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大陸放浪編
世界樹~夜空の下で~
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「……そういうことだったんですね」
「軸のことを黙っていてすまなかった。あんたを利用しようとしていたことも、そして、おれの身勝手のためにここまで連れてきてしまったことも謝る。マヤ、あんたと少しでも長く過ごしたかった。その甘さがこんな事態を引き起こしてしまった。どう謝ったらいいかわからない。許してくれとは言わない。だから、おれも一緒に軸になる。償いにならないことは分かっている。おれも一緒に連れて行ってくれ」
「謝らないで下さい、ルークさん。ここまで旅をしてきたことも、ルークさんのお父さんを呼んだのも私が決めてやったことです。それに、覚悟はしてきました。世界のためにどんなリスクでも払うつもりです。それが例え、私の命でも……先に進みましょう、ルークさん。世界樹の元へ」
最後の夜、私たちはカンテラの光の中で旅の思い出を語り合った。
話すべきことはたくさんあった。
「ルークさん、見て下さい。夜空が綺麗ですよ」
「……本当だな」
見たこともないほど美しい満天の星空が頭上に広がっていた。
星空に見惚れていた私をルークは引き寄せ、私にキスをした。
私はその強い力に抗うことも出来ず、唇を貪られる。
そしてルークは私に覆いかぶさった。
これからどうなるか、私でも理解できた。
私の人生はもうすぐ終わる。
それならいっそ、ルークとこうなってもいいのではないかと思い、力を抜いた。
ルークが私の服に手をかけた。
その時、銀細工に赤い石のついたペンダントが胸元で輝いた。
それを見て、ルークはぴたりと動きを止める。
それから私を抱きすくめた。
「あんたからラベンダーの香りがする……いい匂いだ。あんたを軽々しく、おれなんかが汚すことなんてできない。あんたを騙し、そして犠牲にさせてしまうおれにあんたを抱く資格なんかない。例え、これが最期であっても、あんたには綺麗なままでいてほしい」
ルークが私の額にキスをした。
少しひんやりとした冷たく柔らかな唇の感触を感じる。
「だから、おやすみ、マヤ。良い夢を見ろよ」
「ルークさん……おやすみなさい」
私たちにもっと時間があったら違っていただろうか。
それとも出会い方が違っていたらこの自由で強く優しいこの人に全て委ねられたのだろうか。
わからない。
私は身体の芯に残る熱を抱きながら、目を閉じた。
「軸のことを黙っていてすまなかった。あんたを利用しようとしていたことも、そして、おれの身勝手のためにここまで連れてきてしまったことも謝る。マヤ、あんたと少しでも長く過ごしたかった。その甘さがこんな事態を引き起こしてしまった。どう謝ったらいいかわからない。許してくれとは言わない。だから、おれも一緒に軸になる。償いにならないことは分かっている。おれも一緒に連れて行ってくれ」
「謝らないで下さい、ルークさん。ここまで旅をしてきたことも、ルークさんのお父さんを呼んだのも私が決めてやったことです。それに、覚悟はしてきました。世界のためにどんなリスクでも払うつもりです。それが例え、私の命でも……先に進みましょう、ルークさん。世界樹の元へ」
最後の夜、私たちはカンテラの光の中で旅の思い出を語り合った。
話すべきことはたくさんあった。
「ルークさん、見て下さい。夜空が綺麗ですよ」
「……本当だな」
見たこともないほど美しい満天の星空が頭上に広がっていた。
星空に見惚れていた私をルークは引き寄せ、私にキスをした。
私はその強い力に抗うことも出来ず、唇を貪られる。
そしてルークは私に覆いかぶさった。
これからどうなるか、私でも理解できた。
私の人生はもうすぐ終わる。
それならいっそ、ルークとこうなってもいいのではないかと思い、力を抜いた。
ルークが私の服に手をかけた。
その時、銀細工に赤い石のついたペンダントが胸元で輝いた。
それを見て、ルークはぴたりと動きを止める。
それから私を抱きすくめた。
「あんたからラベンダーの香りがする……いい匂いだ。あんたを軽々しく、おれなんかが汚すことなんてできない。あんたを騙し、そして犠牲にさせてしまうおれにあんたを抱く資格なんかない。例え、これが最期であっても、あんたには綺麗なままでいてほしい」
ルークが私の額にキスをした。
少しひんやりとした冷たく柔らかな唇の感触を感じる。
「だから、おやすみ、マヤ。良い夢を見ろよ」
「ルークさん……おやすみなさい」
私たちにもっと時間があったら違っていただろうか。
それとも出会い方が違っていたらこの自由で強く優しいこの人に全て委ねられたのだろうか。
わからない。
私は身体の芯に残る熱を抱きながら、目を閉じた。
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