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45話後編 もう一度逆行する(D)
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リラの背後に突然現れた羽狩りに対し、彼女は大きな龍の翼を出して宙を撫でた。その風の勢いで羽狩りを吹っ飛ばす。
飛ばされた羽狩りは木にぶつかって意識を失うと同時、四方から別の部隊が現れる。
これは兄直轄の騎士か。
「フィー」
「はい」
こちらに向けられた銃を全て撃ち落とす。
見える者達の銃を落としたのに、何故か銃声が僕ら襲った。
「おっと」
さらに背後に控えていたか。
それも撃ち落とそうと思った矢先、銃を失った騎士が剣を片手に向かってきた。
「往生際悪っ」
「はは、さすがお前の国で鍛えてるだけあるな」
「笑ってる場合じゃないだろう!」
襲われているのにリラはそんなこと意に返さず、するりと自身に向けられている攻撃をかわしている。
こちらは分が悪い。
近接戦に持ち込まれた者は、動けなくなるよう手足を撃つしかないけど、茂みの奥の見えづらい場所に控えて撃ってくる輩もどうにかしないといけない。
「主人!」
「ちっ」
僅かに掠る。
兄に撃たれた時とは程遠く、さした傷ではない。
「やっぱり、奥からどうにか、するか」
銃弾の方向から推測で撃ってみるけど、命中率は半々。
フィーだけでも、あちら側へ行かせたいけど、それも騎士たちが許さない。
どちらも同時に減らしていくしかないのか。
「二丁持ってくるべきだったかな」
「二丁……」
フィーが何かに気付いた。
「主人、これを」
「え?」
自分の銃を寄越してきた。
フィーは空いた手にあちら側の剣を奪い持つ。
「あ、なるほど」
「こちらはこれで対応します」
「オッケー、じゃ僕は」
さっさと撃ち落とす。
作業効率が捗るってこういうことかな。
対応出来る範囲が広がったから、フィーを撃とうとする方向も、僕を狙う方向も同時にカバーできる。
近接の騎士はフィーがうまいところで対応してくれる。
「あと少し」
銃弾の数が減っていく。
そこから算出するに後二人というところだった。
「げ」
光るものが飛んでくるから避けたものの、それは僕の持つ銃に刺さった。
よりによって銃身。
生きてる方の銃を放てば、返ってくる銃声が消えた。
どうやら全て撃ち落としたらしい。
「主人!」
「!」
やっぱり油断は禁物だよ。
倒れたはずの騎士が半身立ち上がって剣を横に振った。
避けきれず、僕の脇腹を掠る。
「またここかよ……」
膝を折るほどではないにしろ血は流れる。
応急処置はしておきたいけど、まだ動ける騎士達をどうしたものかと思ったところに、僕らの背後からドゥファーツの騎士が走り込んで来た。
今度はこちらが数で有利になり、銃を落とした兄の部隊を取り押さえた。
急に騒がしくなる中、なんとか血を止める応急処置を施す。
「フィー」
「はい」
「捕らえた者の処遇は僕が決める。あちらで拘束してもらう事も踏まえて了承とってきて」
「畏まりました」
捕らえた者達と一緒に城へ戻らせる。
「私は火を消そう」
「リラ」
言って羽ばたいていく。
そこに入れ違いでやって来たのはラウラだった。
驚きに駆け寄る。間違いなく彼女だった。
「ダーレ」
「ラウラ、来ちゃだめって」
「怪我、したのね」
「あ、ああ、大丈夫。もう血は止まっているから」
「……お願いがあるの」
燃え盛る炎の中、ラウラが揺れることない瞳で僕を射る。
決めてしまっている事を悟った。
「戻すわ」
「ラウラ」
「お願い、やらせて」
血が滲んだ所を触れるか触れないかの近さで細い指を寄せてくる。
その時リラが言った、僕の為に魔法を使う、という言葉を思い出した。
「……いいよ」
「ダーレ」
彼女の手をとった。
血の気が引いたのだろう、冷えて僅かに震えていた。
「戻ったら、こいつらまた殴れるし」
軽く笑えば、ラウラはありがとうと小さく囁く。
