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53話 離れたくない
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「あんたなんかの言いなりにならない!」
「なんだと?!」
「あ、やば大声はまずいですって」
何度も蹴ってヨハンネスを牽制する。掴んだ手は離れてくれない。
けど確実にダメージにはなっている。
「ぐっ、この、俺の言う通りにっ、してれば、よかったんだ! 絵もやめて、不相応にも! あいつを選ばなければ」
「私のことは私が決める!」
当たりどころがよかったのかヨハンネスが呻いて手の力を緩めた。足が自由になり、完全にヨハンネスの手がはなれる。
急いで立ち上がろうと足に力をいれると痛みに膝をついてしまった。
「くそっ」
「私はオレンも絵も選ぶ!」
お腹に力をいれて立ち上がる。痛みはあるけど動かせそうだ。
「んの、やろう」
「これからは好きに描くし、オレンの側にいると決めたの。あんたの言うことはきかない!」
「うっせえな! いい加減にしろ!」
ヨハンネスが腕を振りかぶった。殴られたら吹っ飛ばされる。それをうまく利用して距離をとるしかない。意識を保てるよう当たりどころを緩和するために両腕でガードして来るだろう衝撃に備えた。
「っが?!」
「……?」
衝撃音があったのに痛みもなく飛ばされてもいない。腕でガードしていた隙間から覗くと大きな背中が見えた。
「……あ」
すぐに分かった。私は何度もこの背中に助けられたもの。
好きになった瞬間のことが鮮烈に思い出される。
「オレン」
ハイライトが美しいバイアージュブロンドが目に焼き付く。少しこちらに顔を向けすぐに背を向けた。
「捕らえろ!」
地響きと勇ましい多くの声が轟き騎士が現れる。逃げようとしたヴィルタネン騎士もすぐに捕らえられ、ヨハンネスはオレンに殴られたようで顔を半分腫らしてぐったりしていた。
「ミナ」
呼ばれ見上げると眉を寄せて今にも泣きそうなオレンの姿があった。
「ミナ、怪我は?!」
切羽詰まった声音に、私の肩に置かれた手は僅かに震えている。
大丈夫だと伝えるためにオレンの手に自分の手を重ねた。するりととってそのまま彼の掌に頬を寄せる。
「ミナ?」
「……大丈夫です」
「……ミナ」
「オレンが助けてくれたので、怪我はありません」
今度こそ泣いてしまうと思えるほどグレーの瞳が揺れた。その瞳に映る私もオレンと同じような顔をして揺れている。
「……ミナ!」
そのまま抱き締められる。
「よかった」
間に合って本当によかったと掠れた声が耳を通る。
「私が気を付けていればこんなことには」
「いえ、」
応える前に、さらに強く抱き締められた。
「むぎゅ」
「よかった」
同じ言葉を何度も囁く。気持ちは分かるけど、恥ずかしさが募るからいったんやめてほしい。
「痛……」
「どうした?」
ヨハンネスに掴まれ続けた足に急に痛みが戻ってきた。気が抜けたのかな。
足のことを話すとオレンは眉を寄せ眉間の皺を深くした。次に私の膝裏と背中に腕を回して横抱きに持ち上げる。
まって、これはだめ!
「だ、大丈夫です! 歩けますから」
「駄目だ。痛めているなら医師に診せてからにしなさい」
「い、いったんおろしてください! 少し離れましょう!」
お姫様抱っこは恥ずかしすぎるもの!
現場に騎士が残ってるんだから見られてしまう。
なのにとどめをさすような甘くて熱い言葉がやってくる。
「心配なんだ。離れたくない」
パアアァン!!
