最強の聖女は恋を知らない

三ツ矢

文字の大きさ
上 下
41 / 198
魔法学園編

春の女神祭~本番~

しおりを挟む
 私は五人の候補者の最後の一人だった。

 皆流暢に春の歌を歌い上げていく。ついに私の番が回って来た。

「異世界からやって来た美少女マヤ・クラキさんです。どうぞ」

(美少女って紹介恥ずかしいな……)

 私は動悸を抑え、息を深く吸うと一気に歌い始めた。

「おお、素晴らしい自然の光。胸に輝く野は笑う。枝々に花は開き、茂みには鳥のさえずり。あふれ出る胸の喜び。大地よ、太陽よ、幸福よ、歓喜よ。少女よ、少女よ、僕は君を愛している。君の目は輝く。君は僕を愛している。ひばりが愛とそよ風を朝の花が空の香りを愛するように。新しい歌に舞踏に僕を駆り立てる。君よ、永遠に幸福であれ、僕への愛と共に……」


 伸びやかに声が春風と共に広がっていく。

 目を閉じて私は歌い切った。

 生徒たちは花を一輪ずつ春の女神に相応しいと思う人物の前の箱に入れていく。

 シャーロット、その友達の令嬢たち、デヴィン、リアン、エヴァン、そしてライアンが次々と私の箱に花を投じていく。

 その度に頬が焼けるように熱くなった。

 私の箱は花で溢れかえった。開票するまでも無く、私は春の女神に決定した。

 自分でも全く実感がなかった。

 一年前、女子力底辺の私が今こうして大勢の人の前に立っているなんて全く想像できなかった。


「おめでとう、マヤ殿」

 私は跪いてティアラをそっと頭に乗せてもらう。

 この瞬間だけ王国の危機のことを忘れていた。


 壇上を降りると下級生の男子生徒が私に近寄って来た。

「この後すぐにイーサン先生のところに来てほしいそうです」

「わかりました、伝言ありがとう」

 男子生徒は顔を赤くして走り去っていった。

 気が付くと周りにはライアン、エヴァン、デヴィン、リアン、シャーロットたちが揃っていた。

「おめでとう、マヤ。貴方なら絶対なれると思ったわ」

 シャーロットに抱きしめられた。

「シャーロットやみんなのお陰だよ、ありがとうございました……私、これからイーサン先生のところに行かなきゃいけないのでちょっと失礼します」

 皆何か言いたそうだったが、私は慌ててティアラを付けたまま、召喚の間へと急いだ。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

召喚アラサー女~ 自由に生きています!

マツユキ
ファンタジー
異世界に召喚された海藤美奈子32才。召喚されたものの、牢屋行きとなってしまう。 牢から出た美奈子は、冒険者となる。助け、助けられながら信頼できる仲間を得て行く美奈子。地球で大好きだった事もしつつ、異世界でも自由に生きる美奈子 信頼できる仲間と共に、異世界で奮闘する。 初めは一人だった美奈子のの周りには、いつの間にか仲間が集まって行き、家が村に、村が街にとどんどんと大きくなっていくのだった *** 異世界でも元の世界で出来ていた事をやっています。苦手、または気に入らないと言うかたは読まれない方が良いかと思います かなりの無茶振りと、作者の妄想で出来たあり得ない魔法や設定が出てきます。こちらも抵抗のある方は読まれない方が良いかと思います

お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……

karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

愛されない皇妃~最強の母になります!~

椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』 やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。 夫も子どもも――そして、皇妃の地位。 最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。 けれど、そこからが問題だ。 皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。 そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど…… 皇帝一家を倒した大魔女。 大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!? ※表紙は作成者様からお借りしてます。 ※他サイト様に掲載しております。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

そよ風と蔑まれている心優しい風魔法使い~弱すぎる風魔法は植物にとって最高です。風の精霊達も彼にべったりのようです~

御峰。
ファンタジー
才能が全てと言われている世界で、両親を亡くしたハウは十歳にハズレ中のハズレ【極小風魔法】を開花した。 後見人の心優しい幼馴染のおじさんおばさんに迷惑をかけまいと仕事を見つけようとするが、弱い才能のため働く場所がなく、冒険者パーティーの荷物持ちになった。 二年間冒険者パーティーから蔑まれながら辛い環境でも感謝の気持ちを忘れず、頑張って働いてきた主人公は、ひょんなことからふくよかなおじさんとぶつかったことから、全てが一変することになる。 ――世界で一番優しい物語が今、始まる。 ・ファンタジーカップ参戦のための作品です。応援して頂けると嬉しいです。ぜひ作品のお気に入りと各話にコメントを頂けると大きな励みになります!

処理中です...