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大陸放浪編
戦地~打開策~
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その夜、私は女性将校用のベッドで眠らずに考え続けた。
そして明け方一つの考えが浮かんだ。
「地下資源の採掘場の入り口を封印する?」
ルークとエヴァンはその言葉を聞いた時、驚きと呆れたような表情を浮かべた。
「そうです。一度採掘場を封印してしまえば戦争をする理由がなくなります。そのタイミングで終戦協定を結んで、話し合いの結果が出たら解除するというのはどうでしょうか?」
「無茶苦茶だ」
「だが、効果的かもしれない。両国とも疲弊し、戦争を止める理由を探している今なら可能性がある……上層部に掛け合ってくる」
エヴァンは食事をそのままに席を立った。
「あんた、そんなこと一晩中考えて寝不足なのか?」
「え、わかりますか?」
「隈が出来てる……本当にどうしようもないな、あんたの人助け癖は」
「呆れましたか?」
「とっくに。今はもう慣れた。あんた前におれのこと過大評価しているって言ったけど、あんたこそ自分の能力を過信し過ぎだよ。ごっそさん」
そう言い残してルークは立ち去った。
私はすっかり冷えた食事を口に運んだ。
その後、一時間ほどして帰り支度をしていた私の元をエレナ軍曹が現れた。
「至急、作戦本部にお越し願いたいとの伝令が入りました。こちらにどうぞ」
一際立派なテントにはずらりと連合軍の上層部が集まっていた。
連合軍らしくそれぞれ来ている軍服が違う。
その末席にエヴァンが直立不動し、手前の席にルークが座っていた。
「マヤ・クラキ殿、どうぞおかけください」
「ありがとうございます」
「それでは単刀直入にお尋ねしますが、エヴァン特務少尉から聞いた終戦案は貴方が考案されたということで間違いありませんか?」
「その通りです」
「短いながらも我々も検討した結果、有効な手段だという結論に達しました。しかし採掘場の入り口は、戦場の真っ最中にあり、両国が破れないほどの強力な封印を施す必要があります」
その言葉にルークはピクリと眉を動かす。
「それはもしや……我々に封印をしろと仰るのですか?」
「いかにも。青嵐の騎士ルーク殿と救国の聖女マヤ・クラキ殿ほどの魔力を持つ者は他におりません。この西大陸において最高峰の魔術師でしょう。ご助力願えませんでしょうか?」
「お断りします」
ルークの答えはにべも無かった。
「我々は西大陸の危機を救うべく、旅をしています。万が一のことがあれば、それはハーパー連邦とアーライ共和国だけに被害は留まりません。それは我々の任務ではなく、連合軍のなすべきことです。我々の旅の重要性をご理解いただきたい」
そこでルークは席を立った。
「ほら、行くぞ」
私にも離籍するよう促した。
私は黙ったまま、その場に座り続けていた。
ルークは苛立ったように私の手を取り、無理矢理立ち上がらせようとした。その手を振り払う。
「嫌です……ここでまた多くの人が死んでいくのを見るのは」
「まだそんなこと言ってるのか?」
「ペネロペ都市国家で嵐を食い止めた時、私は後悔しました。自己満足で行動してルークさんに迷惑をかけてしまったことを。だから、今度は自分でやります」
「あんたがいなければ西大陸全土が終わってしまうんだぞ?」
「命の価値は数で決まるものではありません。私が立ち向かわなければならないのは、いつだって未来のためです」
ルークは心底呆れた顔をした。
「わかったよ……それじゃあ、作戦会議と行きましょうか?」
そして明け方一つの考えが浮かんだ。
「地下資源の採掘場の入り口を封印する?」
ルークとエヴァンはその言葉を聞いた時、驚きと呆れたような表情を浮かべた。
「そうです。一度採掘場を封印してしまえば戦争をする理由がなくなります。そのタイミングで終戦協定を結んで、話し合いの結果が出たら解除するというのはどうでしょうか?」
「無茶苦茶だ」
「だが、効果的かもしれない。両国とも疲弊し、戦争を止める理由を探している今なら可能性がある……上層部に掛け合ってくる」
エヴァンは食事をそのままに席を立った。
「あんた、そんなこと一晩中考えて寝不足なのか?」
「え、わかりますか?」
「隈が出来てる……本当にどうしようもないな、あんたの人助け癖は」
「呆れましたか?」
「とっくに。今はもう慣れた。あんた前におれのこと過大評価しているって言ったけど、あんたこそ自分の能力を過信し過ぎだよ。ごっそさん」
そう言い残してルークは立ち去った。
私はすっかり冷えた食事を口に運んだ。
その後、一時間ほどして帰り支度をしていた私の元をエレナ軍曹が現れた。
「至急、作戦本部にお越し願いたいとの伝令が入りました。こちらにどうぞ」
一際立派なテントにはずらりと連合軍の上層部が集まっていた。
連合軍らしくそれぞれ来ている軍服が違う。
その末席にエヴァンが直立不動し、手前の席にルークが座っていた。
「マヤ・クラキ殿、どうぞおかけください」
「ありがとうございます」
「それでは単刀直入にお尋ねしますが、エヴァン特務少尉から聞いた終戦案は貴方が考案されたということで間違いありませんか?」
「その通りです」
「短いながらも我々も検討した結果、有効な手段だという結論に達しました。しかし採掘場の入り口は、戦場の真っ最中にあり、両国が破れないほどの強力な封印を施す必要があります」
その言葉にルークはピクリと眉を動かす。
「それはもしや……我々に封印をしろと仰るのですか?」
「いかにも。青嵐の騎士ルーク殿と救国の聖女マヤ・クラキ殿ほどの魔力を持つ者は他におりません。この西大陸において最高峰の魔術師でしょう。ご助力願えませんでしょうか?」
「お断りします」
ルークの答えはにべも無かった。
「我々は西大陸の危機を救うべく、旅をしています。万が一のことがあれば、それはハーパー連邦とアーライ共和国だけに被害は留まりません。それは我々の任務ではなく、連合軍のなすべきことです。我々の旅の重要性をご理解いただきたい」
そこでルークは席を立った。
「ほら、行くぞ」
私にも離籍するよう促した。
私は黙ったまま、その場に座り続けていた。
ルークは苛立ったように私の手を取り、無理矢理立ち上がらせようとした。その手を振り払う。
「嫌です……ここでまた多くの人が死んでいくのを見るのは」
「まだそんなこと言ってるのか?」
「ペネロペ都市国家で嵐を食い止めた時、私は後悔しました。自己満足で行動してルークさんに迷惑をかけてしまったことを。だから、今度は自分でやります」
「あんたがいなければ西大陸全土が終わってしまうんだぞ?」
「命の価値は数で決まるものではありません。私が立ち向かわなければならないのは、いつだって未来のためです」
ルークは心底呆れた顔をした。
「わかったよ……それじゃあ、作戦会議と行きましょうか?」
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