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54話 願いを叶える魔眼
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馬車の中、やっとヨハンネスたちのことを書かれた新聞を読めている。
「国を陥れようとしたセモツ国スパイをヴィエレラシ騎士団長が捕らえる、か……」
新聞記事になった二人の逮捕の件はなぜか騎士団長が怒りで自らの服を破くという伝説を残した。
「騎士団長の伝説……逸話が増えましたね」
「君の魔眼のことが知られなければいいだろう」
「そうですけど……オレン、あの場所よく分かりましたね?」
「王都で初めて会った時から調べていたからな」
簡単な話、いくらセモツ国が薬を持ち込みキルカス王国を滅ぼしやすくするため動いていたとしても蔓延するには早すぎるし範囲も広いと。
物流関係者はあらかじめチェックをいれていた。そこにヨハンネスが私の前に現れる。そもそも画材屋付近はヨハンネスの管轄じゃないし、特定の騎士……ペッタ・ヴィルタネンとやたら懇意にしていたから疑われていた。
「ペッタは姓を偽っていた。ヴィルタネン伯爵家にあの年頃の男児は生まれていない」
騎士団は身辺調査も行っていてヴィルタネン騎士が入団できたのがそもそもおかしかった。どこにも面談の形跡も入団審査もないまま存在していてすぐに伯爵家に調べをいれても親族に該当者はいない。早い段階で彼が怪しいと思って敢えて泳がせていた。
体調不良者が増えすぎているというのも敢えて出した偽の情報で、いくらかの騎士は見えないところでヴィルタネン騎士を追跡していたらしい。
「ミナの魔眼は予想外だったが、被害を最小限にしつつ動けていたな」
王都の結婚詐欺師ヴァレデラと繋がっていることもすぐに分かった。被害女性は家の名誉から口を閉ざす傾向にあったので現行犯に近い形がいいだろうと好機をみていた。詐欺師を特定した時、ライネ公爵令嬢が被害にあっていてライネ公爵確認の上、ライネ公爵令嬢と会う時に捕まえる流れになった。彼女の名誉もあったけど本人には今、別の縁談がきてるぐらいだから大丈夫だろう。
「香料のことはずっとルーラ嬢のせいだと思ってました」
南端ラヤラの王女拉致監禁に関与、隣国ソッケの混乱を意図的に招き、ドゥエツ王国にも影響を及ぼそうとしていたセモツ国の最たる重要人物。
彼女のことはほぼ知らない。なのに彼女が悪だと、キルカス王国で起きたすべての主犯だと思っていた。
「彼女は確かに多くの悪事に加担している。香料の件もセモツ国がやったことだ。ルーラ嬢がセモツ国のスパイであるなら、彼女が主犯という思考に繋がってもおかしくない」
結果的に、セモツ国との戦争は我々六カ国連合の勝利で終わり、香料を不法に流通していたヨハンネスは家ごと失い国を去った。ヴィルタネンもといペッタ騎士と結婚詐欺師ヴァレデラは海を渡った南の大陸にある国際裁判所に判断を委ねられ裁判が続いている。
「結果的にミナの魔眼は中々解決できなくて時間がかかってしまったのはいくら謝っても足りない」
「いえ、特殊でしたし」
体調不良を招かず魔法が目に宿るなんて、魔法を知らないキルカスでどうにかできるとは思えない。
「それにオレンがずっと助けてくれました」
「……ミナがそう言ってくれるなら助かる」
馬車が止まる。先に出たオレンが手を差し出した。
彼の柔らかいグレーの瞳がこちらを見上げる。
「切り替えよう。今夜は歓迎の宴だ」
「ええ」
二人並んで会場に入る。
今日は魔法大国ネカルタスから来た特使のための社交界だ。
会場は既に賑わっていて、王陛下が来る前に特使ブルタス・パディーテ・アティーテと挨拶をかわす。
「アティーテ特使のおかげで香料の特効薬ができて大変助かりました」
「いえいえ」
私の血が役に立ったことは伏せて話してくれている。医師団には血清ワクチンの作り方を教える手前、話さざるを得なかったけど、こうした場で無闇に広めないでくれるのは助かった。
「ありがとうございます。我が国の医療面もかなり飛躍しました。これからもよろしくお願いします」
周囲を目だけで確認したアティーテ特使がさっきよりも小さな声で告げる。
「ヘイアストインさんは魔眼変わりませんね」
「あはは……」
ヨハンネスに拉致されて助けてもらった時も破いてしまったし、最近筋肉のことを考えてなくても破れるから困っていると伝えるとアティーテ特使は面白いと笑った。
「ヘイアストインさんの願いを叶えてますね~」
「私、あんなシリアスな場で筋肉見たかったんですか……」
違いますよ、とさらに笑う。
「願い求める存在がヴィエレラシ騎士団長なだけです。まあ彼への強い想いが服を破いたと言いますか」
「え?」
「え?」
「愛で服が破れるって面白いですね~! 笑い上戸な奴が知り合いでいるんですが、そいつに知れたら一日笑ってますよ」
いやいやいやまって?
強い想い?
愛で服が破れる?
まって!
気持ち知られちゃうじゃない!
こんな何気ない会話で知られたくないんだけど!
「国を陥れようとしたセモツ国スパイをヴィエレラシ騎士団長が捕らえる、か……」
新聞記事になった二人の逮捕の件はなぜか騎士団長が怒りで自らの服を破くという伝説を残した。
「騎士団長の伝説……逸話が増えましたね」
「君の魔眼のことが知られなければいいだろう」
「そうですけど……オレン、あの場所よく分かりましたね?」
「王都で初めて会った時から調べていたからな」
簡単な話、いくらセモツ国が薬を持ち込みキルカス王国を滅ぼしやすくするため動いていたとしても蔓延するには早すぎるし範囲も広いと。
物流関係者はあらかじめチェックをいれていた。そこにヨハンネスが私の前に現れる。そもそも画材屋付近はヨハンネスの管轄じゃないし、特定の騎士……ペッタ・ヴィルタネンとやたら懇意にしていたから疑われていた。
「ペッタは姓を偽っていた。ヴィルタネン伯爵家にあの年頃の男児は生まれていない」
騎士団は身辺調査も行っていてヴィルタネン騎士が入団できたのがそもそもおかしかった。どこにも面談の形跡も入団審査もないまま存在していてすぐに伯爵家に調べをいれても親族に該当者はいない。早い段階で彼が怪しいと思って敢えて泳がせていた。
体調不良者が増えすぎているというのも敢えて出した偽の情報で、いくらかの騎士は見えないところでヴィルタネン騎士を追跡していたらしい。
「ミナの魔眼は予想外だったが、被害を最小限にしつつ動けていたな」
王都の結婚詐欺師ヴァレデラと繋がっていることもすぐに分かった。被害女性は家の名誉から口を閉ざす傾向にあったので現行犯に近い形がいいだろうと好機をみていた。詐欺師を特定した時、ライネ公爵令嬢が被害にあっていてライネ公爵確認の上、ライネ公爵令嬢と会う時に捕まえる流れになった。彼女の名誉もあったけど本人には今、別の縁談がきてるぐらいだから大丈夫だろう。
「香料のことはずっとルーラ嬢のせいだと思ってました」
南端ラヤラの王女拉致監禁に関与、隣国ソッケの混乱を意図的に招き、ドゥエツ王国にも影響を及ぼそうとしていたセモツ国の最たる重要人物。
彼女のことはほぼ知らない。なのに彼女が悪だと、キルカス王国で起きたすべての主犯だと思っていた。
「彼女は確かに多くの悪事に加担している。香料の件もセモツ国がやったことだ。ルーラ嬢がセモツ国のスパイであるなら、彼女が主犯という思考に繋がってもおかしくない」
結果的に、セモツ国との戦争は我々六カ国連合の勝利で終わり、香料を不法に流通していたヨハンネスは家ごと失い国を去った。ヴィルタネンもといペッタ騎士と結婚詐欺師ヴァレデラは海を渡った南の大陸にある国際裁判所に判断を委ねられ裁判が続いている。
「結果的にミナの魔眼は中々解決できなくて時間がかかってしまったのはいくら謝っても足りない」
「いえ、特殊でしたし」
体調不良を招かず魔法が目に宿るなんて、魔法を知らないキルカスでどうにかできるとは思えない。
「それにオレンがずっと助けてくれました」
「……ミナがそう言ってくれるなら助かる」
馬車が止まる。先に出たオレンが手を差し出した。
彼の柔らかいグレーの瞳がこちらを見上げる。
「切り替えよう。今夜は歓迎の宴だ」
「ええ」
二人並んで会場に入る。
今日は魔法大国ネカルタスから来た特使のための社交界だ。
会場は既に賑わっていて、王陛下が来る前に特使ブルタス・パディーテ・アティーテと挨拶をかわす。
「アティーテ特使のおかげで香料の特効薬ができて大変助かりました」
「いえいえ」
私の血が役に立ったことは伏せて話してくれている。医師団には血清ワクチンの作り方を教える手前、話さざるを得なかったけど、こうした場で無闇に広めないでくれるのは助かった。
「ありがとうございます。我が国の医療面もかなり飛躍しました。これからもよろしくお願いします」
周囲を目だけで確認したアティーテ特使がさっきよりも小さな声で告げる。
「ヘイアストインさんは魔眼変わりませんね」
「あはは……」
ヨハンネスに拉致されて助けてもらった時も破いてしまったし、最近筋肉のことを考えてなくても破れるから困っていると伝えるとアティーテ特使は面白いと笑った。
「ヘイアストインさんの願いを叶えてますね~」
「私、あんなシリアスな場で筋肉見たかったんですか……」
違いますよ、とさらに笑う。
「願い求める存在がヴィエレラシ騎士団長なだけです。まあ彼への強い想いが服を破いたと言いますか」
「え?」
「え?」
「愛で服が破れるって面白いですね~! 笑い上戸な奴が知り合いでいるんですが、そいつに知れたら一日笑ってますよ」
いやいやいやまって?
強い想い?
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