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25話 エール仕事できる子
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「フィクタ、私と結婚して下さい」
「…………は?」
思わずワンモアと言ってしまった。
恥ずかしげもなく「結婚して下さい」と二度目をかましてくる。なんで今?
「身分緩和されたらフィクタには山のような縁談がくるでしょう?」
「え? なんで?」
爵位が気になって動かなかった一定層が動いてくると主張するけどどうだろう? 今の今までエールが側にいたから他の男性と話す機会があまりになかった。縁談なんてこないと思うんだけど。
「黙ってみてるのも癪ですし、もたもたしてる間にフィクタが他の男性と結婚を決めたら嫌ですし」
「え、なに? 貴方私のこと好きなの?」
「え?」
「え?」
伝わっていませんでした? と悲しそうに眉を下げて言われると私が悪い人みたいじゃない? 悪役は卒業したんだから、やめてよ。
「好きでもない女性の側に何年もいるわけないでしょう」
「側にいるのは私の監視じゃん」
私の言葉は届かなかったらしい。無視して話が進む。
「私はフィクタが好きです。誰にも渡したくない。手本になる形を使っても構わないのでこれを機に結婚して下さい」
「ええ……」
「狡いことをしているのは分かっています。でも私も余裕がないので」
だめだ、疑問符しか浮かばない。なんなの、急に告白とプロポーズ同時って私の知るエールがやらなそうなことだ。
「インボークルム子爵令嬢」
「ここでは名前で結構です」
「ええ、ではソミアさん。第三皇子殿下も私と同じなのですよ」
「同じ?」
「そう。自分の一番近いところに置いても、横から奪われるんじゃないかって気が気じゃない。誰にも知られないようにしても、それができないことを重々に理解している。かといって相手が自分以外を選んで幸せを得ることを応援できない」
あ、なるほど!
今ここで私とエールが身分差恋愛してる体にして、第三皇子シレと侍女ソミアの身分差に言及してるのね。
ここで男としての見解を見せ、ソミアにシレの愛の深さを第三者目線で伝えて愛されてる安心をソミアに提供する。
「エール、神……」
「私はマーロン侯爵家の次男。兄が継いだとはいえ、我が国で爵位は分配制をとっている為、正確には私も侯爵位を継いでいます。兄が代表してるだけですね。けど、そうなるとフィクタとの結婚は難しい。我が国でも高爵位と平民の婚姻は反対されることが多いので」
そんな話初めてきいたわ。
爵位分配制か……それも悪くない制度ね。
「だから第三皇子殿下が身分制度の緩和を行うと聞いて希望が持てました。帝国が行えば周辺国にもその動きが波及する。我が国でも程なくして法改正が行われますし、帝国に身を置くフィクタにも帝国内の法が変わることは重要なことです」
「……侯爵閣下はフィクタ様とのご結婚を強く希望されているのですか」
「ええ、愛していますので」
だから立場上、第三皇子殿下の気持ちは分かるという。
「私よりも立場上、第三皇子殿下はソミアさんには言いづらいでしょう。けれど私がフィクタを求めるように殿下はソミアさんだけを求めていらっしゃる。なので一度貴方の気持ちをありのまま殿下にお話頂けないでしょうか」
「私の、気持ちを?」
「ええ。同じ感覚なのか殿下の考え方と私の考え方は似てまして……貴方の気持ちが確かであることを知りたいんですよ。分かれば誠実に距離を縮め、しかるべき時に結婚の申し出をします。きちんと待ちます。ソミアさんの意向に沿わないことを殿下はなさらないでしょう。ソミアさんの憂いも払う為に行動されている」
だから今回の身分に関する法改正は殿下のソミアさんに対する気持ちの表し方とも言えますと最後に締める。
これがエールの言いたいことか。
ソミアが好き! なシレの愛情表現の一つが法改正。だから気持ちを伝えてみてくれない? 的な。
「勿論欠片も殿下を想う気持ちがなければそこで終わりですが……」
「そんなこと……っ」
すごいぞエール。
シレはソミアが好きって説得ができてる。さすが高爵位持ち。もしかしたらこれ、ソミアが告れば外伝と違ってゴールインしちゃうんじゃないの? イグニスの件でシレが倒れるまでもだもだした時間がないからいける気がする。
にしたって動揺して気持ちバレしちゃうソミア可愛すぎてヨダレでそうなんだけど、どうしたらいい?
「殿下とソミアさんが想い合っているのは同じ立場の私達には分かっていました」
隠しきれてると思いますと安心させる言葉まで伝えるエール。
おま、出来すぎくんかよ。ソミアの心掴むのうますぎない?
「私達のこれからがうまくいくのは殿下とソミアさん次第とも言えますよ」
「そんな……ずるいです」
「ええ、私結構狡いんです。フィクタを手に入れる為に殿下もソミアさんも利用するような男ですから」
「……」
「……」
無言の時間の割に気まずさはない。なんか、私よりもソミアと仲良くなってるエールが羨ましいんだけど。
「…………分かりました」
「!」
「ええ」
「私も自分に嘘をつきたくありません。侯爵閣下の御気遣いをこれ以上賜るわけにもいきません。努力、して、みます」
「はい。私達はソミアさんの味方です。いつでも助けになりますし、こうしてお話もこれからたくさんできると嬉しいです」
「……はい」
ソミアのデレが可愛いすぎるー!!
エール仕事できる子……ソミア眼福すぎて眩しい。
「…………は?」
思わずワンモアと言ってしまった。
恥ずかしげもなく「結婚して下さい」と二度目をかましてくる。なんで今?
「身分緩和されたらフィクタには山のような縁談がくるでしょう?」
「え? なんで?」
爵位が気になって動かなかった一定層が動いてくると主張するけどどうだろう? 今の今までエールが側にいたから他の男性と話す機会があまりになかった。縁談なんてこないと思うんだけど。
「黙ってみてるのも癪ですし、もたもたしてる間にフィクタが他の男性と結婚を決めたら嫌ですし」
「え、なに? 貴方私のこと好きなの?」
「え?」
「え?」
伝わっていませんでした? と悲しそうに眉を下げて言われると私が悪い人みたいじゃない? 悪役は卒業したんだから、やめてよ。
「好きでもない女性の側に何年もいるわけないでしょう」
「側にいるのは私の監視じゃん」
私の言葉は届かなかったらしい。無視して話が進む。
「私はフィクタが好きです。誰にも渡したくない。手本になる形を使っても構わないのでこれを機に結婚して下さい」
「ええ……」
「狡いことをしているのは分かっています。でも私も余裕がないので」
だめだ、疑問符しか浮かばない。なんなの、急に告白とプロポーズ同時って私の知るエールがやらなそうなことだ。
「インボークルム子爵令嬢」
「ここでは名前で結構です」
「ええ、ではソミアさん。第三皇子殿下も私と同じなのですよ」
「同じ?」
「そう。自分の一番近いところに置いても、横から奪われるんじゃないかって気が気じゃない。誰にも知られないようにしても、それができないことを重々に理解している。かといって相手が自分以外を選んで幸せを得ることを応援できない」
あ、なるほど!
今ここで私とエールが身分差恋愛してる体にして、第三皇子シレと侍女ソミアの身分差に言及してるのね。
ここで男としての見解を見せ、ソミアにシレの愛の深さを第三者目線で伝えて愛されてる安心をソミアに提供する。
「エール、神……」
「私はマーロン侯爵家の次男。兄が継いだとはいえ、我が国で爵位は分配制をとっている為、正確には私も侯爵位を継いでいます。兄が代表してるだけですね。けど、そうなるとフィクタとの結婚は難しい。我が国でも高爵位と平民の婚姻は反対されることが多いので」
そんな話初めてきいたわ。
爵位分配制か……それも悪くない制度ね。
「だから第三皇子殿下が身分制度の緩和を行うと聞いて希望が持てました。帝国が行えば周辺国にもその動きが波及する。我が国でも程なくして法改正が行われますし、帝国に身を置くフィクタにも帝国内の法が変わることは重要なことです」
「……侯爵閣下はフィクタ様とのご結婚を強く希望されているのですか」
「ええ、愛していますので」
だから立場上、第三皇子殿下の気持ちは分かるという。
「私よりも立場上、第三皇子殿下はソミアさんには言いづらいでしょう。けれど私がフィクタを求めるように殿下はソミアさんだけを求めていらっしゃる。なので一度貴方の気持ちをありのまま殿下にお話頂けないでしょうか」
「私の、気持ちを?」
「ええ。同じ感覚なのか殿下の考え方と私の考え方は似てまして……貴方の気持ちが確かであることを知りたいんですよ。分かれば誠実に距離を縮め、しかるべき時に結婚の申し出をします。きちんと待ちます。ソミアさんの意向に沿わないことを殿下はなさらないでしょう。ソミアさんの憂いも払う為に行動されている」
だから今回の身分に関する法改正は殿下のソミアさんに対する気持ちの表し方とも言えますと最後に締める。
これがエールの言いたいことか。
ソミアが好き! なシレの愛情表現の一つが法改正。だから気持ちを伝えてみてくれない? 的な。
「勿論欠片も殿下を想う気持ちがなければそこで終わりですが……」
「そんなこと……っ」
すごいぞエール。
シレはソミアが好きって説得ができてる。さすが高爵位持ち。もしかしたらこれ、ソミアが告れば外伝と違ってゴールインしちゃうんじゃないの? イグニスの件でシレが倒れるまでもだもだした時間がないからいける気がする。
にしたって動揺して気持ちバレしちゃうソミア可愛すぎてヨダレでそうなんだけど、どうしたらいい?
「殿下とソミアさんが想い合っているのは同じ立場の私達には分かっていました」
隠しきれてると思いますと安心させる言葉まで伝えるエール。
おま、出来すぎくんかよ。ソミアの心掴むのうますぎない?
「私達のこれからがうまくいくのは殿下とソミアさん次第とも言えますよ」
「そんな……ずるいです」
「ええ、私結構狡いんです。フィクタを手に入れる為に殿下もソミアさんも利用するような男ですから」
「……」
「……」
無言の時間の割に気まずさはない。なんか、私よりもソミアと仲良くなってるエールが羨ましいんだけど。
「…………分かりました」
「!」
「ええ」
「私も自分に嘘をつきたくありません。侯爵閣下の御気遣いをこれ以上賜るわけにもいきません。努力、して、みます」
「はい。私達はソミアさんの味方です。いつでも助けになりますし、こうしてお話もこれからたくさんできると嬉しいです」
「……はい」
ソミアのデレが可愛いすぎるー!!
エール仕事できる子……ソミア眼福すぎて眩しい。
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