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15話 呼び方
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「あと国際司法裁判所も作ってください」
「いいねえ」
ここまで法律を作ってうまいこと皇帝を失脚できれば連合国家の有益性が証明される。そこで国家連合設立につながるはずだ。
「各国の同意も速やかに進めましょう」
「あ、あの、帝国にも合意を得てほしいですんですけど」
私の言葉に一瞬鎮まり、ひりついた空気を醸し出す。無理を言っていることは充分に分かっているけど、皇帝を失脚させるには帝国がこれに合意を示しているかでイージーモードになるかどうかが決まる。
「……しかし」
「皇弟殿下に合意のサインを貰えばいいじゃないですか」
当然渋るのは分かっていた。勝手なことしたら内紛にも繋がる。けど国際法にかけるしかない。帝国の国際法合意がバレるのと現皇帝の失脚をセットにしてそのまま代替わりだ。
そうははっきり言わなくても周囲は察しているので渋り続ける。これはもう明らかな現皇帝、現帝国への反逆罪だもの。
「皇弟殿下に話を通します」
最後はストリクテが言ってくれた。平和な世を齎す為には必要だと分かってくれている。ありがたい。第三皇子の執事として議会にだって参加してたもんね。そういえば、二つ目の外伝のヒーロー第三皇子のシレはヒロイン・ソミアとまだ出会ってないかな? 早く出会わないかな。
「レースノワレ王国にはある程度の軍事縮小か、軍事放棄が必要になりますね」
「そこもまた難しいでしょう」
「ステラモリスには公国内で二・三の法制定してもらおうか?」
「ええ。公国は法らしい法がありませんし、国際法に合意を貰う前に平和法を自国内で定めて貰いましょう。あと裁判所ですが……」
国際司法裁判所はマーロン兄弟のコロルベーマヌに一時的に所在を置く形で話が進んでいく。小説本編もそうだった。こうした物語の修正力を目の当たりにすると自分の死亡フラグもくるのではとたまに不安になる。でもそれも覚悟の上で参加しているから仕方ない。本音、めっちゃ嫌だけど。
「フィクタ嬢?」
「っ、なんでしょう。マーロン侯爵令息」
「いいえ、顔色が悪かったように見えましたが」
「そんなことありません。元気ですよ」
弱みに付け込まれるわけにはいかないからね!
死亡フラグに立ち向かう私を褒めて! 誰でもいいから! あと死亡フラグのマーロン弟は私から離れて!
「ね、それさあ」
急にイグニスが指摘してくる。いやらしい顔をして笑った。
「エクスのこと、名前で呼ばないの?」
「は?」
会議の場で名前の話? 場違いすぎない?
確かに話は終わりを見せていたけど、今話題にすることではない。
「マーロンって二人いるし」
「ですが身分としてお呼びするのはこちらが正しいのでは?」
「んー、エクスとフィクタちゃんは同じ学院の生徒で友達じゃん?」
友達ではない。
監視する人間 (マーロン弟)と、監視される人間 (フィクタ)だってば。
「ああ。私のことは侯爵姓で構いませんよ」
「あ、どうも」
兄は継いだのかな? 本編でもとっくに侯爵だったものね。
というか、そういう無駄な気遣いいらない。
そりゃマーロン兄とは呼んだことないし、強力な死亡フラグだから一定の距離を保つために侯爵閣下呼びを続けるつもりだけど。
一番近い死亡フラグのマーロン弟ともこれ以上距離は詰めたくない。令息呼ばわりをするなと言うなら、もう兄と弟で呼び分ければよくない?
「……マーロン弟でいいんじゃ」
「え?」
「はい?」
いっけない。声に出てた。
本人も周囲も驚いている。
「はは、フィクタちゃん相変わらず面白いねえ」
で、エクスは? 問われ、当の本人はなんてことない顔をしていた。
「フィクタ嬢、私のことは是非名前で呼んで下さい」
「ええ……」
嫌だけど。けど周囲はそれを許さない。
この大人面子、皆フィクタにとっての死亡フラグだから関わり深くしたくないのに!
「……」
「では私はフィクタと呼んでも?」
なんで、弟と親密度をあげねばならない。
「ぶっは! フィクタちゃん嫌そうだねえ」
いけない、顔に出しすぎた。にしてもイグニスはイグニスで言葉にするのはいかがなものかと思う。
「エクスのこと嫌い?」
「いいえ」
「ならいいじゃん」
何が目的?
