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54話 告白
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金の剣をはじき飛ばした。
やったね、一番いいと思える例の必殺技が効いたわ。
そして、はじいただけでは終わらせない。
ここで跳躍、飛んだ刀を追う。
「ちぇすとおおおおお!」
シュリの刀で真っ二つ。
そのまま追い撃ちをかけるかの如く、手の平から魔法を放つ。
かつて御先祖様が、壁ボンもしくは壁ボコという新しい壁ドンを見出だした時と同じ魔法。
イメージ通り、金の剣は粉微塵になった。
「よし」
金の砂が降ってくるのを、浴びながらガッツポーズ。
てか金の粒子を浴びるって、もう私輝いてない?
「な、形見ではなかったのですか」
咎めるような言葉。
師匠の形見。大事なものだったのは変わらない。
けど、それよりも大事なものの為だ。
「かまわない。今壊す必要があったんだよ」
「何を」
「サリュは師匠の死をとっくに乗り越えてる。あの時私のとこへ戻ってきたから。なら、いつまでも残しておく必要はないよね?」
「!」
前の屋敷での自殺志願は、私の手をとって戻ってきたことと翌日の殴り合いで解決した。
それを改めて思い出してもらった上で始めよう。
「というわけで、手合わせお願いします」
「な、」
刀がなくなれば、いつもの如く手合わせだ。
とはいっても練習でも、修業でもない。
本気のやり合い。
ただ、やっぱりサリュからは仕掛けて来ない。
私の手を受けるか流すだけ。
「聖女をやめるって言った」
「しかし」
「サリュと一緒に生きたいとも言った」
「か、勘違いでは」
うっわ。さりげなく、本当にひどいこと言うね!
失礼!
「それに、私は決めているのです。役割を果たし、そのまま消滅しても構わないと」
だから私の言い分は無視ってこと?
一緒に生きたいって、この言葉はそんなに届かない?
「私達は確かに凄惨な目に遭ってきました。それはエクラも見たでしょう?」
「それだけじゃないでしょ?」
ラウラという王女にも、幸せな時間があったはずだ。
たとえ関わり合いたくないような人物がいても逃げなかった。
そうして彼女は、周囲の人間に恵まれると同時に、自分の居場所を自分で作った。
自分の意志で決めて、自分で幸せを見出した。
周囲から影響を受けたとしても、最終的に選んだのは彼女自身だ。
「害を加える人ばかりじゃなくて、あたたかく迎え入れてくれた人もいたでしょ」
「ええ、それも事実でしょう」
中国拳法も有効そうだな。
流派も多いから、割と受け流すのに必死っぽい。
東側の地域に感謝。
少数民族が使うような武術も混ぜてみよう。
「ですが、傷つき苦しんだ時間も……どちらもあるのです。私はどうしても苦しい過去を捨てられない。だから、やると決めました」
「この過去の事実を知らない人がほとんどなのに?」
刀の時は手抜いてくれたのと言わんばかりの、私の武術の通用のしなさ。
ボクシングの時みたく、ダメージはなくても、一発浴びせたいんだけど。気持ち的に。
「過去の事実を知ってるのが、一握りの王族であっても、事実を知らない大半は、私達を蹂躙した血を継いでいます」
「私は? 私の御先祖様には、確かに王族の血が混じってる」
私も殺すの? と問えば、眉根を寄せ目を細める。
そんな苦しい顔をしてると、サリュの選択が、彼の本当に望んでいることなのか、疑問に思えてくる。
今までの発言と表情から、サリュは私の瞳を気に入ってくれている。
王族にしか現れない青い瞳。空と同じ色。
彼の胸元にある同じ色の石が揺れて光った。
「いいえ、エクラは聖女です。生きるべきです」
「サリュ、矛盾してる。私だけがいいなんておかしい」
「構いません。私が貴方は王族ではないと言えば、それが現実になる。だから貴方はこの世界で生き、」
「やめてよ」
サリュの言葉と言うよりも、その表情に耐えられなかった。
苦しい顔してまでしてやること?
