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2章 変態宰相公爵の、魔女への溺愛ストーカー記録
53話 まさかの増築
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外が騒がしいと思ったら木材やらなんやらが家の側に積まれている。知らない人間が三人。サクに訴えると変わらず満面の笑みだった。
「なにこれ?」
「はい! 増築します!」
「……え?」
窯をつけるレベルの話じゃなかった。
意気揚々とサクが建築計画を語る。
「寝室、北側ですね。一部屋分増やします。クラスの部屋の隣に僕の部屋と、対面は風呂をとる形です」
水路もできましたしねと笑う。
「風呂場はそこそこの広さを設けるのでゆっくりつかれますよ」
「ええと」
「ついでなのでトイレも新しくしましょう。イルミナルクスの最新をいれます」
「ええと?」
「ああ、クラスと僕の部屋の間の壁、壊してもいいですか?」
「それは止めて」
寝室同士繋げる意味ないでしょ。一緒に寝てることは棚にあげとくけど、部屋は別々を死守しておかないと着替えもままならない。
「なら寝室同士行き来しやすくするためのドアをつけても?」
「止めて」
やるにしても鍵つけてよの言葉に対して、サク側からいつでも解錠できるものならいいとか言ってきた。それじゃ意味ない。私が施錠できない扉って意味ある?
「お風呂も広く作るなら一緒に入りましょうか?」
「はい?」
「ふふふふ、クラスとお風呂……おっと」
ハンカチで鼻を覆う。慣れたのかあまり床に溢さなくなったけど、そもそも鼻血をださない努力はないのだろうか。
「三日で終わらせますので」
「そんな早く終わるの?!」
規模的に一ヶ月は最低でもかかるでしょ。三日でできるってよくないものができる気配しかしない。壁が紙でできてます的な。
「そこはファンタジーなので」
「自分で言わないでよ」
企業秘密らしい。魔法の力をうまく使うんだろうけど、それにしたってサクはいつも秘密主義だ。
* * *
本当に三日で出来上がった。有言実行タイプね。
「……広い」
「クラスの為に頑張りました!」
「自分の欲の為だろうが」
「不謹慎極まりない」
ドラゴンとフェンリルにツッコまれつつも、どこ吹く風なサク。なんだかんだドラゴンとフェンリルが新しいお風呂を気に入っているのも分かってるんだろうな。というか私より懐柔されてない? そりゃ出来立てのパンを筆頭にした美味しい料理に二人も癒されるお風呂場できたら仕方ないとは思うけど。
この前のピザ美味しかったな……出来立てはいけない。あれは中毒になっちゃうぐらい美味しかった。
「クラス、一番風呂どうぞ」
「じゃあお言葉に甘えて?」
水路をここまで引いたら水は使いたい放題、しかも改築増築に当たってお湯も出るようになった。洗い場は広く、つかる湯船は木でできている。イルミナルクスでの十年で東側の文化にも精通し、そっちのお風呂文化に影響されたと言う。
「すごい……」
一人で使うには少し広いかな? サクの寝室対面だから広さがとれたのだろう。これでも物置増やしたりしたから、サクの寝室よりは狭い。脱衣所もそこそこ広かったのにお風呂にこの広さをとれるなんて、それこそどういう魔法なんだか。
「ふわ、気持ちい」
香りがあるものだから、湯船に浸かると木の匂いが鼻腔を擽る。たまらない。これははまる。
「……」
お風呂に浸かりながら甘やかされているなとふと思う。
至れり尽くせりで快適が一気にやってきてる気がした。サクの術中に嵌ってるわね。
「出よ」
一度ぐうたらになると永遠にぐうたらになる気がする。困った。一人で生きていける程度の自立力は残しておきたい。
寝巻きにガウンを着て、タオルを肩にかけてリビングに向かう。サクはここにいることが多い。ドラゴンとフェンリルとたまに難しい話をしながらお茶飲んでいて、その姿が十年前と重なる。
私は彼がサクだと分かっていながら未だ疑っていた。迎えにいくと言っていた。信じていなかった私も私で薄情だけど笑顔満面のサクだと信じきれない。
「サク、次いいよ」
「はい、わ、かりました」
笑顔でこちらを向いた後、ぎゅんと机に顔を向けハンカチで鼻をおさえた。
「湯上がりのクラス」
「何度も見てるじゃない」
「いいえっ!」
再びぎゅんとこちらに顔が向かれ、瞳孔開いたサクが勢いよく立ち上がった。
「お風呂あがりは二回目です! 純粋な湯上がり直後なら今日が初めてです!」
ヤバい可愛いえろいと囁かれる。
そこは無視だ。というか二回目?
