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2章 変態宰相公爵の、魔女への溺愛ストーカー記録
50話 過保護お姫様抱っこ
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鶏と山羊を外に出しながらサクを見ると職人と話しこんでいた。知り合いなのか。サクも十年経ってお友達ができたのね、よかった。
「器量に乏しいな」
「ああ」
「ドラゴン? フェンリル?」
ついてきた二人がサクを見ながら呆れている。
「クラスが他の男と話すのが嫌なのだろう」
挨拶も軽くしかできなかったし、外へ外へと促すからおかしいなとは思っていたけど、やっぱりサクってば私を急かして庭に出したのね。
「後でもう一度ぐらいお話しできるかな?」
「無理だろう」
「サクが許さない」
妙にきっぱり言ってくる。サクの友達だし悪い人には見えないのに、窯造りのことについて話もできないの? お礼ぐらいはせめて言いたいのに?
「クラス、畑に行こう」
「うん?」
「サクが気にしている」
「そう?」
ちらりと見てもこちらに視線を寄越してない。なにを二人が察したのか分からないけど、ドラゴンとフェンリルを連れて畑に向かった。
「そろそろ水汲みに行かないとね」
「そうだな」
畑仕事を終えてすぐ近くにある川で野菜の土をとった。ついでなので水を汲もうか。結構ためてたけどサクがきて二人分の生活になったら使う量が増えたし残量もそろそろ厳しい。
ドラゴンが川の水を操れば家の前に簡単に用意できるけど、それはどうかということである程度は自分で汲んで持ってきている。半分はドラゴンに頼っているからどうなのかって話だけど気持ちの問題でね。
「まだ冷たいね」
「春は仕方ない」
折角のなので足を踏み入れてみた。浅いから踝ぐらいまでしか浸からない。冷たさに少し震えた。
「気持ちいい」
「水浴びには早いな」
「そうだね」
お昼には戻らないとなと思いつつ、もう少し冷たさ味わってからにしようと和んでいると切羽詰まった声が響いた。
「クラス!」
「え? なに?」
すごい慌てた様子でこちらに走ってくる。なにがあったの。
「危ないです!」
ざばざばっと川に入ってきた。
いやここ浅いし危ない生き物もいないし、向こう岸まで十歩以内で届くとこだよ?
「何をしてたんですか」
「水汲もうかと思って」
「……ん?」
笑顔のまま固まった。
「そろそろ少なくなってきたから」
「……」
そのまま数秒無言の後、急に浮遊感がやってくる。
「?!」
「駄目です、危険ですから」
「え?」
抱えあげられていた。膝裏と肩にサクの腕が回っている。がっちり掴まれて動けない。そのまま岸に上がった。
「おろして」
「嫌です」
川に入っただけでどうして抱っこされてるんだろう? 数センチでも溺れるとか聞いたこともあるけど、私はそんな風に見えてるの。
「私、子供じゃないんだから転んだりしないよ」
「僕が心配だっただけです」
会話する気あまりないわね。妙にきっぱりと言い切る。
「水汲まないと」
「僕がやっておきます」
サクが想像するほど大変な思いはしていない。ドラゴンとフェンリルがいる限りは問題ない事をサクだって分かっているはずだ。
「もう十年同じことしてるのに?」
「聞きません。僕がやります」
いつも通りなのに少し苛立ちが見えた。珍しい。
見上げると眉間に皺寄せ不快感を顕にしたサクががいた。おかしいとは思っていたと囁く。
「水路引いてねえのかよ」
囁いた言葉遣い、不機嫌でつんとした態度は十年前よく見た姿だった。
「サク」
前を見据えていたサクがこちらを覗く。いつもと同じ笑顔に戻っていた。
「クラス。すみませんが明日は朝食を食べてすぐ仕事に出なければならなくて」
畑仕事と家畜の世話をとお願いされて黙って頷く。すっかりいつも通りの笑顔のサクだ。
懐かしい気持ちと私の知るサクが見えて嬉しくなったのにすぐにいなくなってしまった。期待に心が跳ねたのに今は残念だとしょんぼりしている。初めて味わう心境だった。
「器量に乏しいな」
「ああ」
「ドラゴン? フェンリル?」
ついてきた二人がサクを見ながら呆れている。
「クラスが他の男と話すのが嫌なのだろう」
挨拶も軽くしかできなかったし、外へ外へと促すからおかしいなとは思っていたけど、やっぱりサクってば私を急かして庭に出したのね。
「後でもう一度ぐらいお話しできるかな?」
「無理だろう」
「サクが許さない」
妙にきっぱり言ってくる。サクの友達だし悪い人には見えないのに、窯造りのことについて話もできないの? お礼ぐらいはせめて言いたいのに?
