最強の聖女は恋を知らない

三ツ矢

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大陸放浪編

英雄の回想~取引~

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二つ目の町で、おれはオーベロンを呼び出した。



「なに? 世界樹の管理で忙しいし、キミに呼び出される覚えは無いんだけど」

「なあ、妖精王さんよ。一つ取引をしないかい?」



取引とオーベロンが繰り返した。こうやって小さい姿でいると妖精王だってこと忘れちまうな。



「クラキに軸の話はするな。もしも話したらおれはこの旅を放棄する」

「……そんなことしても、西大陸が眠りにつくだけ。マヤには帰ってきたらきちんと説明するつもりだよ」

「それじゃあ、おれはこの旅から降りさせてもらう。西大陸がダメってことは東大陸には影響がないんだろう?おれはどこでだってやっていけるさ」



これは半分本気で半分嘘だった。おれには西大陸の人間を見捨てる勇気は無かったし、自分が軸になる覚悟もそれなりにはあった。



「本気で脅すつもりなんだね」

「妖精王さんにとってクラキは大事な存在なんだろう?二分の一の確率の方がましだと思うけどな」



オーベロンは最終的に渋々承諾した。

おれとしても気持ちのいいやり取りじゃなかったが、まだマヤに真実を知られるわけにはいかなかった。



その後、マヤから野盗が出ると言われた。

しかし、そんなものに構っている時間は無いとおれは旅を強行した。

事実、山を越えて狭路から開けた土地に出た頃、いくつもの殺気でおれは目を覚ました。

柄に手をかけた時、マヤの荷物が光輝いた。

どうやら魔法陣を仕掛けておいたらしい。

哀れな盗賊は一網打尽になり、おれは馬車から降りて押す羽目になった。

こんなことなら途中で野宿すべきだったと少しだけ後悔した。

しかし、マヤという女はやはりなかなか頭も回るし、肝っ玉も据わった女であった。



次の町で野盗を引き渡すとおれは髪を隠すことをすっかり忘れていた。

その結果、野盗を捕まえたのはおれということになってしまったが、マヤは訂正する気も無いようだった。

町長の家に宿泊し、交易船に便宜を図ってもらうことになったのだから結果的に万事解決だろう。

翌日、不要になった馬車と馬を町長に買ってもらうことにした。

マヤは顔を赤くして怒ったが、この旅の終わりにフローレンス王国に戻ることは二人ともないだろう。

要らないものは売り、金にしておく。

それがおれの処世術の一つだった。
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