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8話 自己紹介タイム
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「主人、サリュークレ様は朝餉いかがしますか」
「連れてきてー」
「はい」
ヴァンに頼んで、サリュを連れて来てもらう。全員揃って待ってた風景は、彼には物珍しかったらしい。少し目を丸くした。
「おはよー」
「……これは」
「うちは、朝ごはんだけは皆でって決めてるんだ」
「……私は、」
「お座り下さい、サリュークレ様」
ヴァンの有無の言わさないアシスト、つまるとこ椅子を引いてみせ、退路を塞いで無理矢理座らせた。
こういう時のヴァンの言葉の調子も所作を含めた手腕は本当大人顔負け、格好よすぎ。惚れる。
「食べられない物はあるかな?」
「いえ、ありませんが」
「そう、よかった」
座ったところにすかさずメゾンが食事を運んでくる。
朝からイケメンがイケメンにご飯を提供してるとかなかなかいい絵。目の保養だわ。
そのメゾンの食事の提供によって、ますます逃げられないものだと悟り、サリュークレは少し居心地悪そうに座り直した。
「では、皆。いただきます」
不揃いのいただきますの末、食事スタートだ。
御先祖様のご飯の合図を採用してるから、最初は皆戸惑いがちだった。サリュークレの戸惑う姿を見て懐かしくなっちゃったよ。
そんな食事の中、ふと思いついた。
「ちゃんとした自己紹介まだだったね」
「え、いや」
「じゃ端っこから教えようか」
「いいえ、け」
「まずは私、エクラ・ヴェリテ」
「存じております」
あ、不機嫌になった。見習い期間中はそんな雰囲気微塵も出さなかったのに。
これも瘴気のせいですか、そうですか。
「ですよね! 次は私の隣、シュリエ。土の精霊。私の小さい頃からの付き合いで、私はシュリって呼んでる」
「はーい、よろしくー」
サリュークレはシュリのことも知っているはず。見習い期間、シュリは別場所にいたけど私の昔からの精霊だということで紹介はしてたし。
「そっちから見えるかな? シュリの足元にいるのがトレゾール。鉱物の精霊。ちなみに人の言葉は喋らないよ」
わふんと一声。この子本当こっちの言う事理解してるよなあ。
「で、シュリの隣がフー、火の精霊。女子中学生アイドル」
「え、じょし? あい?」
「よろしくねえ!」
小首傾げてからの笑顔。可愛いすぎかよ。
「その隣がオール、金の精霊。陰キャだけど、だいぶ更生したよ」
「……よろしく頼む」
「いんきゃ?」
年齢は私より年上、二十代後半といったところか。
「次がヴァン。風の精霊。見た目は小学生だけど、うちの子随一のしっかりさんだね」
「宜しくお願い申し上げます」
なんだかこの二人気が合いそう。真面目っ子だし。
「その隣がフルール。男子中学生だけど、中身が男前イケメン。花の精霊だね」
「おう、よろしく頼むぜ」
「だんしちゅうが、え?」
さっきから私の言葉を中途半端に反復してるけど、大丈夫かな?