「帝都でお風呂に入ったでしょう?」
「視察ですね?いけない、僕としたことが失念してました。こちらを」
カップにお茶をいれて渡される。本当に至れり尽くせりね。サクの対面に座ってお茶を頂く間、ずっとサクが声を出して笑っているのが気になったけど無視を決め込む。
「ふふふふ」
「サク、もう笑うのよして」
「こんな可愛いクラスを目の前にして無理に決まってます」
「ええ……」
ドラゴンとフェンリルが気持ち悪いなあと頷き合っている。概ね同意。視線が強くていたたまれない。
「サクもお風呂入ってきなよ」
「ええそうですね」
ドラゴンとフェンリルは最後に入るらしく、ここに待機だ。今にもスキップしそうな勢いのサクに、そんなお風呂好きな子だったっけと首を傾げる。
「クラスの後のお風呂なんて最高です」
「……」
「クラスが入った湯船……それだけで聖域ですよ。そこに入れるって事はむしろクラスと一緒にお風呂入ってるのと同義では?」
「……引くな」
「うん」
悦に浸っていたかと思いきや次に顎に手を置き本気で悩み始める。
本人目の前にいるのにやめてほしい。
「いやむしろ全部飲むか……」
「うわ……」
「きんもっ」
「少し量が多いかな……」
悩むとこそこなの!? やめてよ!
「なにこれ?」
「はい! 増築します!」
「……え?」
窯をつけるレベルの話じゃなかった。
意気揚々とサクが建築計画を語る。
「寝室、北側ですね。一部屋分増やします。クラスの部屋の隣に僕の部屋と、対面は風呂をとる形です」
水路もできましたしねと笑う。
「風呂場はそこそこの広さを設けるのでゆっくりつかれますよ」
「ええと」
「ついでなのでトイレも新しくしましょう。イルミナルクスの最新をいれます」
「ええと?」
「ああ、クラスと僕の部屋の間の壁、壊してもいいですか?」
「それは止めて」
寝室同士繋げる意味ないでしょ。一緒に寝てることは棚にあげとくけど、部屋は別々を死守しておかないと着替えもままならない。
「なら寝室同士行き来しやすくするためのドアをつけても?」
「止めて」
やるにしても鍵つけてよの言葉に対して、サク側からいつでも解錠できるものならいいとか言ってきた。それじゃ意味ない。私が施錠できない扉って意味ある?
