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27話前編 王女殿下に改めて婚約を申し込みたいと存じます(D)
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「姉様がきちんと返事しなさいって」
お姉さん達グッジョブ。
いくら雰囲気的にわかっていても、やっぱりラウラから言葉が欲しい。フィーとアンに散々揶揄されてわけだし、名誉挽回だよ。ラウラこんな状態だし、ここはアシストしてもいいとこのはず。
「うん、じゃあ格好つけようかな」
「何を」
「ラウラ」
ラウラを囲っていたのを取り払い、片膝ついてラウラの片手をとる。そこに唇を落として。
「ベレンシュレク第三王女殿下」
「……はい」
彼女の背筋が伸びる。
「私、ダーレ・エルドラードは、ラウラ・サンティユモン・ベレンシュレク王女殿下に改めて婚約を申し込みたいと存じます。お受け頂けないでしょうか」
小さく息をついた後、くっと奥歯を噛んだ。
見つめ合ったまま返事を待った。
「……はい、お受けします」
「……」
「……」
「ぶっは」
耐えられなくなって吹き出した。
「いや合わない! やってみたけど僕には合わない!」
「あらダーレ、格好よかったわよ?」
「ラウラってば」
もう一度囲い込んでぎゅうぎゅうに抱きしめる。
「ラウラ好き! 結婚して!」
「わかったわ、結婚するから」
腕を緩めるとラウラがこちらを見上げた。恥ずかしいのか顔真っ赤で可愛い。でも、ここは可愛いさで許してあげられないとこかな。
「……ちょっと投げやりじゃない?」
「そ、そんなことないわ」
「ラウラ僕のこと好き?」
「う…………」
「ちゃんと返事しにきたんだよね?」
「う…………」
声にならない声をあげて、ぐるぐる悩んで、それでも今日すぐに戻った理由を思い出して、まあつまり結構な時間をかけてやっと、やっとラウラは僕を見た。
「……ダーレが好きよ」
「うん、知ってる」
「え?!」
やっぱり言葉の力は偉大だよ。こんなにも満たされるなんてさ。
「これからはラウラから好きって返してくれるのかあ」
「そ、そんなダーレみたいに毎日は無理よ?!」
「えー」
「本当無理なんだから!」
「ちぇー」
そこは慣れていってもらうしかないかな。
「わかった。そしたら今日はこのまま屋敷に戻ろうか」
「え?」
「どうしたの?」
「いやに引き際が早いから……」
普段の僕どんだけしつこいのさ。いくらラウラでも言葉、言葉選んで!
「まあ今すっごく満たされてるからね」
「そう」
「行こう」
「ええ」
泉を抜け、領地通りに出ると、収穫を終えて荷を運ぶ領民が多くいる。ラウラがいることに驚きつつも、忙しさに軽く挨拶する程度ですれ違う。
ふとラウラの足が止まり、その理由がすぐにわかった。収穫したものの荷運び中に足を止め向き合う相手。
「アンドレアさん……」
「坊ちゃん、結婚するのか」
「はい」
この領地にいる間、彼を筆頭にラウラに関して良い感情を持っていない者がいることは重々理解している。
これ程に拒否を示すものは彼ぐらいだろうが、なるたけ関わりたくないと暗に態度に示すものも少なくない。
ラウラはこれを十二分に理解して、それでも毎日手伝いの中で接触を試み、関わりを持つことで解消してきた。
たぶん僕の想像以上に辛かったはずだ。それでもラウラのやりたいようにした。だいぶ緩和されてきたと思っていたけど、やっぱりというべきか目の前の彼だけは手応えがない。
「譲らないか」
「まさか。僕が好きなのはラウラだけです」
「アンドレアさん」
ラウラが話しかけても今では耳を傾けてくれる位には至っている。それでも態度が軟化してるわけじゃないけど。
「認めて頂かなくて結構です」
「ラウラ?」
「仕方のないことですから。私の羽はなくなることはありません。……でも、お手伝いは変わらずさせてください」
「……ふん」
ラウラは立ち去ろうとしなかった。黙って彼を見つめ、先に視線をそらしたのはアンドレアさんだった。
「好きにするがいいさ」
「え?」
「結婚なんざ、好き同士がするものだろう。他人の意見は関係ない」
「アンドレアさん?」
「いや、認めてはいないからな? ただ結婚は話が違う。それだけだ」
挙動不審になったアンドレアさんが、そそくさと荷を運んで去っていく。
「ああ、そうなの」
「ラウラ?」
「あの、アンドレアさんなりの励ましみたい」
「え、今のが?」
「素直になれないんですって」
精霊たちの言うことなら、そうなんだろうな。言うなれば僕よりも付き合いが長いわけで。
でもそれって知られたくないことも知られてるってこと? うわ、それは困る。
「精霊ってなんでも知ってるね」
「アンドレアさんの場合はずっと気に入って傍にいた子がいたみたいで、そのおかげ」
「へえ」
にしても励ましということは、結婚という点で認めてもらえたのかな?