「やるわ」
「うん」
ラウラの瞳が金に変わり、同時周囲が戻り始める。
戻ったのは、その日の夕餉の前だった。
飛ばされた羽狩りは木にぶつかって意識を失うと同時、四方から別の部隊が現れる。
これは兄直轄の騎士か。
「フィー」
「はい」
こちらに向けられた銃を全て撃ち落とす。
見える者達の銃を落としたのに、何故か銃声が僕ら襲った。
「おっと」
さらに背後に控えていたか。
それも撃ち落とそうと思った矢先、銃を失った騎士が剣を片手に向かってきた。
「往生際悪っ」
「はは、さすがお前の国で鍛えてるだけあるな」
「笑ってる場合じゃないだろう!」
襲われているのにリラはそんなこと意に返さず、するりと自身に向けられている攻撃をかわしている。
こちらは分が悪い。
近接戦に持ち込まれた者は、動けなくなるよう手足を撃つしかないけど、茂みの奥の見えづらい場所に控えて撃ってくる輩もどうにかしないといけない。
「主人!」
「ちっ」
僅かに掠る。
兄に撃たれた時とは程遠く、さした傷ではない。
「やっぱり、奥からどうにか、するか」
銃弾の方向から推測で撃ってみるけど、命中率は半々。
フィーだけでも、あちら側へ行かせたいけど、それも騎士たちが許さない。
どちらも同時に減らしていくしかないのか。
「二丁持ってくるべきだったかな」
「二丁……」
フィーが何かに気付いた。
「主人、これを」
「え?」
自分の銃を寄越してきた。
フィーは空いた手にあちら側の剣を奪い持つ。
「あ、なるほど」
「こちらはこれで対応します」
「オッケー、じゃ僕は」
さっさと撃ち落とす。
作業効率が捗るってこういうことかな。
対応出来る範囲が広がったから、フィーを撃とうとする方向も、僕を狙う方向も同時にカバーできる。
近接の騎士はフィーがうまいところで対応してくれる。
「あと少し」
銃弾の数が減っていく。
そこから算出するに後二人というところだった。
「げ」
光るものが飛んでくるから避けたものの、それは僕の持つ銃に刺さった。
よりによって銃身。
生きてる方の銃を放てば、返ってくる銃声が消えた。
どうやら全て撃ち落としたらしい。
「主人!」
「!」
やっぱり油断は禁物だよ。
倒れたはずの騎士が半身立ち上がって剣を横に振った。
避けきれず、僕の脇腹を掠る。
「またここかよ……」
膝を折るほどではないにしろ血は流れる。
応急処置はしておきたいけど、まだ動ける騎士達をどうしたものかと思ったところに、僕らの背後からドゥファーツの騎士が走り込んで来た。
今度はこちらが数で有利になり、銃を落とした兄の部隊を取り押さえた。
急に騒がしくなる中、なんとか血を止める応急処置を施す。
「フィー」
「はい」
「捕らえた者の処遇は僕が決める。あちらで拘束してもらう事も踏まえて了承とってきて」
「畏まりました」
捕らえた者達と一緒に城へ戻らせる。
「私は火を消そう」
「リラ」
言って羽ばたいていく。
そこに入れ違いでやって来たのはラウラだった。
驚きに駆け寄る。間違いなく彼女だった。
「ダーレ」
「ラウラ、来ちゃだめって」
「怪我、したのね」
「あ、ああ、大丈夫。もう血は止まっているから」
「……お願いがあるの」
燃え盛る炎の中、ラウラが揺れることない瞳で僕を射る。
決めてしまっている事を悟った。
「戻すわ」
「ラウラ」
「お願い、やらせて」
血が滲んだ所を触れるか触れないかの近さで細い指を寄せてくる。
その時リラが言った、僕の為に魔法を使う、という言葉を思い出した。
「……いいよ」
「ダーレ」
彼女の手をとった。
血の気が引いたのだろう、冷えて僅かに震えていた。
「戻ったら、こいつらまた殴れるし」
軽く笑えば、ラウラはありがとうと小さく囁く。
「やるわ」
「うん」
ラウラの瞳が金に変わり、同時周囲が戻り始める。
戻ったのは、その日の夕餉の前だった。
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