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大陸放浪編
水面の都~出立~
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大事をとって、翌日私たちはペネロペ都市国家を出発することにした。
ルーク自身は大丈夫だと主張したが、まだ体内の魔力が不安定なことから休養を無理矢理取らせた。
ルークはがつがつと食事を摂り、その旺盛な食欲にリアンの私邸の料理長は驚かさせた。
「一週間寝てたんだぜ。腹くらい減るさ」
そう言いながらパスタをおかわりしていた。
あまりの食欲にメイドがちょっと引いていた。
これからハーパー連邦までの道のりは長く険しい。
そのため馬車での移動は難しいという結論になった。
私とリアンで二頭の馬を買いつけ、保存食も買い込んだ。
「ハーパー連邦まで少なくとも五つの国を越えなければならない。その上でアルカディア連峰とガダル連邦を避けて行くとなると三か月はかかるだろうね。鉄道が完成していたら違っていたんだろうけれど。これは各国での旅券と書類だ。これがあれば国境を越えられるだろう」
「ありがとうございます……今、エヴァンはハーパー連邦と戦争をしている地域にいるはずです。情勢はわかりますか?」
「おそらく、アーライ共和国との紛争だろう。危険な旅になるね」
「承知の上です」
そうかとリアンが小さく息をつくと、ポケットから小箱を取り出した。
「それはなんですか?」
「ペネロペ特産のガラス細工のイヤリングだ」
小箱を開けると深い青いガラス玉のイヤリングが入っていた。深い紺青の空に白い雲が渦を巻いているような複雑な色合いをしたガラス玉にはその中に金粉が散っている。
「ガラスには材料に土と水が使われ、火と風で作られる。四元素全ての力が集約されている。私自身の魔力も込めさせてもらった。少しは助けになるだろう」
「リアン先輩……ありがとうございます」
「実はこちらに来た時、君に似合うかなと思って買った品だったんだ。身に付けてくれると嬉しい」
リアンがゆったりと微笑んだ。私はそれを早速耳につけた。
「それから最後に一つ……」
「何ですか?」
私が首をかしげると耳元でちりんとイヤリングが鳴った。
「カードの占いで君は信用している人に裏切られると出ている……どうかくれぐれも用心してくれ」
私は小さく頷いて、リアンとともに外に出た。
そこには既に旅装に身を包んだルークが出発を待っていた。
「おせぇよ。一体いつまで待たせる気だ?」
「はいはい、すみませんでした。もう行きますから」
「あんた、だんだん雑な性格になってきたな」
「そうだったとしたら、誰かさんの影響ですよ。胸に手を当ててよく考えてください」
私がそう返すとルークはぶつくさ言いながら馬に乗り込んだ。
「それじゃあ、リアン先輩。どうぞご健勝で」
「マヤ君、君の旅の無事を祈るよ……本当は私も同行したいところだけれど、きっと君たちについていけないからね」
「はっ。よく分かってるじゃねぇか。あの坊ちゃんよりは身の程を知ってるな」
ルークはすかさず悪態をついた。
「ルークさんたら!それではリアン先輩、オーベロンの加護を解除させていただきます」
「どうぞ、今までありがとう」
オーベロンが現れると、リアンから金のクルミを抜き出すと一瞬で吸収した。
「リアン先輩! ではまたお会いしましょう!」
リアンが最後にまた私を抱きしめた。
「ああ、再会を楽しみにしているよ」
ルークが苦い顔をして馬を走らせた。
私も急いで馬に乗りその後を追いかけた。こうしてペネロペ都市国家を出立した。
ルーク自身は大丈夫だと主張したが、まだ体内の魔力が不安定なことから休養を無理矢理取らせた。
ルークはがつがつと食事を摂り、その旺盛な食欲にリアンの私邸の料理長は驚かさせた。
「一週間寝てたんだぜ。腹くらい減るさ」
そう言いながらパスタをおかわりしていた。
あまりの食欲にメイドがちょっと引いていた。
これからハーパー連邦までの道のりは長く険しい。
そのため馬車での移動は難しいという結論になった。
私とリアンで二頭の馬を買いつけ、保存食も買い込んだ。
「ハーパー連邦まで少なくとも五つの国を越えなければならない。その上でアルカディア連峰とガダル連邦を避けて行くとなると三か月はかかるだろうね。鉄道が完成していたら違っていたんだろうけれど。これは各国での旅券と書類だ。これがあれば国境を越えられるだろう」
「ありがとうございます……今、エヴァンはハーパー連邦と戦争をしている地域にいるはずです。情勢はわかりますか?」
「おそらく、アーライ共和国との紛争だろう。危険な旅になるね」
「承知の上です」
そうかとリアンが小さく息をつくと、ポケットから小箱を取り出した。
「それはなんですか?」
「ペネロペ特産のガラス細工のイヤリングだ」
小箱を開けると深い青いガラス玉のイヤリングが入っていた。深い紺青の空に白い雲が渦を巻いているような複雑な色合いをしたガラス玉にはその中に金粉が散っている。
「ガラスには材料に土と水が使われ、火と風で作られる。四元素全ての力が集約されている。私自身の魔力も込めさせてもらった。少しは助けになるだろう」
「リアン先輩……ありがとうございます」
「実はこちらに来た時、君に似合うかなと思って買った品だったんだ。身に付けてくれると嬉しい」
リアンがゆったりと微笑んだ。私はそれを早速耳につけた。
「それから最後に一つ……」
「何ですか?」
私が首をかしげると耳元でちりんとイヤリングが鳴った。
「カードの占いで君は信用している人に裏切られると出ている……どうかくれぐれも用心してくれ」
私は小さく頷いて、リアンとともに外に出た。
そこには既に旅装に身を包んだルークが出発を待っていた。
「おせぇよ。一体いつまで待たせる気だ?」
「はいはい、すみませんでした。もう行きますから」
「あんた、だんだん雑な性格になってきたな」
「そうだったとしたら、誰かさんの影響ですよ。胸に手を当ててよく考えてください」
私がそう返すとルークはぶつくさ言いながら馬に乗り込んだ。
「それじゃあ、リアン先輩。どうぞご健勝で」
「マヤ君、君の旅の無事を祈るよ……本当は私も同行したいところだけれど、きっと君たちについていけないからね」
「はっ。よく分かってるじゃねぇか。あの坊ちゃんよりは身の程を知ってるな」
ルークはすかさず悪態をついた。
「ルークさんたら!それではリアン先輩、オーベロンの加護を解除させていただきます」
「どうぞ、今までありがとう」
オーベロンが現れると、リアンから金のクルミを抜き出すと一瞬で吸収した。
「リアン先輩! ではまたお会いしましょう!」
リアンが最後にまた私を抱きしめた。
「ああ、再会を楽しみにしているよ」
ルークが苦い顔をして馬を走らせた。
私も急いで馬に乗りその後を追いかけた。こうしてペネロペ都市国家を出立した。
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