15 / 64
15話 デートみたいとか言いたかった
しおりを挟む
精霊が主や主人と呼ぶということは、その聖女を聖女として認めてくれた事に他ならない。
事実サリュはずっと私の事を貴方と呼んでいた。名前で呼んでくれることもなかった。
つまり、さっきの主と言う言葉は途轍もない大きな言葉となったという事。
私を認めてくれたという事。
二度もそう呼んだわけだし。
そうか、これが御先祖様が言っていた、大事な事なので二回以下略なのか。
「ふふふ」
「買い出しがそんなに楽しみだったのですか」
「サリュと一緒に出かけられるのが楽しみなんだよ」
「……軽薄ですね」
「サリュが身持ち堅すぎなんだよ」
見上げればこちらを見下ろしていたのだろうサリュが、ふいと顔を反らした。
おや、これはあれか、照れ隠しとかいうやつなんじゃないの?
サリュに私と一緒はどうかときくと、仕事なのでと一蹴された。
デレは主呼びだけなの。
二人きりなんだから恥ずかしがらずにデレを見せていいのよ。
「サリュは買い出し来たことある?」
「数える程ですが」
師匠のとこは勝手に食料補充されてたな。まさにお姫様よ。
買い出し場所はエリアごとに決まっていて、聖女側が用意した市場と人員で構成されている。
私達はどこまでも大陸の人々と係わる機会がないのはなかなか残念なことだ。
「あ」
「いかがしました?」
「待ってて」
市場に入ってすぐのとこで適当に飲み物買って戻りサリュに渡す。
するとサリュは成程と呟いて飲み物を手にした。
「これが、皆さんの言う無駄遣い」
「やめてよ! 自分のお金だし!」
わざとそんな言い方したな。
「では、注視しながら買い物をしましょう」
「むむむ」
もしや完全に二人きりになることによって、私をいびり倒す気じゃないの。
なんてことだ、デレはどこにあるのか。
「まあいいや、早速お肉買おう、お肉」
「はあ」
しかしここで妨害が入る。
サリュってば、買おうとすると高いだのまけろだの、あっちの店が安いだの、それは余計な買い物だの、それはもう口出しが多い。
私が優しさで少し残したメゾンの欲しがる物品は全部却下された。裕福な師匠のとこにいたのにお金に厳しいってどういうこと。
「お姑さん、厳しい」
「何か?」
「ナンデモアリマセン」
「……いいでしょう。思っていたより早くに終わりましたね」
そりゃサリュの手腕にかかればね。
他の子と行っても、ここまで業務感ないんだけどなあ。
デートみたいとか言いたかったけど、そんな雰囲気がない。しょんぼりだよ。
「あ」
「いかがしました?」
アクセサリーを取り扱うお店の前で足を止める。
視線の先を追ったサリュが気づいた。
「成程、貴方も女性なのですね」
「言い方! てか違う。欲しいとかじゃなくて、これ直そうかなって」
ずっと持ち続けてきた、翡翠を取り出して見せた。
すっかり以前の色合いを取り戻した翡翠、切れたチェーンを元に戻そうかと思っていた。
パラの金の剣とこの翡翠ぐらいしか、師匠の形見はないから。
「修繕ですか。よろしいのでは」
「寄っていい?」
「ええ」
「あ、自分のお金でやるからね!」
強く主張するとサリュが飽きれて溜息をついた。
「何故そんなに必死になるのですか……」
いや完全にサリュのせいでしょ。さっきまであんなに厳しい買い物だったのに。
無駄遣いチェッカーと化していたサリュがあっさりオッケーを出して店に連れだってくれた。
師匠の形見を出すのは気が引けたけど、彼はさして気にしていないようだった。そう見えるだけかもしれないけど。
「これ、直してもらえます?」
「ああ、すぐできるよ。今直しても?」
「はい」
終わるまで店の中でも見ててくれと言われ、うろうろしながら物色する。
アクセサリーから天然石まで様々。天然石置いてるのは自分で作る用ぽいな。
フーちゃん連れて来たら喜びそう。
「すごいね」
「? 何度も来ているのでは?」
さっき女性ですかとか盛大な嫌味を言ってたくせに。
まあ女性は好きだよね。
師匠もよくそういうの身につけていたし、なにより私に翡翠のネックレスくれたわけだし。
とんとそういうものには縁がなかったな。
フーちゃんは服派だったし。
