最強の聖女は恋を知らない

三ツ矢

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大陸放浪編

戦地~夜明け~

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 本拠地に帰ってくると既に朝を迎えていた。



「各員、戦闘状態解除。ご苦労だった。休息してくれ。オレはこのまま上層部に報告してくる」



精鋭部隊がエヴァンに敬礼した。



「マヤ、ルーク殿、申し訳ないが、同行してもらえるだろうか?」

「あいよ。大変だねぇ、中間管理職ってやつは」

「これくらい大したことではありません……失礼します。エヴァン・ガルシア魔法特務少尉であります」

「入りたまえ」

「ご苦労、任務はどうなった?」

「はっ!採掘場の入り口をお二方によって封印後、索敵部隊と交戦。殲滅後、戦線を離脱。只今帰還しました。損害はありません」

「結構。それでルーク殿、クラキ殿、それぞれどのような封印をされたかな?」

「私の封印『氷華の扉』は採掘場の入り口を氷の扉で封印したうえで、近寄る者に猛吹雪が吹き荒れるものです。私の意志が続く限り封印は継続されます」

「私は生ける石像を召喚しました。期間は十年です」

「なるほど、その期間内に所有権がどちらにあるか調停する必要があるのですね。ご苦労様でした。至急、両国の政府に伝令を送りたいと思います。どうぞお休みください。エヴァン魔法特務少尉、君も下がって良い」

「はっ。失礼いたします」



テントを出るとルークが伸びをした。



「いやぁ、何で階級持ちのおっさんって口しか動かさないのにあんなに偉そうになるかね?」

「ルークさん、聞こえますよ」

「丁寧な口調でしゃべると疲れるんだよ。おれは寝かせてもらう」



ルークはすたすたと先にテントに行ってしまった。



私はなんとなくエヴァンの方を見つめた。



「マヤ、朝食がてら少し話さないか?」

「ええ。私も目が冴えちゃって……」



テントの裏で二人は携帯食品とコーヒーの朝食を取った。

エヴァンがゆっくりと話し出した。



「マヤ、お前は強いヤツだ。魔力も召喚術も使える。精神的にも強い。だが、ここではそれだけでは通用しない。お前には人を殺す覚悟も殺される覚悟も無い」



私は押し黙った。



「お前の案のお陰でこの戦争はおそらく終息するだろう。そして前線に立つはずだった人間は救われる。だが、マヤ、戦場に立ってみてわかっただろう。お前には死ぬ覚悟が出来ていない」

「……そうだね」

「お前はこれから西大陸全土の人間を救う存在になる。まだどんな危険があるか分からない。ただ、大きなことを成すということは大きなリスクも負うことになる。それを覚えていてくれ」



エヴァンは私の手を強く握った。



「お前にはこんな景色を見せたくなかった。お前には戦場とは何か知ってほしくなかった。お前が手を汚さずにいてくれて良かった。お前が生きていてくれて良かった」



エヴァンの手が微かに震えていた。

昇っていく太陽を見ながら私は生きていると実感し、やっと息をすることができた。
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