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44話 不穏な流れ
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何か新しい事しようと思うと試練がくる、なんて話もあるよね。
今回は正直平和ボケ故の驚きだったかなとは思っている。
「主人、魔が出ました」
「オッケー」
案の定、やる気に溢れる側付が先に行ってしまったらしい。
ヴァンに内容を聞いて、シュリとオールとルルに追って向かってもらうことにした。
今回いつもと違う事は、後にシュリからの報告で明らかになる。
「おかえり」
「只今戻りました」
「ただいまー」
「おう、戻ったぞ」
「今帰った」
怪我もないし、おかしな様子もない。
よかった今日も万全でした。
シュリに報告をお願いして、一緒に私室に入る。
「今日も問題ない?」
「んー……」
外の様子を窺って問題ないことを確認したシュリが口を開く。
「サリュが一度魔に飲まれた」
「え?」
「自分で破って帰ってきたけど……様子がちょっとね」
「んー、詳しく」
シュリの言い方から、しっかり聞かないとよくないと感じた。
あと少しすれば、サリュがお茶を持ってやってくる。それまでに、きかないと。
「強くなかったんだよ。俺らで楽勝だから、サリュからしたらもっと簡単。たぶんだけど、ちょっと油断した所を狙われた感じ」
精霊の成れの果てであれば、当然精霊の力を欲して飲み込むことはよくある。
聖女の力もまた精霊に影響を及ぼすから、私達も魔に狙われやすい。
大概は跳ねのけられるから、気にするところでもないけど。
「やたらサリュを飲もうとしてたんだよねー。しつこかった」
先に一人行ってしまっていたのもあるのだろうけど、魔は何体もサリュとの接触を試みていたらしい。
そんな明確な意思を持ったかのような行動はしないはずなんだけど、いかんせんサリュに触れる事を試みていたと。
当然、強さがチートであるサリュには及ばない。
前の屋敷の時のように数という物量で攻めない限り、一対一や少数対一では到底敵わないのは分かりきってる。
行動は確かに妙だけど、ひとまず無事ならよしだ。
「結局最後のやつかな? 足元に隠れてたのがサリュの足を掴んで、そのままぱっくりって感じ」
「でもすぐ出てきたでしょ?」
「ん。そん時膝ついたから、やばいかなーと思って」
瘴気に塗れた経験から、シュリも心配で駆け寄ったらしいのだけど、怪我はなし瘴気の影響もなし。
それなのに、膝をついたまま地面を見据えて、傍から見るにサリュは驚いていたと。
「見えたって言ったんだよねー」
「見えた?」
独り言だったようで、特段シュリに気を遣って伝えたわけではなかったらしい。
「そ。妙に納得して、そういうことかとも言ってた」
「何のこと?」
「さあ? そこはサリュ、話さなかったんだよねー」
「うーん?」
帰ってきた時、見た目、何かを隠している感じはなかった。
瘴気の影響を受けた様子もなかった。
動揺もなければ、戸惑いもない。
でも、魔に飲まれて何かを得たのは確かだ。
「勿体ぶらずに話してくれればいいのに」
「サリュにも考えあるんじゃない?」
「んー、お願いしてみるかな?」
なにせデレは増えてきた。
たまの通常運行塩対応を考えると、心を完全に開いたとは言えないかもしれないけど、話す事をきちんとしてくれるようになった。
人目が気になるなら、今度約束している晩酌がいいかな。
「エクラの前では格好つけだから、見栄張って言わないかもよ?」
「そう?」
格好つけているというよりは、信頼関係の高さ低さが論点な気もするけど。
むしろ最近のデレ具合を考えると、格好つけてるようには到底見えない。
少女漫画のヒロインのリアクションするんだよ?
顔赤くしたり、見るなと言って逃げたりするのが、格好つけに入るとは思えない。
「男って好きな子の前では格好つけたいわけ」
「ふーん?」
シュリが残念なものを見る目で私を見てくる。
返事間違えた? いや、興味があまりない話題というのもあるけど。
「サリュが可哀相」
「なんで」
言わないしーとシュリが返す。
「ま、今度俺からきいてみるよ」
「シュリが?」
「俺で駄目なら、その後エクラが晩酌できけばいいっしょ」
「そっか」
「そ」
「うん、分かった。ありがと」
トラウマ的なものが再発してなければなんでもいいよ。
そこは話を聴いた限り、解消した感はあったけど、あの真面目の事だ。
無駄に考えてる事でもあるんだろう。
と思ったところに、本日の話題の中心がやって来た。
「お茶を」
「はいはーい、ありがとー」
やってきたサリュの様子を見るけど、見た目はさしてなんともない。
瘴気もないし、心持動揺してますというような仕草もない。
なんだ、シュリが過保護なだけで、割といけるんじゃないの?
