66 / 79
43話後編 答え合わせ、終わり(D)
しおりを挟む
「破棄はとうにしていたよ」
「ちょっとまって」
いやいや、簡単に言うけど貴族間であってもなくても、破棄となったら慰謝料の話題も出てしまうし、国同士の争いの火種にだってなりうるのに?
そんな簡単にできないはずなんだけど?
まあラウラがあんなに気軽に破棄どうこう言ってたから、この国では軽く出来る価値観なのかもしれないけど。
「まあ一度破棄をした後に、ディーとあちらの王族の申し入れで、再婚約の形をとったかな?」
「なんだ、ならいいよ」
「ディー達は不思議な事を言っていたね。きっと二人が変えてくれるからと」
「なにを?」
「それは歴史でも見ておいで。誓約の内容に描かれているから」
もう城に保管されてる歴史を見る気はないからなあ。誓約については考え及ばない。
「リラ、ラウラが僕と一緒にいたのに魔法を使えたのは」
「お前の推測は?」
「これだけは確実な予測が出来なかったよ。まあ格好いいこと言うと、愛の力的な?」
「ふむ、ださいな」
「ひどい」
事実、僕とラウラの種族間で交わされた誓約というもののせいで、ラウラ側の魔法が使えないという事は理解出来る。
けどその前提の中で、僕の脇腹の傷さえ逆行して治すには至らないはずだ。治癒関係のものだけ有効だとしたら、ラウラの姉の魔法が僕には有効のはずだから。
「あの子の認識が変わったからさ」
「え?」
「あの子は自由に使えるという認識から、私利私欲では使えない認識に変化して使えなくなった。そこからお前との為に使うという認識に変えた。だから有効になった」
「考え方の違い?」
「多少違うがまあいいだろう。誓約に囚われない力だったからこそ出来たね」
「それってやっぱり愛の力?」
「お前は無駄にポジティブだね……ラウラが愛想尽かさなくて良かったなとしか言えないよ」
ひどいな。
ラウラはちゃんと僕の事好きなんだけど。
新婚ほやほやの僕にそういうこと言うってどういうこと。なんだ、僕とラウラがいかに好き合ってるか証明すべき?
あ、でも見せつけはしておくのいいかも。特にこの国のラウラと歳近い男には。
「というか、リラ、僕らの使う言葉よく知ってるね?」
「だいぶ見たからね」
ディーもいたからと。
「リラは未来が見える?」
「ああ」
「なら未来は変わった?」
「変わったわけではないさ。有力な選択肢が日々代わる代わる台頭してくるだけだ」
「その有力なのが僕とラウラの今?」
「そうだね」
リラが考えていた未来とは違うのだろう。ラウラ側と僕等側が完全に分かち、交わることのない未来。ラウラが鍵として何かを成し得る未来とは違う。ここが確認できればいい。
「これだけでいいのかい?」
まだ他にも知ることができるだろう。
ただ全部ここでリラに教えてもらうことは、王都の城で知る本来の歴史と同じだ。
それは必要なかった。
歴史を知ることも王には必要だろうけど、僕の優先事項は違うから。
「僕とラウラが幸せに暮らしました、めでたしめでたしならなんでもいい」
「はは、はっきりしてるね」
「この国で公になっている歴史があるなら、それに沿えばいいと思ってる。もし本来の歴史を公表すべきと判断するなら、それはエミリア姉さんとクララ姉さんに託すよ」
というよりも、押し付ける。
細やかな気配りが必要なことは苦手なんで。
「王位を継ぐとなっても、お前が辺境の領主であることは譲らないんだね」
「ああ、僕とラウラでうまいことやっていければいい。この城と領地を主にしてね」
王位なんておまけさ。
僕とラウラの心地良い生活の為に最大限利用するけど。
「ふむ、やはりお前は面白い」
「そう?」
ディー程でもないが、とリラは笑う。
それは正直惚れた弱みとか色眼鏡とかそういうんじゃないの。
「リラ」
「なんだい」
「リラが死ぬ時は領地に降りてくる?」
これも面白い質問だったらしい。軽く目を丸くした後、豪快に笑った。
「ディーのしている事か!」
当然リラの事だから知っているだろう。
大伯父がリラに気付いてもらう為に、誕生日に祭をさせていることを。
この最中、最大に笑って、最後にリラはそれはもう楽しそうに、どうだかねと曖昧な応えを返した。
「さて、そろそろ来るね」
「ん?」
同時、開け放たれた扉の向こうから、ひょっこり顔を出したのは僕の愛しい人で間違いなかった。
「ダーレ」
「ラウラ」
こうして笑いかけてくれるようになるなんて、再会したばかりの時は考えもしなかったよ。
「ちょっとまって」
いやいや、簡単に言うけど貴族間であってもなくても、破棄となったら慰謝料の話題も出てしまうし、国同士の争いの火種にだってなりうるのに?
そんな簡単にできないはずなんだけど?
まあラウラがあんなに気軽に破棄どうこう言ってたから、この国では軽く出来る価値観なのかもしれないけど。
「まあ一度破棄をした後に、ディーとあちらの王族の申し入れで、再婚約の形をとったかな?」
「なんだ、ならいいよ」
「ディー達は不思議な事を言っていたね。きっと二人が変えてくれるからと」
「なにを?」
「それは歴史でも見ておいで。誓約の内容に描かれているから」
もう城に保管されてる歴史を見る気はないからなあ。誓約については考え及ばない。
「リラ、ラウラが僕と一緒にいたのに魔法を使えたのは」
「お前の推測は?」
「これだけは確実な予測が出来なかったよ。まあ格好いいこと言うと、愛の力的な?」
「ふむ、ださいな」
「ひどい」
事実、僕とラウラの種族間で交わされた誓約というもののせいで、ラウラ側の魔法が使えないという事は理解出来る。
けどその前提の中で、僕の脇腹の傷さえ逆行して治すには至らないはずだ。治癒関係のものだけ有効だとしたら、ラウラの姉の魔法が僕には有効のはずだから。
「あの子の認識が変わったからさ」
「え?」
「あの子は自由に使えるという認識から、私利私欲では使えない認識に変化して使えなくなった。そこからお前との為に使うという認識に変えた。だから有効になった」
「考え方の違い?」
「多少違うがまあいいだろう。誓約に囚われない力だったからこそ出来たね」
「それってやっぱり愛の力?」
「お前は無駄にポジティブだね……ラウラが愛想尽かさなくて良かったなとしか言えないよ」
ひどいな。
ラウラはちゃんと僕の事好きなんだけど。
新婚ほやほやの僕にそういうこと言うってどういうこと。なんだ、僕とラウラがいかに好き合ってるか証明すべき?
あ、でも見せつけはしておくのいいかも。特にこの国のラウラと歳近い男には。
「というか、リラ、僕らの使う言葉よく知ってるね?」
「だいぶ見たからね」
ディーもいたからと。
「リラは未来が見える?」
「ああ」
「なら未来は変わった?」
「変わったわけではないさ。有力な選択肢が日々代わる代わる台頭してくるだけだ」
「その有力なのが僕とラウラの今?」
「そうだね」
リラが考えていた未来とは違うのだろう。ラウラ側と僕等側が完全に分かち、交わることのない未来。ラウラが鍵として何かを成し得る未来とは違う。ここが確認できればいい。
「これだけでいいのかい?」
まだ他にも知ることができるだろう。
ただ全部ここでリラに教えてもらうことは、王都の城で知る本来の歴史と同じだ。
それは必要なかった。
歴史を知ることも王には必要だろうけど、僕の優先事項は違うから。
「僕とラウラが幸せに暮らしました、めでたしめでたしならなんでもいい」
「はは、はっきりしてるね」
「この国で公になっている歴史があるなら、それに沿えばいいと思ってる。もし本来の歴史を公表すべきと判断するなら、それはエミリア姉さんとクララ姉さんに託すよ」
というよりも、押し付ける。
細やかな気配りが必要なことは苦手なんで。
「王位を継ぐとなっても、お前が辺境の領主であることは譲らないんだね」
「ああ、僕とラウラでうまいことやっていければいい。この城と領地を主にしてね」
王位なんておまけさ。
僕とラウラの心地良い生活の為に最大限利用するけど。
「ふむ、やはりお前は面白い」
「そう?」
ディー程でもないが、とリラは笑う。
それは正直惚れた弱みとか色眼鏡とかそういうんじゃないの。
「リラ」
「なんだい」
「リラが死ぬ時は領地に降りてくる?」
これも面白い質問だったらしい。軽く目を丸くした後、豪快に笑った。
「ディーのしている事か!」
当然リラの事だから知っているだろう。
大伯父がリラに気付いてもらう為に、誕生日に祭をさせていることを。
この最中、最大に笑って、最後にリラはそれはもう楽しそうに、どうだかねと曖昧な応えを返した。
「さて、そろそろ来るね」
「ん?」
同時、開け放たれた扉の向こうから、ひょっこり顔を出したのは僕の愛しい人で間違いなかった。
「ダーレ」
