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36話後編 キスしていい?(D)
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「ということで、僕とラウラは作戦練るから」
「とか言って、ここから出たいだけじゃない」
「必死すぎ」
「はいはい、なんとでも」
ラウラの手をとって半ば強制的に部屋を後にした。
さすがにラウラにだめよと咎められたけど、敢えて無視する事にした。
「姉さん達には別できちんと時間とるから」
それにさっきの言う囮の件も内容は姉達のみなら話してもいいことを伝える。出来るだけ少ない方がいいけど、ラウラが納得する方を選ぶことにした。
「姉さん達を巻き込みたくないんだよ」
「……そう、ね」
本音の部分でもある。
恐らく兄が執拗に狙っているのは僕とラウラだ。姉二人の方が継承権も上だし、王都に居を構えている。傍から見れば有力な兄の脅威なわけなんだけど、どうも思考が僕らの想像するものよりズレている。その点も踏まえれば、恐らく僕とラウラが出た方が確実だ。
まあ一番は僕がラウラとデートしたいんだけど。
「フィー、アン」
「お早いお戻りでしたね」
「いかがされました」
部屋に戻ればフィーとアンが待機していた。
兄の事は既に知っていた。さすが優秀。
二人に囮の件と、大まかに考えた当日の行動を伝え、騎士の配備と細かいところの準備をしてもらうことにした。
「ついでに少し時間を頂戴」
「こんな事態になっても王女様を独占したいんですか」
「感動的な再会をしたのに、いつも通りとかなくない?」
「せめて第一王太子殿下の件が片付いてからにすればよいでしょう」
「無理、待てない」
「うわ……」
引かれようともかまわないさ。
相変わらずの視線を寄越しながら、二人は出て行った。
離れた窓際の椅子に座ってもらっていたラウラに近づくと、立ち上がって大丈夫なのかを問われた。
「うん、少し準備してもらって実際可能かも確認してる。少し休も?」
「私に何か出来る事は」
「当日囮になってくれるのだから、それだけで充分」
「そう……」
本当は何かしたいんだろうな。
手伝いたいのって性分というには結構重度だよ。動いていないと死んでしまうというタイプでもないのに。
「ねえラウラ」
「なに?」
「色々ありすぎて、忘れてるかもしれないけど、僕ら結婚式終えたばかりだよね?」
「え……あ、ああ、そうね」
その後、ラウラが撃たれて連れ去られ、今度は僕が撃たれてラウラの魔法でどうにか助かって。
中身濃いんだけど時間はそんなに経っていない。実際姉達が言っていたように、結婚も済ませたわけで。まあ書類の申請を王都にしてないから、正式な夫婦にはまだなっていないけど。
「少し時間もらったから、ラウラを堪能させて」
「え?!」
その言葉に頬を染める。相変わらず慣れてないな。
でもそれが久しぶりで、無性に嬉しくなってラウラに抱き着いた。
あれだけ抱きしめ続けているのに、小さく悲鳴をあげちゃって可愛いったらもう。
「ダーレ、こんなことしてる場合じゃ」
「ん? こんなこと?」
「あ、いえ、その……」
聞き捨てならない。
抱きしめる腕を緩めて、両手でラウラの頬を包んで上を向かせると、顔に出ていたのか、ラウラが気まずそうに視線を彷徨わせている。
困った顔をして見上げてるのも可愛いな。ああやばい、本当ラウラが足りてなかった。
「あの愚兄はきちんと捕まえてボコるから大丈夫」
「ぼこ、え?」
「ああ、きちんと罪を償ってもらうってこと」
ニュアンス違うけど、まあラウラにはなんとなく伝わればいいだろう。
それよりもあの兄の事を気にかけてるのが気に食わない。
「僕以外の男の事なんて考えないでよ」
「そういうわけじゃないわ」
「そうであっても、僕が嫌」
「ダーレったら……」
あ、また格好ついてないな。
「今のなし」
「え?」
ラウラが八の字にしていた眉をあげる。
「もっと格好いい台詞言うから、ちょっと待って」
「……」
「……」
「……ふふ」
「笑わないでよ」
だって、と口元に手を置いて笑う。
ああ、こうして笑い合う時間がこんなに愛しいものだなんて、いま改めて気づいちゃったよ。どうしたらいい?
