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2章 変態宰相公爵の、魔女への溺愛ストーカー記録
38話 十年後(二章1話)
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「クラス、目が覚めたか」
「ん、おはよう。ドラゴン、フェンリル」
「ああ、お早う」
「お早う」
同じベッドでは寝ないけど、近くで寝てくれるドラゴンとフェンリルは今ではあまり信じられていない魔物だ。
私が十年前にウニバーシタス帝国に追放刑になった時に城から付いてきてくれた。二人は予定と違うことが起きたからウニバーシタス帝国、ポステーロス城に来たと言っていたから、てっきり城に残るものだと思っていたけど離れても大丈夫らしい。
曰く、私の側にいると目的のなにかが良い方向に動くとか。詳しいことは教えてもらえないけど、特段気にしていない。いつか話してくれると言うし、彼らがいてくれて淋しくないから今のままでも充分だ。
「秋になったら十年達成かあ」
ウニバーシタス帝国の武力介入の末に失われた私の国、ステラモリス公国の南端、元医療拠点だったこの場所に追放という形になったのが十年前。国外追放でもなく、議決された死刑でもない。皇帝の計らいで国内に罪人の流される地を設けて、私が第一号という形でここに来た。これが公になっている措置だ。
「来年の春か」
朝御飯を皆で食べながら期限を鑑みる。
十年前のここに来た日、第一皇太子妃フィクタに呪いをかけられた。私の移送に神経を使い安全に届けてくれた第二皇子ヴォックスと当時の婚約者ユースティーツィア、第三皇子シレの手厚い防御を潜り抜け遠隔で呪いをかけられる。
丸十年を過ごした後のウニバーシタス帝国建国日に死ぬ呪いだった。呪いをかけられた時に見えた魔法陣に描かれた日付が示していたから間違いない。
常日頃、私を痛め付けて楽しんでいた私を最初殺そうとしたらしいのだけど、即時死をもたらす呪いは跳ね返された。それを不服とし、次に時限式に死の呪いをかけ、それが成功する。
「クラス、呪いは我々が消したと言っているだろう」
「うん、あの時はありがとう」
跳ね返されたのはドラゴンとフェンリルがその力で消したからということだった。
ただ私の中で時限式の呪いは消えずに生きている気がする。感覚だから分からないけど、城にいた時も痛みを伴う呪いは消えなかった。それと同じ感覚があるということは、時限式の呪いは健在ということだ。
「ドラゴン」
「ああ、そうだなフェンリル」
最初こそは熱心に言い聞かせてくれていた二人も最近はあまり深く言わない。それは我々の役目ではないというのが本人たちの主張だ。
「今日は誰も来ない日だっけ」
「そうだな」
ヴォックス、ユツィ、シレはこの十年、定期的にここにきてくれるから城にいた時と変わらない。むしろ第一皇太子と皇太子妃がいないから、過ごしやすさが圧倒的によくなった。追放されてよかったかもなんて思ってしまう。
「じゃあ山羊と鶏を外に放して畑に行こう」
「いつも通りだな?」
「そうだね」
そう言いながら笑いあえる。充分すぎる幸せな日々を手に入れたんじゃないかと思った。食べ物はユツィたちが運んでくれるものに加えてなるたけ自分でまかなっている。
「ユースティーツィアも子供が小さく子育てが大変なのに元気なものだな」
「そうだね」
ヴォックスとユツィは無事結婚して爵位を得た。そこからこの十年で子供三人に恵まれている。
身支度をして外に出た。まずは家畜の放牧、三羽の鶏は近くを散歩しては自分で小屋に戻ってくれるし、ヤギは家回りの雑草とりをしてくれる。
「ヴォックスも張り切ってるし」
「あの男も随分変わったな」
ヴォックスは子煩悩で三人の子供をすごく可愛がっている。二人は相変わらず帝国騎士団の団長と副団長をしているけど、今では帝国民憧れの夫婦で憧れの家庭だ。
「ヴォックスやシレのおかげでこの辺りも変なの来ないし」
ここに流刑になった際、シレが魔法で結界を張ってくれた挙げ句、ヴォックスの騎士としての手腕で周辺の野盗を捕らえてくれたおかげで人を寄せ付けない場所になった。元々収容所という意味合いを持つなら一般人が近づくわけにもいかない。箝口令に人払いを済ませたここは本当に人気がなく静かだ。
「変なものが来ても我々が退かせるさ」
「そうだね。いつもありがとう」
事実、野盗らしき人が現れた時にドラゴンとフェンリルが追っ払ってくれた。私の安全は常に色んな人の手によって守られている。ありがたい話だ。
「キャベツとアスパラがいい感じね」
「春だからな」
今日はちょうど十年前にサクと出会った日だ。
「元気かなあ」
「サクか」
「えー?」
「サクだな」
イルミナルクスに無事戻り、そこで宰相をしていると聞いたぐらい。あの頃は六歳で小さくて可愛い子だった。今はどんな風に成長したのだろう。
「!」
フェンリルの耳がぴくりと動いて家の方に顔を向けた。
「フェンリル? どうかした?」
「……いや」
なにか異変があれば伝えてくれるし、ユツィみたいに訪問者があれば伝えてくれる。それほど神経巡らせて結界内への侵入を気にかけてくれていた。天気予報から護衛までなんでもこなしてくれる有能な二人がなぜ私の側にいてくれるのか。私の生存が予定の調和に結びつくにしても、日々奉仕されすぎてる気がする。つい甘えてしまうんだけどね。
「よし、戻ろうか」
「ああ」
ここでも変わらずフェンリルは犬のサイズでドラゴンは肩に乗れるサイズでいる。結局あの三人には見えなかったな。ここに来て見えないようにしたドラゴンに対峙してもらったけど王族である三人には見えなかった。
「今日はロールキャベツかなあ」
「いいな」
「ロールキャベツはとても美味しい」
「クラスの作るものは特別な」
「ふふふ、ありがと」
褒めてもなにもでないよーと言いつつ気分はいい。山羊と鶏が小屋に戻っているのを確認し鍵をかけ、野菜を抱えて家に戻った。
「ん?」
家の前に人がいた。
「ん、おはよう。ドラゴン、フェンリル」
「ああ、お早う」
「お早う」
同じベッドでは寝ないけど、近くで寝てくれるドラゴンとフェンリルは今ではあまり信じられていない魔物だ。
私が十年前にウニバーシタス帝国に追放刑になった時に城から付いてきてくれた。二人は予定と違うことが起きたからウニバーシタス帝国、ポステーロス城に来たと言っていたから、てっきり城に残るものだと思っていたけど離れても大丈夫らしい。
曰く、私の側にいると目的のなにかが良い方向に動くとか。詳しいことは教えてもらえないけど、特段気にしていない。いつか話してくれると言うし、彼らがいてくれて淋しくないから今のままでも充分だ。
「秋になったら十年達成かあ」
ウニバーシタス帝国の武力介入の末に失われた私の国、ステラモリス公国の南端、元医療拠点だったこの場所に追放という形になったのが十年前。国外追放でもなく、議決された死刑でもない。皇帝の計らいで国内に罪人の流される地を設けて、私が第一号という形でここに来た。これが公になっている措置だ。
「来年の春か」
朝御飯を皆で食べながら期限を鑑みる。
十年前のここに来た日、第一皇太子妃フィクタに呪いをかけられた。私の移送に神経を使い安全に届けてくれた第二皇子ヴォックスと当時の婚約者ユースティーツィア、第三皇子シレの手厚い防御を潜り抜け遠隔で呪いをかけられる。
丸十年を過ごした後のウニバーシタス帝国建国日に死ぬ呪いだった。呪いをかけられた時に見えた魔法陣に描かれた日付が示していたから間違いない。
常日頃、私を痛め付けて楽しんでいた私を最初殺そうとしたらしいのだけど、即時死をもたらす呪いは跳ね返された。それを不服とし、次に時限式に死の呪いをかけ、それが成功する。
「クラス、呪いは我々が消したと言っているだろう」
「うん、あの時はありがとう」
跳ね返されたのはドラゴンとフェンリルがその力で消したからということだった。
ただ私の中で時限式の呪いは消えずに生きている気がする。感覚だから分からないけど、城にいた時も痛みを伴う呪いは消えなかった。それと同じ感覚があるということは、時限式の呪いは健在ということだ。
「ドラゴン」
「ああ、そうだなフェンリル」
最初こそは熱心に言い聞かせてくれていた二人も最近はあまり深く言わない。それは我々の役目ではないというのが本人たちの主張だ。
「今日は誰も来ない日だっけ」
「そうだな」
ヴォックス、ユツィ、シレはこの十年、定期的にここにきてくれるから城にいた時と変わらない。むしろ第一皇太子と皇太子妃がいないから、過ごしやすさが圧倒的によくなった。追放されてよかったかもなんて思ってしまう。
「じゃあ山羊と鶏を外に放して畑に行こう」
「いつも通りだな?」
「そうだね」
そう言いながら笑いあえる。充分すぎる幸せな日々を手に入れたんじゃないかと思った。食べ物はユツィたちが運んでくれるものに加えてなるたけ自分でまかなっている。
「ユースティーツィアも子供が小さく子育てが大変なのに元気なものだな」
「そうだね」
ヴォックスとユツィは無事結婚して爵位を得た。そこからこの十年で子供三人に恵まれている。
身支度をして外に出た。まずは家畜の放牧、三羽の鶏は近くを散歩しては自分で小屋に戻ってくれるし、ヤギは家回りの雑草とりをしてくれる。
「ヴォックスも張り切ってるし」
「あの男も随分変わったな」
ヴォックスは子煩悩で三人の子供をすごく可愛がっている。二人は相変わらず帝国騎士団の団長と副団長をしているけど、今では帝国民憧れの夫婦で憧れの家庭だ。
「ヴォックスやシレのおかげでこの辺りも変なの来ないし」
ここに流刑になった際、シレが魔法で結界を張ってくれた挙げ句、ヴォックスの騎士としての手腕で周辺の野盗を捕らえてくれたおかげで人を寄せ付けない場所になった。元々収容所という意味合いを持つなら一般人が近づくわけにもいかない。箝口令に人払いを済ませたここは本当に人気がなく静かだ。
「変なものが来ても我々が退かせるさ」
「そうだね。いつもありがとう」
事実、野盗らしき人が現れた時にドラゴンとフェンリルが追っ払ってくれた。私の安全は常に色んな人の手によって守られている。ありがたい話だ。
「キャベツとアスパラがいい感じね」
「春だからな」
今日はちょうど十年前にサクと出会った日だ。
「元気かなあ」
「サクか」
「えー?」
「サクだな」
イルミナルクスに無事戻り、そこで宰相をしていると聞いたぐらい。あの頃は六歳で小さくて可愛い子だった。今はどんな風に成長したのだろう。
「!」
フェンリルの耳がぴくりと動いて家の方に顔を向けた。
「フェンリル? どうかした?」
「……いや」
なにか異変があれば伝えてくれるし、ユツィみたいに訪問者があれば伝えてくれる。それほど神経巡らせて結界内への侵入を気にかけてくれていた。天気予報から護衛までなんでもこなしてくれる有能な二人がなぜ私の側にいてくれるのか。私の生存が予定の調和に結びつくにしても、日々奉仕されすぎてる気がする。つい甘えてしまうんだけどね。
「よし、戻ろうか」
「ああ」
ここでも変わらずフェンリルは犬のサイズでドラゴンは肩に乗れるサイズでいる。結局あの三人には見えなかったな。ここに来て見えないようにしたドラゴンに対峙してもらったけど王族である三人には見えなかった。
「今日はロールキャベツかなあ」
「いいな」
「ロールキャベツはとても美味しい」
「クラスの作るものは特別な」
「ふふふ、ありがと」
褒めてもなにもでないよーと言いつつ気分はいい。山羊と鶏が小屋に戻っているのを確認し鍵をかけ、野菜を抱えて家に戻った。
「ん?」
家の前に人がいた。
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