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2章 神よ、感謝します。けど、ちょっと違う叶ったけどちょっと違うんです。
129話 私今すごく推理ものの主人公みたいじゃない?
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「僕、心配だよ」
「大丈夫。エドアルドはオリアーナの傍にいるだけでいいんだよ」
今日もよしよしできないヘアセットで残念。
今ではオリアーナもエドアルドが傍で支えてくれる素晴らしさは分かっているはずだ。だから社交界の時間二人でいれば何も問題ない。噂の対象が私とオリアーナであるなら、一人になる事はそれなりのリスクを伴うということでもあるので、エドアルドがオリアーナの傍にいる事は理に適っている。
そしてその二人の姿に私は癒される。ここが一番大事。
「さてどうしてくれようかな」
「チアキ、無茶は駄目よ」
「分かってるよ、エステル。大丈夫、事と場合によってだから」
「だから心配なのに」
呆れても可愛いだけだよ、エステル。
ふふふと微笑んでいると、すいっと右手に手を添えられ持ち上がる。ディエゴが当然のように私の隣に立って手を取ってきた。動作は自然に、エスコートとしては非常にスマートだ。おばあちゃんの教育はきちんと生かされている。
「では俺が守ろう」
「私、スーパーマンなので間に合ってます」
「この場合、守るのは相手側になるな」
「ああ、ボコボコにしすぎ防止?」
「そうなる」
失礼な、ボコボコにするにしたって手加減はきちんとするし。エスタジの時も手加減したし、叔父だって怪我の一つもしていない。お隣さんの時も犠牲になったのは扉だけだ。
ディエゴの言葉に対して不服である証に添えられた手を恋人繋ぎにしてやった。急な握り返しに驚いたディエゴは案の定耳を赤くしてこちらを見下ろした。過剰で急なスキンシップは相変わらず苦手なツンデレめ。
「チアキ」
指先で撫でると握り返せない彼の指が震えた。片眉を顰め、睨み下ろされる。
「私は断じてボコボコにしすぎはしない。これは不服である事の訴えである」
「そこなのか……」
呆れられたけど、充分な反応だったので満足してエスコート時の手の添え方に戻した。
それを見ていたエステルがまあだのあらだの言っていたけど、特段ツッコミらしいツッコミはなかった。
「では俺とステラは少し離れよう」
「わかった」
「騎馬部隊に周辺確認を聞き取り、警備隊の配置を直したら戻る」
「ご無理なく~」
トットも大変だな。
今日はそこそこ爵位のある者の中でも有名どこが来ていること、最近王都内外の事故数・軽犯罪数が上がってきている事を懸念してか、割とひりついた空気がある。
それを気にさせず、にこやかな場を作ってるのは間違いなくトットとエステルなわけで、そこはさすが王太子殿下とその婚約者、ヒーローヒロインなんだなと思わざるを得ない。いつだって二人のスキルで世界が救えるレベル。
「いい!」
「ぶれないな」
「褒め言葉ありがとう」
騎馬部隊に指示を出すトットを眺めながら癒しタイムだ。私の前ではリラックスしてまったり気味な時がほとんどだけど、今彼は王太子として職務を果たしている。引き締まる顔つきに的確な指示、雰囲気だってもう全然違う。イケメンはいつだってイケメンだ。
「チアキ、行こう」
「はいはい……ん?」
「返事は一回だ……どうした」
私の顔を見てディエゴが少し驚いているようだった。珍しい表情に脳内シャッターをきっていたことは伏せておこう。
「いや、大丈夫」
「何を感じた」
そうだ、隣の人ってば心配性なお姑さんだった。気づかれた相手が良くなかったな。
「大したことじゃないよ。視線を感じただけ」
「王太子殿下か?」
「トットでもエステルでもない。けど、あちらからあった気がしただけ」
「……心に留めておこう」
「大丈夫だって」
だって今日は一日こんな感じに視線を受けてはひそひそされるんだから、一つ一つ気にしていては身が持たないだろうに。ディエゴのことだから、そういうの言い続けても全部覚えそうだけど、そこまでして社交界を過ごすものじゃない。折角おいしいご飯においしいお酒があるし、美男美女揃ってるんだから癒されて帰る方が断然いいに決まってる。正直癒し以外のものは全部おまけだ。
「チアキ」
「はいはい、行くよ」
「……さっきの俺の言葉をまるで聴いてなかったな?」
「んん?」
さておき、挨拶回りはスムーズだ。
声をかけても逃げられることはなく敵意もない。こうして順繰りに挨拶していけば尻尾掴めると思ったんだけどな。
今回は学生もいれば大人もいる。年齢関係なく嘘をうまく隠せる者が紛れている可能性は充分あるし、私の予想とは反対に噂だけ吹聴して現場にいない可能性もある。そんなことを考えていたら、あっさり目の前で動きがあった。
「おやおや」
「どうした」
「生徒達に挨拶した時に、離れていく人物が見えた」
隠れながら隙間を縫ってね。
ディエゴが私の視線を追って周囲を伺う。
「誰だ?」
「はっきり見えなかった。けど、これで確実になったよ」
「なにが」
「犯人は現場にいる……て、私今すごく推理ものの主人公みたいじゃない?」
私の意気揚々とした姿にディエゴはやや引き気味だった。ここでその考えに至るのか的な感じか。
「頼むから大人しくしててくれ」
「大丈夫だよ、あっちから仕掛けて来ない限りは」
集団の中にも挨拶億劫なディエゴタイプの人間もいるし、そもそも生徒達集団に対しての挨拶だから自分に向けられてると思っていないという可能性もある。人が多すぎて視界も不良だし。なので確実なものではない。
