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11話 ラウラが圧倒的に足りない(D)
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「ラウラ!」
「……」
「ラウラ、待って」
「……」
「ラウラってば」
「放っておいて!!」
一人にしてと叫ぶラウラがあまりにそっけない。折角時間短縮して最短で帰ってきたのに、ひどすぎやしない?
僕の呼ぶ声虚しく、彼女はささっとどこかへ行ってしまう。そうして仕方なくフィーとアンの元へ戻ると、冷たい瞳で一瞥された。
「三日会わないだけでラウラが冷たくなった……」
「逆に三日会わないだけで数年会ってなかったかのような再会の仕方をする主人に引きます」
「そうです。王女様も嫌がるのは当然です」
「ひどい」
畑の手入れとか、家畜の世話とか、魚の養殖とかそういったいつものことに付いていくのは許してくれたけど、二人きりになった途端、避けるように場を後にしようとする。だから追いかけてみたのだけど、逆に怒ってしまった。これじゃ一ヶ月前に逆戻りだ。三日ぶりに抱きしめられると思ったのに。
「もっかいラウラ探そ」
「うっわ、主人引きます」
「さっき話してたこと聴いてました?」
「うるさい」
止むを得ず領地に戻らなければならなかったけど、今僕の最優先はラウラだ。そりゃ戻ってきたら、あのラウラの事、破顔して駆け寄って抱きしめてくれるなんて期待はしてなかった。それでも、あそこまで拒否されるとは予想してなかったから、さすがに少し落ち込んだ。
あの夜キスしたの、怒ってるのかな、と一瞬頭の隅でちらついた考えを取り払う。あの時、ラウラは受け入れてくれていた。僕にまだ希望があるんだと思わせてくれた。
「主人、行くのは勝手ですが、あまり羽目を外さないよう」
「少なくとも三日前のような行動をすれば、今度こそ本気の本当に婚約破棄されますよ」
「分かってるって」
ラウラが顔を真っ赤にさせてガゼボを足早に去って、僕が領地に戻る事を言えずに肩を落として戻ってきたのを確認した二人は相変わらず辛辣な言葉と共に僕の言動を追及した。
最終的にキスしたことがバレれれば二人はドン引き。貞淑な王女様には順序というものがあると散々お説教され、ラウラの顔を見ることなく領地に戻る事になった。本当ひどい話だ。
第一、唇にキスしなかっただけ我慢出来た方だと思うんだけど。そりゃ、限りなく際だったけどさ。唇の端っこに触れてたとは思うんだけどさ。
「さて、と」
お手伝い回りが終われば、ラウラは大概子供達と一緒にいるけど、今回は違うようだ。
子供達にきいても見ていないと言う。その内の一人が、行きそうな場所をいくつか教えてくれた。彼女はよく一人になりたい時に行く場所があると。
* * *
「ラウラあああ!」
「ダ、ダーレ!」
候補地のいくつかの一つにラウラがいた。
いくつか探した内の最後。時間が思ったよりもかかりすぎて、座って本を読む彼女にそのまま身体ごと突っ込んで腰回りに抱き着いた。
当然、悲鳴のような声を上げてラウラが離すようお願いしてくるけど、今日は無理、絶対無理。
「ラウラが圧倒的に足りない」
「何を言っているの! すぐに離して!」
「嫌」
城の中庭って割と広いし、子供達もそこまで把握してないから、探すの本当大変だった。しかも人目につかないところを選んでいるから、尚更探しづらい。まあ一人になりたいのだから、そういう場所を選んでいるんだろうけど。
「ラウラ怒ってる?」
「え?」
「何も言わずに出て行ったから」
言葉に詰まりながら唸る姿が可愛いすぎてどうしたらいいのかな。
たどたどしく手紙くれたからと返ってくる。ちゃんと読んでくれたのかと思うと、嬉しくて抱く腕に力を加えてより彼女の腰にうずもれた。