「んー、こういう店は初めてだよ」
「そうでしたか」
なんとも読めない表情のまま頷いて、そのまま適当に店内物色に戻る。
そんな中、ふと目に付く石。
「おお、綺麗……」
「……」
近くにいたサリュに掲げて見せる。
じっと石を見つめて何も言わないという、なかなかのリアクションの薄さを見せてくれた。
「ね」
「ええ」
相変わらず反応薄いなあ。
そこはにこやかに一言添えてほしいよ、と思った矢先。
「貴方の」
「ん?」
「貴方の瞳と同じ色ですね」
え、なにそれ。
ちょっと待ってよ。
確かに私の瞳は青だけど。
「う、わ」
私を見つめる金色が滲む。少し蕩けるような滲み方。
嘘でしょ。
今、眼だけで笑った。
なんて気づきにくい僅かな所作。
「? いかがしました?」
「え、あ、いや、そ、そうだ、これ買おうかな」
サリュったら、これ確実に無自覚で言ったな。
そんな形でデレ見せて来るとかどうなのよ。
無自覚デレだ、これ。間違いない。
それはもはや、天然のたらし。
この精霊のポテンシャルすごい。
かなりの不意打ちで、私ちょっと動揺したわ。
「お嬢さん、できたよ」
「はい」
「後、これも十一個、パーツもいくらか一緒にしてもらえます?」
「ああ、いいよ」
ブルートパーズの石言葉は希望。
願わくば、皆の未来に希望がありますように。
なんてね。
「そんなに数多く買ってどうするのです」
「いいじゃんかー、自分のお金だしー」
「これが、皆さんの言う無駄遣い」
最初に市場に来た時と同じ言葉使ってる気がする。
折角最後の最後だけはデートぽい雰囲気になったのに。
事実サリュはずっと私の事を貴方と呼んでいた。名前で呼んでくれることもなかった。
つまり、さっきの主と言う言葉は途轍もない大きな言葉となったという事。
私を認めてくれたという事。
二度もそう呼んだわけだし。
そうか、これが御先祖様が言っていた、大事な事なので二回以下略なのか。
「ふふふ」
「買い出しがそんなに楽しみだったのですか」
「サリュと一緒に出かけられるのが楽しみなんだよ」
「……軽薄ですね」
「サリュが身持ち堅すぎなんだよ」
見上げればこちらを見下ろしていたのだろうサリュが、ふいと顔を反らした。
おや、これはあれか、照れ隠しとかいうやつなんじゃないの?
サリュに私と一緒はどうかときくと、仕事なのでと一蹴された。
デレは主呼びだけなの。
二人きりなんだから恥ずかしがらずにデレを見せていいのよ。
「サリュは買い出し来たことある?」
「数える程ですが」
師匠のとこは勝手に食料補充されてたな。まさにお姫様よ。
買い出し場所はエリアごとに決まっていて、聖女側が用意した市場と人員で構成されている。
私達はどこまでも大陸の人々と係わる機会がないのはなかなか残念なことだ。
「あ」
「いかがしました?」
「待ってて」
市場に入ってすぐのとこで適当に飲み物買って戻りサリュに渡す。
するとサリュは成程と呟いて飲み物を手にした。
「これが、皆さんの言う無駄遣い」
「やめてよ! 自分のお金だし!」
わざとそんな言い方したな。
「では、注視しながら買い物をしましょう」
「むむむ」
もしや完全に二人きりになることによって、私をいびり倒す気じゃないの。
なんてことだ、デレはどこにあるのか。
「まあいいや、早速お肉買おう、お肉」
「はあ」
しかしここで妨害が入る。
サリュってば、買おうとすると高いだのまけろだの、あっちの店が安いだの、それは余計な買い物だの、それはもう口出しが多い。
私が優しさで少し残したメゾンの欲しがる物品は全部却下された。裕福な師匠のとこにいたのにお金に厳しいってどういうこと。
「お姑さん、厳しい」
「何か?」
「ナンデモアリマセン」
「……いいでしょう。思っていたより早くに終わりましたね」
そりゃサリュの手腕にかかればね。
他の子と行っても、ここまで業務感ないんだけどなあ。
デートみたいとか言いたかったけど、そんな雰囲気がない。しょんぼりだよ。
「あ」
「いかがしました?」
アクセサリーを取り扱うお店の前で足を止める。
視線の先を追ったサリュが気づいた。
「成程、貴方も女性なのですね」