「クラス、畑に行こう」
「うん?」
「サクが気にしている」
「そう?」
ちらりと見てもこちらに視線を寄越してない。なにを二人が察したのか分からないけど、ドラゴンとフェンリルを連れて畑に向かった。
「そろそろ水汲みに行かないとね」
「そうだな」
畑仕事を終えてすぐ近くにある川で野菜の土をとった。ついでなので水を汲もうか。結構ためてたけどサクがきて二人分の生活になったら使う量が増えたし残量もそろそろ厳しい。
ドラゴンが川の水を操れば家の前に簡単に用意できるけど、それはどうかということである程度は自分で汲んで持ってきている。半分はドラゴンに頼っているからどうなのかって話だけど気持ちの問題でね。
「まだ冷たいね」
「春は仕方ない」
折角のなので足を踏み入れてみた。浅いから踝ぐらいまでしか浸からない。冷たさに少し震えた。
「気持ちいい」
「水浴びには早いな」
「そうだね」
お昼には戻らないとなと思いつつ、もう少し冷たさ味わってからにしようと和んでいると切羽詰まった声が響いた。
「クラス!」
「え? なに?」
すごい慌てた様子でこちらに走ってくる。なにがあったの。
「危ないです!」
ざばざばっと川に入ってきた。
いやここ浅いし危ない生き物もいないし、向こう岸まで十歩以内で届くとこだよ?
「何をしてたんですか」
「水汲もうかと思って」
「……ん?」
笑顔のまま固まった。
「そろそろ少なくなってきたから」
「……」
そのまま数秒無言の後、急に浮遊感がやってくる。
「?!」
「駄目です、危険ですから」
「え?」
抱えあげられていた。膝裏と肩にサクの腕が回っている。がっちり掴まれて動けない。そのまま岸に上がった。
「おろして」
「嫌です」
川に入っただけでどうして抱っこされてるんだろう? 数センチでも溺れるとか聞いたこともあるけど、私はそんな風に見えてるの。
「私、子供じゃないんだから転んだりしないよ」
「僕が心配だっただけです」
会話する気あまりないわね。妙にきっぱりと言い切る。
「水汲まないと」
「僕がやっておきます」
サクが想像するほど大変な思いはしていない。ドラゴンとフェンリルがいる限りは問題ない事をサクだって分かっているはずだ。
「もう十年同じことしてるのに?」
「聞きません。僕がやります」
いつも通りなのに少し苛立ちが見えた。珍しい。
見上げると眉間に皺寄せ不快感を顕にしたサクががいた。おかしいとは思っていたと囁く。
「水路引いてねえのかよ」
囁いた言葉遣い、不機嫌でつんとした態度は十年前よく見た姿だった。
「サク」
前を見据えていたサクがこちらを覗く。いつもと同じ笑顔に戻っていた。
「クラス。すみませんが明日は朝食を食べてすぐ仕事に出なければならなくて」
畑仕事と家畜の世話をとお願いされて黙って頷く。すっかりいつも通りの笑顔のサクだ。
懐かしい気持ちと私の知るサクが見えて嬉しくなったのにすぐにいなくなってしまった。期待に心が跳ねたのに今は残念だとしょんぼりしている。初めて味わう心境だった。
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