ああいいなあ、ラウラに触れられるの。てか腰ほっそ、ちゃんと食べてるか心配。
「ちょっと!」
腕を掴まれ外そうと躍起になる彼女の力の弱さが可愛いくて見えないところで笑ってしまう。そんな微々たる抵抗、通用するわけない。でもさすがにやりすぎて引かれるのは困るから、僕はゆっくり腕を解いた。
ラウラは恥ずかしさに顔を赤くして、ダーレったらと言って体を起こした僕を見上げている。
「可愛い」
「ダーレ!」
反省の色ない僕の事がお気に召さないらしい。いつものことだけど。
そして三日前気になったとこを今になって確認して安堵した。
「良かった」
「え?」
「ここ、跡が消えた」
首筋に指を這わせる。三日前は絞められた跡が残っていた。
あの時はまだ彼女の様子から言えないかと思って、敢えて話題にはしなかったから。こんな綺麗な肌にあんな汚らしい男の跡がつくとか本気で考えられないし、許すわけもない。今にみてろよ。
「あ、ああ……そうね、もうすっかり」
「本当良かった。心配だったから」
「別にあのぐらい」
「あのぐらい?」
「え、と」
僕が笑顔で言うと、気まずそうに視線を逸らした。この件ではきっと僕以外の誰かにもあれやこれや言われてるだろうことが容易に想像できた。
ラウラは人の為に尽くしすぎる。自分の事なんてどこかに置いて、自分の優先順位なんてすごく後で。
だからこそ、彼女が必死に絞り出した願いは絶対に叶える。彼女が飛んで、僕の元に舞い降りてくる、そんな日を僕が夢見ているのだから。
「あ、そうだ、ダーレ」
「何?」
逸らすようにラウラは話を変えてきた。
「明日時間あけてほしいのだけど」
「ラウラの為ならいつでもあけるよ?」
「私というよりは、いつもお手伝いしてる皆の為にあけてほしい感じかしら」
「ん?」
まあどちらにしてもラウラ絡みであれば、いくらでも時間を作るんだけど。
肯定の返事をすれば彼女は嬉しそうに微笑む。それが見たいから僕は頑張って時間を作る。やっぱり惚れた弱みってすごい。
「……」
「ラウラ、待って」
「……」
「ラウラってば」
「放っておいて!!」
一人にしてと叫ぶラウラがあまりにそっけない。折角時間短縮して最短で帰ってきたのに、ひどすぎやしない?
僕の呼ぶ声虚しく、彼女はささっとどこかへ行ってしまう。そうして仕方なくフィーとアンの元へ戻ると、冷たい瞳で一瞥された。
「三日会わないだけでラウラが冷たくなった……」
「逆に三日会わないだけで数年会ってなかったかのような再会の仕方をする主人に引きます」
「そうです。王女様も嫌がるのは当然です」
「ひどい」
畑の手入れとか、家畜の世話とか、魚の養殖とかそういったいつものことに付いていくのは許してくれたけど、二人きりになった途端、避けるように場を後にしようとする。だから追いかけてみたのだけど、逆に怒ってしまった。これじゃ一ヶ月前に逆戻りだ。三日ぶりに抱きしめられると思ったのに。
「もっかいラウラ探そ」
「うっわ、主人引きます」
「さっき話してたこと聴いてました?」
「うるさい」
止むを得ず領地に戻らなければならなかったけど、今僕の最優先はラウラだ。そりゃ戻ってきたら、あのラウラの事、破顔して駆け寄って抱きしめてくれるなんて期待はしてなかった。それでも、あそこまで拒否されるとは予想してなかったから、さすがに少し落ち込んだ。
あの夜キスしたの、怒ってるのかな、と一瞬頭の隅でちらついた考えを取り払う。あの時、ラウラは受け入れてくれていた。僕にまだ希望があるんだと思わせてくれた。
「主人、行くのは勝手ですが、あまり羽目を外さないよう」
「少なくとも三日前のような行動をすれば、今度こそ本気の本当に婚約破棄されますよ」
「分かってるって」
ラウラが顔を真っ赤にさせてガゼボを足早に去って、僕が領地に戻る事を言えずに肩を落として戻ってきたのを確認した二人は相変わらず辛辣な言葉と共に僕の言動を追及した。
