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17話 外伝推しカプ要の年
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さらに四年後。
国際法が制定された。
細かく言うなら、国際法と位置付けられた各法律が全て定まり施行された、が正しい。
「ええと、慣習法が戦争前? で、平和維持法は、ん? どっち?」
「こちらを」
「あ、ありがと」
図書館で施行された全ての法律を網羅する勉強会を一人行う予定だった。のに、相変わらず当然のようにマーロン弟もといエールが一緒にいる。これまた様々な資料や新聞や文献を出してくれた。最近こうした私のアシストがうまい。助かるけど裏がありそうだなと思う。だってエールは死亡フラグだもの。
「皇帝を止められたら私いらなくない?」
「いいえ。国家連合設立がまだですよ」
「それは私抜きでできるでしょ」
「ほら、こちらを」
難しい本が積まれた。いやもうよくない?
皇帝が動いたらアウトなぐらい法律網羅したんだから、あとは時を待つだけじゃん。
「うっわ、判例集?」
「国際法が施行されたとはいえ、まだ目標には至っていません。予行練習だと思って判例から学びを深めましょう」
目標とは皇帝の失脚だ。あまり大っぴらにできないのでいつも濁して話している。
「あ、やば」
私とマーロン弟ことエールは窓際の席を陣取っている。そこからは図書館入り口がよく見えた。丁度会いたくない人間が入ってきて判例集で顔を隠す。
「いかがしました?」
「静かにしててください」
周囲を見つつ奥へ進んでいった。よし、後は近くに来た時だけ気を付けよう。
「……第一皇子ですか?」
「!」
取り巻きを引き連れた帝国第一皇子。
皇弟が息子のことを鑑みたのか第一皇子を入学させた。この男も私にとっては最たる死亡フラグの一人だ。結構馬鹿だからボロを出しやすい。小説でもべらべら喋ってたし。皇帝派である以上、巻き添えくらって死ぬわけにはいかない。離れておくにこしたことはないわね。
「彼が気になりますか?」
「……関わりたくないんです」
ふむと顎に手を添えている。もう片方の手にあった本を静かに机の上に戻した。
さすがにかつての夫とは関わらない方がいいだろう。物語の修正力がかなりききそうだし。
「分かりました」
「は? なにが?」
いいえ、と微笑むマーロン弟もといエール。
本当に子供らしくない表情と所作だ。
「まあいいや……ちょっと息抜き」
近場の新聞を手に取った。ゴシップはたまに役に立つから気晴らしがてら毎日読むことにしている。
ふむ。レースノワレ王国の王女殿下の専属護衛騎士はユースティーツィア・マーレ・ユラレ伯爵令嬢が有力と。グレース騎士学院演習での蛮族戦での活躍が評されて、か。おっと、一つ目の外伝五話間近なの?
「ねえ」
「いかがしました?」
「今って何年?」
「皇歴四百五十年です」
フィクタ十四歳、第一皇子レックスも十四歳、となると第二皇子ヴォックスは十三歳、ユースティーツィアも十三歳。
待った。
推しカプ、ヴォックスとユースティーツィアの重要な年! 王女専属騎士になったユースティーツィアにヴォックスが枯れない薔薇をプレゼントした年だ。この薔薇は後々役に立ってくれるから大事。
いや待って。仮に薔薇の件がうまくいっても先は大丈夫? やれる?
「騎士学院は問題ない。おじいちゃん皇帝は現役だけど……国際法制定の前座でレースノワレ王国が軍縮してる。第一皇子は皇帝に呼び出されていないから勅命での戦争はない。ヴォックスの騎士団長就任もまだだし……」
「?」
一見物語に影響なさそうだけど軍縮は気になる。皇帝が動けば国際法によって拘束できるからレースノワレ王国がなくなることはない。
待った。そもそも帝国による武力侵攻がなくなったらヴォックスとユースティーツィアの物語が始まらない。よき友人で終わるんじゃ……?
「進展する為のきっかけがないと……互いに好きあってるからそこはよしとして……ああやっぱり現状を把握しないとだめね。双子に探りをいれる? でも変な動きをして二人が死亡フラグ回収しても困るし……」
「……」
グレース騎士学院はここテンプスモーベリ総合学院と近い。同じ中立性を持っているし、いつもの会議のおかげで理事長同士顔合わせはできている。
中立性を持つようになって数年経った。
なにかイベントをしてもおかしくないのでは?
