26 / 64
26話 サリュを探す
しおりを挟む
サリュが初めて、私に感謝の言葉をくれた。
すごくない?
あの場でデレくる必要ある?
あまりの浄化作業に疲れが出て頭働かなかったんじゃないの?
「エクラ、悠長な事言ってられないよ?」
「分かってる」
シュリのツッコミの通り。
ちょっと現実逃避してた。
てか、声に出てたのはさすがに恥ずかしい。
「移動先はおおよそ東南東か……かなり端っこまできたな」
独特の湿度と暑さ、見慣れない南国植物。なんだもうここリゾートで来るとこだよ。
「シュリとトレゾールだけでもいてよかったよ」
転移の魔法は成功したけど、途中ばらけたらしい。
確実に一緒だったのは、二人。
他は見渡す限りは見つかってない。
「どうする?」
「探すよ、かならず」
転移の魔法を再展開する。
私の精霊だ、繋がりはまだある以上、そこを辿るしかない。
「まずはメゾン」
私の力を近くで受けないと消滅の恐れがあるのはメゾンだ。早い方がいいだろう。
幸い、繋ぎがあるから一番探しやすかった。挙げ句すぐ傍にいた。
砂に埋まっていたけど。
「格好悪いな……」
「イケメンは何してもイケメンだから大丈夫!」
砂の中から足だけ出てたのを引っこ抜けば、力の減少からか、がたいのいいイケメンから可愛いさ残る幼児になっていた。フォンちゃんと並べて写真撮りたいなあ。
「これ以上は縮む事はないと思うけど、何かおかしな感じしたら言ってね?」
「ああ、わかった」
包容力割り増しイケメン、ただし幼児。反則でしかない。
「エクラ」
「はい、すみません」
シュリが窘めるように名前を呼ぶ。
そうだ、今の私には時間がおしいんだった。
「他の子も探す」
「そーそー、たまには真面目にね」
そこからは簡単だった。
私の精霊である繋がりから探すのに加え、この前渡したブルートパーズのおかげで辿りやすい。
私の力を追うだけ、しかもそこまで距離は離れてなかったから、転移の魔法でこちらに呼び寄せる、つまるとこ召喚してしまえば早かった。
声をかければ、すぐに気づいて手を伸ばしてくれる。
「ふむ、割とイージーゲーム」
「よかったー! いきなり虎の上に落ちるんだもん」
「ごめんね」
虎もびっくりですな。美少女落ちてくるなら大歓迎だけど。
皆ときゃっきゃして再会を喜ぶも、どうしても見つからないのが一人。
「サリュが全く辿れない……」
「ネックレスはつけてたよ?」
「なんでだろ……」
よりにもよって最大級のデレをかました後に行方掴めずとかなんなの。
瘴気を浄化した以上、私との繋がりは出来ている。辿れないわけないはずだ。
「主人、オンブルさんから報が」
「なんて?」
さすが仕事の早いオンブル。
私が転移したことも承知の上で新しい屋敷を与えられた。
東の端っこ。かつて島国だったものが長い年月をかけて大陸と繋がった場所。
ありがたいことに前よりもさらに魔が少ない場所だ。
「ひとまずそっちに行こう。メゾンのこともあるし」
大聖女が用意した移動用魔法陣を使って移動。
見てすぐに御先祖様の故郷だとわかった。いや故郷というのかな? 転移先というべき?
ともあれ、前の屋敷とは全然違う趣のものをあてられた。
「メゾン、どう?」
「うん、全く問題ないよ。ここにいた僕は当時の主と一緒に逝ったようだね」
極端に魔がいない場所は、いつしか聖女の役目を終える者か、見習い待機場所になるかのどちらかだ。
メゾンの口ぶりからして、前任者は前者である役目を終える者で、その聖女とともにいた精霊も一緒にいなくなったのだろう。
「ひとまず結界しこうか。皆は休んでていいよー」
「エクラはどうするの?」
「サリュを探すよ」
趣のある庭、サンルームのかわりに縁側とは情緒がある。
御先祖様喜びそうだなあ。都会住みだったけど、実家はこんな場所だったはず。
「エクラ」
「おっと」
庭に出ようとしてふらついてしまった。
シュリが察して素早く支えてくれたけど、これはいけない。
転移の魔法を使いすぎてる。
「使いすぎたね?」
しかも結界を作り直して、皆の傷を治した。普段の力の使い方を考えたらオーバーワーク気味だ。
「前の屋敷の結界解いたら?」
「それは魔を完全に浄化出来てからだよ」
今私達がいないあの屋敷はおそらく大聖女が空間遮断した挙げ句、他の聖女を投入して殲滅戦を繰り広げているはずだ。
さっきのオンブルからの報告に前の屋敷については何も書かれていなかった。
つまり、あの場所でまだ動いている。
私の結界を解いても問題はないだろうけど、駆けつけた聖女達と内側の外周に控えている新人聖女が万全を期するためにも、もう少し維持したほうがいいだろう。
「ではオンブルさんにすぐに確認します」
「ありがと、ヴァン」
しっかり所に任せれば問題ない。
皆を探して丸一日以上かかって、次の日の夜がきていた。日が暮れて夜の帳がおりてきている。
あ、あれか時差? いやこの世界時差あったっけ?
「夕餉食べてからにするかい?」
「いや、このままサリュを探す」
早い方がいい。
そしてご飯は皆で食べる、これだ。
「俺達も手伝おう」
「オール?」
「いいねえ! このままじゃ飯がうまくねえし」
「旦那の言う通りだな」
ひょいひょい庭に出てくる皆。
「縁側にでも控えるか?」
「そうだな、近くにいりゃいいだろ」
「みんな……」
精霊の力を使うというのはなくはない。
特に聖女に成り立ての素人は力配分を違えてオーバーワークになることは多々ある。
そういう時は精霊の力を借りて自身の体力回復をすることもあるから。
それにしたって、うちの子達なんでこんなに優しいかな、震える。
「じゃあラスト気張ってみますか」
すごくない?
あの場でデレくる必要ある?
あまりの浄化作業に疲れが出て頭働かなかったんじゃないの?
「エクラ、悠長な事言ってられないよ?」
「分かってる」
シュリのツッコミの通り。
ちょっと現実逃避してた。
てか、声に出てたのはさすがに恥ずかしい。
「移動先はおおよそ東南東か……かなり端っこまできたな」
独特の湿度と暑さ、見慣れない南国植物。なんだもうここリゾートで来るとこだよ。
「シュリとトレゾールだけでもいてよかったよ」
転移の魔法は成功したけど、途中ばらけたらしい。
確実に一緒だったのは、二人。
他は見渡す限りは見つかってない。
「どうする?」
「探すよ、かならず」
転移の魔法を再展開する。
私の精霊だ、繋がりはまだある以上、そこを辿るしかない。
「まずはメゾン」
私の力を近くで受けないと消滅の恐れがあるのはメゾンだ。早い方がいいだろう。
幸い、繋ぎがあるから一番探しやすかった。挙げ句すぐ傍にいた。
砂に埋まっていたけど。
「格好悪いな……」
「イケメンは何してもイケメンだから大丈夫!」
