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2章 変態宰相公爵の、魔女への溺愛ストーカー記録
42話 さり気なく語られるざまあ
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「ああ、クラス。気が回らなくてすみません」
野菜持ちますねとサクが戻ってきた。私の足元に散らばる野菜やら農具やらを拾って家に戻ろうとする。途中振り返り、どうぞと言って促された。不審者としてしか見えないサクをジト目で見つつも家に戻る。
「お茶を淹れましょう」
「いいえ、私が」
「身の回りの事は僕がやると言いました」
笑顔の圧力をかけられ、伸ばしてかけた手が止まる。
その間にキッチンに入られ、勝手を知るかのごとくカップやポットを出す。
なぜ食器の位置も茶葉の位置も知っているの?
「把握しているとは」
「中々気持ち悪い」
一緒に様子を窺っていたドラゴンとフェンリルが引き気味だった。一度も来たことないのに怖いよねえ。
「ん?」
サクがこちらに気づく。微笑みながら、手慣れた手つきでお茶を淹れる。
私が好んで飲むのは薬草や花から作るから、普段爵位がある人間が飲むものではない。取り扱いすらできないと思ってたのに、あっさりクリアしてくる。
「なにか気になる事でも?」
「お茶、淹れられるのね」
「クラスが教えてくれましたよ?」
確かに料理からお茶までサクはよく私の手元を見ていたし、実際練習だといって実践もした。彼がサクではないという部分が出てこないな。
とっくにサクだと分かっていても、どこか違う部分があればと探してしまう。結局今みたくサクだと分かって一瞬ほっとしてるあたり矛盾だらけだ。
「十年、なにしてたの?」
「イルミナルクスですぐに宰相の仕事を始めました」
「へえ、すごいね」
「貴族院にも通って学びも。主席キープしましたよ」
「相変わらず頭いいの」
「後はクラスに相応しい人間になる為にまあ色々としましたね」
「そこはどうでもいい」
「えー? ここからがむしろ聞いてほしいです」
「お断りします」
サクがどう過ごしてきたかはユツィたちからは聞かなかった。サクが幸せに暮らしているというのは聞きたいところだったけど、話を聞くと会いたくなりそうで聞けずに終わる。もう会わないと思っていたのに。
「剣の稽古は?」
「続けてましたよ。途中自分より強い騎士がいなくなって困りました。ヴォックスほどの強い騎士はそういないんですね」
「宰相もして勉強もして騎士として鍛錬?」
「ええ」
全部こなしていたの? ウニバーシタス帝国にいた頃ですらおかしいのに、その後からの話もだいぶ盛り盛りだ。フィクションの世界だけだよ、そういうの許されるの。
「なんだろう……出世? おめでとう?」
「ありがとうございます。なのでクラスと結婚しても生活には困りません。仕事も振っているので忙しくて帰れないなんて事もありませんよ」
急にアピールがすごくなった。
「他にはなにかしてたの?」
「貴族院で足りない部分の魔法を一通り学び直し、というところでしょうか。治癒もクラス程じゃありませんが習得しました」
深い治癒はクラスの特権ですね、そこまでは無理でしたと爽やかに言われる。
「公爵位は残しました。ステラモリス公主に釣り合う肩書きの為というところですが」
「はあ」
「家柄も釣り合って稼ぎもある。夫婦の時間もきちんととりますし、クラスの要望も大方叶えることが出来ます。僕自身も怠ることなく頭も身体も鍛えてきましたし、何も問題ないと思います」
安心してくださいと笑う。
違う、論点違うよ。なにが問題ないっていうの。
「結婚はむ」
「ええ、なので一緒に暮らして僕が僕か確かめて下さい」
私の疑念をあっさり見抜いてくる。虹色の輝きを含んだ紫が細められた。
「可愛い」
「え?」
再びサクが鼻血を出した。
大丈夫だろうかという心配よりも、やや引いてしまう。満面の笑みだからだろうなあ。新しいハンカチを出しておさえる姿は手慣れているように見える。
「どうしよう。ちょっと気持ち悪いよ」
「クラスの感覚は正常だ」
「安心しろ」
ドラゴンとフェンリルがフォローしてくれるけど、なにも解決してない。当のサクはにこにこしてるだけだし。
「大丈夫です、割と出やすいんですよ」
「はあ」
お茶ができたのでテーブルに移動した。手元は完璧で、私がサクに教えた通りの薬草茶ができあがる。
「……美味しい」
「よかった」
イルミナルクスでも同じの淹れてたんです、とサクが笑う。
「薬草がイルミナルクスでも手に入るの?」
「いいえ、なかったので栽培する事にしたんです」
ステラモリスの農家に協力も得たという。元々ウニバーシタスに伝のあるサクがウニバーシタス内にあるステラモリスに協力を得て薬草を手に入れるのは簡単なのかもしれない。
「そうそう、シレ達は伝えてなかったと思うんですが」
その切り口でサクが話したのはウニバーシタス帝国の第一皇太子と皇太子妃のことだった。
「元々書類受理をしてなかったので、形としては婚約破棄。妃は後宮に軟禁の上、そこからは出られない措置。皇太子は継承権を一旦皇帝預かりになり、ただの皇子に。帝王学を学ぶ名目で海を渡った連合国を渡り歩く事になりました。その際、徴兵も含まれ諸地域の復興活動にも参加です」
「え?」
待って、どうしてそんな罰を与えられるような形になるの?
私の顔を見て察したサクが首を傾げる。
「僕らが……いえ、クラスが僕の分まで被った罪は元々冤罪ですよ? イルミナルクスに戻ってからすぐに準備して冤罪を晴らしました」
サクならやりそうだ。しかも完膚なきまでやってくれそうね。
「最初の議決が撤回になると奴らの罪の言及が出来なかったので、させずに最速で再審査再議決させました。当然クラスは無罪です」
「ええと、ありがとう?」
前科者ではなくなったってことだから、感謝していいんだよね?
「僕らを罪に陥れた皇太子と皇太子妃は重罰を与えようとしたんですが、皇帝の温情措置で軽く済んだのが悔やむ所です」
なにをする気だったの。笑顔が逆に怖くて聞けない。婚約破棄、継承権剥奪、後宮軟禁に徴兵、結構盛ってるけど?
後、そういうのってリアルタイムで見たい派がいるから簡単に話終わらせていいの?
野菜持ちますねとサクが戻ってきた。私の足元に散らばる野菜やら農具やらを拾って家に戻ろうとする。途中振り返り、どうぞと言って促された。不審者としてしか見えないサクをジト目で見つつも家に戻る。
「お茶を淹れましょう」
「いいえ、私が」
「身の回りの事は僕がやると言いました」
笑顔の圧力をかけられ、伸ばしてかけた手が止まる。
その間にキッチンに入られ、勝手を知るかのごとくカップやポットを出す。
なぜ食器の位置も茶葉の位置も知っているの?
「把握しているとは」
「中々気持ち悪い」
一緒に様子を窺っていたドラゴンとフェンリルが引き気味だった。一度も来たことないのに怖いよねえ。
「ん?」
サクがこちらに気づく。微笑みながら、手慣れた手つきでお茶を淹れる。
私が好んで飲むのは薬草や花から作るから、普段爵位がある人間が飲むものではない。取り扱いすらできないと思ってたのに、あっさりクリアしてくる。
「なにか気になる事でも?」
「お茶、淹れられるのね」
「クラスが教えてくれましたよ?」
確かに料理からお茶までサクはよく私の手元を見ていたし、実際練習だといって実践もした。彼がサクではないという部分が出てこないな。
とっくにサクだと分かっていても、どこか違う部分があればと探してしまう。結局今みたくサクだと分かって一瞬ほっとしてるあたり矛盾だらけだ。
「十年、なにしてたの?」
「イルミナルクスですぐに宰相の仕事を始めました」
「へえ、すごいね」
「貴族院にも通って学びも。主席キープしましたよ」
「相変わらず頭いいの」
「後はクラスに相応しい人間になる為にまあ色々としましたね」
「そこはどうでもいい」
「えー? ここからがむしろ聞いてほしいです」
「お断りします」
サクがどう過ごしてきたかはユツィたちからは聞かなかった。サクが幸せに暮らしているというのは聞きたいところだったけど、話を聞くと会いたくなりそうで聞けずに終わる。もう会わないと思っていたのに。
「剣の稽古は?」
「続けてましたよ。途中自分より強い騎士がいなくなって困りました。ヴォックスほどの強い騎士はそういないんですね」
「宰相もして勉強もして騎士として鍛錬?」
「ええ」
全部こなしていたの? ウニバーシタス帝国にいた頃ですらおかしいのに、その後からの話もだいぶ盛り盛りだ。フィクションの世界だけだよ、そういうの許されるの。
「なんだろう……出世? おめでとう?」
「ありがとうございます。なのでクラスと結婚しても生活には困りません。仕事も振っているので忙しくて帰れないなんて事もありませんよ」
急にアピールがすごくなった。
「他にはなにかしてたの?」
「貴族院で足りない部分の魔法を一通り学び直し、というところでしょうか。治癒もクラス程じゃありませんが習得しました」
深い治癒はクラスの特権ですね、そこまでは無理でしたと爽やかに言われる。
「公爵位は残しました。ステラモリス公主に釣り合う肩書きの為というところですが」
「はあ」
「家柄も釣り合って稼ぎもある。夫婦の時間もきちんととりますし、クラスの要望も大方叶えることが出来ます。僕自身も怠ることなく頭も身体も鍛えてきましたし、何も問題ないと思います」
安心してくださいと笑う。
違う、論点違うよ。なにが問題ないっていうの。
「結婚はむ」
「ええ、なので一緒に暮らして僕が僕か確かめて下さい」
私の疑念をあっさり見抜いてくる。虹色の輝きを含んだ紫が細められた。
「可愛い」
「え?」
再びサクが鼻血を出した。
大丈夫だろうかという心配よりも、やや引いてしまう。満面の笑みだからだろうなあ。新しいハンカチを出しておさえる姿は手慣れているように見える。
「どうしよう。ちょっと気持ち悪いよ」
「クラスの感覚は正常だ」
「安心しろ」
ドラゴンとフェンリルがフォローしてくれるけど、なにも解決してない。当のサクはにこにこしてるだけだし。
「大丈夫です、割と出やすいんですよ」
「はあ」
お茶ができたのでテーブルに移動した。手元は完璧で、私がサクに教えた通りの薬草茶ができあがる。
「……美味しい」
「よかった」
イルミナルクスでも同じの淹れてたんです、とサクが笑う。
「薬草がイルミナルクスでも手に入るの?」
「いいえ、なかったので栽培する事にしたんです」
ステラモリスの農家に協力も得たという。元々ウニバーシタスに伝のあるサクがウニバーシタス内にあるステラモリスに協力を得て薬草を手に入れるのは簡単なのかもしれない。
「そうそう、シレ達は伝えてなかったと思うんですが」
その切り口でサクが話したのはウニバーシタス帝国の第一皇太子と皇太子妃のことだった。
「元々書類受理をしてなかったので、形としては婚約破棄。妃は後宮に軟禁の上、そこからは出られない措置。皇太子は継承権を一旦皇帝預かりになり、ただの皇子に。帝王学を学ぶ名目で海を渡った連合国を渡り歩く事になりました。その際、徴兵も含まれ諸地域の復興活動にも参加です」
「え?」
待って、どうしてそんな罰を与えられるような形になるの?
私の顔を見て察したサクが首を傾げる。
「僕らが……いえ、クラスが僕の分まで被った罪は元々冤罪ですよ? イルミナルクスに戻ってからすぐに準備して冤罪を晴らしました」
サクならやりそうだ。しかも完膚なきまでやってくれそうね。
「最初の議決が撤回になると奴らの罪の言及が出来なかったので、させずに最速で再審査再議決させました。当然クラスは無罪です」
「ええと、ありがとう?」
前科者ではなくなったってことだから、感謝していいんだよね?
「僕らを罪に陥れた皇太子と皇太子妃は重罰を与えようとしたんですが、皇帝の温情措置で軽く済んだのが悔やむ所です」
なにをする気だったの。笑顔が逆に怖くて聞けない。婚約破棄、継承権剥奪、後宮軟禁に徴兵、結構盛ってるけど?
後、そういうのってリアルタイムで見たい派がいるから簡単に話終わらせていいの?
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