最終的にキスしたことがバレれれば二人はドン引き。貞淑な王女様には順序というものがあると散々お説教され、ラウラの顔を見ることなく領地に戻る事になった。本当ひどい話だ。
第一、唇にキスしなかっただけ我慢出来た方だと思うんだけど。そりゃ、限りなく際だったけどさ。唇の端っこに触れてたとは思うんだけどさ。
「さて、と」
お手伝い回りが終われば、ラウラは大概子供達と一緒にいるけど、今回は違うようだ。
子供達にきいても見ていないと言う。その内の一人が、行きそうな場所をいくつか教えてくれた。彼女はよく一人になりたい時に行く場所があると。
* * *
「ラウラあああ!」
「ダ、ダーレ!」
候補地のいくつかの一つにラウラがいた。
いくつか探した内の最後。時間が思ったよりもかかりすぎて、座って本を読む彼女にそのまま身体ごと突っ込んで腰回りに抱き着いた。
当然、悲鳴のような声を上げてラウラが離すようお願いしてくるけど、今日は無理、絶対無理。
「ラウラが圧倒的に足りない」
「何を言っているの! すぐに離して!」
「嫌」
城の中庭って割と広いし、子供達もそこまで把握してないから、探すの本当大変だった。しかも人目につかないところを選んでいるから、尚更探しづらい。まあ一人になりたいのだから、そういう場所を選んでいるんだろうけど。
「ラウラ怒ってる?」
「え?」
「何も言わずに出て行ったから」
言葉に詰まりながら唸る姿が可愛いすぎてどうしたらいいのかな。
たどたどしく手紙くれたからと返ってくる。ちゃんと読んでくれたのかと思うと、嬉しくて抱く腕に力を加えてより彼女の腰にうずもれた。
ああいいなあ、ラウラに触れられるの。てか腰ほっそ、ちゃんと食べてるか心配。
「ちょっと!」
腕を掴まれ外そうと躍起になる彼女の力の弱さが可愛いくて見えないところで笑ってしまう。そんな微々たる抵抗、通用するわけない。でもさすがにやりすぎて引かれるのは困るから、僕はゆっくり腕を解いた。
ラウラは恥ずかしさに顔を赤くして、ダーレったらと言って体を起こした僕を見上げている。
「可愛い」
「ダーレ!」
反省の色ない僕の事がお気に召さないらしい。いつものことだけど。
そして三日前気になったとこを今になって確認して安堵した。
「良かった」
「え?」
「ここ、跡が消えた」
首筋に指を這わせる。三日前は絞められた跡が残っていた。
あの時はまだ彼女の様子から言えないかと思って、敢えて話題にはしなかったから。こんな綺麗な肌にあんな汚らしい男の跡がつくとか本気で考えられないし、許すわけもない。今にみてろよ。
「あ、ああ……そうね、もうすっかり」
「本当良かった。心配だったから」
「別にあのぐらい」
「あのぐらい?」
「え、と」
僕が笑顔で言うと、気まずそうに視線を逸らした。この件ではきっと僕以外の誰かにもあれやこれや言われてるだろうことが容易に想像できた。
ラウラは人の為に尽くしすぎる。自分の事なんてどこかに置いて、自分の優先順位なんてすごく後で。
だからこそ、彼女が必死に絞り出した願いは絶対に叶える。彼女が飛んで、僕の元に舞い降りてくる、そんな日を僕が夢見ているのだから。
「あ、そうだ、ダーレ」
「何?」
逸らすようにラウラは話を変えてきた。
「明日時間あけてほしいのだけど」
「ラウラの為ならいつでもあけるよ?」
「私というよりは、いつもお手伝いしてる皆の為にあけてほしい感じかしら」
「ん?」
まあどちらにしてもラウラ絡みであれば、いくらでも時間を作るんだけど。
肯定の返事をすれば彼女は嬉しそうに微笑む。それが見たいから僕は頑張って時間を作る。やっぱり惚れた弱みってすごい。
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