警察車両ではなく、高級自家用車でした。
真っ赤なルージュのようなボディーカラーをした愛車のドアをデイヴィッドが開けると、ローズはすっと乗り込みました。
デイヴィッドが運転席に座るとリンドール川沿いの道を走り始めました。
ローズは黙って沿岸を眺めています。
しばらく走ったところでローズは停車するようにデイヴィッドに言いました。
「何か見つけましたか?」
「あちらの岸の草だけ妙ななぎ倒され方をしていると思わない?」
「確かに。葦が倒れていますね」
「ねぇ、デイヴィッド。貴方が犯人だったとして河に死体を遺棄しようと思ったらどこから捨てる?」
「オレだったら車で来て、夜中に橋の中心から……あ」
「そう。わざわざ沿岸側に死体を引きずって運んで捨てるのは手間だわ。橋の上から水深の深そうなところに向かって落とす方が確実に死体を遺棄しやすいわね。それじゃあ、近くの派出所に連絡して頂戴。もしかしたら、同じような死体が引っかかっているかもしれないから……さて、もう三時だわ。お茶の時間にしましょう」
「この近くでしたら、良いカフェがあります。そちらに車を回します」
「特殊犯罪捜査課ウィルソン警部です。遺体はどちらに?」
「あちらにありますッ」
一般の警官だとローズの実態を知らず、その美貌に見惚れる者も未だにいます。
スーツ姿のデイヴィッドに対して、ローズの姿は赤いワンピースにハイヒール姿です。
この時代の女性にしては長い紅色の髪は帽子の中にしまってあります。
それでも、職業女性が増えたとはいえ女性警官が珍しい上に、刑事それも警部というのは異例ではありました。
「デイヴィッド、何をしているの? 早く行くわよ」
「失礼しました、ウィルソン警部」
不安定な河原でデイヴィッドはローズにそっと手を差し伸べてエスコートをしました。
ローズは当然のようにその手を取って水辺までやってきました。
「被害者の名前は?死因は?所持品はどこ?」
「そんな矢継ぎ早に聞くんじゃねぇよ。お嬢」
「あら、ロイ検視官、お早いおいでで」
「被害者は女性。この顔じゃあ、すぐに身元が割れるのは難しいだろうな。所持品どころか下着姿だ。詳しく見てみないとわからないが、わしの勘だと水死じゃねぇな」
「どうして?」
「この辺りはよく水死体が上がるんだが、それとなんか膨らみ方が違うんだよな」
その時、遺体を運んでいた警官が石につまずきました。
遺体がぐちゃりという、熟し過ぎた果実が潰れたような音を立てて河原に転がり落ちました。
「おい! 気をつけろ! あぁあ、水死体は脆いのにこんなになっちまったじゃねぇか」
ロイは遺体をそっと持ち上げましたが、遺体は破損して肉片が散らばりました。
その痕跡にグロテスクさよりもローズは何か疑問を持ったように首を傾げました。
「ウィルソン警部、何か?」
「うーん、何か気になったんだけど、分からなくなってしまったわ……こういう遺体に似たものを他に見たことは?」
「えー、あったような、なかったようなだな。持ち帰って検視に回してみるから」
「そう、ありがとう、ロイ検視官」
「それにしてもお嬢様のくせに、大の男でも吐き気を催すような現場に来てもよく平気だな。並の神経じゃできねぇぞ」
「こう見えても大学時代に、解剖学の授業を見せてもらったこともありますからご心配なく。ちゃんとランチも頂いてきましたので」
「だから、普通この現場で飯の話はしねぇよ」
「それでは、捜索は警官の方たちにお任せして、私たちはリンドール川をさかのぼってみましょうか。何か見つかるかもしれないわ」
二人は再び車へと向かいました。
ローズが乗るのはもちろん警察車両ではなく、高級自家用車でした。
真っ赤なルージュのようなボディーカラーをした愛車のドアをデイヴィッドが開けると、ローズはすっと乗り込みました。
デイヴィッドが運転席に座るとリンドール川沿いの道を走り始めました。
ローズは黙って沿岸を眺めています。
しばらく走ったところでローズは停車するようにデイヴィッドに言いました。
「何か見つけましたか?」
「あちらの岸の草だけ妙ななぎ倒され方をしていると思わない?」
「確かに。葦が倒れていますね」
「ねぇ、デイヴィッド。貴方が犯人だったとして河に死体を遺棄しようと思ったらどこから捨てる?」
「オレだったら車で来て、夜中に橋の中心から……あ」
「そう。わざわざ沿岸側に死体を引きずって運んで捨てるのは手間だわ。橋の上から水深の深そうなところに向かって落とす方が確実に死体を遺棄しやすいわね。それじゃあ、近くの派出所に連絡して頂戴。もしかしたら、同じような死体が引っかかっているかもしれないから……さて、もう三時だわ。お茶の時間にしましょう」
「この近くでしたら、良いカフェがあります。そちらに車を回します」
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