93 / 103
2章 変態宰相公爵の、魔女への溺愛ストーカー記録
93話 ドラゴンとフェンリル、本来の力
しおりを挟む
鍔迫り合いに押し勝ち、相手を地面に叩き伏せる。遅れて木々の奥から騎士たちが一斉に走り出てきた。
「少し時間がかかりました。すみません」
間に合ってよかったと肩を落とす。もう大丈夫ですよと顔だけこちらを見て笑った。
「サク」
「はい」
邪魔になると分かっていてサクの服の裾をとると、すぐに気づいたサクが目を開いた。けどすぐに眉を八の字にしてしまう。
「怖がらせた?」
ヴォックスが出てきて周囲に指示を出しながらフィクタの騎士たちを次々に捕えていく。サクが私の頬に触れた。
「もっと早く来るべきでした」
「ううん。来てくれて嬉しい」
勝手をしたのは私だ。サクは決して動くなと言っていたのを無理を言ってフィクタに接触した。なのに怒る素振りを見せずに心配だけしてくれる。
「クラスがフィクタに連れて行かれるのは想定の内の一つだったのに、あいつの処理で時間をかけてしまったのは僕のミスです」
「私、勝手をしたのに」
「いいえ、クラスは悪くありませんよ? だって自分で呪いを破りに立ち向かったんでしょ?」
「サク、知って」
呪いなんて始めからなかったけど、とサクが笑う。
「ごめんね」
「謝らなくていいのに」
クラスが生きる選択をすればそれでいいと言う。ドラゴンとフェンリルと三人で話したことを思い出した。
「ドラゴンもフェンリルもクラスを守ってくれてありがとうございます」
「なに大した事はない」
「我々の目的も達成された」
聖女を守るというやつ? これでサクが生きることになるの?
サクに繋がりのことを聞こうと口を開きかけたところで金切声があがった。ヴォックスに捕えられたフィクタだ。こちらを睨みつける。
「ドラゴン? フェンリル? そんなものが」
「貴方も偽りつつも聖女を名乗っていたのなら知っているのでは? その昔、聖女制度が生きていた頃に聖女が魔物と共にいたという話です」
「それ、は……」
心当たりがあるらしい。必ずしもというわけではないけど、聖女の逸話で魔物を連れていた人物がいた。
「となれば、誰が聖女か明白ですね?」
サクが嫌にいい笑顔をフィクタに向けた。ドラゴンもフェンリルもサクの為にここにいるのに、あたかも私を聖女だと指して言っているような形だ。
「ドラゴンもフェンリルも見えない時点で終わってんだよ」
「サク」
「ああすみませんつい」
口の悪いサクを咎めていると、フィクタが歯の根を噛んだ。
「なら……」
「?」
ヴォックスに拘束されたまま、こちらに向かって叫ぶフィクタにはどこにも余裕がなかった。
「それを寄越しなさいよ。伝説の魔物を従えていれば、私が真の聖女だという証明にもなるのでしょう」
その言葉を許す程、二人は寛大ではない。不穏な空気が私とサクの周囲に満ちた。
「ほう。従える、ねえ」
「見えもしない人間が」
フィクタは、魔物を従えるを聖女の条件に変えてしまえばいいも笑う。ドラゴンとフェンリルが溜め息をつく。
「我々を利用しようとは呆れて物も言えんな」
「やるのか」
ドラゴンが肩から降りた。そしてずずっと低い音を立てる背後を振り向くとドラゴンが元の大きさに戻っている。周囲から悲鳴があがった。
「今だけどのような人間でも敢えて見えるようにしてやった」