「よし」
「はい、どうぞ」
「ん……え、なにこれ」
「理事長に対しての嘆願書と提案書です。要望がある場合こちらを使うことが多いですよ」
「……はい?」
「独り言から判断しました。違いますか?」
違わないけど、どうなの? 最近甲斐甲斐しさが割り増しだとは思っていた。というより秘書かなにか? 私、社長? んー……まあいいか。
「ありがとう」
「はい」
結果、グレース騎士学院とテンプスモーベリ総合学院の交流会が催されることとなった。
なぜかいつもの会議で議決するはめになってイグニスやらマーロン兄に知られ、にこにこされたけどもう気にするのはやめた。死亡フラグ回収でなければなんでもいい。
国際法が制定された。
細かく言うなら、国際法と位置付けられた各法律が全て定まり施行された、が正しい。
「ええと、慣習法が戦争前? で、平和維持法は、ん? どっち?」
「こちらを」
「あ、ありがと」
図書館で施行された全ての法律を網羅する勉強会を一人行う予定だった。のに、相変わらず当然のようにマーロン弟もといエールが一緒にいる。これまた様々な資料や新聞や文献を出してくれた。最近こうした私のアシストがうまい。助かるけど裏がありそうだなと思う。だってエールは死亡フラグだもの。
「皇帝を止められたら私いらなくない?」
「いいえ。国家連合設立がまだですよ」
「それは私抜きでできるでしょ」
「ほら、こちらを」
難しい本が積まれた。いやもうよくない?
皇帝が動いたらアウトなぐらい法律網羅したんだから、あとは時を待つだけじゃん。
「うっわ、判例集?」
「国際法が施行されたとはいえ、まだ目標には至っていません。予行練習だと思って判例から学びを深めましょう」
目標とは皇帝の失脚だ。あまり大っぴらにできないのでいつも濁して話している。
「あ、やば」
私とマーロン弟ことエールは窓際の席を陣取っている。そこからは図書館入り口がよく見えた。丁度会いたくない人間が入ってきて判例集で顔を隠す。
「いかがしました?」
「静かにしててください」
周囲を見つつ奥へ進んでいった。よし、後は近くに来た時だけ気を付けよう。
「……第一皇子ですか?」
「!」
取り巻きを引き連れた帝国第一皇子。
皇弟が息子のことを鑑みたのか第一皇子を入学させた。この男も私にとっては最たる死亡フラグの一人だ。結構馬鹿だからボロを出しやすい。小説でもべらべら喋ってたし。皇帝派である以上、巻き添えくらって死ぬわけにはいかない。離れておくにこしたことはないわね。
「彼が気になりますか?」
「……関わりたくないんです」
ふむと顎に手を添えている。もう片方の手にあった本を静かに机の上に戻した。
さすがにかつての夫とは関わらない方がいいだろう。物語の修正力がかなりききそうだし。
「分かりました」
「は? なにが?」
いいえ、と微笑むマーロン弟もといエール。
本当に子供らしくない表情と所作だ。
「まあいいや……ちょっと息抜き」
近場の新聞を手に取った。ゴシップはたまに役に立つから気晴らしがてら毎日読むことにしている。
ふむ。レースノワレ王国の王女殿下の専属護衛騎士はユースティーツィア・マーレ・ユラレ伯爵令嬢が有力と。グレース騎士学院演習での蛮族戦での活躍が評されて、か。おっと、一つ目の外伝五話間近なの?
「ねえ」
「いかがしました?」
「今って何年?」
「皇歴四百五十年です」
フィクタ十四歳、第一皇子レックスも十四歳、となると第二皇子ヴォックスは十三歳、ユースティーツィアも十三歳。
待った。
推しカプ、ヴォックスとユースティーツィアの重要な年! 王女専属騎士になったユースティーツィアにヴォックスが枯れない薔薇をプレゼントした年だ。この薔薇は後々役に立ってくれるから大事。
いや待って。仮に薔薇の件がうまくいっても先は大丈夫? やれる?
「騎士学院は問題ない。おじいちゃん皇帝は現役だけど……国際法制定の前座でレースノワレ王国が軍縮してる。第一皇子は皇帝に呼び出されていないから勅命での戦争はない。ヴォックスの騎士団長就任もまだだし……」
「?」
一見物語に影響なさそうだけど軍縮は気になる。皇帝が動けば国際法によって拘束できるからレースノワレ王国がなくなることはない。
待った。そもそも帝国による武力侵攻がなくなったらヴォックスとユースティーツィアの物語が始まらない。よき友人で終わるんじゃ……?
「進展する為のきっかけがないと……互いに好きあってるからそこはよしとして……ああやっぱり現状を把握しないとだめね。双子に探りをいれる? でも変な動きをして二人が死亡フラグ回収しても困るし……」
「……」
グレース騎士学院はここテンプスモーベリ総合学院と近い。同じ中立性を持っているし、いつもの会議のおかげで理事長同士顔合わせはできている。
中立性を持つようになって数年経った。
なにかイベントをしてもおかしくないのでは?
「よし」
「はい、どうぞ」
「ん……え、なにこれ」
「理事長に対しての嘆願書と提案書です。要望がある場合こちらを使うことが多いですよ」
「……はい?」
「独り言から判断しました。違いますか?」
違わないけど、どうなの? 最近甲斐甲斐しさが割り増しだとは思っていた。というより秘書かなにか? 私、社長? んー……まあいいか。
「ありがとう」
「はい」
結果、グレース騎士学院とテンプスモーベリ総合学院の交流会が催されることとなった。
なぜかいつもの会議で議決するはめになってイグニスやらマーロン兄に知られ、にこにこされたけどもう気にするのはやめた。死亡フラグ回収でなければなんでもいい。
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