ラウラも意地っ張りでわかりにくいとこあるけど、アンドレアさんはラウラよりもわかりにくい。
「ダーレ、どうかしたの?」
「あ、ううん、大丈夫」
こういうのって訓練すれば分かるようになるのかな。ラウラならどんな努力も惜しまないんだけど……でも領民の事だし多少なりとも努力は必要だろうか。そう思いつつ歩みを進めた。
お姉さん達グッジョブ。
いくら雰囲気的にわかっていても、やっぱりラウラから言葉が欲しい。フィーとアンに散々揶揄されてわけだし、名誉挽回だよ。ラウラこんな状態だし、ここはアシストしてもいいとこのはず。
「うん、じゃあ格好つけようかな」
「何を」
「ラウラ」
ラウラを囲っていたのを取り払い、片膝ついてラウラの片手をとる。そこに唇を落として。
「ベレンシュレク第三王女殿下」
「……はい」
彼女の背筋が伸びる。
「私、ダーレ・エルドラードは、ラウラ・サンティユモン・ベレンシュレク王女殿下に改めて婚約を申し込みたいと存じます。お受け頂けないでしょうか」
小さく息をついた後、くっと奥歯を噛んだ。
見つめ合ったまま返事を待った。
「……はい、お受けします」
「……」
「……」
「ぶっは」
耐えられなくなって吹き出した。
「いや合わない! やってみたけど僕には合わない!」
「あらダーレ、格好よかったわよ?」
「ラウラってば」
もう一度囲い込んでぎゅうぎゅうに抱きしめる。
「ラウラ好き! 結婚して!」
「わかったわ、結婚するから」
腕を緩めるとラウラがこちらを見上げた。恥ずかしいのか顔真っ赤で可愛い。でも、ここは可愛いさで許してあげられないとこかな。
「……ちょっと投げやりじゃない?」
「そ、そんなことないわ」
「ラウラ僕のこと好き?」
「う…………」
「ちゃんと返事しにきたんだよね?」
「う…………」
声にならない声をあげて、ぐるぐる悩んで、それでも今日すぐに戻った理由を思い出して、まあつまり結構な時間をかけてやっと、やっとラウラは僕を見た。
「……ダーレが好きよ」
「うん、知ってる」
「え?!」
やっぱり言葉の力は偉大だよ。こんなにも満たされるなんてさ。
「これからはラウラから好きって返してくれるのかあ」
「そ、そんなダーレみたいに毎日は無理よ?!」
「えー」
「本当無理なんだから!」
「ちぇー」
そこは慣れていってもらうしかないかな。
「わかった。そしたら今日はこのまま屋敷に戻ろうか」
「え?」
「どうしたの?」
「いやに引き際が早いから……」
普段の僕どんだけしつこいのさ。いくらラウラでも言葉、言葉選んで!
「まあ今すっごく満たされてるからね」
「そう」
「行こう」
「ええ」
泉を抜け、領地通りに出ると、収穫を終えて荷を運ぶ領民が多くいる。ラウラがいることに驚きつつも、忙しさに軽く挨拶する程度ですれ違う。
ふとラウラの足が止まり、その理由がすぐにわかった。収穫したものの荷運び中に足を止め向き合う相手。
「アンドレアさん……」
「坊ちゃん、結婚するのか」
「はい」
この領地にいる間、彼を筆頭にラウラに関して良い感情を持っていない者がいることは重々理解している。
これ程に拒否を示すものは彼ぐらいだろうが、なるたけ関わりたくないと暗に態度に示すものも少なくない。
ラウラはこれを十二分に理解して、それでも毎日手伝いの中で接触を試み、関わりを持つことで解消してきた。
たぶん僕の想像以上に辛かったはずだ。それでもラウラのやりたいようにした。だいぶ緩和されてきたと思っていたけど、やっぱりというべきか目の前の彼だけは手応えがない。
「譲らないか」
「まさか。僕が好きなのはラウラだけです」
「アンドレアさん」
ラウラが話しかけても今では耳を傾けてくれる位には至っている。それでも態度が軟化してるわけじゃないけど。
「認めて頂かなくて結構です」
「ラウラ?」
「仕方のないことですから。私の羽はなくなることはありません。……でも、お手伝いは変わらずさせてください」
「……ふん」
ラウラは立ち去ろうとしなかった。黙って彼を見つめ、先に視線をそらしたのはアンドレアさんだった。
「好きにするがいいさ」
「え?」
「結婚なんざ、好き同士がするものだろう。他人の意見は関係ない」
「アンドレアさん?」
「いや、認めてはいないからな? ただ結婚は話が違う。それだけだ」
挙動不審になったアンドレアさんが、そそくさと荷を運んで去っていく。
「ああ、そうなの」
「ラウラ?」
「あの、アンドレアさんなりの励ましみたい」
「え、今のが?」
「素直になれないんですって」
精霊たちの言うことなら、そうなんだろうな。言うなれば僕よりも付き合いが長いわけで。
でもそれって知られたくないことも知られてるってこと? うわ、それは困る。
「精霊ってなんでも知ってるね」
「アンドレアさんの場合はずっと気に入って傍にいた子がいたみたいで、そのおかげ」
「へえ」
にしても励ましということは、結婚という点で認めてもらえたのかな?
ラウラも意地っ張りでわかりにくいとこあるけど、アンドレアさんはラウラよりもわかりにくい。
「ダーレ、どうかしたの?」
「あ、ううん、大丈夫」
こういうのって訓練すれば分かるようになるのかな。ラウラならどんな努力も惜しまないんだけど……でも領民の事だし多少なりとも努力は必要だろうか。そう思いつつ歩みを進めた。
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