悪役令嬢ローズ・ウィルソン警部の華麗なる迷推理~従者デイビッドの憂鬱~

三ツ矢

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退屈な悪役令嬢のために事件のベルが鳴る

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「はぁ、退屈だわ」



 ガルダの本部であるユニコーン・パークの一室でローズはため息をつきました。

 その言葉にびくりと身体を震わせる人間がいました。

 ローズの直属の上司であるサイモン・ジェンキンスです。

 彼の名前を覚える必要はありません。

 それなりの功績でそれなりに歳をとって昇進してきたサイモンは、中間管理職としてガルダの爆発物である血塗れのいばら姫を押し付けられたのでした。

 そのストレスから身体は丸くなり、髪は禿げあがってしまいました。

 そして、ローズが決まって退屈だと言うといつもとんでもない事件が起きて、最後の後始末が自分に回ってくることになるのです。



「早く事件が起きないかしら?」

「不謹慎ですよ、ウィルソン警部」



 デイヴィッドが横で拳銃の手入れをしながら窘めました。

 ローズは自分用に持ち込んだ赤いベルベットのカウチの上に頬杖をついて寝転んでいました。



「ガルダに入れば毎日のようにとんでもない事件に遭遇できると思ったのに、現実は甘くないのね」



 そんなことはないとサイモンは思いました。

 ローズが来てから事件の数は倍近く増えていたからです。

 今までだったら事故として片付けていた案件ですら事件にしてしまうローズはサイモンにとってまさに疫病神の如き存在でした。



 その時電話のベルが鳴り響きました。

 サイモンが受話器を取ろうとすると、それを目にも止まらぬ速さでローズが奪い取りました。



「こちら、特殊犯罪捜査課です。リンドール川で身元不明の水死体? すぐに現場に急行します」



 ガチャリと受話器を置くとローズはサイモンを顧みることもなく、デイヴィッドに言いました。



「事件だわ、リンドール川まで車を出して頂戴」

「はい。それでは行ってきます、ジェンキンス警視」



 サイモンは軽く手を挙げると、そっと引き出しを開けて胃薬を取り出しました。今度はストレスから胃が痛くなってきていたようです。

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