「お風呂も広く作るなら一緒に入りましょうか?」
「はい?」
「ふふふふ、クラスとお風呂……おっと」
ハンカチで鼻を覆う。慣れたのかあまり床に溢さなくなったけど、そもそも鼻血をださない努力はないのだろうか。
「三日で終わらせますので」
「そんな早く終わるの?!」
規模的に一ヶ月は最低でもかかるでしょ。三日でできるってよくないものができる気配しかしない。壁が紙でできてます的な。
「そこはファンタジーなので」
「自分で言わないでよ」
企業秘密らしい。魔法の力をうまく使うんだろうけど、それにしたってサクはいつも秘密主義だ。
* * *
本当に三日で出来上がった。有言実行タイプね。
「……広い」
「クラスの為に頑張りました!」
「自分の欲の為だろうが」
「不謹慎極まりない」
ドラゴンとフェンリルにツッコまれつつも、どこ吹く風なサク。なんだかんだドラゴンとフェンリルが新しいお風呂を気に入っているのも分かってるんだろうな。というか私より懐柔されてない? そりゃ出来立てのパンを筆頭にした美味しい料理に二人も癒されるお風呂場できたら仕方ないとは思うけど。
この前のピザ美味しかったな……出来立てはいけない。あれは中毒になっちゃうぐらい美味しかった。
「クラス、一番風呂どうぞ」
「じゃあお言葉に甘えて?」
水路をここまで引いたら水は使いたい放題、しかも改築増築に当たってお湯も出るようになった。洗い場は広く、つかる湯船は木でできている。イルミナルクスでの十年で東側の文化にも精通し、そっちのお風呂文化に影響されたと言う。
「すごい……」
一人で使うには少し広いかな? サクの寝室対面だから広さがとれたのだろう。これでも物置増やしたりしたから、サクの寝室よりは狭い。脱衣所もそこそこ広かったのにお風呂にこの広さをとれるなんて、それこそどういう魔法なんだか。
「ふわ、気持ちい」
香りがあるものだから、湯船に浸かると木の匂いが鼻腔を擽る。たまらない。これははまる。
「……」
お風呂に浸かりながら甘やかされているなとふと思う。
至れり尽くせりで快適が一気にやってきてる気がした。サクの術中に嵌ってるわね。
「出よ」
一度ぐうたらになると永遠にぐうたらになる気がする。困った。一人で生きていける程度の自立力は残しておきたい。
寝巻きにガウンを着て、タオルを肩にかけてリビングに向かう。サクはここにいることが多い。ドラゴンとフェンリルとたまに難しい話をしながらお茶飲んでいて、その姿が十年前と重なる。
私は彼がサクだと分かっていながら未だ疑っていた。迎えにいくと言っていた。信じていなかった私も私で薄情だけど笑顔満面のサクだと信じきれない。
「サク、次いいよ」
「はい、わ、かりました」
笑顔でこちらを向いた後、ぎゅんと机に顔を向けハンカチで鼻をおさえた。
「湯上がりのクラス」
「何度も見てるじゃない」
「いいえっ!」
再びぎゅんとこちらに顔が向かれ、瞳孔開いたサクが勢いよく立ち上がった。
「お風呂あがりは二回目です! 純粋な湯上がり直後なら今日が初めてです!」
ヤバい可愛いえろいと囁かれる。
そこは無視だ。というか二回目?
「帝都でお風呂に入ったでしょう?」
「視察ですね?いけない、僕としたことが失念してました。こちらを」
カップにお茶をいれて渡される。本当に至れり尽くせりね。サクの対面に座ってお茶を頂く間、ずっとサクが声を出して笑っているのが気になったけど無視を決め込む。
「ふふふふ」
「サク、もう笑うのよして」
「こんな可愛いクラスを目の前にして無理に決まってます」
「ええ……」
ドラゴンとフェンリルが気持ち悪いなあと頷き合っている。概ね同意。視線が強くていたたまれない。
「サクもお風呂入ってきなよ」
「ええそうですね」
ドラゴンとフェンリルは最後に入るらしく、ここに待機だ。今にもスキップしそうな勢いのサクに、そんなお風呂好きな子だったっけと首を傾げる。
「クラスの後のお風呂なんて最高です」
「……」
「クラスが入った湯船……それだけで聖域ですよ。そこに入れるって事はむしろクラスと一緒にお風呂入ってるのと同義では?」
「……引くな」
「うん」
悦に浸っていたかと思いきや次に顎に手を置き本気で悩み始める。
本人目の前にいるのにやめてほしい。
「いやむしろ全部飲むか……」
「うわ……」
「きんもっ」
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