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1章 新興国のツンデレショタっ子は魔女に懐かない

23話 約束のお菓子作り

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「……」
「こういうのって、こっそりやってサプライズであげるから喜ばれるんじゃないの?」
「……いいから」

 続けろと宣うサクはさっきからずっと私の手元を見ている。
 材料を揃えて融通してくれたので、お菓子作りをすることにした。当然のようにサクがついてくるし、最近料理に興味あるのか一緒に作ったり今回みたく手順をガン見している。

「一日ほとんどサクと一緒な気がする」
「……嫌かよ」
「ううん、楽しいよ」

 そう言うと黙って視線を逸らすのを知っている。ほっぺた赤くなって恥ずかしがってて可愛い。ほんのり口角があがっている気もするし。こういう顔は六歳なんだけどな。

「いっぱいできたら皆に配っていい?」
「……」
「サクには特別仕様で作るし、多めにあげるよ?」
「……」
「一番最初に出来立ても食べれるし」
「……しょうがねえな」

 よし、これでメルやユツィたちの分ができた。食材を融通してもらった以上、ヴォックスやシレにもきちんとお礼しないとね。

「簡単なのだから、すぐできるよ」
「そうか」

 甘さは控えめなカップケーキだ。
 前は捨てられそうなものの中から型になりそうなものを選んだ。今回は型と食材セットできたあたり、作るものを指定されている。前は食材も本来のものとは違う素材を使ったから今回は本当贅沢だ。

「サク、お手伝い頼んでもいい?」
「おう」

 洗い物を二人並んでするのも極自然になった。私はここでの三年があるけど、サクはずっとお坊ちゃんだから慣れないだろうにそつなくこなしている。

「サクの次点は我々だぞ」

 肩に乗るドラゴンが主張する。フェンリルは厨動物厳禁で入り口前でお座りしてこちらをガン見。
 二人とも私の作るお菓子が気になるらしい。いくらこの辺の人たちは見えないとはいえ、声出すと危ないからやめてほしいな。けど普段あれだけ喋らないよう見えないよう配慮してて、今喋ってしまうということは少なからず楽しみにしてくれているということだ。そう思うと強くは言えない。

「サク、美味しいものいっぱい知ってるのに、私の作ったのでいいの?」

 それこそサクは自身の王国では王族の血が入る公爵家の人間で生活には困ってなさそう。ドラゴンやフェンリルだって人間に変身して街に出たり城の中で誤魔化してお菓子を食べることができるはずだ。

「クラスのは特別だからな。サクもそう思うのだろう?」
「……」

 ドラゴンとの会話を敢えて控えてくれているのか、応えたくないことなのか分からない。でもさっき出来立てとか一番に渡すとか言った時はそれに満足してたから、同意の無言としておこう。

「クラス」
「メル?」
「追加確保できる?」
「いいよ」

 ひょっこり現れたメルがちゃっかり予約をとってくる。サクに目配せすると、軽く頷いてオッケーをくれた。念の為ね、不機嫌にならないための。

「ふふ、クラスの一番はサクだから大丈夫よ?」
「違う」
「またまた~」

 じゃよろしくと軽く手を振って走り去る。メルってばまた臨時で仕事増やしたのかな?

「サクできるよ」
「おう」

 出来立てをこの場で食べるというのでお茶も用意済みだ。粗熱をとる為に間隔をおいて配置し、二周目を焼きにかかる間に二人でティータイムをとる。今回はユツィが上等な茶葉をくれたので、それを頂いて贅沢感を割り増しにした。

「うん、美味しくできたね」
「……ん」
「ふふふ」

 黙って一生懸命食べてるサクの顔が美味しいって言ってる。可愛い。
 メルやコックたちの分とユツィたちに渡す分、材料が豊富だからまだ余ってるぐらい焼けた。
 その場でメルたちに渡して、いったん自室に戻ってもう一つサクと一緒に食べた後、残りは借りたバスケットにいれてヴォックスの元へ行った。ちょうどシレもいたから彼の分も渡し、大量の余りは騎士たちへとヴォックスに渡した。

「皆も喜ぶな」
「わあ、嬉しい」
「しかしアチェンディーテ公爵がよく許しましたね?」
「……」

 ユツィったらさらっと言うわね。
 サクの機嫌が悪くなってないからよかった。ここに来るまで厨で一つ、そこから自室で違うのを食べたから満足したのかもしれない。ドラゴンもフェンリルもがつがつしてたし、なんなら自室にもう一つ置いておいたから充分貰えた感があるのかもしれない。

「サク、ついでにこっち」

 シレが書類を掲げてサクを呼んだ。サクが苦い顔をして溜息を吐く。

「またかよ」
「まあまあ」

 男三人で難しい話始めちゃった。
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