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43話後編 答え合わせ、終わり(D)

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「破棄はとうにしていたよ」
「ちょっとまって」

 いやいや、簡単に言うけど貴族間であってもなくても、破棄となったら慰謝料の話題も出てしまうし、国同士の争いの火種にだってなりうるのに?
 そんな簡単にできないはずなんだけど?
 まあラウラがあんなに気軽に破棄どうこう言ってたから、この国では軽く出来る価値観なのかもしれないけど。

「まあ一度破棄をした後に、ディーとあちらの王族の申し入れで、再婚約の形をとったかな?」
「なんだ、ならいいよ」
「ディー達は不思議な事を言っていたね。きっと二人が変えてくれるからと」
「なにを?」
「それは歴史でも見ておいで。誓約の内容に描かれているから」

 もう城に保管されてる歴史を見る気はないからなあ。誓約については考え及ばない。

「リラ、ラウラが僕と一緒にいたのに魔法を使えたのは」
「お前の推測は?」
「これだけは確実な予測が出来なかったよ。まあ格好いいこと言うと、愛の力的な?」
「ふむ、ださいな」
「ひどい」

 事実、僕とラウラの種族間で交わされた誓約というもののせいで、ラウラ側の魔法が使えないという事は理解出来る。
 けどその前提の中で、僕の脇腹の傷さえ逆行して治すには至らないはずだ。治癒関係のものだけ有効だとしたら、ラウラの姉の魔法が僕には有効のはずだから。

「あの子の認識が変わったからさ」
「え?」
「あの子は自由に使えるという認識から、私利私欲では使えない認識に変化して使えなくなった。そこからお前との為に使うという認識に変えた。だから有効になった」
「考え方の違い?」
「多少違うがまあいいだろう。誓約に囚われない力だったからこそ出来たね」
「それってやっぱり愛の力?」
「お前は無駄にポジティブだね……ラウラが愛想尽かさなくて良かったなとしか言えないよ」

 ひどいな。
 ラウラはちゃんと僕の事好きなんだけど。
 新婚ほやほやの僕にそういうこと言うってどういうこと。なんだ、僕とラウラがいかに好き合ってるか証明すべき?
 あ、でも見せつけはしておくのいいかも。特にこの国のラウラと歳近い男には。

「というか、リラ、僕らの使う言葉よく知ってるね?」
「だいぶ見たからね」

 ディーもいたからと。

「リラは未来が見える?」
「ああ」
「なら未来は変わった?」
「変わったわけではないさ。有力な選択肢が日々代わる代わる台頭してくるだけだ」
「その有力なのが僕とラウラの今?」
「そうだね」

 リラが考えていた未来とは違うのだろう。ラウラ側と僕等側が完全に分かち、交わることのない未来。ラウラが鍵として何かを成し得る未来とは違う。ここが確認できればいい。

「これだけでいいのかい?」

 まだ他にも知ることができるだろう。
 ただ全部ここでリラに教えてもらうことは、王都の城で知る本来の歴史と同じだ。
 それは必要なかった。
 歴史を知ることも王には必要だろうけど、僕の優先事項は違うから。

「僕とラウラが幸せに暮らしました、めでたしめでたしならなんでもいい」
「はは、はっきりしてるね」
「この国で公になっている歴史があるなら、それに沿えばいいと思ってる。もし本来の歴史を公表すべきと判断するなら、それはエミリア姉さんとクララ姉さんに託すよ」

 というよりも、押し付ける。
 細やかな気配りが必要なことは苦手なんで。

「王位を継ぐとなっても、お前が辺境の領主であることは譲らないんだね」
「ああ、僕とラウラでうまいことやっていければいい。この城と領地を主にしてね」

 王位なんておまけさ。
 僕とラウラの心地良い生活の為に最大限利用するけど。

「ふむ、やはりお前は面白い」
「そう?」

 ディー程でもないが、とリラは笑う。
 それは正直惚れた弱みとか色眼鏡とかそういうんじゃないの。

「リラ」
「なんだい」
「リラが死ぬ時は領地に降りてくる?」

 これも面白い質問だったらしい。軽く目を丸くした後、豪快に笑った。

「ディーのしている事か!」

 当然リラの事だから知っているだろう。
 大伯父がリラに気付いてもらう為に、誕生日に祭をさせていることを。
 この最中、最大に笑って、最後にリラはそれはもう楽しそうに、どうだかねと曖昧な応えを返した。

「さて、そろそろ来るね」
「ん?」

 同時、開け放たれた扉の向こうから、ひょっこり顔を出したのは僕の愛しい人で間違いなかった。

「ダーレ」
「ラウラ」

 こうして笑いかけてくれるようになるなんて、再会したばかりの時は考えもしなかったよ。
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