「言い方! てか違う。欲しいとかじゃなくて、これ直そうかなって」
ずっと持ち続けてきた、翡翠を取り出して見せた。
すっかり以前の色合いを取り戻した翡翠、切れたチェーンを元に戻そうかと思っていた。
パラの金の剣とこの翡翠ぐらいしか、師匠の形見はないから。
「修繕ですか。よろしいのでは」
「寄っていい?」
「ええ」
「あ、自分のお金でやるからね!」
強く主張するとサリュが飽きれて溜息をついた。
「何故そんなに必死になるのですか……」
いや完全にサリュのせいでしょ。さっきまであんなに厳しい買い物だったのに。
無駄遣いチェッカーと化していたサリュがあっさりオッケーを出して店に連れだってくれた。
師匠の形見を出すのは気が引けたけど、彼はさして気にしていないようだった。そう見えるだけかもしれないけど。
「これ、直してもらえます?」
「ああ、すぐできるよ。今直しても?」
「はい」
終わるまで店の中でも見ててくれと言われ、うろうろしながら物色する。
アクセサリーから天然石まで様々。天然石置いてるのは自分で作る用ぽいな。
フーちゃん連れて来たら喜びそう。
「すごいね」
「? 何度も来ているのでは?」
さっき女性ですかとか盛大な嫌味を言ってたくせに。
まあ女性は好きだよね。
師匠もよくそういうの身につけていたし、なにより私に翡翠のネックレスくれたわけだし。
とんとそういうものには縁がなかったな。
フーちゃんは服派だったし。
「んー、こういう店は初めてだよ」
「そうでしたか」
なんとも読めない表情のまま頷いて、そのまま適当に店内物色に戻る。
そんな中、ふと目に付く石。
「おお、綺麗……」
「……」
近くにいたサリュに掲げて見せる。
じっと石を見つめて何も言わないという、なかなかのリアクションの薄さを見せてくれた。
「ね」
「ええ」
相変わらず反応薄いなあ。
そこはにこやかに一言添えてほしいよ、と思った矢先。
「貴方の」
「ん?」
「貴方の瞳と同じ色ですね」
え、なにそれ。
ちょっと待ってよ。
確かに私の瞳は青だけど。
「う、わ」
私を見つめる金色が滲む。少し蕩けるような滲み方。
嘘でしょ。
今、眼だけで笑った。
なんて気づきにくい僅かな所作。
「? いかがしました?」
「え、あ、いや、そ、そうだ、これ買おうかな」
サリュったら、これ確実に無自覚で言ったな。
そんな形でデレ見せて来るとかどうなのよ。
無自覚デレだ、これ。間違いない。
それはもはや、天然のたらし。
この精霊のポテンシャルすごい。
かなりの不意打ちで、私ちょっと動揺したわ。
「お嬢さん、できたよ」
「はい」
「後、これも十一個、パーツもいくらか一緒にしてもらえます?」
「ああ、いいよ」
ブルートパーズの石言葉は希望。
願わくば、皆の未来に希望がありますように。
なんてね。
「そんなに数多く買ってどうするのです」
「いいじゃんかー、自分のお金だしー」
「これが、皆さんの言う無駄遣い」
最初に市場に来た時と同じ言葉使ってる気がする。
折角最後の最後だけはデートぽい雰囲気になったのに。
0
あなたにおすすめの小説
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
《完結》「パパはいますか?」ある日、夫に似た子供が訪ねて来た。
ヴァンドール
恋愛
嫁いですぐに夫は戦地に赴いた。すると突然一人の男の子が訪ねて来た「パパはいますか?」
その子供の顔は戦地に行った夫にそっくりだった。
【土壌改良】で死の荒野がSランク農園に!食べただけでレベルアップする野菜で、世界最強ギルド設立
黒崎隼人
ファンタジー
「え? これ、ただのトマトですよ?」
「いいえ、それは食べただけで魔力が全回復する『神の果実』です!」
ブラック企業で働き詰めだった青年は、異世界の名門貴族の三男・ノアとして転生する。
しかし、授かったスキルは【土壌改良】という地味なもの。
「攻撃魔法も使えない役立たず」と罵られ、魔物すら寄り付かない死の荒野へ追放されてしまう。
だが、彼らは知らなかった。
ノアのスキルは、現代の農業知識と合わせることで、荒れ果てた土地を「Sランク食材」が溢れる楽園に変えるチート能力だったことを!