「ラウラ」
こうして笑いかけてくれるようになるなんて、再会したばかりの時は考えもしなかったよ。
0
お気に入りに追加
40
あなたにおすすめの小説
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?
せいめ
恋愛
政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。
喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。
そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。
その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。
閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。
でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。
家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。
その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。
まずは亡くなったはずの旦那様との話から。
ご都合主義です。
設定は緩いです。
誤字脱字申し訳ありません。
主人公の名前を途中から間違えていました。
アメリアです。すみません。
この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
裏切りの先にあるもの
マツユキ
恋愛
侯爵令嬢のセシルには幼い頃に王家が決めた婚約者がいた。
結婚式の日取りも決まり数か月後の挙式を楽しみにしていたセシル。ある日姉の部屋を訪ねると婚約者であるはずの人が姉と口づけをかわしている所に遭遇する。傷つくセシルだったが新たな出会いがセシルを幸せへと導いていく。
我慢するだけの日々はもう終わりにします
風見ゆうみ
恋愛
「レンウィル公爵も素敵だけれど、あなたの婚約者も素敵ね」伯爵の爵位を持つ父の後妻の連れ子であるロザンヌは、私、アリカ・ルージーの婚約者シーロンをうっとりとした目で見つめて言った――。
学園でのパーティーに出席した際、シーロンからパーティー会場の入口で「今日はロザンヌと出席するから、君は1人で中に入ってほしい」と言われた挙げ句、ロザンヌからは「あなたにはお似合いの相手を用意しておいた」と言われ、複数人の男子生徒にどこかへ連れ去られそうになってしまう。
そんな私を助けてくれたのは、ロザンヌが想いを寄せている相手、若き公爵ギルバート・レンウィルだった。
※本編完結しましたが、番外編を更新中です。
※史実とは関係なく、設定もゆるい、ご都合主義です。
※独特の世界観です。
※中世〜近世ヨーロッパ風で貴族制度はありますが、法律、武器、食べ物など、その他諸々は現代風です。話を進めるにあたり、都合の良い世界観となっています。
※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。
傷物令嬢シャルロットは辺境伯様の人質となってスローライフ
悠木真帆
恋愛
侯爵令嬢シャルロット・ラドフォルンは幼いとき王子を庇って右上半身に大やけどを負う。
残ったやけどの痕はシャルロットに暗い影を落とす。
そんなシャルロットにも他国の貴族との婚約が決まり幸せとなるはずだった。
だがーー
月あかりに照らされた婚約者との初めての夜。
やけどの痕を目にした婚約者は顔色を変えて、そのままベッドの上でシャルロットに婚約破棄を申し渡した。
それ以来、屋敷に閉じこもる生活を送っていたシャルロットに父から敵国の人質となることを命じられる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる