愛を語るは甘過ぎる

ヲサラ

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12.森の奥2

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「これで最後か?」

 穢れた手を振り払いながらリオリヤは呟いた。
 辺りには男たちが倒れており、ぴくりとも動かない。主犯格に近い者たちと踏んで期待していたが、骨のある者は誰一人とておらず、あまりにも呆気ない幕切れに大きなため息が零れた。

「ぁ……ぁ……」

 か細い声が聞こえた気がして顔を向けると、真っ青な顔をした男が腰を抜かしていた。

「なんだ、まだ残っているじゃないか」
 
 この男は確か、と眉を顰める。
 反逆者たちが現れた時、この男は他の者たちへ指示を出しているように見えた。つまりはこの集団の頭だ。
 丁度良いと、リオリヤはゆっくり男へと近づく。すると男は悲鳴を上げて、持っていた、革のケースに入ったままのナイフを投げつけてきた。
 しかしリオリヤにそんな無闇に投げた物が当たる筈はなく、容易く躱すと男を睨みつけた。

「ひぃいいいッ」

  フードの下でギラギラと光る赤い目を見た男は、また悲鳴を上げて、無様にも逃げ出そうとした。

 おっと──。

 リオリヤは中指に力を込めると、ピンッと指を弾いた。すると男は背中に何かが当たり、盛大に顔からすっ転んだ。
 しかし辺りには何もなく、泥に塗れた情けない顔をきょろきょろさせて辺りを見渡すと、尻尾を巻いて何処かへ逃げて行った。
 その様子を見ていたリオリヤはにやりと笑みを浮かべた。

マーキングは付けた。ちゃんと隠れ家へ帰ってくれよ」

 足元には先ほど男が投げて来たナイフが落ちていた。
 ナイフの柄の部分は綺羅びやかな装飾があり、ケースと革は上質だ。こんなものを持っているとなれば、どこかの貴族が手を貸していると言うことだ。
 皮のケースにはご丁寧に家紋が描かれており、どこの貴族バカなのかと確認して、眉を顰めた。

「あの馬鹿、今そんな所にいるのか」

 馬鹿はずっと馬鹿なのかと、呆れて物も言えなかった。
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