なんだか壊れたおもちゃみたいだけど。
「で、一番大きくてがたいのいい彼がメゾン。家の精霊、つまるとこ座敷童」
「ざしきわらし?」
メゾンは三十代後半かな。こっちもイケメンだし、本当パラダイスじゃん。そういえば男性率高いな。
「で、最後の二人、リュミエールが光の精霊。優しいヤンキー」
「おう」
「光?」
何故か驚いているサリュークレ。ルルの顔には特段何もついてないけどな。
「最後が闇の精霊、フォンセ。幼女です」
「ん!」
幼女最強かよ、可愛いな。ご飯上手に食べちゃってさ~もういつまでも見てられる。
ちなみにこぼしたり口周り汚すとルルがお世話してくれる。幼女を世話するヤンキー……いい画だ。
「闇まで……」
「ん? どうかした?」
「…………いえ」
えらいためたな。
「感想をどうぞ?」
「……数が少ない」
「それを言うなし」
そりゃ師匠んとこは規模が違う。それにここ一年で九人ものを精霊と共にすることが出来た私を褒めてほしい。
「うちは水の精霊がいなかったから丁度よかったよ」
「五行が揃う前に光と闇がきたんですか」
「うん」
「……」
絶句された、なんで。
「光と闇の精霊は希少です。聖女を極端に選ぶ。熟練の聖女の元ですら滅多な事では現れないのに、貴方は基礎である五行を整える前に、光と闇の精霊を呼び寄せたのですか」
「ん? うん、そうだけど」
「……」
また絶句。
なんなの、ヤンキーと幼女は悪くないぞ。
「なんか二人とも、めっちゃ珍しいみたいだけど?」
「ああ? 別にその辺にいくらでもいんだろ」
「んー!」
「と、申しております」
呆れたサリュは肩を落として溜息を吐いた。
なんだか昨日よりトゲトゲ感がなくていい。その代りだいぶ違う方向で好感度下がってるっぽいけど。
「まあそこはおいといてさ」
「……」
「この後、畑仕事だからね? よろしく!」
「……」
私は聖女としての仕事がある。主に事務仕事だ。
ようはこの屋敷を主人として切り盛りすること、監視者への定期報告、ここ最近の魔の動向確認とか、まあ地味な仕事がいくらか。
「お」
朝餉を終えて、執務室から外を眺めれば、シュリがサリュを連れて敷地内奥の畑へ向かっていた。
よかった、割と素直にいてくれる。シュリがうまくやってくれるだろうけど、最初の掴みは成功してるみたい。
「主人、手が」
「はいはい」
「返事は一回です」
お姑みたい。
そういえば御先祖様の旦那さんもお姑みたいだとか言われてたなあ。
「オンブルさんからの報告もきています」
「わお、仕事早い」
「彼を通した上で、大聖女様方からも」
「見たくないね!」
「……」
「ごめんて」
手厳しいんだよね、ヴァン。
仕事の相方である側付は日によって変わる。大体はシュリとヴァンがメインになるけど、他の子もやってくれる。
さすがに昨日の今日だから、しっかり者のヴァンになったんだろうけど。
「ま、ひとまず返信を書きますか」
「穏便に進めてください」
「オッケー」
「連れてきてー」
「はい」
ヴァンに頼んで、サリュを連れて来てもらう。全員揃って待ってた風景は、彼には物珍しかったらしい。少し目を丸くした。
「おはよー」
「……これは」
「うちは、朝ごはんだけは皆でって決めてるんだ」
「……私は、」
「お座り下さい、サリュークレ様」
ヴァンの有無の言わさないアシスト、つまるとこ椅子を引いてみせ、退路を塞いで無理矢理座らせた。
こういう時のヴァンの言葉の調子も所作を含めた手腕は本当大人顔負け、格好よすぎ。惚れる。
「食べられない物はあるかな?」
「いえ、ありませんが」
「そう、よかった」
座ったところにすかさずメゾンが食事を運んでくる。
朝からイケメンがイケメンにご飯を提供してるとかなかなかいい絵。目の保養だわ。
そのメゾンの食事の提供によって、ますます逃げられないものだと悟り、サリュークレは少し居心地悪そうに座り直した。
「では、皆。いただきます」
不揃いのいただきますの末、食事スタートだ。
御先祖様のご飯の合図を採用してるから、最初は皆戸惑いがちだった。サリュークレの戸惑う姿を見て懐かしくなっちゃったよ。
そんな食事の中、ふと思いついた。
「ちゃんとした自己紹介まだだったね」
「え、いや」
「じゃ端っこから教えようか」
「いいえ、け」
「まずは私、エクラ・ヴェリテ」
「存じております」
あ、不機嫌になった。見習い期間中はそんな雰囲気微塵も出さなかったのに。
これも瘴気のせいですか、そうですか。
「ですよね! 次は私の隣、シュリエ。土の精霊。私の小さい頃からの付き合いで、私はシュリって呼んでる」
「はーい、よろしくー」
サリュークレはシュリのことも知っているはず。見習い期間、シュリは別場所にいたけど私の昔からの精霊だということで紹介はしてたし。
「そっちから見えるかな? シュリの足元にいるのがトレゾール。鉱物の精霊。ちなみに人の言葉は喋らないよ」
わふんと一声。この子本当こっちの言う事理解してるよなあ。
「で、シュリの隣がフー、火の精霊。女子中学生アイドル」
「え、じょし? あい?」
「よろしくねえ!」
小首傾げてからの笑顔。可愛いすぎかよ。
「その隣がオール、金の精霊。陰キャだけど、だいぶ更生したよ」
「……よろしく頼む」
「いんきゃ?」
年齢は私より年上、二十代後半といったところか。
「次がヴァン。風の精霊。見た目は小学生だけど、うちの子随一のしっかりさんだね」
「宜しくお願い申し上げます」
なんだかこの二人気が合いそう。真面目っ子だし。
「その隣がフルール。男子中学生だけど、中身が男前イケメン。花の精霊だね」
「おう、よろしく頼むぜ」
「だんしちゅうが、え?」
さっきから私の言葉を中途半端に反復してるけど、大丈夫かな?