伝説の魔獣(もふもふ)をキュウリ一本で手懐け、行き倒れた天才エルフを極上スープで救い出し、気づけば荒野には巨大な「農業ギルド」が誕生していた。
これは、本人がただ美味しい野菜を作ってのんびり暮らしたいだけなのに、周囲からは「世界を救う大賢者」と崇められてしまう、無自覚・最強の農業ファンタジー!
王家を追放された落ちこぼれ聖女は、小さな村で鍛冶屋の妻候補になります
cotonoha garden
恋愛
「聖女失格です。王家にも国にも、あなたはもう必要ありません」——そう告げられた日、リーネは王女でいることさえ許されなくなりました。
聖女としても王女としても半人前。婚約者の王太子には冷たく切り捨てられ、居場所を失った彼女がたどり着いたのは、森と鉄の匂いが混ざる辺境の小さな村。
そこで出会ったのは、無骨で無口なくせに、さりげなく怪我の手当てをしてくれる鍛冶屋ユリウス。
村の事情から「書類上の仮妻」として迎えられたリーネは、鍛冶場の雑用や村人の看病をこなしながら、少しずつ「誰かに必要とされる感覚」を取り戻していきます。
かつては「落ちこぼれ聖女」とさげすまれた力が、今度は村の子どもたちの笑顔を守るために使われる。
そんな新しい日々の中で、ぶっきらぼうな鍛冶屋の優しさや、村人たちのさりげない気遣いが、冷え切っていたリーネの心をゆっくりと溶かしていきます。
やがて、国難を前に王都から使者が訪れ、「再び聖女として戻ってこい」と告げられたとき——
リーネが選ぶのは、きらびやかな王宮か、それとも鉄音の響く小さな家か。
理不尽な追放と婚約破棄から始まる物語は、
「大切にされなかった記憶」を持つ読者に寄り添いながら、
自分で選び取った居場所と、静かであたたかな愛へとたどり着く物語です。
【完結】追放された大聖女は黒狼王子の『運命の番』だったようです
星名柚花
恋愛
聖女アンジェリカは平民ながら聖王国の王妃候補に選ばれた。
しかし他の王妃候補の妨害工作に遭い、冤罪で国外追放されてしまう。
契約精霊と共に向かった亜人の国で、過去に自分を助けてくれたシャノンと再会を果たすアンジェリカ。
亜人は人間に迫害されているためアンジェリカを快く思わない者もいたが、アンジェリカは少しずつ彼らの心を開いていく。
たとえ問題が起きても解決します!
だって私、四大精霊を従える大聖女なので!
気づけばアンジェリカは亜人たちに愛され始める。
そしてアンジェリカはシャノンの『運命の番』であることが発覚し――?
偽聖女と追放された私は、辺境で定食屋をはじめます~こっそり生活魔法で味付けしていたら、氷の騎士団長様が毎日通ってくるんですけど!?~
咲月ねむと
恋愛
【アルファポリス女性向けHOTランキング1位達成作品!!】
あらすじ
「役立たずの偽聖女め、この国から出て行け!」
聖女として召喚されたものの、地味な【生活魔法】しか使えず「ハズレ」の烙印を押されたエリーナ。
彼女は婚約者である王太子に婚約破棄され、真の聖女と呼ばれる義妹の陰謀によって国外追放されてしまう。
しかし、エリーナはめげなかった。
実は彼女の【生活魔法】は、一瞬で廃墟を新築に変え、どんな食材も極上の味に変えるチートスキルだったのだ!
北の辺境の地へ辿り着いたエリーナは、念願だった自分の定食屋『陽だまり亭』をオープンする。
すると、そこへ「氷の騎士団長」と恐れられる冷徹な美形騎士・クラウスがやってきて――。
「……味がする。お前の料理だけが、俺の呪いを解いてくれるんだ」
とある呪いで味覚を失っていた彼は、エリーナの料理にだけ味を感じると判明。
以来、彼は毎日のように店に通い詰め、高額な代金を置いていったり、邪魔する敵を排除したりと、エリーナを過保護なまでに溺愛し始める。
最強の騎士団長と騎士たちに胃袋を掴んで守られながら、エリーナは辺境で幸せなスローライフを満喫中?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる