死亡フラグと修正力に抗う一周目悪役令嬢な私【元ツンデレ現変態ストーカーと亡き公国の魔女 外伝3】

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22話 二つ目外伝推しカプに介入

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「ヴィーてやとユツィたやが無事婚約……よきよき。結婚式は見に行こっと」
「随分楽しそうですね」
「そりゃあさあ」

 なんといっても皇帝が戦争だと動いてくれたおかげで国際法が発動、拘束の後に皇弟に代替わりして想定通りの未来がきた。ヒャッハーな私ってば今無敵状態。おっとテンションあがりすぎて文章おかしくなってるわね。
 ともあれ、平和な時代が舞い降りた。挙句、親善試合で公開プロポーズしてくれたユースティーツィアのおかげで外伝二つ目のカップルは無事ゴールインできそう。目標の一つ目が達成できて嬉しい。

「第二皇子が本気で好きだったわけではなかったのですね」
「あれは発破かける為に言っただけの虚言だよ」

 そもそもユツィはきちんと分かっていたし。第二皇子に手を出して亡き者になんてしないから死亡フラグエールは疑わずに監視だけしてればいいのよ。監視だけなら平行線だしね。

「なんだかんだ帝国への行き来も了承してますし」
「辞められるなら今すぐ辞めたい!」
「無理でしょうね」
「うう……」

 皇帝が失脚し皇弟に代替わりしたせいで、国家連合と国際平和騎士団の設立に向けた会議が帝国でも開かれるようになってしまった。公のものは帝国議会で、もう一つ、いつのもの面子でこっそりやる時だけ私は参加している。というか、代替わりによって公にそういう話するようになったのなら私いらないと思うんだけど。

「あ、フィクタちゃん」
「アチェンディーテ公爵閣下、あ、夫人も」
「ええ、こんにちは」

 書類を渡すだけに来たらラッキーなことにイグニスの奥さんにも会えた。美人だから好き。この人ももれなく死亡フラグだけど、ぶっちゃけ夫婦でこようが単体でこようがリスクは変わらない。そこは諦めついてきた。
 というよりも早く生の本編ヒーロー・サクに会いたい。この城に来てるのは知ってるんだけど中々会う機会がないからなあ。

「丁度いいや。こっちの書類、シレに届けてくれない?」
「重要な文書は直接がいいと思いますけど」
「いやだなあ、フィクタちゃんを信頼してるんだよ」
「奥様の側離れたくないだけでしょう」
「えへへ、分かっちゃった~?」

 大変美味しいのでもっとどうぞと言いたいところだけど、仕事は仕事だし、私が代わりに持っていくと推しカプヒーローの一人であるシレがイグニスに会えないと不機嫌になる。シレはイグニスをかなり尊敬しているからね。へたにシレの反感を買って死亡フラグ回収したくないし。

「今回だけ! よろしく!」
「げえええ」
「フィクタ嬢」
「……はい」

 こういう時、良い子ちゃんで言う事きくのがマーロン弟ことエールだ。貴族としても仕事上の上下にしてもイグニスの言うことはきかないといけない立場ではあるけど、私利私欲で職権乱用している人間の言う事きくのはどうなのよ。

「エクシピートル様は真面目なことで」
「第三皇子殿下は貴女にとってお会いしたい方なのでは?」
「ソミアたそとセットでお願いします」
「側付きの侍女なのでいると思いますが」
「あ、ソミアたそのお茶飲めるのか! それならやぶさかではない」

 本当面白いですねと笑われた。この城で一緒に研修を受ける身になってから、ほんの少しだけ笑うことが増えた気がする。まあ結構長い間監視されているし、多少なりとも情は生まれてくれたのだろう。

「ん? レースノワレ王国も滅びず戦争も起きず?」
「ええ、よかったですね」
「待って」

 だからヴォックスとユースティーツィアの婚約を促すために親善試合をした。
 武力派の皇帝が退く。親善試合の時に十五歳だったフィクタはついに十六歳だ。その頃なにがあった?
 シレが十四歳ということは皇歴四百五十二年。いつも持ってる年表メモを見る。

「フィクタ?」

 立ち止まった私を不思議に思ったのか同じように足を止めるエール。
 なんてこと、忘れていた。

「四百五十二年から四百五十三年にかけてイグニスが死ぬ」
「はい?」
「いや大丈夫、死なないから」

 死亡原因はフィクタだから私が今動かなければ死ぬことはない。けどイグニスが死ぬことで第三皇子のシレの話は大きく動く。具体的にはイグニスの死後しばらくしてシレが倒れ、本編ヒロイン・クラスが治して外伝二つ目ヒロイン・ソミアがシレに告白する。 
 ここのソミアの気持ちが明確になるイベントがないとシレがその後ソミアにアプローチできない。ソミアは感情を表に出さないから、気持ちをはっきり伝えるという言葉のイベントが大事だ。

「しまった……」

 皆生きてればいいとかじゃなかった。きっかけがないのは痛い。ソミアは発破かけて動く子じゃないし、むしろ自信と安心を与えた方がうまくいく。
 安心?

「……法律だ」
「フィクタ?」

 今すぐシレに会わないと。身分に関する法をどうにかしてソミアの安心を得よう。時期的に早いけどやるしかない。少し進展させないとソミアってば城を去りそうだもの。

「急ぐわ」

 ひとまず走った。エールが驚きつつも追いかけてくる。別に後で来てくれていいのに、後ろ向きながら言ってもきかない。

「第三皇子殿下への謁見は別室で申請してからでないと無理ですよ」
「いやもう急いでるし」

 入れないラインを飛び越える。
 と、少し後ろのエールが唸りながら倒れたので急いで戻った。ああ、まさか。

「ごめん、シレきゅんの魔法が」
「ぐ……きゅん?」

 外伝では無意識に入るのを避ける魔法が施されている。挙げ句無理に通ると容態悪くなるらしいけど、本当だったわ。

「フィクタはなぜ……」
「あ、これだ」

 エールを越えてはいけないラインから外側へ戻すと座れるぐらいまで回復した。シレってばやっぱり魔法の才能があるのね。

「一個あげるわ」
「これは」
「魔石。トラップはもれなく自動解除してくれるよ」

 たんまり持ってきてるから一つぐらいいいだろう。集落跡地で回収しといてよかった。

「へえ」
「!」
「越えた人間ってフィクタ嬢だったんですかあ」
「ひょお」

 あまりに冷たい語調が背後からおりてきて変な声でた。ゆっくり振り返れば絶対零度の笑顔が私を見下ろしている。あ、少し後ろにソミアいて和む。けど癒されてる場合じゃない。

「で? 僕にもその話詳しく聴かせてくれますか?」
「……シ、シレきゅん」

 詰んだ。
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