空気が痺れるような重低音。初めてウニバーシタスの城で出会った時と変わらない声だ。
「では私も」
フェンリルも元の大きさに戻る。咆哮が響いて地面が揺れた。逃げ出そうとする人間を囲う様に炎が地面から湧く。フェンリルが笑うと炎が柱になって逃げ道を塞ぎ、人が触れようものなら焼かれてしまう。けど不思議と周囲の木々は燃えなかった。これが伝説の魔物と言われるフェンリルの力。
「我々を利用するなど笑えんな」
巨大な光がドラゴンの口元に集まり、光の線となって放たれる。
「よくやった。ウニバーシタスの城が一階部分を残して消失したぞ」
フェンリルが楽しそうに報告する。
「ええ……」
「荷電粒子咆というやつです」
「サク」
ああ、この時代のものではありませんねと笑う。明らかに楽しんでるでしょ。
「城にいるものは二階から上にはあがらせてません。城が消失しただけで中の人間は無事ですよ」
ほっとするも、いくらか消失してもいい人間はいましたがと笑顔のまま恐ろしいことを言っていた。
聞かなかったことにしてフィクタと向き合う。
「フィクタ・セーヌ・マギア公爵令嬢、いやマギア姓も本来のものではないならただのフィクタか。フィクタ嬢」
あまりの出来事に震えて言葉を失うフィクタがゆっくりサクを見る。私の隣にサク、背後に二人の魔物を抱えた姿は彼女には毒だったらしい。小さく悲鳴を上げた。
「帝国民無差別殺傷未遂と国家反逆罪で連合の国際裁判にかけます」
「私は何もしていないわ」
「そうですか。まあひとまず移動しましょう」
その言葉と共に巨大な魔法陣が空にうつる。まさかここにいる全員を転移させる気? いくら帝都内とはいえ、この人数を動かすのは無理がある。サクがいくら魔法を使うことに長けていて負担が高すぎるはずだ。
「サ、ク」
一つ咳をし手で押さえたサクの姿に血の気が引いた。
掌が血に染まっていたから。
「少し時間がかかりました。すみません」
間に合ってよかったと肩を落とす。もう大丈夫ですよと顔だけこちらを見て笑った。
「サク」
「はい」
邪魔になると分かっていてサクの服の裾をとると、すぐに気づいたサクが目を開いた。けどすぐに眉を八の字にしてしまう。
「怖がらせた?」
ヴォックスが出てきて周囲に指示を出しながらフィクタの騎士たちを次々に捕えていく。サクが私の頬に触れた。
「もっと早く来るべきでした」
「ううん。来てくれて嬉しい」
勝手をしたのは私だ。サクは決して動くなと言っていたのを無理を言ってフィクタに接触した。なのに怒る素振りを見せずに心配だけしてくれる。
「クラスがフィクタに連れて行かれるのは想定の内の一つだったのに、あいつの処理で時間をかけてしまったのは僕のミスです」
「私、勝手をしたのに」
「いいえ、クラスは悪くありませんよ? だって自分で呪いを破りに立ち向かったんでしょ?」
「サク、知って」
呪いなんて始めからなかったけど、とサクが笑う。
「ごめんね」
「謝らなくていいのに」
クラスが生きる選択をすればそれでいいと言う。ドラゴンとフェンリルと三人で話したことを思い出した。
「ドラゴンもフェンリルもクラスを守ってくれてありがとうございます」
「なに大した事はない」
「我々の目的も達成された」
聖女を守るというやつ? これでサクが生きることになるの?