そういう意味ではあの愚兄はいい事したのか……いや、差し引いてもラウラを撃つのは絶対ダメだな。
「ねえ、ラウラ」
「なに?」
「キスしていい?」
「え!」
「キスしたい」
「ええと……」
再び視線を彷徨わせるけど、困った様子はなく、ただただ恥ずかしいようだった。
「ねえ」
「……く、唇以外なら!」
「え?!」
なんでと小さく叫ぶと、ラウラが可愛い事を言ってのけた。
「そ、その、まだ心の準備が……」
「夫婦になったのに?」
領地の結婚式は誓いのキスがなくて指輪の交換だったけど、王都式ではキスがある。いっそここでもう一度挙式あげるかな。そうすれば公にラウラとキスが出来る。
「そうだけど……」
「なら問題ないよね?」
「今は……」
「夜ならいい?」
「え?!」
そういうことでしょ、と言うとラウラは違うと訴える。まあ聞いてない事にするけどね。
「じゃあ夜楽しみにしてる」
「ダーレ!」
「そしたら今はどこにキスしようかな」
「え!?」
嘘でしょ、と驚愕に打ち震えてる。僕は今しないとは言ってないしね。
「ま、待って」
「無理」
顔を寄せると、ラウラが慌てて瞳を閉じる。うっわ、可愛い。そんな顔してたら唇にキスをしたくなるじゃんか。
けど、今回は我慢。ここでラウラの気持ちをないがしろにしたら、本当に唇に出来なくなりそうだし。
「ん」
ラウラにはきちんと自覚してもらうために、リップ音もつけて頬にキスを落とした。
柔らかくていい匂いがして、もう最高だよ。
「……」
「ラウラ、可愛い」
「ダーレ!」
顔を真っ赤にして恥ずかしがるラウラに可愛い以外の言葉はないよね?
「もう一回」
「え、何言ってるの!」
そうして僕は、頬に、瞼に、額に、耳に、髪に、唇以外で出来るとこに落としていった。
「ラウラと結婚したって実感させて」
「も、これ、以上は」
「ん、ラウラ好き」
ラウラがあまりの恥ずかしさに意識失いかけるまでは思う存分楽しむ事が出来た。
ぐったりしたらソファに移動して寝かしてあげれば、膝に乗せたラウラをひたすら撫で続けて、それはそれでたっぷりラウラを堪能した。
まったく足りてないけど。
そう言うとラウラはまた小さく悲鳴を上げた。
「とか言って、ここから出たいだけじゃない」
「必死すぎ」
「はいはい、なんとでも」
ラウラの手をとって半ば強制的に部屋を後にした。
さすがにラウラにだめよと咎められたけど、敢えて無視する事にした。
「姉さん達には別できちんと時間とるから」
それにさっきの言う囮の件も内容は姉達のみなら話してもいいことを伝える。出来るだけ少ない方がいいけど、ラウラが納得する方を選ぶことにした。
「姉さん達を巻き込みたくないんだよ」
「……そう、ね」
本音の部分でもある。
恐らく兄が執拗に狙っているのは僕とラウラだ。姉二人の方が継承権も上だし、王都に居を構えている。傍から見れば有力な兄の脅威なわけなんだけど、どうも思考が僕らの想像するものよりズレている。その点も踏まえれば、恐らく僕とラウラが出た方が確実だ。
まあ一番は僕がラウラとデートしたいんだけど。
「フィー、アン」
「お早いお戻りでしたね」
「いかがされました」
部屋に戻ればフィーとアンが待機していた。
兄の事は既に知っていた。さすが優秀。
二人に囮の件と、大まかに考えた当日の行動を伝え、騎士の配備と細かいところの準備をしてもらうことにした。
「ついでに少し時間を頂戴」
「こんな事態になっても王女様を独占したいんですか」
「感動的な再会をしたのに、いつも通りとかなくない?」
「せめて第一王太子殿下の件が片付いてからにすればよいでしょう」
「無理、待てない」
「うわ……」
引かれようともかまわないさ。
相変わらずの視線を寄越しながら、二人は出て行った。
離れた窓際の椅子に座ってもらっていたラウラに近づくと、立ち上がって大丈夫なのかを問われた。
「うん、少し準備してもらって実際可能かも確認してる。少し休も?」
「私に何か出来る事は」
「当日囮になってくれるのだから、それだけで充分」
「そう……」
本当は何かしたいんだろうな。
手伝いたいのって性分というには結構重度だよ。動いていないと死んでしまうというタイプでもないのに。
「ねえラウラ」