さっきから苛々してるけど、余計に腹立ってくる。
いや違うか、私は悲しいのか。
「私の願いを叶えるってサリュの想いは良しとしても、私のサリュと一緒にいたいって願いは、どこに落ち着くわけ?」
「それは……無理です。私はここで消える覚、」
「私がサリュと一緒にいたいって言ってる意味わかってる?」
「ですから気の迷いでしょう」
「失礼でしょーが!」
私の想いが気のせいってなんだ。
怒りを拳に乗せて一時的爆発的な力を乗せた所で、あっさりとられる。
こやつ、いつまでたっても、やり返してこないな。
「それならサリュの気持ちも、気のせいって言っていいわけ?」
「それは、」
「違うでしょ。サリュ心内落としに落として言ったんでしょ?」
「ええ」
「なら、私の気持ちも否定しないで」
ですが、と、またしても否定の言葉を出そうとする。
なにこのウジウジくんは。
「分からない?」
「何を」
「私が本当に望んでいること」
「いいえ」
あ、へーそー。
ちょっともうだめ、沸点超えるわ。
わざと喧嘩売るにしても理由がない。師匠の時とは違うのだから。
やるなら私が退く為の言葉選びをするはずだ。
だからこの応えは、見て見ぬ振りしてるか、本当に分からないか。
聖女としての選択である次元開きの拒否のことと、その理由である記憶の中にある罪のない諸一族たちのことは、恐らく察しているだろうに、私のサリュに対しての純粋な気持ちは察していないと。
このにぶちんめ。
「あーもー、そーですかー」
「……何です」
「本っ当! 普段散々察しがいいくせに」
「だから何を」
ずっと言わなかったのに。
いいわ、もうここまできたし。
覚悟した。
「サリュ」
「はい」
ずっと言わなかったのに、言わせるとか卑怯じゃない?
「好き」
「……は?」
やったね、一番いいと思える例の必殺技が効いたわ。
そして、はじいただけでは終わらせない。
ここで跳躍、飛んだ刀を追う。
「ちぇすとおおおおお!」
シュリの刀で真っ二つ。
そのまま追い撃ちをかけるかの如く、手の平から魔法を放つ。
かつて御先祖様が、壁ボンもしくは壁ボコという新しい壁ドンを見出だした時と同じ魔法。
イメージ通り、金の剣は粉微塵になった。
「よし」
金の砂が降ってくるのを、浴びながらガッツポーズ。
てか金の粒子を浴びるって、もう私輝いてない?
「な、形見ではなかったのですか」
咎めるような言葉。
師匠の形見。大事なものだったのは変わらない。
けど、それよりも大事なものの為だ。
「かまわない。今壊す必要があったんだよ」
「何を」
「サリュは師匠の死をとっくに乗り越えてる。あの時私のとこへ戻ってきたから。なら、いつまでも残しておく必要はないよね?」
「!」
前の屋敷での自殺志願は、私の手をとって戻ってきたことと翌日の殴り合いで解決した。
それを改めて思い出してもらった上で始めよう。
「というわけで、手合わせお願いします」
「な、」
刀がなくなれば、いつもの如く手合わせだ。
とはいっても練習でも、修業でもない。
本気のやり合い。
ただ、やっぱりサリュからは仕掛けて来ない。
私の手を受けるか流すだけ。
「聖女をやめるって言った」
「しかし」
「サリュと一緒に生きたいとも言った」
「か、勘違いでは」
うっわ。さりげなく、本当にひどいこと言うね!
失礼!
「それに、私は決めているのです。役割を果たし、そのまま消滅しても構わないと」
だから私の言い分は無視ってこと?
一緒に生きたいって、この言葉はそんなに届かない?
