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2章 変態宰相公爵の、魔女への溺愛ストーカー記録

87話 捕縛未遂→逃亡→合流

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「け、結婚するんです!」
「は?」
「え?」

 揃って驚くことないじゃない。何気なく息が合うわよね、この二人。でも今は感心している場合じゃない。はったりきかせないと。

「アチェンディーテ公爵と結婚して、イルミナルクスの人間になるんです」

 皇帝が、というかサクが進めてきた国家連合の兼ね合いで他国の人間同士の結婚をスムーズに行えるようある程度の法の規制を緩めている経緯がある。対外的に推奨しているのもあるので、他国同士の結婚による所在抹消は簡単にできるようになってしまった。
 つまり私が今サクと結婚するからウニバーシタスから所在抹消しますは簡単にできてしまう。皇帝の一存であったとしても疑義はあがらない程度に。
 新聞読んでおいて正解だった。こうしたはったりきかす時に持ってる知識は有効ね。

「結婚?」
「結婚?」

 はったりがきいてるみたいなのは嬉しいけど、男二人して同じ言葉囁きながら驚かないで欲しい。本当仲良くなれそうね。
 この不穏な空気が緩和した今がチャンス、ということでサクの手をとって行こうと伝えると、はっとして私の意図を悟った。

「僕等は結婚式や新婚旅行についても準備しなくてはいけない身で忙しい。ということで、こちらで失礼しますよ、第一皇子殿下」

 あ、いやらしい笑い方した。それだと喧嘩売るだけでしょうが。

「え、ええい、お前達二人国家反逆罪だろうが」
「他国の人間を罪に問いたい場合、国家連合における国際裁判になります。まあ自国の人間でも要請があれば自国のものではなく国際裁判が可能ですが」
「うるさい! お前ら! こいつらを捕らえろ!」

 自分が不利になった途端、暴力に訴えるなんて十年前から変わらない。取り巻きの護衛騎士が剣に手をかけた。

「口で勝てなきゃすぐ手出すか」
「牢にぶちこんでやる!」
「やれるものならやってみろ」

 目を閉じてと囁く声が頭上から降ってきた。見上げると目だけで合図され目を閉じた。
 途端、瞼の向こうに強烈な光を感じる。第一皇子と護衛騎士たちの叫びが聞こえると同時に抱え上げられ、一瞬の浮遊感を感じた。

「目開けて」
「……あれ、ここ」

 騎士エリアまで移動していた。横抱きにされていたのをゆっくりおろされる。

「目くらましした後、転移しました」
「すごいね」

 この距離でも魔法の転移を他者ごと使えるなんて相当な使い手だ。転移を使える人間なんてそういないときいていたけど。

「まあ奴らの事だから追いかけては来ないでしょう」
「本当?」
「開戦にあたり正式な発布をしていません。出来るはずもないんですけど、無駄に足掻くでしょうから、その処理に時間がかかるはずです」

 その間に急ぎましょう、とサクが手を引く。

「どうするの」
「シレたちと合流します」
「分かった」

 シレ、ヴォックス、ユツィとは思いの早くに合流できた。三人の外出中に第一皇子が勝手をしたらしい。うまいこと城に戻れ、とどまりやすい騎士エリアのヴォックスの執務室に集まった。

「だからさっさと追い出せって言ったろ」
「ごめんって」
「幸い、公的な場で宣言したわけではない。新聞社には差止めを行ったし、開戦でわいたのは第一皇子の取り巻きだけ。火消しは容易だ」

 暴走だけしてるだけで根回しとかそういったものを徹底してないらしい。

「連合臨時議会を開く。各国の宰相候補も出るからサクも」
「は? 必要ねえだろ」
「国家連合の代表揃わせて兄上単独で行った事を周知、あわせて兄上の処遇も問う。戦争が絡んでいる以上、平和協定を結んだ国家連合の面々が下すという形をとった方がいいし、なにより当事者のイルミナルクス代表がいないとあらぬ誤解を招くだろう? ウニバーシタス帝国の正統な皇太子である僕が国家連合に要請すれば国際裁判は開く事が出来る」

 確かにとサクが渋々頷いた。国境線の襲撃のことも合わせてイルミナルクスは無関係であると示した方がいい。

「国境線の襲撃だが犯人を捕らえた。こちらに輸送している。サクの考え通りだ」
「おう」

 今ここで教えてもらえなさそうだけど真相に辿り着いているのが早い。というよりも、今まで分かっていたけど教えてもらってなかっただけだろうか。
 臨時議会もとい国際裁判が開かれサクが参加するなら私は城にいないといけないだろう。となれば全部終わってから話を聞けばいいかな。

「ではその間のクラスの護衛は私に」

 ユツィが前に出た。サクたちの議会中は騎士エリアに留まることになる。さすがに第一皇子にも目をつけられている手前、独りでいるのは危険だろう。

「クラス、戻るまでユースティーツィアから離れないで下さい」
「うん」

 そんな心配しないでと言いたいところだけどサクはそれでも心配するんだろうな。癖みたいなものだし。

「僕が戻るまで絶対ここから離れないで下さい」
「分かった」

 なんでサクがあんなに切羽詰まっていたのかすぐに分かった。議会が開始されてすぐに接触があったからだ。

「クラス・トラジェクトーリア・ドゥークス伯爵様、フィクタ第一皇子妃より謁見の要望でございます」
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