溺愛の始まりは魔眼でした。騎士団事務員の貧乏令嬢、片想いの騎士団長と婚約?!

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34話 祝賀会

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「此度は六ヶ国の協力なくしては成し得なかった。皆、楽しんでほしい」

 セモツ国と我が国含めた六ヶ国との戦いはあっさり終わった。というのも、六ヶ国の中にあの魔法大国ネカルタスがいたからだ。海を挟んだ北側三国のドゥエツ・ソッケ・キルカス、海を挟んだ南側大陸北に位置するソレペナ・ファンティヴェウメシイ・ネカルタス、この六ヶ国で協定を結びセモツとの戦いの望んだ結果は当然こちらの勝利で終えた。鎖国し他国と関わりを一切持たなかったネカルタスが動いたことがターニングポイントだろう。
 この国が出てきたに加え、ループト公爵令嬢の活躍が大きい。ループト公爵令嬢は戦争を想定して海賊の数を秘密裏に減らしていた。戦争を予測し被害を最小限にできるなんて常人には考え及ばない。さらっとやれてるあたり彼女は特別なのだろう。筋肉見たいなんて思ってごめんなさいだ。
 そして今は終戦後の祝賀会。

「書類終わってよかったですね……」
「そうだな」

 ラヤラの表彰式と同じものを使うからと断ったのに、新しいドレスをプレゼントされ磨かれ着せられオレンの隣に再び立っている。
 数時間前までセモツ戦の残務処理で働いていたのが嘘のようだ。

「団長少しいいですか?」
「ああ」

 騎士に声をかけられ、ちらりと私を見下ろすオレンにどうぞと伝えて一時別れる。今回ソレペナ王国のアイサルガー騎士団長が来ているのでその対応だろう。さっき挨拶したけど両国共に良好な関係を築けそうな雰囲気だった。よかった。

「ちょっとあなた」
「……私ですか?」
「ええ……ヘイアストイン男爵令嬢、でしたかしら?」

 キルカス王国の人のようだけど、いまいち記憶にない。コルホネン令嬢の友人ぽい気がする。何度か話してたのを仕事の折、見たような?

「ええと、コルホネン公爵令嬢はこちらにはおりません」
「わたくしは貴方に用があるのです」
「私ですか」

 コルホネン令嬢と同じく高飛車な感じはするものの、品で言うならコルホネン公爵令嬢の方がワンランクもツーランクも上とみた。目の前のご令嬢は多少小物感がする。

「貴方、表彰式もヴィエレラシ侯爵令息のお相手でしたわね?」

 表彰式に参加していた令嬢、ということは高爵位……となると、言うことは身の程を知れ系かな。

「男爵という身分でヴィエレラシ侯爵令息のお相手など、務まらないのではなくて?」

 ドンピシャ!

「しかも二度目のラヤラ領遠征まで行ったそうね? その身分でソレペナ王国の王女殿下、ドゥエツ王国の外交特使ループト公爵令嬢のお相手までされたとか」

 貴族の情報網は早くて的確。都合の悪い部分まで広まっているかが気になるけど、なるたけ私からは話さないようにしないと。

「勘違いされるのも無理ありませんが、本来その役目を貴方のような身分の低い人間がするべきではありません。せめてまともな教育を受け、淑女として振る舞いをできれば話は別ですが」

 それすらも劣っている、ということらしい。
 貴族院は中退、ずっと仕事ばかりでお茶会や社交界は不参加、自分の力で開催することもなかった。

「場違いという自覚はおありなのかしら?」

 祝賀会なんだから、ただ祝って喜んでればいいじゃない。
 確かに今までの遠征は、魔眼と筋肉が絡んでいて私利私欲の部分もある。けど仕事はこなした。
 さっきまで戦争の書類処理こなしてたんだから。なんならやってみればいいと言いたくなるのを抑える。

「私は自分の職務を全うしただけです」
「その職務が分相応なのかと問うているのです」
「貴方方」

 目の前の令嬢の言葉を止めた。ぴしゃりと言う力強さにコルホネン公爵令嬢とすぐに気づく。目の前の令嬢が目の色を変えてコルホネン公爵令嬢に挨拶した。

「コルホネン公爵令嬢につきましては、前線で戦う騎士の方々に支援物資を惜しみ無く送ったと。さすがコルホネン公爵家、王国三大家門ですわ」
「私は当然の事をしたまでです」
「まあご謙遜を」
「ですが現場で働く者が一番でしょう。ラヤラ領遠征にしろ、セモツ王国との戦争にしろ前線は命の危険が及ぶ場所。志願して現場に出た方々こそ評価されるべきではないかしら。貴方方もそう思いませんこと?」

 周囲で見ているだけだった令嬢たちに話を振ると周囲が頷く。コルホネン公爵令嬢の立場もあって彼女に同意するしかないようだ。
 あれ、コルホネン公爵令嬢ってば、もしかして助けてくれてる? いつも絡んできてるのに?

「コルホネン公爵令嬢」

 私の視線に少し身体を揺らして目を逸らされた。耳が赤いから照れ隠しでいいの?

「別に、私は当たり前にしたことに対して相応の評価は当然だと言いたいだけで」
「はい! ありがとうございます!」
「わ、私は何も……」

 それでも評価してくれるなんて今までなかったから嬉しい。
 どこかの令嬢は気まずくなったのか、コルホネン公爵令嬢に一礼して去った。

「ああ、そうでした。ヘイアストイン男爵令嬢」
「はい」
「事務室にあった貴方の風景画に買い手が現れました」
「はひ?」
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