でも動きが不審だった。警備隊の場所移動にも見えなかった。つまり現時点では限りなく当たりだ。
「大丈夫。エドアルドはオリアーナの傍にいるだけでいいんだよ」
今日もよしよしできないヘアセットで残念。
今ではオリアーナもエドアルドが傍で支えてくれる素晴らしさは分かっているはずだ。だから社交界の時間二人でいれば何も問題ない。噂の対象が私とオリアーナであるなら、一人になる事はそれなりのリスクを伴うということでもあるので、エドアルドがオリアーナの傍にいる事は理に適っている。
そしてその二人の姿に私は癒される。ここが一番大事。
「さてどうしてくれようかな」
「チアキ、無茶は駄目よ」
「分かってるよ、エステル。大丈夫、事と場合によってだから」
「だから心配なのに」
呆れても可愛いだけだよ、エステル。
ふふふと微笑んでいると、すいっと右手に手を添えられ持ち上がる。ディエゴが当然のように私の隣に立って手を取ってきた。動作は自然に、エスコートとしては非常にスマートだ。おばあちゃんの教育はきちんと生かされている。
「では俺が守ろう」
「私、スーパーマンなので間に合ってます」
「この場合、守るのは相手側になるな」
「ああ、ボコボコにしすぎ防止?」
「そうなる」
失礼な、ボコボコにするにしたって手加減はきちんとするし。エスタジの時も手加減したし、叔父だって怪我の一つもしていない。お隣さんの時も犠牲になったのは扉だけだ。
ディエゴの言葉に対して不服である証に添えられた手を恋人繋ぎにしてやった。急な握り返しに驚いたディエゴは案の定耳を赤くしてこちらを見下ろした。過剰で急なスキンシップは相変わらず苦手なツンデレめ。
「チアキ」
指先で撫でると握り返せない彼の指が震えた。片眉を顰め、睨み下ろされる。
「私は断じてボコボコにしすぎはしない。これは不服である事の訴えである」
「そこなのか……」
呆れられたけど、充分な反応だったので満足してエスコート時の手の添え方に戻した。
それを見ていたエステルがまあだのあらだの言っていたけど、特段ツッコミらしいツッコミはなかった。
「では俺とステラは少し離れよう」
「わかった」
「騎馬部隊に周辺確認を聞き取り、警備隊の配置を直したら戻る」
「ご無理なく~」
トットも大変だな。
今日はそこそこ爵位のある者の中でも有名どこが来ていること、最近王都内外の事故数・軽犯罪数が上がってきている事を懸念してか、割とひりついた空気がある。
それを気にさせず、にこやかな場を作ってるのは間違いなくトットとエステルなわけで、そこはさすが王太子殿下とその婚約者、ヒーローヒロインなんだなと思わざるを得ない。いつだって二人のスキルで世界が救えるレベル。
「いい!」
「ぶれないな」
「褒め言葉ありがとう」
騎馬部隊に指示を出すトットを眺めながら癒しタイムだ。私の前ではリラックスしてまったり気味な時がほとんどだけど、今彼は王太子として職務を果たしている。引き締まる顔つきに的確な指示、雰囲気だってもう全然違う。イケメンはいつだってイケメンだ。
「チアキ、行こう」
「はいはい……ん?」
「返事は一回だ……どうした」
私の顔を見てディエゴが少し驚いているようだった。珍しい表情に脳内シャッターをきっていたことは伏せておこう。
「いや、大丈夫」
「何を感じた」
そうだ、隣の人ってば心配性なお姑さんだった。気づかれた相手が良くなかったな。
「大したことじゃないよ。視線を感じただけ」
「王太子殿下か?」
「トットでもエステルでもない。けど、あちらからあった気がしただけ」
「……心に留めておこう」
「大丈夫だって」
だって今日は一日こんな感じに視線を受けてはひそひそされるんだから、一つ一つ気にしていては身が持たないだろうに。ディエゴのことだから、そういうの言い続けても全部覚えそうだけど、そこまでして社交界を過ごすものじゃない。折角おいしいご飯においしいお酒があるし、美男美女揃ってるんだから癒されて帰る方が断然いいに決まってる。正直癒し以外のものは全部おまけだ。
「チアキ」
「はいはい、行くよ」
「……さっきの俺の言葉をまるで聴いてなかったな?」
「んん?」
さておき、挨拶回りはスムーズだ。
声をかけても逃げられることはなく敵意もない。こうして順繰りに挨拶していけば尻尾掴めると思ったんだけどな。
今回は学生もいれば大人もいる。年齢関係なく嘘をうまく隠せる者が紛れている可能性は充分あるし、私の予想とは反対に噂だけ吹聴して現場にいない可能性もある。そんなことを考えていたら、あっさり目の前で動きがあった。
「おやおや」
「どうした」
「生徒達に挨拶した時に、離れていく人物が見えた」
隠れながら隙間を縫ってね。
ディエゴが私の視線を追って周囲を伺う。
「誰だ?」
「はっきり見えなかった。けど、これで確実になったよ」
「なにが」
「犯人は現場にいる……て、私今すごく推理ものの主人公みたいじゃない?」
私の意気揚々とした姿にディエゴはやや引き気味だった。ここでその考えに至るのか的な感じか。
「頼むから大人しくしててくれ」
「大丈夫だよ、あっちから仕掛けて来ない限りは」
集団の中にも挨拶億劫なディエゴタイプの人間もいるし、そもそも生徒達集団に対しての挨拶だから自分に向けられてると思っていないという可能性もある。人が多すぎて視界も不良だし。なので確実なものではない。
でも動きが不審だった。警備隊の場所移動にも見えなかった。つまり現時点では限りなく当たりだ。
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