そんなのほほんとした思考の後、私の予想と反した事が起こる。
前に感じた嫌な予感を回収しなくていいのにと思ったけど、流れはやっぱり変わらないみたい。
現状維持をしたがるのが人の性だというのに、私の元へ舞い降りてくるのは些か刺激の強い変化ばかりだ。
まったく、御先祖様のおかげでだいぶ訓練してきたけど、喜んでーな状態じゃないんだから。
今回は正直平和ボケ故の驚きだったかなとは思っている。
「主人、魔が出ました」
「オッケー」
案の定、やる気に溢れる側付が先に行ってしまったらしい。
ヴァンに内容を聞いて、シュリとオールとルルに追って向かってもらうことにした。
今回いつもと違う事は、後にシュリからの報告で明らかになる。
「おかえり」
「只今戻りました」
「ただいまー」
「おう、戻ったぞ」
「今帰った」
怪我もないし、おかしな様子もない。
よかった今日も万全でした。
シュリに報告をお願いして、一緒に私室に入る。
「今日も問題ない?」
「んー……」
外の様子を窺って問題ないことを確認したシュリが口を開く。
「サリュが一度魔に飲まれた」
「え?」
「自分で破って帰ってきたけど……様子がちょっとね」
「んー、詳しく」
シュリの言い方から、しっかり聞かないとよくないと感じた。
あと少しすれば、サリュがお茶を持ってやってくる。それまでに、きかないと。
「強くなかったんだよ。俺らで楽勝だから、サリュからしたらもっと簡単。たぶんだけど、ちょっと油断した所を狙われた感じ」
精霊の成れの果てであれば、当然精霊の力を欲して飲み込むことはよくある。
聖女の力もまた精霊に影響を及ぼすから、私達も魔に狙われやすい。
大概は跳ねのけられるから、気にするところでもないけど。
「やたらサリュを飲もうとしてたんだよねー。しつこかった」
先に一人行ってしまっていたのもあるのだろうけど、魔は何体もサリュとの接触を試みていたらしい。
そんな明確な意思を持ったかのような行動はしないはずなんだけど、いかんせんサリュに触れる事を試みていたと。
当然、強さがチートであるサリュには及ばない。
前の屋敷の時のように数という物量で攻めない限り、一対一や少数対一では到底敵わないのは分かりきってる。
行動は確かに妙だけど、ひとまず無事ならよしだ。
「結局最後のやつかな? 足元に隠れてたのがサリュの足を掴んで、そのままぱっくりって感じ」
「でもすぐ出てきたでしょ?」
「ん。そん時膝ついたから、やばいかなーと思って」
瘴気に塗れた経験から、シュリも心配で駆け寄ったらしいのだけど、怪我はなし瘴気の影響もなし。
それなのに、膝をついたまま地面を見据えて、傍から見るにサリュは驚いていたと。
「見えたって言ったんだよねー」
「見えた?」
独り言だったようで、特段シュリに気を遣って伝えたわけではなかったらしい。
「そ。妙に納得して、そういうことかとも言ってた」
「何のこと?」
「さあ? そこはサリュ、話さなかったんだよねー」
「うーん?」
帰ってきた時、見た目、何かを隠している感じはなかった。
瘴気の影響を受けた様子もなかった。
動揺もなければ、戸惑いもない。
でも、魔に飲まれて何かを得たのは確かだ。
「勿体ぶらずに話してくれればいいのに」
「サリュにも考えあるんじゃない?」
「んー、お願いしてみるかな?」
なにせデレは増えてきた。
たまの通常運行塩対応を考えると、心を完全に開いたとは言えないかもしれないけど、話す事をきちんとしてくれるようになった。
人目が気になるなら、今度約束している晩酌がいいかな。
「エクラの前では格好つけだから、見栄張って言わないかもよ?」
「そう?」
格好つけているというよりは、信頼関係の高さ低さが論点な気もするけど。
むしろ最近のデレ具合を考えると、格好つけてるようには到底見えない。
少女漫画のヒロインのリアクションするんだよ?
顔赤くしたり、見るなと言って逃げたりするのが、格好つけに入るとは思えない。
「男って好きな子の前では格好つけたいわけ」
「ふーん?」
シュリが残念なものを見る目で私を見てくる。
返事間違えた? いや、興味があまりない話題というのもあるけど。
「サリュが可哀相」
「なんで」
言わないしーとシュリが返す。
「ま、今度俺からきいてみるよ」
「シュリが?」
「俺で駄目なら、その後エクラが晩酌できけばいいっしょ」
「そっか」
「そ」
「うん、分かった。ありがと」
トラウマ的なものが再発してなければなんでもいいよ。
そこは話を聴いた限り、解消した感はあったけど、あの真面目の事だ。
無駄に考えてる事でもあるんだろう。
と思ったところに、本日の話題の中心がやって来た。
「お茶を」
「はいはーい、ありがとー」
やってきたサリュの様子を見るけど、見た目はさしてなんともない。
瘴気もないし、心持動揺してますというような仕草もない。
なんだ、シュリが過保護なだけで、割といけるんじゃないの?
そんなのほほんとした思考の後、私の予想と反した事が起こる。
前に感じた嫌な予感を回収しなくていいのにと思ったけど、流れはやっぱり変わらないみたい。
現状維持をしたがるのが人の性だというのに、私の元へ舞い降りてくるのは些か刺激の強い変化ばかりだ。
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