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2章 変態宰相公爵の、魔女への溺愛ストーカー記録

100話 僕のこと好き?

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「結婚する」
「え?」
「結婚するから血吐くぐらい無理しないで!」
「分かった」
「え?」

 きっぱりと言いきられた。サクが目元から耳まで赤くしながら真顔でいる。

「もう繋がるのやめ」
「え? そんなに簡単に?」

 ドラゴンとフェンリルの話を考えると、サクが積極的に繋がりを使っていたのが分かる。その過剰な使い方が本来聖女になるはずのなかったサクには負担だった。
 でも繋がったのは私と出会う前に熱を出して偶然のはず。ということは、繋がること自体に選択肢はなく、使う使わない関係なく繋がったままなのでは?
 私の脳内の考えを読んだのか、サクが眉をさげて笑う。

「元々やめる予定だったから」
「ほ、ほんと?」

 身体に過負荷がかからないような繋がりにするつもりだったと加える。私の目尻に指を沿わせて滲む涙を掬った。
 繋がったばかりの時は便利だったから繋がりを利用していた。十年前、国家連合成立を成し得、ここ一帯の国々の平和と発展に寄与したらやめてもいいかと思っていたところに私と出会う。そこから変えたと。

「クラスが快く暮らせるように環境整えて、クラスが僕と暮らしてくれるなら繋がりの利用をやめようと思って」

 身体に負担のかからない程度に調整するつもりだったらしい。血を吐いてしまわない程度に。
 そこは繋がりの先の精霊王にも願ったし、聖女を失いたくない精霊王の意思と合った。精霊王は積極的にサクの助けになってくれたらしい。見えない存在なのにとても協力的で優しい人なのね。

「クラスと再会して一緒に長くいたいから、繋がらないようにするか繋がりを弱くできるかを何度か試しました。感覚としては問題なく繋がらない状態に近い形ですごせます」
「血はもう出ない?」
「出しませんよ」

 でもクラスのこと考えて鼻血出ることはありますけど、と肩を上げておどけてみせる。

「鼻血は繋がりのせいじゃないの?」
「半分は僕の性癖です」

 それを断言するのはどうなんだろうと思いつつも、繋がらないと言い続けるサクに少し安堵する。

「それなら……」
「クラスが安心するまで言い続ければいい?」
「それは悪いかなって」

 なら治癒して、とサクが笑う。

「治癒しても意味ない」
「ことでもやって?」

 今すぐ、と両手をとってサクの頬に連れていかれる。引いても全然ゆるめてくれないから治癒をした。鼻血が出た状態の外側の治癒ならまだしも、繋がりを含めた中身の治癒はできない。
 けどテコでも動かないから仕方なく治癒をした。身の内にたまった大きすぎる聖女の力は本来サクのものだから返すようなものだ。

「どう?」
「うん、キラキラしてる」

 治癒の光のことだろうか。瞳を閉じて僅かにしか輝かない光を感じているようだった。

「魔法は多かれ少なかれ光るものでしょ」
「クラスの治癒は特別です」
「そんなこと、」
「ほら、これでもう大丈夫」
「……なんか、子供扱いされてる気がする」
「そんなことありませんよ」

 なんだか一人取り乱してるだけだった気がする。サクの中では終わったことのような雰囲気がした。私には今になってやっと知ったことなのに。
 知ってることを逆手にとって知らない私を子供扱いするのは納得がいかない。

「ぐぐぐ……」
「あ、でもこれで僕が十年前どれだけ子供扱いされてやきもきしてたか分かってもらえました?」

 十年前は本当もどかしかったんですよと訴える。十年前のサクは本当に小さくて子供だったし。

「本当に子供なら仕方ないでしょ。サク小さかったし」
「僕はクラスのことを子供として見てないですよ。きちんと女性として見てます」

 だから結婚の申し込みをするんですよと一旦両手を離して私の片手だけをサクの口元に連れていく。サクの唇が私の指に触れた。

「十年前から好きなんです」
「う、ん……」
「結婚、本当にしてくれますか?」
「……あ」

 苛立ちに任せて結婚するなんて叫んでて雑な返事だった。癇癪起こして返事とか人としてだめだわ。

「まさか嘘?」
「ちがっ、あの、あんな勢いで言う気なんてなくて」
「勢い? 他になにか言うことが?」

 サクってば片手は手を、もう片手は腰を抱いていて離れられない。言い訳もきかないことは分かっていた。

「そ、その、返事はきちんと静かなとこでちゃんと伝えたかったというか……」
「きちんと?」
「うん」
「ちゃんと?」
「……うん」

 そっかあとサクが目を細める。瞳の中で虹色が煌めいていた。
 文面がおかしいことは追及されない。きちんとちゃんと向き合うことが嬉しいようだった。確かに今までサクがしてきた告白はサクが鼻血を垂らしたりおどけたりする分、引き気味にお断りをしてきている。それに対して真面目にお応えしますと言ってるのだから、実際本気だったサクには思うところがあるだろう。
 しかもサクは私の返事がどうかを分かっている。知られているのに言うのは恥ずかしい。逃げたい。なにかに隠れたい。

「ふふふふ」
「な、なに?」

 焦るクラスが可愛いくてと笑うサクがひどく満足そうだった。

「ねえ、僕のこと好き?」
「え、ええと……」
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