会議に参加して日々マーロン弟に監視されてお望み通りにしてあげている方だと思っていた。それだけじゃ足りない? 死亡フラグと近くで交流があるのは避けたいのを、推しカプの幸せの為だけに我慢しているのに。
「フィクタが私のことをそこまで嫌っていたとは」
あー、あからさまな演技をありがとう。貴方のファンと思しき女の子たちは喜ぶでしょうねえ。
そして周囲も明らかに可哀想だから仲良くしなさいな視線を向けている。年齢的には子供同士仲良くしましょう友達んんん人できるかな的なやつかあ。
「…………分かりました」
エクシピートル様で、と言うと様はいりませんと言われ、今度こそそこは無視した。
「いいねえ」
ここまで法律を作ってうまいこと皇帝を失脚できれば連合国家の有益性が証明される。そこで国家連合設立につながるはずだ。
「各国の同意も速やかに進めましょう」
「あ、あの、帝国にも合意を得てほしいですんですけど」
私の言葉に一瞬鎮まり、ひりついた空気を醸し出す。無理を言っていることは充分に分かっているけど、皇帝を失脚させるには帝国がこれに合意を示しているかでイージーモードになるかどうかが決まる。
「……しかし」
「皇弟殿下に合意のサインを貰えばいいじゃないですか」
当然渋るのは分かっていた。勝手なことしたら内紛にも繋がる。けど国際法にかけるしかない。帝国の国際法合意がバレるのと現皇帝の失脚をセットにしてそのまま代替わりだ。
そうははっきり言わなくても周囲は察しているので渋り続ける。これはもう明らかな現皇帝、現帝国への反逆罪だもの。
「皇弟殿下に話を通します」
最後はストリクテが言ってくれた。平和な世を齎す為には必要だと分かってくれている。ありがたい。第三皇子の執事として議会にだって参加してたもんね。そういえば、二つ目の外伝のヒーロー第三皇子のシレはヒロイン・ソミアとまだ出会ってないかな? 早く出会わないかな。
「レースノワレ王国にはある程度の軍事縮小か、軍事放棄が必要になりますね」
「そこもまた難しいでしょう」
「ステラモリスには公国内で二・三の法制定してもらおうか?」
「ええ。公国は法らしい法がありませんし、国際法に合意を貰う前に平和法を自国内で定めて貰いましょう。あと裁判所ですが……」
国際司法裁判所はマーロン兄弟のコロルベーマヌに一時的に所在を置く形で話が進んでいく。小説本編もそうだった。こうした物語の修正力を目の当たりにすると自分の死亡フラグもくるのではとたまに不安になる。でもそれも覚悟の上で参加しているから仕方ない。本音、めっちゃ嫌だけど。
「フィクタ嬢?」
「っ、なんでしょう。マーロン侯爵令息」
「いいえ、顔色が悪かったように見えましたが」
「そんなことありません。元気ですよ」
弱みに付け込まれるわけにはいかないからね!
死亡フラグに立ち向かう私を褒めて! 誰でもいいから! あと死亡フラグのマーロン弟は私から離れて!
「ね、それさあ」
急にイグニスが指摘してくる。いやらしい顔をして笑った。
「エクスのこと、名前で呼ばないの?」
「は?」
会議の場で名前の話? 場違いすぎない?
確かに話は終わりを見せていたけど、今話題にすることではない。
「マーロンって二人いるし」
「ですが身分としてお呼びするのはこちらが正しいのでは?」
「んー、エクスとフィクタちゃんは同じ学院の生徒で友達じゃん?」
友達ではない。
監視する人間 (マーロン弟)と、監視される人間 (フィクタ)だってば。
「ああ。私のことは侯爵姓で構いませんよ」
「あ、どうも」
兄は継いだのかな? 本編でもとっくに侯爵だったものね。
というか、そういう無駄な気遣いいらない。
そりゃマーロン兄とは呼んだことないし、強力な死亡フラグだから一定の距離を保つために侯爵閣下呼びを続けるつもりだけど。
一番近い死亡フラグのマーロン弟ともこれ以上距離は詰めたくない。令息呼ばわりをするなと言うなら、もう兄と弟で呼び分ければよくない?
「……マーロン弟でいいんじゃ」
「え?」
「はい?」
いっけない。声に出てた。
本人も周囲も驚いている。
「はは、フィクタちゃん相変わらず面白いねえ」
で、エクスは? 問われ、当の本人はなんてことない顔をしていた。
「フィクタ嬢、私のことは是非名前で呼んで下さい」
「ええ……」
嫌だけど。けど周囲はそれを許さない。
この大人面子、皆フィクタにとっての死亡フラグだから関わり深くしたくないのに!
「……」
「では私はフィクタと呼んでも?」
なんで、弟と親密度をあげねばならない。
「ぶっは! フィクタちゃん嫌そうだねえ」
いけない、顔に出しすぎた。にしてもイグニスはイグニスで言葉にするのはいかがなものかと思う。
「エクスのこと嫌い?」
「いいえ」
「ならいいじゃん」
何が目的?
会議に参加して日々マーロン弟に監視されてお望み通りにしてあげている方だと思っていた。それだけじゃ足りない? 死亡フラグと近くで交流があるのは避けたいのを、推しカプの幸せの為だけに我慢しているのに。
「フィクタが私のことをそこまで嫌っていたとは」
あー、あからさまな演技をありがとう。貴方のファンと思しき女の子たちは喜ぶでしょうねえ。
そして周囲も明らかに可哀想だから仲良くしなさいな視線を向けている。年齢的には子供同士仲良くしましょう友達んんん人できるかな的なやつかあ。
「…………分かりました」
エクシピートル様で、と言うと様はいりませんと言われ、今度こそそこは無視した。
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