「私達は確かに凄惨な目に遭ってきました。それはエクラも見たでしょう?」
「それだけじゃないでしょ?」
ラウラという王女にも、幸せな時間があったはずだ。
たとえ関わり合いたくないような人物がいても逃げなかった。
そうして彼女は、周囲の人間に恵まれると同時に、自分の居場所を自分で作った。
自分の意志で決めて、自分で幸せを見出した。
周囲から影響を受けたとしても、最終的に選んだのは彼女自身だ。
「害を加える人ばかりじゃなくて、あたたかく迎え入れてくれた人もいたでしょ」
「ええ、それも事実でしょう」
中国拳法も有効そうだな。
流派も多いから、割と受け流すのに必死っぽい。
東側の地域に感謝。
少数民族が使うような武術も混ぜてみよう。
「ですが、傷つき苦しんだ時間も……どちらもあるのです。私はどうしても苦しい過去を捨てられない。だから、やると決めました」
「この過去の事実を知らない人がほとんどなのに?」
刀の時は手抜いてくれたのと言わんばかりの、私の武術の通用のしなさ。
ボクシングの時みたく、ダメージはなくても、一発浴びせたいんだけど。気持ち的に。
「過去の事実を知ってるのが、一握りの王族であっても、事実を知らない大半は、私達を蹂躙した血を継いでいます」
「私は? 私の御先祖様には、確かに王族の血が混じってる」
私も殺すの? と問えば、眉根を寄せ目を細める。
そんな苦しい顔をしてると、サリュの選択が、彼の本当に望んでいることなのか、疑問に思えてくる。
今までの発言と表情から、サリュは私の瞳を気に入ってくれている。
王族にしか現れない青い瞳。空と同じ色。
彼の胸元にある同じ色の石が揺れて光った。
「いいえ、エクラは聖女です。生きるべきです」
「サリュ、矛盾してる。私だけがいいなんておかしい」
「構いません。私が貴方は王族ではないと言えば、それが現実になる。だから貴方はこの世界で生き、」
「やめてよ」
サリュの言葉と言うよりも、その表情に耐えられなかった。
苦しい顔してまでしてやること?
さっきから苛々してるけど、余計に腹立ってくる。
いや違うか、私は悲しいのか。
「私の願いを叶えるってサリュの想いは良しとしても、私のサリュと一緒にいたいって願いは、どこに落ち着くわけ?」
「それは……無理です。私はここで消える覚、」
「私がサリュと一緒にいたいって言ってる意味わかってる?」
「ですから気の迷いでしょう」
「失礼でしょーが!」
私の想いが気のせいってなんだ。
怒りを拳に乗せて一時的爆発的な力を乗せた所で、あっさりとられる。
こやつ、いつまでたっても、やり返してこないな。
「それならサリュの気持ちも、気のせいって言っていいわけ?」
「それは、」
「違うでしょ。サリュ心内落としに落として言ったんでしょ?」
「ええ」
「なら、私の気持ちも否定しないで」
ですが、と、またしても否定の言葉を出そうとする。
なにこのウジウジくんは。
「分からない?」
「何を」
「私が本当に望んでいること」
「いいえ」
あ、へーそー。
ちょっともうだめ、沸点超えるわ。
わざと喧嘩売るにしても理由がない。師匠の時とは違うのだから。
やるなら私が退く為の言葉選びをするはずだ。
だからこの応えは、見て見ぬ振りしてるか、本当に分からないか。
聖女としての選択である次元開きの拒否のことと、その理由である記憶の中にある罪のない諸一族たちのことは、恐らく察しているだろうに、私のサリュに対しての純粋な気持ちは察していないと。
このにぶちんめ。
「あーもー、そーですかー」
「……何です」
「本っ当! 普段散々察しがいいくせに」
「だから何を」
ずっと言わなかったのに。
いいわ、もうここまできたし。
覚悟した。
「サリュ」
「はい」
ずっと言わなかったのに、言わせるとか卑怯じゃない?
「好き」
「……は?」
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