サクに繋がりのことを聞こうと口を開きかけたところで金切声があがった。ヴォックスに捕えられたフィクタだ。こちらを睨みつける。
「ドラゴン? フェンリル? そんなものが」
「貴方も偽りつつも聖女を名乗っていたのなら知っているのでは? その昔、聖女制度が生きていた頃に聖女が魔物と共にいたという話です」
「それ、は……」
心当たりがあるらしい。必ずしもというわけではないけど、聖女の逸話で魔物を連れていた人物がいた。
「となれば、誰が聖女か明白ですね?」
サクが嫌にいい笑顔をフィクタに向けた。ドラゴンもフェンリルもサクの為にここにいるのに、あたかも私を聖女だと指して言っているような形だ。
「ドラゴンもフェンリルも見えない時点で終わってんだよ」
「サク」
「ああすみませんつい」
口の悪いサクを咎めていると、フィクタが歯の根を噛んだ。
「なら……」
「?」
ヴォックスに拘束されたまま、こちらに向かって叫ぶフィクタにはどこにも余裕がなかった。
「それを寄越しなさいよ。伝説の魔物を従えていれば、私が真の聖女だという証明にもなるのでしょう」
その言葉を許す程、二人は寛大ではない。不穏な空気が私とサクの周囲に満ちた。
「ほう。従える、ねえ」
「見えもしない人間が」
フィクタは、魔物を従えるを聖女の条件に変えてしまえばいいも笑う。ドラゴンとフェンリルが溜め息をつく。
「我々を利用しようとは呆れて物も言えんな」
「やるのか」
ドラゴンが肩から降りた。そしてずずっと低い音を立てる背後を振り向くとドラゴンが元の大きさに戻っている。周囲から悲鳴があがった。
「今だけどのような人間でも敢えて見えるようにしてやった」
空気が痺れるような重低音。初めてウニバーシタスの城で出会った時と変わらない声だ。
「では私も」
フェンリルも元の大きさに戻る。咆哮が響いて地面が揺れた。逃げ出そうとする人間を囲う様に炎が地面から湧く。フェンリルが笑うと炎が柱になって逃げ道を塞ぎ、人が触れようものなら焼かれてしまう。けど不思議と周囲の木々は燃えなかった。これが伝説の魔物と言われるフェンリルの力。
「我々を利用するなど笑えんな」
巨大な光がドラゴンの口元に集まり、光の線となって放たれる。
「よくやった。ウニバーシタスの城が一階部分を残して消失したぞ」
フェンリルが楽しそうに報告する。
「ええ……」
「荷電粒子咆というやつです」
「サク」
ああ、この時代のものではありませんねと笑う。明らかに楽しんでるでしょ。
「城にいるものは二階から上にはあがらせてません。城が消失しただけで中の人間は無事ですよ」
ほっとするも、いくらか消失してもいい人間はいましたがと笑顔のまま恐ろしいことを言っていた。
聞かなかったことにしてフィクタと向き合う。
「フィクタ・セーヌ・マギア公爵令嬢、いやマギア姓も本来のものではないならただのフィクタか。フィクタ嬢」
あまりの出来事に震えて言葉を失うフィクタがゆっくりサクを見る。私の隣にサク、背後に二人の魔物を抱えた姿は彼女には毒だったらしい。小さく悲鳴を上げた。
「帝国民無差別殺傷未遂と国家反逆罪で連合の国際裁判にかけます」
「私は何もしていないわ」
「そうですか。まあひとまず移動しましょう」
その言葉と共に巨大な魔法陣が空にうつる。まさかここにいる全員を転移させる気? いくら帝都内とはいえ、この人数を動かすのは無理がある。サクがいくら魔法を使うことに長けていて負担が高すぎるはずだ。
「サ、ク」
一つ咳をし手で押さえたサクの姿に血の気が引いた。
掌が血に染まっていたから。
0
あなたにおすすめの小説
契約結婚のススメ
文月 蓮
恋愛
研究一筋に生きてきた魔導士のレティシアは、研究を続けるために父に命じられた結婚をしかたなく承諾する。相手は社交界の独身女性憧れの的であるヴィラール侯爵アロイス。だが、アロイスもまた結婚を望んでいなかったことを知り、契約結婚を提案する。互いの思惑が一致して始まった愛のない結婚だったが、王の婚約者の護衛任務を受けることになったレティシアとアロイスの距離は徐々に縮まってきて……。シリアスと見せかけて、コメディです。「ムーンライトノベルズ」にも投稿しています。
魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました
iru
恋愛
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。
両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。
両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。
しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。
魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。
自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。
一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。
初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。
恋人になりたいが、年上で雇い主。
もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。
そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。
そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。
レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか?
