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16話前編 まだ結婚なんて(L)
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ここの領民は私が翼をもつ者だと知っていて、それでも好奇の視線を寄越さなかった。あるのは純粋な興味。ダーレが探していた人なのかという確認ぐらいだった。
そして子供達が素直でとても可愛い。ダーレが仕事の話か何かで少し離れたとき、この領地のことを教えてあげると、手をとられればついていくしかなかった。
お花がどうとか、何の野菜を育ててるとか、どこまで領地だとか色々教えてくれる。
そんな子供達にさっき飛ぶことについて問われたとき、私は思いの外自然に応えることができた。今は飛べないけど、飛べるようになったら見せる約束。今まで飛べるなんて思えもしなかったのに、そんなことが言えた自分に驚いた。
「あれ、見ない顔ですね」
声をかけられた先は同じくらいの歳の男性だった。自身を商人だと言う彼は、若い女性向けの小物も扱ってると商品を勧めてくる。
その扱ってる物が気になってついついそちらに行ってしまった。子供達に悪いことをしたと今では思ってる。外の世界のことはあまり知らなかったから、目に映るものが新鮮だった。それでつい。
「折角可愛いんですから、髪留めもいいかと思いますよ」
そういって手が髪にのびてくる。この人もダーレと同じで距離が近い。さすがに触れられるのは嫌で避けようと後ろに下がったら、横から腕がのびてきて、商人の手を掴みあげた。
「彼女に触らないでくれるかな?」
「ダーレ!」
目つき険しく商人を一瞥して、私に背を向けて間に入ってくる。
「ダーレさん」
「あ、なんだ。ネルか」
「なんだとはなんですか」
知り合いだったよう。ダーレの肩から力が抜けるのが見え、声のかたさもなくなった。さっきの姿が別人のようで、その差に驚きが隠せない。ここ最近ずっと隣にいたのに、見た事のない雰囲気に表情。威圧感というべき纏うものには普段私に向けてくれる優しさはどこにもなかった。
思えば私はダーレのことをそんなによく知らない。私の国ではいつも笑って、いつも優しい。たまに触れ合いが過剰だけど。
「領地に戻ってるなんて珍しいですね」
「そうだね。しばらくここにいるよ」
「え! それは本当珍しい……それってまさか」
するりとダーレが一歩下がって、私の隣に立って肩を抱いた。自然な動作に逃げる事が出来なくて、そのまま商人ネルさんの視線がぶつかる。
「そっか、ダーレさんやっと結婚相手連れてくる事が出来たんですね」
「え?!」
いえ、確かにダーレから求婚は受けているけど、私返事していないし、それを了承することがこの領地にくる条件ではなかったのに。何故、目の前の青年はしたり顔で頷くの。
「僕はてんしと結婚するって、ずっと言ってましたもんね。俺が親父に連れられて領地に来るようになってから割とすぐ言い始めたから……五年ぐらい?」
「八年だ」
「うっわ、長っ! 頑張りましたね~」
「まあね」
何故か得意そうなダーレ。何故否定しないの。
「まって、私まだダーレと結婚なんて」
「じゃ、今度てんし様に合うもの見繕ってきます」
「いいね」
やれ髪飾りがなんだ、衣装がなんだと言ってる。私を無視して話を進めるのはいかがなものかと思うのだけど。そもそも最初の話からきちんと正さないといけないのに。
「それでは、てんし様。また」
「え、ちょっと、あの」
「あ、僕のいないとこでラウラにちょっかい出さないでよ」
「はは、分かってますって。そんなことしたらダーレさんに殺されそうだし」
なかなか物騒な事を言って去っていく。
そして子供達が素直でとても可愛い。ダーレが仕事の話か何かで少し離れたとき、この領地のことを教えてあげると、手をとられればついていくしかなかった。
お花がどうとか、何の野菜を育ててるとか、どこまで領地だとか色々教えてくれる。
そんな子供達にさっき飛ぶことについて問われたとき、私は思いの外自然に応えることができた。今は飛べないけど、飛べるようになったら見せる約束。今まで飛べるなんて思えもしなかったのに、そんなことが言えた自分に驚いた。
「あれ、見ない顔ですね」
声をかけられた先は同じくらいの歳の男性だった。自身を商人だと言う彼は、若い女性向けの小物も扱ってると商品を勧めてくる。
その扱ってる物が気になってついついそちらに行ってしまった。子供達に悪いことをしたと今では思ってる。外の世界のことはあまり知らなかったから、目に映るものが新鮮だった。それでつい。
「折角可愛いんですから、髪留めもいいかと思いますよ」
そういって手が髪にのびてくる。この人もダーレと同じで距離が近い。さすがに触れられるのは嫌で避けようと後ろに下がったら、横から腕がのびてきて、商人の手を掴みあげた。
「彼女に触らないでくれるかな?」
「ダーレ!」
目つき険しく商人を一瞥して、私に背を向けて間に入ってくる。
「ダーレさん」
「あ、なんだ。ネルか」
「なんだとはなんですか」
知り合いだったよう。ダーレの肩から力が抜けるのが見え、声のかたさもなくなった。さっきの姿が別人のようで、その差に驚きが隠せない。ここ最近ずっと隣にいたのに、見た事のない雰囲気に表情。威圧感というべき纏うものには普段私に向けてくれる優しさはどこにもなかった。
思えば私はダーレのことをそんなによく知らない。私の国ではいつも笑って、いつも優しい。たまに触れ合いが過剰だけど。
「領地に戻ってるなんて珍しいですね」
「そうだね。しばらくここにいるよ」
「え! それは本当珍しい……それってまさか」
するりとダーレが一歩下がって、私の隣に立って肩を抱いた。自然な動作に逃げる事が出来なくて、そのまま商人ネルさんの視線がぶつかる。
「そっか、ダーレさんやっと結婚相手連れてくる事が出来たんですね」
「え?!」
いえ、確かにダーレから求婚は受けているけど、私返事していないし、それを了承することがこの領地にくる条件ではなかったのに。何故、目の前の青年はしたり顔で頷くの。
「僕はてんしと結婚するって、ずっと言ってましたもんね。俺が親父に連れられて領地に来るようになってから割とすぐ言い始めたから……五年ぐらい?」
「八年だ」
「うっわ、長っ! 頑張りましたね~」
「まあね」
何故か得意そうなダーレ。何故否定しないの。
「まって、私まだダーレと結婚なんて」
「じゃ、今度てんし様に合うもの見繕ってきます」
「いいね」
やれ髪飾りがなんだ、衣装がなんだと言ってる。私を無視して話を進めるのはいかがなものかと思うのだけど。そもそも最初の話からきちんと正さないといけないのに。
「それでは、てんし様。また」
「え、ちょっと、あの」
「あ、僕のいないとこでラウラにちょっかい出さないでよ」
「はは、分かってますって。そんなことしたらダーレさんに殺されそうだし」
なかなか物騒な事を言って去っていく。
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