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25話前編 うわ、ヘタレ。ドン引きです、主人(D)
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「気を付けてね?」
「ええ、大丈夫よ」
早朝、ラウラはドゥファーツに飛べた事を報告する為、一時的に領地を離れる事になった。
「破棄は駄目だからね」
「分かっているわ」
苦笑するラウラに念を押しておく。昨日は姉さんの手紙を勘違いしたラウラが婚約破棄すると譲らなくて大変だったわけで。
たぶん誤解は解けていると思う。だからこそ飛べるに至った。あの時、いつものように恥ずかしがって嫌がる素振りもなく抱き返してくれたってことは、たぶんラウラなりの返事の仕方なんだと思う。
全部、思うっていう推測だけど。
「やっぱり僕も一緒に」
「駄目よ、お仕事残ってるんでしょう」
「いいよ、少しくらい放っておいても大丈夫だし」
「すぐに戻るから」
僕の背後をちらっと見て、やっぱり苦笑。離れて控えているフィーとアンが目配せでもしたのか。この二人がそもそも僕がラウラと一緒に行くって言うのを止めなければ、こんなことにならなかったのに。
「明日には帰って来てよ?」
「ええ、約束するわ」
両手を離す。細くて小さい手が僕から離れる。
「いってきます」
「いってらっしゃい」
背を向けて走り出す。そこから昨日見た大きな翼が広がって、そのまま瞬時に空へ飛び立った。
ひらりと僕の手元に一枚の羽が降りてきて。それを手にとり、朝日に翳すと白く光る。
「あーもう本当……」
「凄いですね」
「天使だって言ったし」
そう言えば冷えた視線が返ってくる。
「はいはい。せめてもう少しスマートに見送りされてはいかがです」
「無理だよ、離れたくない」
「王女様からお返事もらえたのでしょう? もうそこまで必死にならなくても」
「……」
「主人?」
「……も、もらってない」
「はあ?!」
当然の如く、両側から驚きの声が上がった。
「その、そんな雰囲気にはなったけど、婚約の話を受けるとか、好きだとか、そういう言葉はもらって、ない」
「うわ、ヘタレ」
「ドン引きです、主人」
「言うな」
もうさ、飛べたうえーいってノリだったから、僕の事好きなのなんてきけるわけなかった。
二人から盛大な溜息をもらう。溜息吐きたいのはこっちだって。
「まあ、それは置いといて」
「現実逃避ですか」
「うるさいぞ」
「やれやれですね。では主人、手筈通りにしていますが」
「オーケー」
「それこそ、この事を王女様にお話しされていれば、多少なりとも好感度が上がるのでは?」
「いいんだよ。今はきっと飛べる事が嬉しくて仕方ないだろうから」
それだけに集中できてればいいと、そう思ったから。
「今、格好つけても誰も得をしませんよ」
「ひどい」
肩を落としながら、二人から進捗を確認する。
今、僕が出来る事はラウラが無事に国へ戻れるよう手筈を整えること。
追手もなく目撃もないよう、領地外の人の出入りを制限して、賊の有無もチェック。
二度と同じ事は起こさせない。その為なら僕はなんだってやるさ。
「ええ、大丈夫よ」
早朝、ラウラはドゥファーツに飛べた事を報告する為、一時的に領地を離れる事になった。
「破棄は駄目だからね」
「分かっているわ」
苦笑するラウラに念を押しておく。昨日は姉さんの手紙を勘違いしたラウラが婚約破棄すると譲らなくて大変だったわけで。
たぶん誤解は解けていると思う。だからこそ飛べるに至った。あの時、いつものように恥ずかしがって嫌がる素振りもなく抱き返してくれたってことは、たぶんラウラなりの返事の仕方なんだと思う。
全部、思うっていう推測だけど。
「やっぱり僕も一緒に」
「駄目よ、お仕事残ってるんでしょう」
「いいよ、少しくらい放っておいても大丈夫だし」
「すぐに戻るから」
僕の背後をちらっと見て、やっぱり苦笑。離れて控えているフィーとアンが目配せでもしたのか。この二人がそもそも僕がラウラと一緒に行くって言うのを止めなければ、こんなことにならなかったのに。
「明日には帰って来てよ?」
「ええ、約束するわ」
両手を離す。細くて小さい手が僕から離れる。
「いってきます」
「いってらっしゃい」
背を向けて走り出す。そこから昨日見た大きな翼が広がって、そのまま瞬時に空へ飛び立った。
ひらりと僕の手元に一枚の羽が降りてきて。それを手にとり、朝日に翳すと白く光る。
「あーもう本当……」
「凄いですね」
「天使だって言ったし」
そう言えば冷えた視線が返ってくる。
「はいはい。せめてもう少しスマートに見送りされてはいかがです」
「無理だよ、離れたくない」
「王女様からお返事もらえたのでしょう? もうそこまで必死にならなくても」
「……」
「主人?」
「……も、もらってない」
「はあ?!」
当然の如く、両側から驚きの声が上がった。
「その、そんな雰囲気にはなったけど、婚約の話を受けるとか、好きだとか、そういう言葉はもらって、ない」
「うわ、ヘタレ」
「ドン引きです、主人」
「言うな」
もうさ、飛べたうえーいってノリだったから、僕の事好きなのなんてきけるわけなかった。
二人から盛大な溜息をもらう。溜息吐きたいのはこっちだって。
「まあ、それは置いといて」
「現実逃避ですか」
「うるさいぞ」
「やれやれですね。では主人、手筈通りにしていますが」
「オーケー」
「それこそ、この事を王女様にお話しされていれば、多少なりとも好感度が上がるのでは?」
「いいんだよ。今はきっと飛べる事が嬉しくて仕方ないだろうから」
それだけに集中できてればいいと、そう思ったから。
「今、格好つけても誰も得をしませんよ」
「ひどい」
肩を落としながら、二人から進捗を確認する。
今、僕が出来る事はラウラが無事に国へ戻れるよう手筈を整えること。
追手もなく目撃もないよう、領地外の人の出入りを制限して、賊の有無もチェック。
二度と同じ事は起こさせない。その為なら僕はなんだってやるさ。
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