砂の中から足だけ出てたのを引っこ抜けば、力の減少からか、がたいのいいイケメンから可愛いさ残る幼児になっていた。フォンちゃんと並べて写真撮りたいなあ。
「これ以上は縮む事はないと思うけど、何かおかしな感じしたら言ってね?」
「ああ、わかった」
包容力割り増しイケメン、ただし幼児。反則でしかない。
「エクラ」
「はい、すみません」
シュリが窘めるように名前を呼ぶ。
そうだ、今の私には時間がおしいんだった。
「他の子も探す」
「そーそー、たまには真面目にね」
そこからは簡単だった。
私の精霊である繋がりから探すのに加え、この前渡したブルートパーズのおかげで辿りやすい。
私の力を追うだけ、しかもそこまで距離は離れてなかったから、転移の魔法でこちらに呼び寄せる、つまるとこ召喚してしまえば早かった。
声をかければ、すぐに気づいて手を伸ばしてくれる。
「ふむ、割とイージーゲーム」
「よかったー! いきなり虎の上に落ちるんだもん」
「ごめんね」
虎もびっくりですな。美少女落ちてくるなら大歓迎だけど。
皆ときゃっきゃして再会を喜ぶも、どうしても見つからないのが一人。
「サリュが全く辿れない……」
「ネックレスはつけてたよ?」
「なんでだろ……」
よりにもよって最大級のデレをかました後に行方掴めずとかなんなの。
瘴気を浄化した以上、私との繋がりは出来ている。辿れないわけないはずだ。
「主人、オンブルさんから報が」
「なんて?」
さすが仕事の早いオンブル。
私が転移したことも承知の上で新しい屋敷を与えられた。
東の端っこ。かつて島国だったものが長い年月をかけて大陸と繋がった場所。
ありがたいことに前よりもさらに魔が少ない場所だ。
「ひとまずそっちに行こう。メゾンのこともあるし」
大聖女が用意した移動用魔法陣を使って移動。
見てすぐに御先祖様の故郷だとわかった。いや故郷というのかな? 転移先というべき?
ともあれ、前の屋敷とは全然違う趣のものをあてられた。
「メゾン、どう?」
「うん、全く問題ないよ。ここにいた僕は当時の主と一緒に逝ったようだね」
極端に魔がいない場所は、いつしか聖女の役目を終える者か、見習い待機場所になるかのどちらかだ。
メゾンの口ぶりからして、前任者は前者である役目を終える者で、その聖女とともにいた精霊も一緒にいなくなったのだろう。
「ひとまず結界しこうか。皆は休んでていいよー」
「エクラはどうするの?」
「サリュを探すよ」
趣のある庭、サンルームのかわりに縁側とは情緒がある。
御先祖様喜びそうだなあ。都会住みだったけど、実家はこんな場所だったはず。
「エクラ」
「おっと」
庭に出ようとしてふらついてしまった。
シュリが察して素早く支えてくれたけど、これはいけない。
転移の魔法を使いすぎてる。
「使いすぎたね?」
しかも結界を作り直して、皆の傷を治した。普段の力の使い方を考えたらオーバーワーク気味だ。
「前の屋敷の結界解いたら?」
「それは魔を完全に浄化出来てからだよ」
今私達がいないあの屋敷はおそらく大聖女が空間遮断した挙げ句、他の聖女を投入して殲滅戦を繰り広げているはずだ。
さっきのオンブルからの報告に前の屋敷については何も書かれていなかった。
つまり、あの場所でまだ動いている。
私の結界を解いても問題はないだろうけど、駆けつけた聖女達と内側の外周に控えている新人聖女が万全を期するためにも、もう少し維持したほうがいいだろう。
「ではオンブルさんにすぐに確認します」
「ありがと、ヴァン」
しっかり所に任せれば問題ない。
皆を探して丸一日以上かかって、次の日の夜がきていた。日が暮れて夜の帳がおりてきている。
あ、あれか時差? いやこの世界時差あったっけ?
「夕餉食べてからにするかい?」
「いや、このままサリュを探す」
早い方がいい。
そしてご飯は皆で食べる、これだ。
「俺達も手伝おう」
「オール?」
「いいねえ! このままじゃ飯がうまくねえし」
「旦那の言う通りだな」
ひょいひょい庭に出てくる皆。
「縁側にでも控えるか?」
「そうだな、近くにいりゃいいだろ」
「みんな……」
精霊の力を使うというのはなくはない。
特に聖女に成り立ての素人は力配分を違えてオーバーワークになることは多々ある。
そういう時は精霊の力を借りて自身の体力回復をすることもあるから。
それにしたって、うちの子達なんでこんなに優しいかな、震える。
「じゃあラスト気張ってみますか」
0
お気に入りに追加
37
あなたにおすすめの小説
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
[完結] 私を嫌いな婚約者は交代します
シマ
恋愛
私、ハリエットには婚約者がいる。初めての顔合わせの時に暴言を吐いた婚約者のクロード様。
両親から叱られていたが、彼は反省なんてしていなかった。
その後の交流には不参加もしくは当日のキャンセル。繰り返される不誠実な態度に、もう我慢の限界です。婚約者を交代させて頂きます。
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
「次点の聖女」
手嶋ゆき
恋愛
何でもかんでも中途半端。万年二番手。どんなに努力しても一位には決してなれない存在。
私は「次点の聖女」と呼ばれていた。
約一万文字強で完結します。
小説家になろう様にも掲載しています。
そろそろ前世は忘れませんか。旦那様?
氷雨そら
恋愛
結婚式で私のベールをめくった瞬間、旦那様は固まった。たぶん、旦那様は記憶を取り戻してしまったのだ。前世の私の名前を呼んでしまったのがその証拠。
そしておそらく旦那様は理解した。
私が前世にこっぴどく裏切った旦那様の幼馴染だってこと。
――――でも、それだって理由はある。
前世、旦那様は15歳のあの日、魔力の才能を開花した。そして私が開花したのは、相手の魔力を奪う魔眼だった。
しかも、その魔眼を今世まで持ち越しで受け継いでしまっている。
「どれだけ俺を弄んだら気が済むの」とか「悪い女」という癖に、旦那様は私を離してくれない。
そして二人で眠った次の朝から、なぜかかつての幼馴染のように、冷酷だった旦那様は豹変した。私を溺愛する人間へと。
お願い旦那様。もう前世のことは忘れてください!
かつての幼馴染は、今度こそ絶対幸せになる。そんな幼馴染推しによる幼馴染推しのための物語。
小説家になろうにも掲載しています。
好きでした、さようなら
豆狸
恋愛
「……すまない」
初夜の床で、彼は言いました。
「君ではない。私が欲しかった辺境伯令嬢のアンリエット殿は君ではなかったんだ」
悲しげに俯く姿を見て、私の心は二度目の死を迎えたのです。
なろう様でも公開中です。
黄金の魔族姫
風和ふわ
恋愛
「エレナ・フィンスターニス! お前との婚約を今ここで破棄する! そして今から僕の婚約者はこの現聖女のレイナ・リュミエミルだ!」
「エレナ様、婚約者と神の寵愛をもらっちゃってごめんね? 譲ってくれて本当にありがとう!」
とある出来事をきっかけに聖女の恩恵を受けれなくなったエレナは「罪人の元聖女」として婚約者の王太子にも婚約破棄され、処刑された──はずだった!
──え!? どうして魔王が私を助けてくれるの!? しかも娘になれだって!?
これは、婚約破棄された元聖女が人外魔王(※実はとっても優しい)の娘になって、チートな治癒魔法を極めたり、地味で落ちこぼれと馬鹿にされていたはずの王太子(※実は超絶美形)と恋に落ちたりして、周りに愛されながら幸せになっていくお話です。
──え? 婚約破棄を取り消したい? もう一度やり直そう? もう想い人がいるので無理です!
※拙作「皆さん、紹介します。こちら私を溺愛するパパの“魔王”です!」のリメイク版。
※表紙は自作ではありません。
ある王国の王室の物語
朝山みどり
恋愛
平和が続くある王国の一室で婚約者破棄を宣言された少女がいた。カップを持ったまま下を向いて無言の彼女を国王夫妻、侯爵夫妻、王太子、異母妹がじっと見つめた。
顔をあげた彼女はカップを皿に置くと、レモンパイに手を伸ばすと皿に取った。
それから
「承知しました」とだけ言った。
ゆっくりレモンパイを食べるとお茶のおかわりを注ぐように侍女に合図をした。
それからバウンドケーキに手を伸ばした。
カクヨムで公開したものに手を入れたものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる