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魔法学園編
春の女神祭~前触れ~
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ウィンターベルの熱も冷めやらぬまま、試験期間に突入した。
私は鍛錬と復習を行い、空いた時間は今までマナーや教養を教えてくれた令嬢たちに勉強を教えた。
ウィンターベルの後は何人かの女子生徒にすれ違いざまに憎まれ口を叩かれたり些細な嫌がらせが続いた。
「異邦人だから珍しがられてるだけなのに調子乗りすぎ」
「勉学よりも男漁りに精を出して救世主様は余裕でありますこと」
「なんでただの平民があのような扱いを受けるなんて」
そんなときも、シャーロットとシャーロットの仲間たちは私のことをずっと援護してくれた。
それがどれだけ心強かったことか、言葉では言い表せない。
試験勉強に付き合うのはせめてものお礼だった。
全ての試験が終わるころには季節は徐々に春へと向かっていた。
それはとうとう王国の危機がやってくることの前触れでもあった。
それから私は王国の危機について考えない日は無かった。
天災などの災害や戦争、クーデターなどの危機には一人ではとても対処できない。
私が防ぐことができる王国の危機とは何だろう。
自室の机で悩んでいるとシャーロットが息を切らせながら部屋に飛び込んできた。
「大変よ、マヤ! あなた春の女神祭にエントリーされたわ!」
「春の女神祭……って何?シャーロット」
ああ、もうとシャーロットの狐耳が焦れったそうにぴこぴこと動く。
そしてチラシの一枚を私に寄越した。
「三回生の女子の中から最も美しく賢く素晴らしい人格を持つ存在を選ぶのよ。選ばれたら卒業式で歌を送るしきたりになっているの。全校生徒の憧れなのよ」
「シャーロットも候補になってるじゃない」
「アタシなんてマヤの足元にも及ばないわ。アタシは候補を辞退するつもり……あなたこそ春の女神に相応しいわ。あなたは本当に自分の事がわかってないんだから。ちょっと鈍感すぎるわ」
「そんな、自信無いよ。私も辞退する」
「いいえ、これはみんなの総意なの。ねえ、みんな」
ドアに声をかけるとシャーロットの仲間の令嬢たちがどやどやと入って来た。
「マヤ様は立派なレディになられました」
「私たちが無事最終試験を通過できたのもマヤ様のお陰です」
「私たちの気持ちを汲んでぜひ、春の女神になってくださいませ」
「もしかして、私を推薦したのって皆さん?」
はいっと元気よく令嬢たちは返事をした。
「そう言う訳。それじゃあ、歌の特訓始めるわよ」
「え、歌の審査もあるの?!」
「当然。音楽室のカギはどこに?」
こちらにと令嬢の一人がカギを揺らした。こうして私は歌の特訓に励むことになった。
「素晴らしいわ、マヤ。少なくともダンスよりは才能があるわ」
「それは、良かったわ。シャーロット……」
それからは学園のいろんなところで男女問わず「応援してます」と声をかけられることが多くなってきた。そしてとうとう暦の上では春がやって来た。
私は鍛錬と復習を行い、空いた時間は今までマナーや教養を教えてくれた令嬢たちに勉強を教えた。
ウィンターベルの後は何人かの女子生徒にすれ違いざまに憎まれ口を叩かれたり些細な嫌がらせが続いた。
「異邦人だから珍しがられてるだけなのに調子乗りすぎ」
「勉学よりも男漁りに精を出して救世主様は余裕でありますこと」
「なんでただの平民があのような扱いを受けるなんて」
そんなときも、シャーロットとシャーロットの仲間たちは私のことをずっと援護してくれた。
それがどれだけ心強かったことか、言葉では言い表せない。
試験勉強に付き合うのはせめてものお礼だった。
全ての試験が終わるころには季節は徐々に春へと向かっていた。
それはとうとう王国の危機がやってくることの前触れでもあった。
それから私は王国の危機について考えない日は無かった。
天災などの災害や戦争、クーデターなどの危機には一人ではとても対処できない。
私が防ぐことができる王国の危機とは何だろう。
自室の机で悩んでいるとシャーロットが息を切らせながら部屋に飛び込んできた。
「大変よ、マヤ! あなた春の女神祭にエントリーされたわ!」
「春の女神祭……って何?シャーロット」
ああ、もうとシャーロットの狐耳が焦れったそうにぴこぴこと動く。
そしてチラシの一枚を私に寄越した。
「三回生の女子の中から最も美しく賢く素晴らしい人格を持つ存在を選ぶのよ。選ばれたら卒業式で歌を送るしきたりになっているの。全校生徒の憧れなのよ」
「シャーロットも候補になってるじゃない」
「アタシなんてマヤの足元にも及ばないわ。アタシは候補を辞退するつもり……あなたこそ春の女神に相応しいわ。あなたは本当に自分の事がわかってないんだから。ちょっと鈍感すぎるわ」
「そんな、自信無いよ。私も辞退する」
「いいえ、これはみんなの総意なの。ねえ、みんな」
ドアに声をかけるとシャーロットの仲間の令嬢たちがどやどやと入って来た。
「マヤ様は立派なレディになられました」
「私たちが無事最終試験を通過できたのもマヤ様のお陰です」
「私たちの気持ちを汲んでぜひ、春の女神になってくださいませ」
「もしかして、私を推薦したのって皆さん?」
はいっと元気よく令嬢たちは返事をした。
「そう言う訳。それじゃあ、歌の特訓始めるわよ」
「え、歌の審査もあるの?!」
「当然。音楽室のカギはどこに?」
こちらにと令嬢の一人がカギを揺らした。こうして私は歌の特訓に励むことになった。
「素晴らしいわ、マヤ。少なくともダンスよりは才能があるわ」
「それは、良かったわ。シャーロット……」
それからは学園のいろんなところで男女問わず「応援してます」と声をかけられることが多くなってきた。そしてとうとう暦の上では春がやって来た。
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