両片思いのすれ違いのお話です。
半妖の狐耳付きあやかし令嬢の婚約事情 ~いずれ王子(最強魔法使い)に婚約破棄をつきつけます!~
百門一新
恋愛
大妖怪の妖狐「オウカ姫」と、人間の伯爵のもとに生まれた一人娘「リリア」。頭には狐耳、ふわふわと宙を飛ぶ。性格は少々やんちゃで、まだまだ成長期の仔狐なのでくしゃみで放電するのもしばしば。そんな中、王子とのお見合い話が…嫌々ながらの初対面で、喧嘩勃発!? ゆくゆく婚約破棄で、最悪な相性なのに婚約することに。
※「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しています。
※ベリーズカフェに修正版を掲載、2021/8/31こちらの文章も修正版へと修正しました!
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
毎日19時に更新予定です。
『階段対策会議(※恋愛)――年上騎士団長の健康管理が過剰です』
星乃和花
恋愛
【完結済:全9話】
経理兼給仕のクラリスは、騎士団で働くただの事務員――のはずだった。
なのに、年上で情緒に欠ける騎士団長グラントにある日突然こう言われる。
「君は転倒する可能性がある。――健康管理対象にする」
階段対策会議、動線の変更、手をつなぐのは転倒防止、ストール支給は防寒対策。
全部合理的、全部正しい。……正しいはずなのに!
「頬が赤い。必要だ」
「君を、大事にしたい」
真顔で“強い言葉”を投下してくる団長に、乙女心を隠すクラリスの心拍数は業務超過。
さらに副団長ローレンは胃薬片手に「恋は会議にするな!!」と絶叫中!?
これは健康管理?それとも恋愛?
――答え合わせの前に、まず“階段(概念)“をご確認ください。
サマー子爵家の結婚録 ~ほのぼの異世界パラレルワールド~
秋野 木星
恋愛
5人の楽しい兄弟姉妹と友人まで巻き込んだ、サマー子爵家のあたたかな家族のお話です。
「めんどくさがりのプリンセス」の末っ子エミリー、
「のっぽのノッコ」に恋した長男アレックス、
次女キャサリンの「王子の夢を誰も知らない」、
友人皇太子の「伝統を継ぐ者」、
「聖なる夜をいとし子と」過ごす次男デビッド、
長女のブリジットのお話はエミリーのお話の中に入っています。
※ 小説家になろうでサマー家シリーズとして書いたものを一つにまとめました。
転生したら地味ダサ令嬢でしたが王子様に助けられて何故か執着されました
古里@3巻電子書籍化『王子に婚約破棄され
恋愛
皆様の応援のおかげでHOT女性向けランキング第7位獲得しました。
前世病弱だったニーナは転生したら周りから地味でダサいとバカにされる令嬢(もっとも平民)になっていた。「王女様とか公爵令嬢に転生したかった」と祖母に愚痴ったら叱られた。そんなニーナが祖母が死んで冒険者崩れに襲われた時に助けてくれたのが、ウィルと呼ばれる貴公子だった。
恋に落ちたニーナだが、平民の自分が二度と会うことはないだろうと思ったのも、束の間。魔法が使えることがバレて、晴れて貴族がいっぱいいる王立学園に入ることに!
しかし、そこにはウィルはいなかったけれど、何故か生徒会長ら高位貴族に絡まれて学園生活を送ることに……
見た目は地味ダサ、でも、行動力はピカ一の地味ダサ令嬢の巻き起こす波乱万丈学園恋愛物語の始まりです!?
小説家になろうでも公開しています。
第9回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作品
恋は、やさしく
美凪ましろ
恋愛
失恋したばかりの彼女はひょんなことから新橋の街中で上司にお姫様抱っこされ……!? ――俺様な美形上司と彼女とのじんわりとした恋物語。
性描写の入る章には*マークをつけています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる