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2章 変態宰相公爵の、魔女への溺愛ストーカー記録
49話 パン焼き窯増設
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朝起きたら家の風景が違った。
「……え?」
「おはようございます」
朝から爽やかに笑い、私とリビングの間に入ってくる。サクの隙間から大きな窓際、簡易なウッドデッキ側の角の壁に穴が開いていた。そこに積まれ始めていたのは煉瓦だ。
「着替えて顔を洗ってきて下さい」
「え、でもこれ」
「後で説明しますので」
ぐいぐい押されて戻される。
ドラゴンとフェンリルを連れて洗顔から始めた。
「他人にクラスの寝起きを見られたくなかったというやつだな」
「他人? 誰か人来てるの?」
「行けば分かるさ」
他人と聞いたので念の為フードつきのローブを羽織って向かう。寝起きと同じで穴があいた壁と積まれ準備された煉瓦があった。
「朝御飯は出来てますよ」
サクが来て月の半分は経っただろうか。朝の具合は三日に一度一緒に起きる程度で大体サクが起こしに来てくれる。たまに一人で起きてサクのいたところに触れると温もりが残っているから起きる時間は似たようなものなのだろう。
というよりも週三と言いつつ毎日同じベッドで寝てることが問題だと思う。寝れない辛い言われるとどうも断れないからなあ。足元見られてる気がする。
「いただきます」
「はい、いただきます」
するとサクがすぐに席を立ち玄関の扉を開ける。そして男の人と話をして戻ってきた。私が知る声ではない。
「誰? あれと関係あるの?」
「はい」
食べながらですみませんと添えてからサクは笑顔で伝える。
「窯を作る事にしました」
「……はい?」
「時間がかかってしまって申し訳ありません。やっと職人と資材に都合つきまして」
「え? 待って、どういうこと?」
パン焼き窯です、とサクは言った。
「なんで?」
「出来立てがいいでしょう?」
これから毎日焼きますねと意気揚々としている。
「え、でも」
「ピザも焼けますし、パイ包みもいけますよ。楽しみにしてて下さい」
「ぴ、ぴざ……」
あつあつのピザ、チーズたっぷりで食べたい、じゃない、だめだめ。ぐらりと食欲がのしあがってくるのを制した。だめだ、話はまだついてない。
「お金、払えないよ」
職人さんを出張で呼び寄せて釜を作るとなると結構なお金が必要だ。けど私には最低限のお金しかない。公国時代の少しのお金と騎士たちの治癒をした時のお給金ぐらいだ。正直日々の食費で使っていて節約しているというのに。
「大丈夫です。僕が払います」
「やっぱり」
そうだと思った。サクのことだからそういうの全部私持ちにしないで勝手に払う気だ。サクが来てから一度も食費出してないのも笑って誤魔化されているから、これ以上はだめだ。
「それは私が払わないとでしょ」
「いいえ、僕が料理の幅を広げたくてやっている事なので僕の勝手です」
それにこの家はクラスの所有物ではありませんときっぱり言われた。
そうだ。形としてここはウニバーシタスの収容所扱いで、元公国の領地といえど所有権はウニバーシタスにある。
「サクにだって、ここをどうする権利ないはずでしょ」
「なので正式な手続きしてきました」
一枚の紙を出される。皇帝のサイン入りでサクがここの所有権を得た書類だった。
「うそ」
「違法にしない為です」
二週間程度でできるの? 強行すぎない?
「情熱の使い方を間違っているな」
「仕事が出来てもこれではな」
ドラゴンとフェンリルが呆れていた。
「窯作りにはどうしても二日かかってしまうんですが、そこだけは許してください」
「職人さん泊まるの?」
「いいえ帰らせます」
本当は人いれたくなかったんですが仕方ありませんと眉を少し寄せる。
「でもクラスはいつも通り寛いでて下さい」
「畑のこととかはやるよ?」
「いいえ、僕が」
「窯造りの立ち会い必要じゃないの?」
ぴしっとサクがかたまる。
「サクが畑行っちゃうと、私、知らない男の人と二人きりに」
「それは駄目です!」
必死だなとドラゴンがぼやいた。
「なら外出るのは私でいいよね?」
「………はい」
ぐぐぐと唸って了承した。サクと二人きりなのはなにも言わないのに、職人さんと二人きりは駄目なのがよく分からない。けど農作業と家畜の世話がゲットできたのでよしだ。久しぶりに端から端まで畑にいられるのが嬉しい。サクが来てからは一緒に外出れても出ただけでほとんどサクがやってたから。
「危ない事はしないで下さい」
「分かってるって」
「何かあったらすぐ呼んで下さい」
「分かった」
「重いものも持たなくていいです。後で僕がやるんで」
「もう……」
玄関先でサクの猛攻にあたりながらもなんとか外に出られた。
職人はすでに外で作業していて挨拶すると軽く会釈される。
「愛想ないんですよ」
「知り合いなの?」
「ええまあ。クラス気を付けて」
「うん」
「……え?」
「おはようございます」
朝から爽やかに笑い、私とリビングの間に入ってくる。サクの隙間から大きな窓際、簡易なウッドデッキ側の角の壁に穴が開いていた。そこに積まれ始めていたのは煉瓦だ。
「着替えて顔を洗ってきて下さい」
「え、でもこれ」
「後で説明しますので」
ぐいぐい押されて戻される。
ドラゴンとフェンリルを連れて洗顔から始めた。
「他人にクラスの寝起きを見られたくなかったというやつだな」
「他人? 誰か人来てるの?」
「行けば分かるさ」
他人と聞いたので念の為フードつきのローブを羽織って向かう。寝起きと同じで穴があいた壁と積まれ準備された煉瓦があった。
「朝御飯は出来てますよ」
サクが来て月の半分は経っただろうか。朝の具合は三日に一度一緒に起きる程度で大体サクが起こしに来てくれる。たまに一人で起きてサクのいたところに触れると温もりが残っているから起きる時間は似たようなものなのだろう。
というよりも週三と言いつつ毎日同じベッドで寝てることが問題だと思う。寝れない辛い言われるとどうも断れないからなあ。足元見られてる気がする。
「いただきます」
「はい、いただきます」
するとサクがすぐに席を立ち玄関の扉を開ける。そして男の人と話をして戻ってきた。私が知る声ではない。
「誰? あれと関係あるの?」
「はい」
食べながらですみませんと添えてからサクは笑顔で伝える。
「窯を作る事にしました」
「……はい?」
「時間がかかってしまって申し訳ありません。やっと職人と資材に都合つきまして」
「え? 待って、どういうこと?」
パン焼き窯です、とサクは言った。
「なんで?」
「出来立てがいいでしょう?」
これから毎日焼きますねと意気揚々としている。
「え、でも」
「ピザも焼けますし、パイ包みもいけますよ。楽しみにしてて下さい」
「ぴ、ぴざ……」
あつあつのピザ、チーズたっぷりで食べたい、じゃない、だめだめ。ぐらりと食欲がのしあがってくるのを制した。だめだ、話はまだついてない。
「お金、払えないよ」
職人さんを出張で呼び寄せて釜を作るとなると結構なお金が必要だ。けど私には最低限のお金しかない。公国時代の少しのお金と騎士たちの治癒をした時のお給金ぐらいだ。正直日々の食費で使っていて節約しているというのに。
「大丈夫です。僕が払います」
「やっぱり」
そうだと思った。サクのことだからそういうの全部私持ちにしないで勝手に払う気だ。サクが来てから一度も食費出してないのも笑って誤魔化されているから、これ以上はだめだ。
「それは私が払わないとでしょ」
「いいえ、僕が料理の幅を広げたくてやっている事なので僕の勝手です」
それにこの家はクラスの所有物ではありませんときっぱり言われた。
そうだ。形としてここはウニバーシタスの収容所扱いで、元公国の領地といえど所有権はウニバーシタスにある。
「サクにだって、ここをどうする権利ないはずでしょ」
「なので正式な手続きしてきました」
一枚の紙を出される。皇帝のサイン入りでサクがここの所有権を得た書類だった。
「うそ」
「違法にしない為です」
二週間程度でできるの? 強行すぎない?
「情熱の使い方を間違っているな」
「仕事が出来てもこれではな」
ドラゴンとフェンリルが呆れていた。
「窯作りにはどうしても二日かかってしまうんですが、そこだけは許してください」
「職人さん泊まるの?」
「いいえ帰らせます」
本当は人いれたくなかったんですが仕方ありませんと眉を少し寄せる。
「でもクラスはいつも通り寛いでて下さい」
「畑のこととかはやるよ?」
「いいえ、僕が」
「窯造りの立ち会い必要じゃないの?」
ぴしっとサクがかたまる。
「サクが畑行っちゃうと、私、知らない男の人と二人きりに」
「それは駄目です!」
必死だなとドラゴンがぼやいた。
「なら外出るのは私でいいよね?」
「………はい」
ぐぐぐと唸って了承した。サクと二人きりなのはなにも言わないのに、職人さんと二人きりは駄目なのがよく分からない。けど農作業と家畜の世話がゲットできたのでよしだ。久しぶりに端から端まで畑にいられるのが嬉しい。サクが来てからは一緒に外出れても出ただけでほとんどサクがやってたから。
「危ない事はしないで下さい」
「分かってるって」
「何かあったらすぐ呼んで下さい」
「分かった」
「重いものも持たなくていいです。後で僕がやるんで」
「もう……」
玄関先でサクの猛攻にあたりながらもなんとか外に出られた。
職人はすでに外で作業していて挨拶すると軽く会釈される。
「愛想ないんですよ」
「知り合いなの?」
「ええまあ。クラス気を付けて」
「うん」
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