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1章 新興国のツンデレショタっ子は魔女に懐かない
19話 建国祭(サク視点)
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「……」
「サク、今日は仕方ないでしょ?」
不服だ。
帝国のイベントだかなんだか知らないが、当然のように皇帝が俺を側に起きたがった。親族でもないのだから、俺がいない方がいいだろうに。妙に気に入られている。一度もあったことのない父親が皇帝に気に入られていたからなのだろうが、俺を代替にするのもいい加減にしてほしい。
「私はドラゴンとフェンリルといるから」
最近はあいてる時間はほぼ一緒にいる。十歳年上の亡公国の魔女と呼ばれる女性だ。劣悪な環境にいるのにへらっと笑ってて、抜けてる所もあってほっとけなくてつい側にいようと思ってしまう。側にいるドラゴンとフェンリルがいれば身の安全としては事足りるんだろうが、自分がどうにかしてやりたいと初めて思えた女性だ。
「……すぐ帰る」
いつまでたっても子供扱いされるのは気に食わないが、好かれているという点では悪い気はしない。自分と同じ好きならいいのにとは日々考えているが、自分にはまだ彼女を守れる力はないし時間をかけて信頼を勝ち得ていく必要がある。剣の腕も、魔法使いとしても、政の知識と実行力も、今の俺には不足が多い。
「……」
護衛のアルトゥムを連れて城の中心部へ進む。
あのドラゴンとフェンリルから妙な言葉を教えてもらうのは興味深いし、あの二人はそれ以上になにかを知っている。長く生きているのもあるだろう。水路の件を相談した時に「時代が早すぎるのでは」と二人その場で話し合った時点で未来に関するなんらかの調整もしているのが分かる。
加えてあの二人は皇太子妃がクラスにかけた死の呪いも解いていた。痛みが伴う呪いはクラス本人が受け入れてしまっているから解けないという。クラスが俺に会うまでの三年間の虐げを受け入れず強く拒否し、生きたいと思う強い意志がないと呪いは解けない。
魔法について時間の合間を見て勉強してもあの呪いは特殊で資料が足りなかった。ドラゴンやフェンリルが教えてくれることには限りがある。あいつら出し惜しみしてるからな。
早くクラスをこんなしょうもない場所から連れ出して自由にさせたかった。こんなところに縛られるなんておかしい。
「サク」
「おう」
「良かった、ちゃんと来たね?」
「……すぐ帰るからな」
苦く笑うこの男は両親のいない俺の後見人だ。こいつとの関係もあるから帝国に呼ばれやすかったのもある。そもそも父親が自国イルミナルクスの叔父を後見人に指名してなかった時点で何かあるとは思っていた。
「ただのイベントに駆り出しやがって」
「いべんと?」
「祭とか祝祭とかそういう事だな」
「ふうん?」
ドラゴンから教えられた言葉をうっかり口にしてしまった。この世界では使われていないと言われていたから取り扱い注意だ。特にシレは頭が回る。気を付けないといけない。
「おら、さっさと行くぞ」
「頼むから大人しくしててね」
俺が大人しくしていなかった事があったのかと問うと、いつも通り苦笑する。少なくとも会議の場でしか発言はしていない。物にあたったこともないし、今日は帝国皇族達の為のイベントだ。本来出番のない俺が文句をつけて騒ぎ立てる動機がない。
「……」
バルコニーから顔を出して帝国民に手を振って挨拶をするだけだ。今代の帝王は支持も厚く、多くの国民が城の前の用意された広場に集まって手を振ったり声援を送ったりしている。
皇子たちも同様だ。思いの外、第二皇子であるヴォックスへの支持が高い。だから継承兼第一位のあの男はヴォックスへの対抗心が強いのか。
シレは元々表に出ないからそこまで声援厚くないが手堅い程度という所で妥当だろう。予想外だったのは第一皇太子妃だった。聖女様と叫ばれている。時折魔法で花びらを散らしたりとパフォーマンスがわざとらしい。というよりも、周囲が魔法だ奇跡だと騒ぐそれは全然違う代物だな。
「サク、ここで言ったらいけないよ」
「……」
笑顔のまま、目線も帝国民に向けたままでシレが窘めてきた。
バルコニーから大声で叫ばない限り国民に聞こえるはずもないが、公の場である以上リスクはある。普段なよなよしてるくせに、こういうところは鋭いし先の事をよく考えていると思う。まあ褒めたりしてやらないが。
「シレも分かっているのか」
「まあね」
シレは魔法を使える人間としても優秀だと聞いた。だからこそ違いが分かるのか。
あの女の使う奇跡は魔法のようだが、魔術と言っていいだろう。紛いものが民を騙している事をよしとするのか? 皇帝は魔法を扱えない人間だから気づいていない可能性が高い。
「今まで何もしてなかったのか」
「それはこっちの事情もあってね」
今度話すから今は許して、とお互い視線を合わせず、口も動かさず囁き合う。こういう事をしていると、皇族貴族の薄汚い政の世界の側の人間だなと自分に辟易する。
「まあいいさ」
今日のイベントは建国祭だ。王都内も活気づいて経済も潤う。無粋な事は表向きやらない方がいいだろう。
「接触はするけどな」
「サク、今日は仕方ないでしょ?」
不服だ。
帝国のイベントだかなんだか知らないが、当然のように皇帝が俺を側に起きたがった。親族でもないのだから、俺がいない方がいいだろうに。妙に気に入られている。一度もあったことのない父親が皇帝に気に入られていたからなのだろうが、俺を代替にするのもいい加減にしてほしい。
「私はドラゴンとフェンリルといるから」
最近はあいてる時間はほぼ一緒にいる。十歳年上の亡公国の魔女と呼ばれる女性だ。劣悪な環境にいるのにへらっと笑ってて、抜けてる所もあってほっとけなくてつい側にいようと思ってしまう。側にいるドラゴンとフェンリルがいれば身の安全としては事足りるんだろうが、自分がどうにかしてやりたいと初めて思えた女性だ。
「……すぐ帰る」
いつまでたっても子供扱いされるのは気に食わないが、好かれているという点では悪い気はしない。自分と同じ好きならいいのにとは日々考えているが、自分にはまだ彼女を守れる力はないし時間をかけて信頼を勝ち得ていく必要がある。剣の腕も、魔法使いとしても、政の知識と実行力も、今の俺には不足が多い。
「……」
護衛のアルトゥムを連れて城の中心部へ進む。
あのドラゴンとフェンリルから妙な言葉を教えてもらうのは興味深いし、あの二人はそれ以上になにかを知っている。長く生きているのもあるだろう。水路の件を相談した時に「時代が早すぎるのでは」と二人その場で話し合った時点で未来に関するなんらかの調整もしているのが分かる。
加えてあの二人は皇太子妃がクラスにかけた死の呪いも解いていた。痛みが伴う呪いはクラス本人が受け入れてしまっているから解けないという。クラスが俺に会うまでの三年間の虐げを受け入れず強く拒否し、生きたいと思う強い意志がないと呪いは解けない。
魔法について時間の合間を見て勉強してもあの呪いは特殊で資料が足りなかった。ドラゴンやフェンリルが教えてくれることには限りがある。あいつら出し惜しみしてるからな。
早くクラスをこんなしょうもない場所から連れ出して自由にさせたかった。こんなところに縛られるなんておかしい。
「サク」
「おう」
「良かった、ちゃんと来たね?」
「……すぐ帰るからな」
苦く笑うこの男は両親のいない俺の後見人だ。こいつとの関係もあるから帝国に呼ばれやすかったのもある。そもそも父親が自国イルミナルクスの叔父を後見人に指名してなかった時点で何かあるとは思っていた。
「ただのイベントに駆り出しやがって」
「いべんと?」
「祭とか祝祭とかそういう事だな」
「ふうん?」
ドラゴンから教えられた言葉をうっかり口にしてしまった。この世界では使われていないと言われていたから取り扱い注意だ。特にシレは頭が回る。気を付けないといけない。
「おら、さっさと行くぞ」
「頼むから大人しくしててね」
俺が大人しくしていなかった事があったのかと問うと、いつも通り苦笑する。少なくとも会議の場でしか発言はしていない。物にあたったこともないし、今日は帝国皇族達の為のイベントだ。本来出番のない俺が文句をつけて騒ぎ立てる動機がない。
「……」
バルコニーから顔を出して帝国民に手を振って挨拶をするだけだ。今代の帝王は支持も厚く、多くの国民が城の前の用意された広場に集まって手を振ったり声援を送ったりしている。
皇子たちも同様だ。思いの外、第二皇子であるヴォックスへの支持が高い。だから継承兼第一位のあの男はヴォックスへの対抗心が強いのか。
シレは元々表に出ないからそこまで声援厚くないが手堅い程度という所で妥当だろう。予想外だったのは第一皇太子妃だった。聖女様と叫ばれている。時折魔法で花びらを散らしたりとパフォーマンスがわざとらしい。というよりも、周囲が魔法だ奇跡だと騒ぐそれは全然違う代物だな。
「サク、ここで言ったらいけないよ」
「……」
笑顔のまま、目線も帝国民に向けたままでシレが窘めてきた。
バルコニーから大声で叫ばない限り国民に聞こえるはずもないが、公の場である以上リスクはある。普段なよなよしてるくせに、こういうところは鋭いし先の事をよく考えていると思う。まあ褒めたりしてやらないが。
「シレも分かっているのか」
「まあね」
シレは魔法を使える人間としても優秀だと聞いた。だからこそ違いが分かるのか。
あの女の使う奇跡は魔法のようだが、魔術と言っていいだろう。紛いものが民を騙している事をよしとするのか? 皇帝は魔法を扱えない人間だから気づいていない可能性が高い。
「今まで何もしてなかったのか」
「それはこっちの事情もあってね」
今度話すから今は許して、とお互い視線を合わせず、口も動かさず囁き合う。こういう事をしていると、皇族貴族の薄汚い政の世界の側の人間だなと自分に辟易する。
「まあいいさ」
今日のイベントは建国祭だ。王都内も活気づいて経済も潤う。無粋な事は表向きやらない方がいいだろう。
「接触はするけどな」
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