なんだか壊れたおもちゃみたいだけど。
「で、一番大きくてがたいのいい彼がメゾン。家の精霊、つまるとこ座敷童」
「ざしきわらし?」
メゾンは三十代後半かな。こっちもイケメンだし、本当パラダイスじゃん。そういえば男性率高いな。
「で、最後の二人、リュミエールが光の精霊。優しいヤンキー」
「おう」
「光?」
何故か驚いているサリュークレ。ルルの顔には特段何もついてないけどな。
「最後が闇の精霊、フォンセ。幼女です」
「ん!」
幼女最強かよ、可愛いな。ご飯上手に食べちゃってさ~もういつまでも見てられる。
ちなみにこぼしたり口周り汚すとルルがお世話してくれる。幼女を世話するヤンキー……いい画だ。
「闇まで……」
「ん? どうかした?」
「…………いえ」
えらいためたな。
「感想をどうぞ?」
「……数が少ない」
「それを言うなし」
そりゃ師匠んとこは規模が違う。それにここ一年で九人ものを精霊と共にすることが出来た私を褒めてほしい。
「うちは水の精霊がいなかったから丁度よかったよ」
「五行が揃う前に光と闇がきたんですか」
「うん」
「……」
絶句された、なんで。
「光と闇の精霊は希少です。聖女を極端に選ぶ。熟練の聖女の元ですら滅多な事では現れないのに、貴方は基礎である五行を整える前に、光と闇の精霊を呼び寄せたのですか」
「ん? うん、そうだけど」
「……」
また絶句。
なんなの、ヤンキーと幼女は悪くないぞ。
「なんか二人とも、めっちゃ珍しいみたいだけど?」
「ああ? 別にその辺にいくらでもいんだろ」
「んー!」
「と、申しております」
呆れたサリュは肩を落として溜息を吐いた。
なんだか昨日よりトゲトゲ感がなくていい。その代りだいぶ違う方向で好感度下がってるっぽいけど。
「まあそこはおいといてさ」
「……」
「この後、畑仕事だからね? よろしく!」
「……」
私は聖女としての仕事がある。主に事務仕事だ。
ようはこの屋敷を主人として切り盛りすること、監視者への定期報告、ここ最近の魔の動向確認とか、まあ地味な仕事がいくらか。
「お」
朝餉を終えて、執務室から外を眺めれば、シュリがサリュを連れて敷地内奥の畑へ向かっていた。
よかった、割と素直にいてくれる。シュリがうまくやってくれるだろうけど、最初の掴みは成功してるみたい。
「主人、手が」
「はいはい」
「返事は一回です」
お姑みたい。
そういえば御先祖様の旦那さんもお姑みたいだとか言われてたなあ。
「オンブルさんからの報告もきています」
「わお、仕事早い」
「彼を通した上で、大聖女様方からも」
「見たくないね!」
「……」
「ごめんて」
手厳しいんだよね、ヴァン。
仕事の相方である側付は日によって変わる。大体はシュリとヴァンがメインになるけど、他の子もやってくれる。
さすがに昨日の今日だから、しっかり者のヴァンになったんだろうけど。
「ま、ひとまず返信を書きますか」
「穏便に進めてください」
「オッケー」
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