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49話 過去へ戻る
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「少し歩こうかな」
観光気分にしてはあたり一帯雪原で物足りない。
少し歩くと高い木々が連なる森林地帯が出現した。吹雪も防げるし視界もよくなったので奥を進む。消耗が少ない場所を選ぶに限るわ。
「ヴェルディスが寄越したのは君か」
「え?」
気づけなかった。
風がやんでいたことも、身体強化しないと立っていられない程の寒さがおさまっていたことも、木々の波が凪いで開けた場所に辿り着いたことも、その場所が眩しい光しかなかったことも。今、声をかけられてやっと気づいた。
「緊張しないで良い。君は迎え入れる」
「……ドラゴン」
「私の子に会えるとは中々粋な展開だな」
「子?」
白金色の表皮、金色に輝く瞳を持つ大きなドラゴンが目の前にいた。初めて見るけど伝承の通りで言葉を失う。
「あれ?」
瞬きをしたら場所が変わっていた。
「ドラゴンが消えた?」
「君の近くにいる」
「え? 見えないんですけど」
そもそも場所が全然違う。けど見覚えはある。
「だって、ここ実家」
近くにあった鏡に映る自分の姿に変な声が出た。
「え? 私? ちっちゃい?」
「そうだな」
「え……過去、ですか?」
そうだとどこからか声が聞こえる。
私がその手の話に理解があるからすぐ分かったけど、過去へ逆行とか急に理解できないと思うよ。サプライズは程々にしないとね。
「選択肢を与えよう、私の子」
「選択肢?」
「変えるか、変えないかだ」
ちょっと急すぎるんで説明お願いしますって叫ぶ前に外から名を呼ばれる。
「ディーナちゃん」
「!」
懐かしい響きに思わず走った。
庭の一際陽があたりティータイムを過ごすには最高の場所。
「ああ、御母様」
「ディーナちゃん来たのね」
小さな私と同じ年の侍従が母にお茶を淹れている。
「……ルーラ」
「お嬢様」
近くの侍女に促され母と向かい合って座る。
「ふふふ、慌てて来なくてもお茶は逃げないわよ」
「え、ええと」
「成程。歪んだのはここか」
「ドラゴン?」
急に話しかけてくるのはいいけど、姿がないからどう対応していいか悩むわね。
「ディーナちゃん?」
「あ、なんでもないです」
「ふふ、知ってるわよ? ドラゴン探しに行こうしてたのよね。ギフツが言っていたわ」
侍従のルーラがぺこりと無言で頷いた。
やっぱり名前も記号だ。この頃から既にセモツのスパイだったの。
「あなたもディーナちゃんの相手してくれてありがとね? 大変でしょ」
「いえ」
「でもディーナちゃんには心感じるまま過ごしてほしいのよ。付き合ってあげてね?」
「奥様の仰る通りに」
母だ。
のんびりとして私の好きを肯定してくれる。
生きている。
「過去に留まっても良いぞ?」
「ドラゴン」
「未来を変える事も出来る」
母が生きている。
ルーラも今なら止められる。
「……ドラゴン」
「ああ」
「実は私、この光景を見る前から決めてました」
「言ってごらん」
母が笑う。それに私も笑顔で返した。
「過去は変えません。このまま戻して下さい」
「……そうか」
引っ張られる感覚に終わりを悟る。
「御母様、ありがとうございます」
明るくあたたかい庭から、再び聳え立つ森林が私の視界を覆う。
「戻ってきた?」
「ああ、君が望む元の世界だ」
「ドラゴン」
「分かってはいるが訊こう。何故母親を救わなかった?」
ルーラにも言った。
過去は過去だ。私の中で完結している。
「過去を変えてもきっと今の私がない。乗り越えて今を楽しく生きる私がいないからです」
「後悔しないのか?」
「受け入れました。受け入れることを手伝ってくれた人がいるから、尚更変えませんよ」
過去を変えたら今のヴォルムがいない世界になる。私は今のヴォルムに用がある。
「この男か」
「わ、すごい」
なにもない空間に映ったのは幼い私とヴォルムだった。
「こんな小さい時にも会ってたんだ」
でもどことなく覚えがある。王太子妃候補になる頃、私に拳で戦うことを教えてくれた子。
王城に何度か候補たちが呼び出され両陛下や側近、役職のある人間との面談が続いた時のあいた時間にヴォルムに会っていた。
私は王太子妃、ヴォルムは王太子の護衛として呼ばれていたのだろう。
あいた時間に組手したり、木登りして遊んだり追いかけっこしたりね。退屈な時間が楽しいに変わった。
「忘れてたわね」
私が拳を扱う運命を決めた子がヴォルムだったなんて。護衛になる前から会ってたって言ってたのはここだったの。
感慨深い思いになる私を横に「不思議なものだ」とドラゴンが感心していた。私とヴォルムの関係に?
「ドラゴン、伺っても?」
「ああ」
「何故、私なんでしょうか?」
ヴェルディスが寄越した人間だと享受するドラゴン。
何を理由に過去に戻して、変えることを許すのだろう。
「因果律を正す為、と言えばいいかな」
「というと?」
「過去、君の母親の死は我々が管理する因果と運命の中にはなかった」
だから正す権利があるという。
「でもセモツはこの頃から他国の人間で実験してたんですよね?」
「そうだ」
「それなら母が死んでもおかしくないですし、そもそも正すなら私の意思を確認する必要がないでしょう?」
ドラゴンが笑う。
「そうだね。君の言う通りだ。それは君が全て超えてしまったからそう言える話なのだよ」
「できれば簡単に話してもらえると助かります」
詩人みたいなことばかり言うから、ちょっと分かりづらい。
「母親の死があるルートだと、君がその拳で世界を壊す可能性が生まれてしまうのだよ」
「拳で世界を壊す」
「真っ二つに地面を割ってしまうこともするぞ」
「それはちょっと……」
えらいこっちゃ。画的にはギャグだけど。
「しかし君は乗り越えてしまった」
そもそもね、とドラゴンは続ける。
「君が世界を壊すルートは先程の過去にいたかつての君の侍従が発端とも言える」
「ルーラが?」
「君を好きになってしまったからね。そのせいで行動が変化した。君を中心にして悪事を働くことと、国を落とす為に悪事を働くのでは全然違う。因果が捻じれる」
「それを言うならルーラこそがキーパーソンだったのでは?」
「侍従を変えたのは君だ。因果は君に起因する」
難しい話だ。
「だからヴェルディスはここへ君を寄越した。世界と人の為に」
ドラゴンの言う正しいルートのために私に選択肢を与えたと。結局私が超えたから、このままでも世界は滅亡しない。けど元々はこういう道筋じゃなかったから、戻すこともできたよということかな?
「なんか私すごい人間だったんですかね?」
「私の子なのだから当然だ」
「その、さっきから私の子って?」
「おや、代々受け継いでないのか? ループト家はだいぶ血が薄くなったが、私ドラゴンの血を継いでいる」
あの家紋から推測した話は現実だったわ。
「成程……勉強し直しますね」
言うとドラゴンが笑った。
「向上心があるな! さすが自力で先を作っただけある」
いやここはもっと格好良い言葉で言い直そう、とドラゴンがさらに続けた。
「この物語の主人公は君だからもう大丈夫だ」
格好いいこと言ってるつもりなんだろうけど、より詩人すぎて分かりにくいよ?
たぶん「よくやった」と同じ意味だろうけど。
観光気分にしてはあたり一帯雪原で物足りない。
少し歩くと高い木々が連なる森林地帯が出現した。吹雪も防げるし視界もよくなったので奥を進む。消耗が少ない場所を選ぶに限るわ。
「ヴェルディスが寄越したのは君か」
「え?」
気づけなかった。
風がやんでいたことも、身体強化しないと立っていられない程の寒さがおさまっていたことも、木々の波が凪いで開けた場所に辿り着いたことも、その場所が眩しい光しかなかったことも。今、声をかけられてやっと気づいた。
「緊張しないで良い。君は迎え入れる」
「……ドラゴン」
「私の子に会えるとは中々粋な展開だな」
「子?」
白金色の表皮、金色に輝く瞳を持つ大きなドラゴンが目の前にいた。初めて見るけど伝承の通りで言葉を失う。
「あれ?」
瞬きをしたら場所が変わっていた。
「ドラゴンが消えた?」
「君の近くにいる」
「え? 見えないんですけど」
そもそも場所が全然違う。けど見覚えはある。
「だって、ここ実家」
近くにあった鏡に映る自分の姿に変な声が出た。
「え? 私? ちっちゃい?」
「そうだな」
「え……過去、ですか?」
そうだとどこからか声が聞こえる。
私がその手の話に理解があるからすぐ分かったけど、過去へ逆行とか急に理解できないと思うよ。サプライズは程々にしないとね。
「選択肢を与えよう、私の子」
「選択肢?」
「変えるか、変えないかだ」
ちょっと急すぎるんで説明お願いしますって叫ぶ前に外から名を呼ばれる。
「ディーナちゃん」
「!」
懐かしい響きに思わず走った。
庭の一際陽があたりティータイムを過ごすには最高の場所。
「ああ、御母様」
「ディーナちゃん来たのね」
小さな私と同じ年の侍従が母にお茶を淹れている。
「……ルーラ」
「お嬢様」
近くの侍女に促され母と向かい合って座る。
「ふふふ、慌てて来なくてもお茶は逃げないわよ」
「え、ええと」
「成程。歪んだのはここか」
「ドラゴン?」
急に話しかけてくるのはいいけど、姿がないからどう対応していいか悩むわね。
「ディーナちゃん?」
「あ、なんでもないです」
「ふふ、知ってるわよ? ドラゴン探しに行こうしてたのよね。ギフツが言っていたわ」
侍従のルーラがぺこりと無言で頷いた。
やっぱり名前も記号だ。この頃から既にセモツのスパイだったの。
「あなたもディーナちゃんの相手してくれてありがとね? 大変でしょ」
「いえ」
「でもディーナちゃんには心感じるまま過ごしてほしいのよ。付き合ってあげてね?」
「奥様の仰る通りに」
母だ。
のんびりとして私の好きを肯定してくれる。
生きている。
「過去に留まっても良いぞ?」
「ドラゴン」
「未来を変える事も出来る」
母が生きている。
ルーラも今なら止められる。
「……ドラゴン」
「ああ」
「実は私、この光景を見る前から決めてました」
「言ってごらん」
母が笑う。それに私も笑顔で返した。
「過去は変えません。このまま戻して下さい」
「……そうか」
引っ張られる感覚に終わりを悟る。
「御母様、ありがとうございます」
明るくあたたかい庭から、再び聳え立つ森林が私の視界を覆う。
「戻ってきた?」
「ああ、君が望む元の世界だ」
「ドラゴン」
「分かってはいるが訊こう。何故母親を救わなかった?」
ルーラにも言った。
過去は過去だ。私の中で完結している。
「過去を変えてもきっと今の私がない。乗り越えて今を楽しく生きる私がいないからです」
「後悔しないのか?」
「受け入れました。受け入れることを手伝ってくれた人がいるから、尚更変えませんよ」
過去を変えたら今のヴォルムがいない世界になる。私は今のヴォルムに用がある。
「この男か」
「わ、すごい」
なにもない空間に映ったのは幼い私とヴォルムだった。
「こんな小さい時にも会ってたんだ」
でもどことなく覚えがある。王太子妃候補になる頃、私に拳で戦うことを教えてくれた子。
王城に何度か候補たちが呼び出され両陛下や側近、役職のある人間との面談が続いた時のあいた時間にヴォルムに会っていた。
私は王太子妃、ヴォルムは王太子の護衛として呼ばれていたのだろう。
あいた時間に組手したり、木登りして遊んだり追いかけっこしたりね。退屈な時間が楽しいに変わった。
「忘れてたわね」
私が拳を扱う運命を決めた子がヴォルムだったなんて。護衛になる前から会ってたって言ってたのはここだったの。
感慨深い思いになる私を横に「不思議なものだ」とドラゴンが感心していた。私とヴォルムの関係に?
「ドラゴン、伺っても?」
「ああ」
「何故、私なんでしょうか?」
ヴェルディスが寄越した人間だと享受するドラゴン。
何を理由に過去に戻して、変えることを許すのだろう。
「因果律を正す為、と言えばいいかな」
「というと?」
「過去、君の母親の死は我々が管理する因果と運命の中にはなかった」
だから正す権利があるという。
「でもセモツはこの頃から他国の人間で実験してたんですよね?」
「そうだ」
「それなら母が死んでもおかしくないですし、そもそも正すなら私の意思を確認する必要がないでしょう?」
ドラゴンが笑う。
「そうだね。君の言う通りだ。それは君が全て超えてしまったからそう言える話なのだよ」
「できれば簡単に話してもらえると助かります」
詩人みたいなことばかり言うから、ちょっと分かりづらい。
「母親の死があるルートだと、君がその拳で世界を壊す可能性が生まれてしまうのだよ」
「拳で世界を壊す」
「真っ二つに地面を割ってしまうこともするぞ」
「それはちょっと……」
えらいこっちゃ。画的にはギャグだけど。
「しかし君は乗り越えてしまった」
そもそもね、とドラゴンは続ける。
「君が世界を壊すルートは先程の過去にいたかつての君の侍従が発端とも言える」
「ルーラが?」
「君を好きになってしまったからね。そのせいで行動が変化した。君を中心にして悪事を働くことと、国を落とす為に悪事を働くのでは全然違う。因果が捻じれる」
「それを言うならルーラこそがキーパーソンだったのでは?」
「侍従を変えたのは君だ。因果は君に起因する」
難しい話だ。
「だからヴェルディスはここへ君を寄越した。世界と人の為に」
ドラゴンの言う正しいルートのために私に選択肢を与えたと。結局私が超えたから、このままでも世界は滅亡しない。けど元々はこういう道筋じゃなかったから、戻すこともできたよということかな?
「なんか私すごい人間だったんですかね?」
「私の子なのだから当然だ」
「その、さっきから私の子って?」
「おや、代々受け継いでないのか? ループト家はだいぶ血が薄くなったが、私ドラゴンの血を継いでいる」
あの家紋から推測した話は現実だったわ。
「成程……勉強し直しますね」
言うとドラゴンが笑った。
「向上心があるな! さすが自力で先を作っただけある」
いやここはもっと格好良い言葉で言い直そう、とドラゴンがさらに続けた。
「この物語の主人公は君だからもう大丈夫だ」
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