「なに?」
「色々ありすぎて、忘れてるかもしれないけど、僕ら結婚式終えたばかりだよね?」
「え……あ、ああ、そうね」
その後、ラウラが撃たれて連れ去られ、今度は僕が撃たれてラウラの魔法でどうにか助かって。
中身濃いんだけど時間はそんなに経っていない。実際姉達が言っていたように、結婚も済ませたわけで。まあ書類の申請を王都にしてないから、正式な夫婦にはまだなっていないけど。
「少し時間もらったから、ラウラを堪能させて」
「え?!」
その言葉に頬を染める。相変わらず慣れてないな。
でもそれが久しぶりで、無性に嬉しくなってラウラに抱き着いた。
あれだけ抱きしめ続けているのに、小さく悲鳴をあげちゃって可愛いったらもう。
「ダーレ、こんなことしてる場合じゃ」
「ん? こんなこと?」
「あ、いえ、その……」
聞き捨てならない。
抱きしめる腕を緩めて、両手でラウラの頬を包んで上を向かせると、顔に出ていたのか、ラウラが気まずそうに視線を彷徨わせている。
困った顔をして見上げてるのも可愛いな。ああやばい、本当ラウラが足りてなかった。
「あの愚兄はきちんと捕まえてボコるから大丈夫」
「ぼこ、え?」
「ああ、きちんと罪を償ってもらうってこと」
ニュアンス違うけど、まあラウラにはなんとなく伝わればいいだろう。
それよりもあの兄の事を気にかけてるのが気に食わない。
「僕以外の男の事なんて考えないでよ」
「そういうわけじゃないわ」
「そうであっても、僕が嫌」
「ダーレったら……」
あ、また格好ついてないな。
「今のなし」
「え?」
ラウラが八の字にしていた眉をあげる。
「もっと格好いい台詞言うから、ちょっと待って」
「……」
「……」
「……ふふ」
「笑わないでよ」
だって、と口元に手を置いて笑う。
ああ、こうして笑い合う時間がこんなに愛しいものだなんて、いま改めて気づいちゃったよ。どうしたらいい?
そういう意味ではあの愚兄はいい事したのか……いや、差し引いてもラウラを撃つのは絶対ダメだな。
「ねえ、ラウラ」
「なに?」
「キスしていい?」
「え!」
「キスしたい」
「ええと……」
再び視線を彷徨わせるけど、困った様子はなく、ただただ恥ずかしいようだった。
「ねえ」
「……く、唇以外なら!」
「え?!」
なんでと小さく叫ぶと、ラウラが可愛い事を言ってのけた。
「そ、その、まだ心の準備が……」
「夫婦になったのに?」
領地の結婚式は誓いのキスがなくて指輪の交換だったけど、王都式ではキスがある。いっそここでもう一度挙式あげるかな。そうすれば公にラウラとキスが出来る。
「そうだけど……」
「なら問題ないよね?」
「今は……」
「夜ならいい?」
「え?!」
そういうことでしょ、と言うとラウラは違うと訴える。まあ聞いてない事にするけどね。
「じゃあ夜楽しみにしてる」
「ダーレ!」
「そしたら今はどこにキスしようかな」
「え!?」
嘘でしょ、と驚愕に打ち震えてる。僕は今しないとは言ってないしね。
「ま、待って」
「無理」
顔を寄せると、ラウラが慌てて瞳を閉じる。うっわ、可愛い。そんな顔してたら唇にキスをしたくなるじゃんか。
けど、今回は我慢。ここでラウラの気持ちをないがしろにしたら、本当に唇に出来なくなりそうだし。
「ん」
ラウラにはきちんと自覚してもらうために、リップ音もつけて頬にキスを落とした。
柔らかくていい匂いがして、もう最高だよ。
「……」
「ラウラ、可愛い」
「ダーレ!」
顔を真っ赤にして恥ずかしがるラウラに可愛い以外の言葉はないよね?
「もう一回」
「え、何言ってるの!」
そうして僕は、頬に、瞼に、額に、耳に、髪に、唇以外で出来るとこに落としていった。
「ラウラと結婚したって実感させて」
「も、これ、以上は」
「ん、ラウラ好き」
ラウラがあまりの恥ずかしさに意識失いかけるまでは思う存分楽しむ事が出来た。
ぐったりしたらソファに移動して寝かしてあげれば、膝に乗せたラウラをひたすら撫で続けて、それはそれでたっぷりラウラを堪能した。
まったく足りてないけど。
そう言うとラウラはまた小さく悲鳴を上げた。
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