「……」
「……」
「あれ、団長いかがしました?」
「まさか敵がまだ?!」
戸惑う騎士団員を事故だとおさめて現場の確認を先にと促す。
オレンの左胸には変わらない画面と文字が見えた。
『全体バランス10! おめでとうございます!』
私の魔眼は変わらず通常運行のよう。
指示を受ける騎士の鎧に映る私のステータスが祝福していた。
『服を破くスキルが8.5にレベルアップ! 鎧もへっちゃらです!』
色々台無し。
「なんだと?!」
「あ、やば大声はまずいですって」
何度も蹴ってヨハンネスを牽制する。掴んだ手は離れてくれない。
けど確実にダメージにはなっている。
「ぐっ、この、俺の言う通りにっ、してれば、よかったんだ! 絵もやめて、不相応にも! あいつを選ばなければ」
「私のことは私が決める!」
当たりどころがよかったのかヨハンネスが呻いて手の力を緩めた。足が自由になり、完全にヨハンネスの手がはなれる。
急いで立ち上がろうと足に力をいれると痛みに膝をついてしまった。
「くそっ」
「私はオレンも絵も選ぶ!」
お腹に力をいれて立ち上がる。痛みはあるけど動かせそうだ。
「んの、やろう」
「これからは好きに描くし、オレンの側にいると決めたの。あんたの言うことはきかない!」
「うっせえな! いい加減にしろ!」
ヨハンネスが腕を振りかぶった。殴られたら吹っ飛ばされる。それをうまく利用して距離をとるしかない。意識を保てるよう当たりどころを緩和するために両腕でガードして来るだろう衝撃に備えた。
「っが?!」
「……?」
衝撃音があったのに痛みもなく飛ばされてもいない。腕でガードしていた隙間から覗くと大きな背中が見えた。
「……あ」
すぐに分かった。私は何度もこの背中に助けられたもの。
好きになった瞬間のことが鮮烈に思い出される。
「オレン」
ハイライトが美しいバイアージュブロンドが目に焼き付く。少しこちらに顔を向けすぐに背を向けた。
「捕らえろ!」
地響きと勇ましい多くの声が轟き騎士が現れる。逃げようとしたヴィルタネン騎士もすぐに捕らえられ、ヨハンネスはオレンに殴られたようで顔を半分腫らしてぐったりしていた。
「ミナ」
呼ばれ見上げると眉を寄せて今にも泣きそうなオレンの姿があった。
「ミナ、怪我は?!」
切羽詰まった声音に、私の肩に置かれた手は僅かに震えている。
大丈夫だと伝えるためにオレンの手に自分の手を重ねた。するりととってそのまま彼の掌に頬を寄せる。
「ミナ?」
「……大丈夫です」
「……ミナ」
「オレンが助けてくれたので、怪我はありません」
今度こそ泣いてしまうと思えるほどグレーの瞳が揺れた。その瞳に映る私もオレンと同じような顔をして揺れている。
「……ミナ!」
そのまま抱き締められる。
「よかった」
間に合って本当によかったと掠れた声が耳を通る。
「私が気を付けていればこんなことには」
「いえ、」
応える前に、さらに強く抱き締められた。
「むぎゅ」
「よかった」
同じ言葉を何度も囁く。気持ちは分かるけど、恥ずかしさが募るからいったんやめてほしい。
「痛……」
「どうした?」
ヨハンネスに掴まれ続けた足に急に痛みが戻ってきた。気が抜けたのかな。
足のことを話すとオレンは眉を寄せ眉間の皺を深くした。次に私の膝裏と背中に腕を回して横抱きに持ち上げる。
まって、これはだめ!
「だ、大丈夫です! 歩けますから」
「駄目だ。痛めているなら医師に診せてからにしなさい」
「い、いったんおろしてください! 少し離れましょう!」
お姫様抱っこは恥ずかしすぎるもの!
現場に騎士が残ってるんだから見られてしまう。
なのにとどめをさすような甘くて熱い言葉がやってくる。
「心配なんだ。離れたくない」
パアアァン!!
「……」
「……」
「あれ、団長いかがしました?」
「まさか敵がまだ?!」
戸惑う騎士団員を事故だとおさめて現場の確認を先にと促す。
オレンの左胸には変わらない画面と文字が見えた。
『全体バランス10! おめでとうございます!』
私の魔眼は変わらず通常運行のよう。
指示を受ける騎士の鎧に映る私のステータスが祝福していた。
『服を破くスキルが8.5にレベルアップ! 鎧もへっちゃらです!』
色々台無し。
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